魔法科高校の劣等生 ~四と零~   作:ブーミリオン

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九校戦編
九校戦Ⅰ


テロ騒動から時は少し流れ、季節は夏。

第一高校では期末試験も終わり、気持ちは皆九校戦へと向いていた。

夏休みまで近いため皆気持ちが高ぶっているのだろう。

しかし俺の気持ちは高ぶる気配はまるでない。

それはテロ騒動の時にあった二人組の女性のことだ。

あの後倒れた俺は3日程目を覚まさなかった。

保健医も俺もなぜそんなに目を覚まさなかったのか原因は分からなかった。

その時の状況を知らせるように言われたが、もちろんあの2人のことは伏せた。

絶対に俺に関係ある者のようだし、関係ない人を巻き込まないためだ。

そう思った俺はとりあえずその場はなんとかごまかして、家に帰るとすぐに母さんに電話した。

何らかの情報を得られるかと思っていたためだ。

しかし母さんは、

 

「今はまだ話すべき時ではないわ」

 

と自分の意見を曲げなかった。

もしかしたら四葉にとってあまりよくない話なのだろうか?と頭をよぎったが、分からない以上それは推測でしかない。

あの2人はまた来ると言っていたので、次会ったときに話を聞けばいいだろうと思って早2カ月。

…何も起こらなかった。

俺はあの2人が俺のガードが固い、と言っていたことを思い出す。

つまり何かガードが薄くなる機会がないと現れないということだ。

俺としてはあまりそんな機会は起こってほしくないものだが、この件を解決するためにはそうも言ってられない。

とは言えそうそう機会なんてあるはずもないし…

と考えていたところで声がかかる。

 

「零夜くん、どうしたの?もしかしてまだあの時の後遺症が…?」

 

ほのかだ。

何でもほのかはテロの時倒れていた俺を一番初めに見つけてくれたらしい。

だからなのかは分からないが、俺が一人で何か考え事をしているとすぐに心配してくれている。

心配してくれるのはありがたいのだが、こう何回も同じことを言われるのもあまり気持ちいいものではない。

とは言え心から心配してくれていることが分かるため無碍にもできないのだ。

だから俺は、

 

「心配してくれてありがとな。でもあの時の後遺症なんてないから安心してくれ」

 

と、毎回のように同じセリフを告げるのだった。

 

「それより早く結果見に行こう?」

 

俺がほのかと話しているところに雫がそう告げながら歩いてきた。

結果、というのは期末試験の結果だ。

何でもこの高校では1位からビリまで全員の成績が貼り出されるらしい。

そんなこと興味なかったためいつものように狙って50位あたりを狙おうとしたのだが、友人たちに『今回からは本気でやってほしい』と頼まれたためそうもいかなくなった。

特に深雪からは得体のしれないプレッシャーを感じたためその言葉を受け入れるほか俺に出来ることはなかった。

 

 

雫の言葉で俺、ほのか、雫の3人は成績が貼り出されている電光掲示板へと向かう。

 

「私今回は頑張ったけどどうかな?」

 

「私も今回は本気。九校戦に関わる大事なテストだから」

 

「だから2人ともあんなに頑張ってたのか~」

 

そんな会話をしながら電光掲示板へとついた俺たちは自分の前を探していく。

3人とも下の方にいることはないので上位の方から見て行ったのだが、俺の名前は探すまでもなかった…

 

「零夜くん1位!?すごい!!」

 

「零夜に負けるなんて…なんか悔しい」

 

雫の言葉はひどい言いようだが、ほのかに褒められたので気持ち的には±0だ。

ほのかの言う通り俺は1位だった。

実技と理論も1位なので当然と言えば当然だ。

そこで俺は総合成績を順に見ていく。

2位は深雪。

実技が2位なのは納得できるが、理論が3位というところが腑に落ちない。

…あっ!

もしかして理論2位って達也か?

だとしたらまぁ妥当だよなぁ。

3位はほのか。4位が雫。

まぁあれだけ勉強していればこの結果は妥当だろう。

とそこで2人に声をかけようとしたところでA組の生徒の声が耳に入った。

 

「おい!なんだよこれ!」

「おかしいだろこんなの!」

 

何だ?と疑問に思った俺はそいつらが集まっている方へと赴く。

するとそこにあったのは、

 

理論1位 司波達也

 

1位ってことは俺と同じ点数だったってことか。

流石達也、と思ったところで俺は彼らの言っていた言葉を理解した。

2科生が理論1位を取ったことが許せないのだろう。

よく見ると4位に吉田幹比古という2科生もいることだし。

……でもそれってお前たちの努力不足じゃないの?

まぁ言っても聞かないだろうから言わないけどさ、と思っていると雫が彼らに『自分の努力の足りなさを恥じるべき』と告げた。

雫のその言葉に文句を言っていたやつらは逃げるようにしてその場を後にした。

…やるな雫。

俺は心の中で雫にサムズアップする。

 

「これで九校戦に出れる可能性大だね!」

 

ほのかが場を和ますように話題を変える。

こういう時のほのかは本当に気が利くなぁと思いつつ俺も話に乗っていく。

 

「九校戦…か。選ばれたら強制参加なの?」

 

そんな俺の言葉にほのかは少し不安そうな顔をして、

 

「もちろん強制ではないけど……出たくないの?」

 

告げる。

きっと俺に出てほしいのだろう。

でもやっぱり…

 

「面倒くさいからな。競技の練習もそうだけど、10日間も富士で監禁されるって思うと…な」

 

面倒くさいか…

それは確かに告げた内容のこともあるが、俺が魔法を使うということにもある。

達也のようにプロテクトのかけられた魔法はないが、俺の魔法は常人が使えないような魔法が数多くある。

従ってあまり見せたいものではないのだ。

後の処理が面倒くさくなることを恐れてっていうのが一番の理由な気がする。

 

「監禁って……」

 

俺がそう告げると雫があからさまに顔をしかめてそう告げた。

監禁はいいすぎたかな…?

ほのかと雫の2人は出るんだろうしそのようなことを言うのは少々よくなかったかもしれない。

 

「まぁ2人は楽しんできてくれよ。俺も家でゆっくりと楽しむからさ」

 

俺はそう告げる。

しかしこの数時間後に態度が180度変わることを俺はまだ知らない。

 

 

 

 

***

 

 

 

それから1週間くらい経った後、部活連本部で開かれる九校戦準備会合へ俺は参加していた。

 

「零夜くん、参加する気になったんだね。一緒に頑張ろうね!」

 

「あ、あぁ…」

 

隣で嬉しそうに小声で告げるほのかに俺は苦笑いしつつそう返した。

くそっ…まさかこんなことになるなんて…

話はテスト結果を見た夜に遡る。

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

 

『こんばんは、零夜さん』

 

俺が自宅に着いたタイミングで母さんから電話が来る。

…なんか前回もこんな感じだったなぁと思いつつ俺は電話へと集中する。

 

「あぁ。それで今日はどんな面倒事を持ってきたんですか?母さん」

 

普段は使わない敬語でそう俺は告げた。

イライラしている証拠だ。

そんな俺にクスッと笑い母さんは話し始める。

 

『今日は面倒事ではないと思うわよ?あなたにとっても悪い話じゃないだろうし』

 

「どうだか…。で、何?」

 

『単刀直入に言うわね。あなたに九校戦に出てもらいたいのよ』

 

「……九校戦に俺が?」

 

『出るのよ』

 

「何でまた…」

 

いきなりぶっこまれて少し思考が停止していたが、ようやくここで動き始めた。

さっき出ないって言った途端にこれだもの…

そりゃあ思考も止まるって…

 

『あら?嫌なの?魔法科高校の生徒なら誰しもが一度は出てみたいって思っているはずなのだけれど』

 

嘘つけ。そんなこと思っていないくせに…

きっと他にも理由があるはずだ。

母さんがそれだけの理由で俺を九校戦に出させるはずがない。

 

「変に魔法を使って目立ちたくないからね」

 

目だったらそのぶん後で面倒事が降ってくる。

俺はそれを何としても食い止めたい、という一心からこれまであまり目立つところで自分の実力は出してこなかった。

と伝えるが…

 

『それなら大丈夫よ。今回の九校戦、全力を出してもらうから』

 

「っ!全力!?本気で言ってんの?」

 

『えぇ。本気よ』

 

そんな俺の考えはすぐさま消える。

何が大丈夫なんだよ!?

それより全力って…それは流石にまずいだろ……

 

「ついに狂ったか…。いや、もとから狂ってはいたけども」

 

本当にそう思う。いやそうとしか思えない。

流石に狂ってるとしか言えないよ、母さん。

 

『ひどい言いようね。でも今回は出てもらいます』

 

「何でまた……。もしかして零式って名乗ってた連中と関係あるのか?」

 

『……ないとは言わないわ。今回の九校戦はあなたにとって少し…いや相当に面倒なことになるのは違いないとだけ言っておくわ』

 

やっぱりそれが理由か。

何かしら彼らが九校戦に関わっていると理解していいだろう。

俺も気になっていたからそれなら願ったり叶ったりだ。

だとしても……

 

「始まる前から面倒なこと宣言か…」

 

『私はあなたを信じているわ。それに一条と戦う機会もあるかもしれないのだから少しは楽しめるんじゃないかしら?』

 

一条!?

確かに同学年だった。

でも俺が一条を倒すってことは、俺の力が十師族にばれる危険性が格段に跳ね上がる。

あのクリムゾンプリンスに勝つというのはそういうことを意味するのだ。

 

「そんなことして大丈夫なのか?俺は四葉性を隠してる身なんだぞ。もし俺と四葉との関係がばれたりしたら…」

 

俺は母さんにそう不安げに尋ねる。

しかし返ってくる答えは俺の期待していたものではなかった…。

 

『問題ないわ。あなたは一高で総合成績一位よ。あの深雪さんをもってして敵わない相手だと知ったらきっと誰も疑わないわ』

 

「その深雪より優秀だってことが問題になるんじゃ…」

 

俺は正論を告げるが、

 

『細かいことは気にしないの。とにかくそういうことでよろしくお願いするわよ』

 

母さんは気にしてくれず最後まで言い終わると、電話を切られた。

 

「………はぁ」

 

俺はそう一つ溜息をついてディスプレイを眺めた。

 

 

―――――――――

 

ということがあって仕方なく俺は九校戦に出ることになってしまった。

話を聞くに零式と名乗るやつらが現れることは間違いない様だ。

だとしたら出るのも悪くないかもしれない、とポジティブに考えていないとやっていけないよ……

 

その後達也のエンジニア加入で問題になったが、達也が実力を見せたことで達也のエンジニア加入が正式に決まった。

中には達也の実力をわかっていない連中がいたようだが(ほぼ全員)、中には分かる人もいたようで本当に良かった。

俺男の友達って少ないから、九校戦のとき達也がいないと息が苦しいんだよな…

そんなことを考えながら、俺はその後の九校戦に関わる説明を聞いていた。

 

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