祝ってくれると嬉しいですw
その後話し合いを行い、なんとか俺は風紀委員に入ることを免れた。
とは言っても条件付きである。
何でも来週の部活動勧誘のときだけ助っ人として来てほしいとのことだった。
めんどくさい行事だそうだが、これから先勧誘を毎日されるよりはましだろうと思い渋々了承した。
そんなこんなで自宅に着いたのは夜8時。
思いのほか遅くなってしまっていた。
あれもこれも全部風紀委員長のせいだ…なんて思いながらリビングのドアを開けると、タイミングを見計らったように電話が鳴る。
「こんばんは、零夜さん」
「……何の用だよ。俺は今非常に機嫌が悪いんだ。変な電話だったら怒るぞ母さん」
電話の相手は母親である四葉真夜だった。
「あらあら、母親に向かって何て口の利き方なのかしら?……はっ!まさかこれが噂に聞く反抗期!?」
「……ふざけてるなら本当に切るぞ」
あからさまな演技にいら立つ俺。
今そんなことされると非常に頭に来るんだが…
「まぁまぁ。そんなに怒らないでちょうだい。久しぶりにあなたの顔を見て嬉しくなってしまったんだから」
そんな母さんの様子に俺は溜息を吐く。
演技だと分かってはいても顔を見て嬉しいなどと言われれば悪い気持ちはしない。
「で、何の用?母さんが俺の顔を見るためだけに電話をかけてくるわけないし」
そうなのだ。
理由もなく母さんが電話をかけてくるはずがない。
と言ってもいつも電話がかかってくるときはたいてい面倒事を持ち込んでくるためいい気はしない。
故に俺にとって母さんからの電話はあまりうれしいものではない。
「あら酷いわね。用がないと息子に電話してはならないのかしら?とは言っても確かに今回は用があるのだけど」
今回はっていうかいつもだろなんてツッコミを入れたいところだが俺は黙って話を聞く。
そんな俺の気持ちなど知らず一呼吸置いて母さんは再び口を開いた。
「最近一高にある組織が侵攻しているみたい」
ある組織…?
面倒事の予感…
そんな俺の気持ちが顔に出ていたのか母さんはネタばらしを始める。
「二科生を相手に一科生に対する不満を利用して洗脳しているみたい。組織の名前は反魔法国際政治団体、ブランシュ」
反魔法国際政治団体ブランシュ?
聞いたことないが一つだけ分かったことがある。
「面倒事か…」
そう組織について分からなくとも面倒事であるということくらいは分かる。
だてに16年も生きてはいないのだ。
「そうね。あなたの嫌う面倒事に間違いないわ。でも別にあなたにこの件を解決してほしいってことではないから安心してちょうだい」
「って言っても一高の生徒である以上巻き込まれる可能性は非常に高いんだけど…ハァ。俺って呪われてるのかも…」
俺はそう告げ溜息を吐く。
なんか高校に入学してから溜息ばっかり吐いてる気がするよ…
「いざとなったら達也や深雪さんもいるのだし心配することはないわよ。それにあなたの実力ならそんな組織相手にならないでしょう?」
そういう問題ではない。
力でねじ伏せることはたやすいがその力を使うこと自体が嫌なのだ。
「まぁそれはそうだけど…。でもそれとこれとは話が違う。たとえ俺に害がなくても周りに害を起こされる時点で嫌なんだ」
「……相変わらず優しいのね」
「そんなことないさ。面倒事の近くにいたくないだけだよ」
「…そう。分かったわ。それとあの件についてだけど…」
そう告げ母さんが今日一番の真面目な顔になる。
あの件…。
母さんから話を聞いた時から俺の中でずっと考えていることだ。
しかしいくら考えようとも答えはいまだ出ていない。
それほど簡単な問題ではないのだ。
「あの件についてならもう少し待っててくれない?俺だってそれには覚悟だったり決意だったりが必要になるんだから」
「もちろんよ。でも周りはそんな長い時間待ってはくれないわよ?」
そう告げ不安そうに俺を見る母さん。
「分かってるよ。だから今年中には結論を出すさ」
「それを聞いて安心したわ。…それはそうと今度家にいらっしゃいな。
意味ありげにそう告げる母さん。
よく見るとジト目になっている気がする
「な、なんだよ…」
「何でもないわよ。……あなた一体今どこに住んでるの?私たち四葉でも見つけられないなんて…。あなたのガーディアン泣きながら本邸へ帰って来たわよ?『零夜様を見失いました』って。すぐにあなたから連絡があったからよかったものの…」
「そっか…それは悪いことしたなぁ。でも一人暮らしってあこがれてたんだよ。だからまぁ彼女にはそう言っておいてやってくれ。っていうか俺にガーディアンなんて必要ないんだよなぁ…。自分の身くらい自分で守れるし」
「それはダメよ。私の過去知ってるでしょ?」
「まぁそうかもしれないけど、母さんのときとは話が違う。俺もう高校生だぞ?そんな心配される年でもないんだから」
「…相変わらずね。でも変わってないようで何よりだわ。…それではまた今度」
母さんがそう告げると電話が切れる。
そっかあいつには悪いことしたなぁと若干悪い気持ちになる。
流石にガーディアンを撒くのはまずかったかなぁ…と思うが今更どうしようもない。
とは言っても見つかった時が怖いから絶対に見つからないように気を付けようと心に誓い俺はソファーへとダイブし眠りについた。
***
魔法科高校と言っても基本的な制度は普通高校と変わらない。
第一高校にもクラブ活動はある。
普通高校と違う点と言えば魔法と密接なかかわりを持つクラブが数多くあることだろうか。
九校戦と呼ばれる魔法科高校の対抗戦で優秀な成績を収めたクラブには様々な便宜が与えられている。
故に有力な新入部員の獲得は各部に影響をもたらす重要課題である。
よってこの時期、各クラブの新入部員獲得戦争は熾烈を極める。
……らしい。
そんなこと俺の関係ないところでならいくらでもお好きにどうぞって言いたいところではあるが、今回は俺に思いっきり関係してくる話なので是非ともやめてもらいたい。
というか怪我人が出てるならやめろよって言いたいところでもあるが、学校が後押ししている感じがあるらしいのでそれもかなわない。
これぞTHE面倒事って感じだ。
「零夜いつまでボーっとしているんだ?そろそろ別の場所に行くぞ」
「はいはい……」
はい、俺は今風紀委員である達也と共に見回りしている。それも3日目連続である。
初日はさすがの俺でも驚いたものだ。
なぜなら予想していた部活動勧誘とはまるで違っていたからである。
血に飢えたゾンビのようにはいよって来る先輩たち、逃げても逃げてもハイエナのように追いかけてくる先輩たち…
本当にここは学校か?と疑問に思ったものである。
そんな獣たちをやりすごしたと思ったら行った先でトラブル発生。
お兄様達也くんが解決する場をしっかりと傍観していた俺。
そんな達也の姿を見ながら、俺は母さんが達也がいるから大丈夫という言葉だけは正しかったのかもしれないと内心思っていた。
ってか高周波ブレードをこんな場所でぶっ放すなよな…
達也だからどうにかなってたけど、他の奴に向けてやったら死んでたかもしれないって分かってたのか?
そしてそんな危険人物を捕まえると他の部員たちが達也を襲う。
確かに部員たちも悪いと思ったけど、達也も達也だよな。
あんな小馬鹿にした言い方で言ったらそりゃあキレてもしょうがないよ。
しかし流石は達也。
相手の反撃を見事にかわし相手を捕らえる。
やっぱ俺は手伝わなくてよかったとホッとしていた。
2日目。
初日のような大きな問題はなかったのだが、小さな問題が多すぎた。
クラブ間同士での喧嘩が後を絶えないのだ。
優秀な部員を手に入れるより自分が優秀になったらいいと思うのは俺だけだろうか?
とは言っても何も解決はしないので仕方なく仲裁に入る。
しかしそこで異変が起きる。
予期せぬ方向から魔法が飛んできたのだ。
最初は違う部活の流れ弾かと思ったが、どうやらそうではないらしい。
というのも達也にばかり魔法が放たれていたからだ。
達也は何も言わなかったが、やれやれといった表情をしていたのを俺は見逃さなかった。
そして3日目である今日、いい加減嫌気がさした俺は並んで歩いている達也に質問する。
「なぁ達也。飛んでくる魔法避けるのめんどくさくないか?」
「やはり気づいてたか」
俺のセリフに達也は淡々と告げる。
「そりゃああんだけあからさまに狙われてればな…。そこでだ。名案があるんだけど、どうする」
「名案?」
達也は首をかしげながら質問する。
まぁ名案っていうほど名案でもないからそんな期待はしないでほしいんだけど…
「あぁ。って言っても単純な話だ。俺がやつらの魔法無力化してやろうか?」
「そんなことできるのか?」
「用は達也に敵意のある魔法だけ無力化すればいいんだろ?それなら朝飯前だ」
「そうか。それは助かる」
達也はホッとしたような顔でそう答えた。
もしかしたら家出深雪に攻撃を向けられていることを見抜かれたのかもしれない。
お気の毒に……
「了解~。それで範囲はどうする?とりあえず市内で大丈夫か?」
「……すまん。もう一回言ってくれ」
「ん?聞こえなかったか?無力化する魔法の範囲は市内で大丈夫かって聞いたんけど」
そんなに小さな声で言ったつもりはないんだけど…
そう俺が告げると達也は感心したような呆れたようなよくわからない表情を浮かべる。
「いや…その聞き間違いじゃなかったんだな。校内だけで十分だ。というかそんなに広い範囲にそれほどの魔法を使うことは可能なのか?」
あぁ。俺の魔法について疑問に思っていたのか。納得納得。
達也なら話しても問題ないし話しちゃうか。
「まぁ昨日使われた魔法程度なら国内でも大丈夫だろうな。威力の高い魔法、そうだな…十師族なんかの攻撃全部は防げないと思うけど…」
「……さっき言っていた範囲で十分だ。この一週間だけお願いできるか?」
「零夜君に任せなさーい」
この日一番のあきれ顔をする達也に俺は笑顔でそう告げた。
……後に深雪からめちゃくちゃ感謝されたことは言うまでもない。
***
忙しかった勧誘週間もようやく終わりを迎えた。
しかし俺が魔法を使ってからも達也に攻撃が向けられる回数が減らないことには驚いた。
さすがにしつこすぎだろ…。ホモかよ…。
何てことを考えるがそれももう終わったのだ。
風紀委員長からのミッションをコンプリートしたことで、ようやく俺も自由という名の放課後を迎えることができる。
とりあえずほのかでも誘ってカフェでも行こうかな~と思い早速話しかけることにする。
「ほのか~、今日暇だったら一緒にカフェでもどうだ?あっもちろん雫も」
「えっ!?…ご、ごめん。今日はクラブがあるの…。だから暇じゃないんだ」
「私もほのかと一緒。っていうか私のことおまけみたいな言い方じゃなかった?」
な、何だと…
俺のプランが初っ端から崩れてしまうなんて…
ってか雫、別におまけみたいな言い方はしてないぞ。
「そっか…クラブなら仕方ないな。1人寂しく放課後を過ごすことにするよ…。っていうかほのかたち何のクラブ入ったんだ?」
「SSボード・バイアスロン部っていう部活だよ。どんな部活かっていうとね…」
そうしてほのかによるSSボード・バイアスロンについての説明が始まった。
………ふむふむ。
つまりスケボやスノボに乗りながら魔法で的を撃ちつつコースを走る競技ってことか。
「なんか難しそうだな…。結構体力とかも必要そうだし…大丈夫なのか?」
「うん!まだ練習始めたばかりだけど慣れたらすごく楽しそうな感じはしたよ!」
そう元気いっぱいに告げるほのか。
…どうせ雫に頼まれて入ったんだろうに、雫よりやる気じゃん。
そんなことを思いながら雫を見ると、ほのかには負けないという言葉が聞こえそうな目でほのかを見ていた。
とそこで雫があっ!と声を漏らす。
一体どうしたのだろうと聞こうとするよりも先に雫が話し始めた。
「零夜、そういえば深雪が零夜のこと探してたよ。何か用があるみたい」
「ん?そうなのか。じゃあ深雪を探すかな。…面倒事じゃなきゃいいけど。っとまぁ2人は部活頑張れよ。応援してる」
「うん!ありがとう!」
「じゃあね」
そう告げ俺は2人と別れ深雪の元へと向かった。