魔法科高校の劣等生 ~四と零~   作:ブーミリオン

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再会

次の日、達也から今日は先に行っててくれと連絡があったので俺は1人で学校へと向かう。

そういえば達也たちと登校しない日はいままで数えるくらいしかないなぁ~なんて思いながらコミューターから降りる。

普段は3人で乗るため、今日は少しコミューターが広く感じていた。

 

コミューターから降りたら学校までは一直線だ。

そのため、俺の降りた場所では多くのコミューターが乗り降りをしていた。

と、その時知っている顔が見えたので俺は声をかける。

 

「おはよう、雫、ほのか」

 

「うん。おはよう、零夜」

 

「………え?」

 

俺は朝の挨拶を雫とほのかの2人に行った。

雫はごく普通の返しをしたが、ほのかはというとなぜか固まっていた。

そこで俺は昨日ほのかはトイレに行ってて話してないんだった、と思い出す。

もしかしたら俺のことを忘れているのかもしれないな…と思い俺は自己紹介を始める。

 

「久しぶりだな、ほのか。…俺だよ、零夜。小さいころ遊んだこと忘れたか?」

 

俺がそう告げると、ほのかははっと我に返り返事をする。

 

「えっ?も、もちろん覚えてるよ。で、でも何で零夜くんがここにいるの?」

 

「何でってここに入学したからに決まってるだろ?」

 

俺はほのかの質問に呆れたように答える。

だってそれ以外に理由なんてないし…

 

「え…それってホント…?」

 

まだ信じてくれないほのかに溜息を吐きつつ俺は返事をする。

 

「こんなことで嘘言ってどうするんだよ…。…雫、昨日会ったこと言ってなかったのか?」

 

会話の途中で俺は雫へと視線を向ける。

雫が一言ほのかに言っておけばこんなことにはならなかっただろう。

そこで視線を向けられた雫は面倒くさそうに告げる。

 

「言ってなかった」

 

「雫っ!?」

 

雫がそう簡潔に告げるとほのかが大声を出す。

あんまり大声を出すのはやめてくれ…人が見てるよ。

 

「何でだよ?別に言っておいてくれてもいいだろ?」

 

「だってほのかは零夜のことが…モゴモゴ」

 

と、雫が言いかけているところでほのかが雫の口に手をあてて言葉を遮った。

ほのかは顔を真っ赤にしながら、

 

「し、雫っ!?」

 

と先ほどと同じセリフを慌てた様子で告げる。

それをきっかけに二人の間で会話が始まった。

熱でもあるのかな?なんて見当違いなことを考えながら俺は会話が終わるのを待つ。

そして3分後、ようやく話しが終わったらしく雫が俺に告げる。

 

「それじゃあ積もる話もあるだろうし私は先に行くね」

 

「お、おいそれなら3人で…」

 

「今はほのかと話してあげて。私は昨日話したから大丈夫」

 

雫はそう告げると本当に1人で先に行ってしまった。

それを唖然とした顔で見つめる俺とほのか。

とは言ってもそろそろ行かないと遅れそうなので俺はほのかに、

 

「と、とりあえず学校行くか」

 

と簡潔に告げる。

対してほのかも、

 

「う、うん。そうだね」

 

と簡潔に返し、俺とほのかという久しぶりな2人で学校へと向かった。

 

 

 

 

「そういえば零夜くんは何組だったの?」

 

学校に着くとほのかが俺に質問する。

これまでお互い会話があまりなかったので都合のいい話題だ、と思いつつ俺は返事を返す。

 

「俺はA組だったよ。ほのかは?」

 

「わ、私もA組だよ!それに雫も。私たち一緒のクラスだね♪」

 

「本当か?これから一年よろしくな、ほのか。」

 

「う、うん!」

 

なんと、ほのかと雫もA組だったのか。

話し相手がいるってのはうれしいことだなぁなんて考えつつ教室へと向かう。

そして教室へと近づくとなぜか人が群がっている気配がした。

もしかして……と思いつつも俺はドアを開けほのかと共に教室へと入る。

そして教室を見渡すと案の定深雪を中心に人だかりができていた。

…また深雪と同じクラスか、と溜息を吐きつつ俺は自分の席を探す。

と、そこで

 

「あっ、零夜くん。おはようございます」

 

と、深雪から声をかけられてしまった。

それと共に周りにいる男子の目が一斉に俺へと向けられる。

……またかと思いつつも俺はしっかりと、

 

「あぁ、おはよう」

 

と挨拶を返す。

…これまでもクラス替えのたびに深雪の周りには多くの人だかりができていた。

それをうっとうしく思った深雪が解決策と編み出したのがこの方法だ。

深雪が人だかりの中で知り合いである俺を見つけたら声をかける。

それだけの方法なのだが、これが思いのほか使えるのだ。

 

「お前司波さんの何なんだよ」

 

とこのように人だかりが深雪から俺へと対象を変えるのだ。

他人事ならこの方法にとやかくは言わないだろう。

しかし、自分の事となると話は別だ。

面倒なことこの上ない。

そう思いつつ俺は溜息交じりに答える。

 

「心配するな。ただの従兄妹だよ。お前たちが思っているようなことはなにもないから安心しろ」

 

と。

俺は毎年クラス替えのたびにこの決まり文句で人だかりを黙らせる。

大抵の男はこう言っておけば黙るのだ。

そして予想通り連中が黙ったのを確認し、俺は深雪を一睨みした後自分の席の捜索へと足をすすめた。

 

「えーっと23番23番っと……あった。ここか」

 

と見つけた席に俺は腰を落とす。

そうして俺が座ると、横から声がかかる。

 

「あっ、私零夜くんの隣だ」

 

どうやらほのかが俺の席の隣だったらしい。

こんな偶然もあるもんなんだなと思いつつ俺は笑みを浮かべ返事を返す。

 

「なんかとことん一緒だな。知り合いが近くにいて俺もうれしいよ。さっきも言ったけどこれから一年よろしくな」

 

そんな俺の言葉にほのかはこれ以上ないと言わんばかりの笑顔を浮かべながら、

 

「こちらこそよろしくね、零夜くん!」

 

と告げた。

 

 

 

 

席に座った俺だったがすることもなかったのでほのかと雫を呼んで話をしていた。

 

「彼女かわいそう」

 

話の途中、雫がふと深雪に視線を向けながら嘆く。

 

「彼女って深雪のことか?」

 

「零夜くんは深雪さんの従兄妹なんだよね?」

 

俺が雫の言葉に質問を投げかけると、ほのかもそれに続いて俺に質問を投げかける。

まぁ別に隠すことでもないし、そのままのこと話して大丈夫だろ。

 

「あぁ。さっきあそこにいる連中に話した通り俺と深雪は従兄妹なんだ」

 

「助けなくていいの?」

 

雫は一つ深雪に視線を向けそう告げる。

その視線は助けてあげなよという意志が伝わってくるようであった。

まぁ可愛そうではあるが…

 

「いつものことだからな。それにさっきあんなことをされたんだから助ける義理はないね。…それに周りを見てみろよ」

 

俺の言葉に雫とほのかは首をかしげる。

と、そこで雫が「あぁ」と理解したようだが、ほのかはまだ理解していないようだ。

理解できていないほのかに俺は苦笑いしながら小声で告げる。

 

「深雪に集まっていない他のクラスの連中を見てみなよ」

 

俺の言葉に従いほのかは教室を見渡す。

すると「あっ、なるほど」とつぶやいた。

簡単に説明するとクラスの女子と深雪に集まっていない男子が俺の方を向いていたのだ。

深雪がいなければ深雪のようになっていたであろうほのかと雫に、クラスの中でも最も顔が整っている俺。

深雪とは従兄妹であるため、俺は自分がある程度顔が整っていることは理解している。やっぱり血っていうのは争えないんだな…

まぁそのため面倒事になる前にほのかたちと話すことで予想された事態を回避したのだ。

自分でも素晴らしい作戦だと自負している。

 

「とまぁそんなわけだ。まぁ教師が来れば収まるだろうからそれまでの辛抱さ」

 

俺はそう告げ、その後もほのかたちとの会話を楽しんだ。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

「はぁ…面倒くさいことになったな……」

「ホントにね」

「だから深雪と同じクラスは嫌だったんだよ…」

「中学でもこんな感じだったの?」

「大体こんな感じだったよ。男の嫉妬?っていつ見ても見苦しいよな」

「…確かに」

「そんなこと言ってる場合っ!?」

 

雫と傍観していると、ほのかに焦った様子で注意される。

 

「だってどうしようもないだろ?見てみろよあれ。…注意したところで聞かないだろうし」

 

「それは…そうかもしれないけど…」

 

「まぁ見てようぜ。何とかなるだろ」

 

そう言いながら視線を人だかりに向けると、二科生のかわいらしい子が啖呵を切っているところだった。

 

「良い加減に諦めたらどうなんですか? 深雪さんは、お兄さんと一緒に帰ると言っているんです。他人が口を挟むことじゃないでしょう」

 

こうなったのは、放課後、俺と深雪を待っていた達也に深雪にくっついてきたクラスメイトが難癖をつけたことが発端だ。始めは一科生の男子生徒も周囲の目を気にして黙っていたが、すでにそんな遠慮、あるいは良識はこの場から消え去っていた。

 

「同じ新入生じゃないですか。あなたたちブルームが、今の時点で一体どれだけ優れているというんですかっ?」

 

「おいおい……」

 

不味いことになった、という思考が口から漏れた。

向こうを見るに達也もそう思っているようだ。

 

「……どれだけ優れているか、知りたいなら教えてやるぞ」

 

「ハッ、おもしれぇ! 是非とも教えてもらおうじゃねぇか」

 

何で煽るんだよ…

こいつらを煽ったらどうなるかなんて今の話のなかだけでも分かるだろうに…

 

「だったら教えてやる!」

 

案の定挑発に応じる男子生徒が特化型CADの銃口を二科生の男子生徒に突きつける。

だが、それは無意味に終わる。赤い髪の女子生徒が一科生のCADを弾き飛ばしたのだ。

 

「ヒッ!」

 

突然目の前に警棒らしきものを突き付けられた一科生が悲鳴を上げる。

 

「この間合いなら身体を動かした方が速いのよね」

 

「それは同感だがテメェ今、俺の手ごとブッ叩くつもりだっただろ」

 

その言葉を皮切りに突然言い合いを始めた2人に呆気に取られていた一科生がいち早く我を取り戻した。

その事態を止めようと思ったほのかがCADへと指を走らせる。

まずいっ!と思い俺は自身の魔法を発動させようとするが、知覚できる範囲に複数の存在を捉え、肩の力を抜く。

その瞬間、飛んできたサイオン弾がほのかの術式に当たり砕け散った。

 

「止めなさい! 自衛目的意外の魔法による対人攻撃は、校則違反である以前に、犯罪行為ですよ!」

 

声を発した人物に視線を向けて、ほのかの顔色は蒼白になる。

その人物は生徒会長の七草真由美だった。

助かったけど面倒くさい相手だな……

 

「あなたたち、1ーAと1ーE組の生徒ね。事情を聞きます。ついて来なさい」

 

冷たい声で命令をしたのは確か風紀委員の会長の渡辺摩利。入学式の際に紹介された気がする。そんな彼女のCADは既に待機状態にされていた。

そんな張り詰めた雰囲気の中、達也が摩利の前に歩み出た。

 

「すみません、悪ふざけが過ぎました」

 

「悪ふざけ?」

 

唐突とも思えるそのセリフに、風紀委員長の眉が軽く顰められる。

 

「はい。森崎一門のクイックドロウは有名ですから、後学の為に見せてもらうつもりだったんですが、あまりに真に迫っていたもので、思わず手が出てしまいました」

 

達也の白々しいとも思える言葉に多くの者が絶句する中、摩利は冷笑を浮かべてさらに追求する。

 

「では、その後に1ーAの生徒が攻撃性の魔法を発動しようとしていたのはどうしてだ?」

 

その質問には俺が答えようと言わんばかりに、それまで沈黙を続けていた俺が言葉を発する。

 

「攻撃性?ハ八ッ、風紀委員長それは冗談で言ってるんですよね?」

 

「…何?」

 

軽くバカにしたような俺の言い方に風紀委員長はいら立ったように言葉を口にした。

このくらいで苛立つなんてまだまだだななんて思いながら俺は答える。

 

「ほのか…彼女の使おうとした魔法は目くらまし程度の閃光魔法ですよ?それも失明したり、視力傷害を起こしたりする程のものではありません。これのどこに攻撃性があるんでしょう?」

 

俺の言葉を紡ぐと辺りに息を呑む気配が広がる。

そして摩利の顔が感嘆に変わる。

 

「ほぅ……どうやら君は、展開された起動式を読みとることができるらしいな」

 

「ええ、まぁ」

 

「…ずいぶん簡単に言うんだな」

 

彼女の言う簡単にとは起動式を読み取ることのできる技術に対してではなく、多くの人の前で告げることを言っているのだろう。

俺の心配か?なんて思いつつも俺は言葉を返す。

 

「別に隠すことでもありませんから」

 

俺を値踏みするような眼差し。

……………。

……………。

…あまり気分がいいものではないので早くやめてもらいたい。

と思っているところで矢面に立っていた俺や達也をかばうように、深雪が進み出る。

 

「兄や零夜くんが申したとおり、本当にちょっとした行き違いだったんです。先輩方のお手を煩わせてしまい、申し訳ありませんでした」

 

そんな深雪の頭を下げる姿を見て、風紀委員長は俺たちから目を逸らす。

深雪さんGJ!

 

「摩利、もういいじゃない。達也くん、零夜くん、本当にただの見学だったのよね?」

 

俺と達也が真面目腐った表情で同時に頷くと真由美は笑顔を浮かべた。

…何か裏がありそうな笑顔で。

 

「生徒同士で教え合うことは禁止されてされているわけではありませんが、魔法の行使には、起動するだけでも細かな制限があります。このことは一学期の授業で教わる内容です。魔法の発動を伴う自習活動は、それまで控えた方がいいでしょうね」

 

「……会長がこう仰せられていることでもありますし、今回は不問にします。以後このようなこのようなことがないように」

 

全員が慌てて姿勢を正し、一斉に頭を下げる。そんな俺たちに見向きもせず摩利は踵を返した。

が、一歩踏み出したところで足を止め、背を向けたまま問い掛けを発した。

 

「君たちの名前は?」

 

首だけで振り向いた摩利の目は、俺と達也を映していた。

 

「1年E組、司波達也です」

 

「1年A組、令式零夜です」

 

「覚えておこう」

 

「いえ、結構です。…って、あっ」

 

反射的に答えてしまった俺に風紀委員長は軽く微笑んでその場を後にした。

 

 

 

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