虚になったけど質問ある?   作:明太子醬油

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原作と関わるのは難しいよ


邂逅

 イッセーサイド

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁈」

 俺の両太ももを光の槍が貫通する。

 思わず俺は絶叫をあげる。

 

 レイナーレの光の槍は悪魔にとっては非常に効果が高い。

 それ故に触れるだけでも悪魔には致命的な一撃になりかねない。

 それでも俺は光の槍に手を当てて太ももから引き抜こうする。

 痛みを我慢して、無理やり引っこ抜く。

 

 そして俺が槍を抜こうとする様を見て、レイナーレが俺を嘲笑する。

 

「アハハハハ!その槍に悪魔が触れるなんて!あなたのような下級悪魔では____」

 

「ぬがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉」

 

 俺は槍をゆっくりと引き抜く。

 引き抜くたびに激しい痛みが襲ってくる。

 もう痛みで意識がなくなりそうだ。

 

「こんなもの!黒峰の苦しみに比べれば!アーシアが苦しんだことに比べれば!!」

 

『Boost‼』

 左手の籠手が音声を発する。

 

「・・・大したものね。光の槍を抜くなんて、でも下級悪魔のあなたはここが限界。普通なら死んでもおかしくないのに、本当に頑丈ね。本当にあの人間みたいね」

 

 レイナーレの言ったことに俺は反応した。

 

「・・・あの時の人間?その人間てのは黒峰のことか?」

 

 レイナーレはフッと笑うと口を開いた。

 

「そう、あいつは黒峰って言うんだ。あの人間はね私がすぐに楽にしてあげようとしてあげたのに下手に躱すせいで中途半端に致命傷負って本当にバカみたいだったわ!」

 

 そう言うとレイナーレは天を仰ぎながら大笑いする。

 

 そして俺はその時初めて黒峰の最期を知った。

 まだ死体が見つかって無かったから、もしかしたらまだ生きてるかもしれないと心のどこかでそう思っていた。

 別に黒峰と特別親しかった訳ではない。

 友情があったわけでもない。

 それでもなんだろうか?

 この胸に灯る感情は。

 

「こういうとき、神に頼むのかな」

 

「?」

 

 疑問符を浮かべるレイナーレ。

 それもそうだろう。いきなり話が変わったのだから。

 

「神様はだめだアーシアを助けてくれなかった」

 

「何を言い出しているのかしらね。ついに壊れた?」

 

「じゃあ、魔王様だ。いまから目の前のクソ堕天使を殴るんで邪魔が入らないようにして下さい。_____一発だけでいいんで。・・・殴らせて下さい」

 

 もう本当は身体は動かないのかもしれない。それでも俺は無理やりにでも動かす。

 そして思い出す。

 黒峰のことを。そしてアーシアのことを。

 あの時俺が殺された場面に遭遇してしまった黒峰。

 悪魔でも微笑みながら自分の神器で治療したアーシアを。

 

「ッ!嘘よ!立ち上がれるハズがない!下級悪魔ごときがあのダメージで!」

 

「なあ、俺の神器さん。目の前のこいつを殴り飛ばすだけの力があるんだろ?トドメとしゃれこもうぜ」

 

『Explosion‼』

 左腕の籠手から声が響いた。

 

 

「あ、ありえない。嘘よ!そんなことが。下賤な下級悪魔ごときに私が!」

 

 レイナーレが光の槍を創り出し勢いよく俺に投げ出してきた。

 今までの俺なら当たっただけで痛みで苦しみ、攻撃なんてろくに出来なくなるだろう。

 それだけ力の差が俺とレイナーレの間にはあった。

 それでもなぜか俺はレイナーレの光の槍が怖くなかった。

 そして俺はその槍を横薙ぎに拳で薙ぎ払った。

 すると光の槍は跡形も無く砕け散った。

 

「い、いや」

 

 レイナーレはさっきまでの威勢をなくすと俺に後ろをむける。

 

 ・・・逃げるつもりだ

 

 レイナーレが飛び立とうとした瞬間に反射的に俺は駆け出した。そしてレイナーレの手を引く。

 

「逃がすか、バカ」

 

「私は、私は至高の!」

 

 俺はおもいっきり腕を握りしめる。

 

「吹っ飛べ!クソ天使‼」

 

「おのれぇぇぇ!下級悪魔がぁぁぁぁぁぁ!」

 

「うおりゃぁぁぁぁぁぁ」

 

 拳をおもいっきり振りかぶった。

 

 鈍い音がレイナーレから響く。

 そして俺の一撃で後ろに吹き飛んだ。

 

 壁が破壊される音が響く。

 直後、教会の壁が壊れた音がした。

 

「・・・ハハハ」

 

 思わず乾いた笑みが零れる。

 

「……アーシア」

 

 目の前の動かなくなった彼女を見る。

 金色の髪の少女。

 その体はとても冷たい。

 

 そして俺はその場に倒れこんだ。

 今まで無理した疲れが今になってようやく来たようだ。

 俺の肩を抱いてるのは見れば木場だった。

 

「お疲れ。堕天使を倒しちゃうなんてね」

 

「よくやったわ、イッセー」

 

 部長が紅い髪を揺らしながらこちらへやって来た。

 

「ハハハ、なんとか勝ちました部長」

 

「……部長。もって来ました」

 

 小猫ちゃんがレイナーレを引きずってきた。

 レイナーレはかろうじて意識があったのかすぐに俺たちを見上げる。

 

「ご機嫌よう。レイナーレ」

 

「…グレモリー一族の娘か…」

 

「はじめまして私はリアス・グレモリーよ短い間だけど、お見知り置きを」

 

 部長は和かにあいさつするが、レイナーレは部長を睨んだままだ。

 

「してやったりと思ってるんでしょうが私が危なくなった時に協力者たちが私をーー」

 

「残念ね、貴方のお友達さん達なら来ないわ」

 

「う、嘘よ!」

 

「この羽根が分かるかしら?」

 

 部長の手から3枚の黒い羽根がヒラヒラと舞い落ちる。

 いつの間に倒していたんだろうか?

 あの時の用事ってこのことだったのか・・・

 部長が俺の左手の籠手に視線を向ける。

 

「…赤い龍。レイナーレ。この子の神器はただの神器ではないわ」

 

 部長の言葉にレイナーレが怪訝そうな顔になる。

 それもそうだろう。

 だって俺も意味わからないし。

 

「彼の神器はただの神器ではないわ。神滅具の一つ『赤龍帝の籠手』。あなたでも名前くらいは分かるでしょう」

 

「…神滅具の一つがこんな子供に」

 

「そう、数多くある神器の中でも神仏にさえも対抗できると言われる13個のうちの一つよ」

 

 なにそれ!?

 めっちゃすごいんじゃないのかそれ!

 

「さて、そろそろ死んでもらうわ」

 

「ッ!イッセーくん私を助けて⁈」

 

 突然レイナーレは姿を戻して俺に言った。

 

「私、あなたのこと愛してーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カツン、カツン、カツン。

 

 教会の入り口の方から足音が響く。

 カツン、カツン、カツン。

 

 その足音は確実にこちらに向かってきているものだった。

 

「_____こいつはひでぇな」

 

 その男はここに入ったと同時に口を開いた。

 それはそうだ。

 今さっきまでここで戦闘があったのだ。

 無事なはずがない。

 

 その男は辺りを眺めながらこちらに近づいてくる。

 

 そして俺の視界に入るところまで近づいた。

 

「________な!?」

 

 その男は黒峰だった。

 しかし姿は最後に見た時よりも変わり果てていた。

 黒峰の身体はガリガリとまではいかないが痩せ、左目には黒い眼帯をしている。そしてなぜか目が鋭くなったような気がする。

 

「・・・黒峰なのか?」

 

 思わず尋ねる。

 そして黒峰はようやく俺たちを視界に収めた。

 

 そしてすぐに俺たちに捕まっているレイナーレに視線を向ける。

 するとゾッとするような壮絶な笑みを浮かべた。

 

 そのまま自然な歩みでこちらに近づいてくる黒峰。

 まるで俺たちの存在がないかのように自然にゆっくりと着実に近づいてくる。

 

 カツン、カツン、カツン。

 

「・・・」

 

 レイナーレも得体の知れない雰囲気に包まれた黒峰を見てごくんと唾を飲み込む。

 

 そしてレイナーレの目の前で立ち止まった。

 この時オカルト部のみんなは何もせずに見守っていた。

 いや、何も出来なかった。

 この異様な雰囲気のせいでまるで俺たちの時が止まってしまったかのように体が動かなかった。

 

「_____黒峰君」

 

 レイナーレが何を思ったのかそう呟いた。

 彼女の目には、希望の光が宿っていた。

 もしかしたら黒峰が彼女を助けてくれるかもしれないと。

 

「あれをやったのは私のせいじゃないの!私は騙されて・・・」

 

「うるせぇよ」

 

 黒峰は短くそう言った。

 彼女を見下ろして続ける。

 

「騙されたからなんだ?俺を殺したことに違いはねぇんだろ?

 __________ならダメだ」

 

 黒峰がそう言った。

 拒絶。絶対に赦す気は無いとそう言い切ったのだ。

 

 それでもレイナーレはまだ諦めない。

 

 

「待って!私は至高の・・・」

 

「口を開くな、屑」

 

 黒峰はレイナーレの頭をおもいっきり踏みつけた。

 レイナーレは「ガッ」と呻き声を上げた。

 黒峰は後ろに背負っていた8の字のデカイ獲物を手に取る。

 そして、黒峰はレイナーレの頭を蹴飛ばした。

 ゴン、と鈍い音が響く。

 蹴飛ばされたレイナーレは少し後ろで地に這いつくばった。

 

「死ね」

 

 黒峰は一切の躊躇もなくレイナーレの背中に獲物を振り下ろした。

 

 ゴン、とさっきよりも鈍い音が響く。

 

「ガッ」

 

 レイナーレの口から血が溢れる。

 それでもまだハァ、ハァと荒い呼吸音が聴こえる。どうやらまだ死んでいないようだった。

 

 そして黒峰はまた獲物を振り下ろす。

 

 嗤いながら。

 

 そう、何度も何度も何度も。

 

 振り下ろすたびにレイナーレの身体はビクンと跳ねる。

 初めは苦悶の声を走らせていたが途中から聞こえなくなっていた。

 レイナーレを見るともう完全に意識を失っていた。

 それでも黒峰は止まらない。

 

 何度も何度も何度も何度も何度も何度も振り下ろす。

 

 その光景はあまりに残虐で非現実的だった。

 

「・・・なんだよこれ」

 

 思わず俺の口からそう言葉が出てくる。

 そして何かの縛りから抜け出したように体が動くようになった。

 

 そして周りを見渡す。

 みんな放心状態で黒峰のやっていることを見ている。

 部長も例に違わず口を開いたまま呆然としていた。

 

「部長!!」

 

「ハッ!」

 

 部長も思い出したように意識をこちらに戻す。

 その間ずっと黒峰はレイナーレに振り下ろしていた。その度にレイナーレの体は跳ねる。

 しかし、なぜか振り下ろすのをやめた。

 何を思ったのかレイナーレの頬を何度も叩きだした。

 

「・・・ハッ!」

 

 レイナーレは目を覚ますと同時に自分の身体の痛さで悶え出す。

 そして目の前にいる黒峰を認識した瞬間その顔は絶望に染まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうやめて欲しいか?」

 

「え?」

 

 黒峰は唐突に質問をする。

 そしてレイナーレは素っ頓狂な声を上げる。

 レイナーレの顔にはなんで?と書いてあるようだった。

 

 

「お前ももう苦しかったろ?」

 

 黒峰の言葉にレイナーレの目は希望に変わる。

 どうやら私を許してくれたのだ、とレイナーレは思っているに違いない。

 しかし俺の背中には冷たい汗が流れるのを感じた。

 

 黒峰は獲物を再度強く握り直す。

 そしてそれを上に掲げるように持ち上げた。

 

「楽にしてやるよ。

 ___________テメェの死でな!」

 

 レイナーレの顔が再び絶望に染まった。

 その時を見計らったかのように獲物をおもいっきり振り下ろす。

 

「ッ!やめなさい!!」

 

 部長が振り下ろす直前に叫ぶ。

 それでも黒峰は止まらなかった。

 

 ドゴッ、と今までで一番鈍い音が響く。

 レイナーレは振り下ろした瞬間に大きく身体を仰け反らすとその後動かなくなった。

 

 俺はレイナーレの顔を見た。

 レイナーレの顔は絶望に染まり、目からは涙のように血をダラダラと流し、口からも血が洪水のように溢れている。

 身体から血が床を侵食するかのようにゆっくりと広がっていく。

 

 まるで夢のようだった。

 でも分かるこれは夢じゃない。

 この血の匂いも感触も全て本物なんだ・・・

 

 黒峰は獲物を担ぎ直すとあたかも何もなかったかのように背を向けて歩き出した。

 

「・・・」

 

 俺は黒峰の背に手を伸ばしていた。そして黒峰は振り返った。

 でも俺は何かを言おうとして何を言ったらいいのか分からなくて口をパクパクしていた。

 黒峰は鬱陶しそうに俺を見る。

 

「なんだよてめえ、生きてたのか」

 

 まるでさっきまで俺たちに本当に気がついてなかったかのような一言。

 お前らになんか眼中に無いと言われているような気がした。

 

「何の用だよ。なんもねぇなら帰るぞ」

 

 ダメだ。このままじゃ黒峰が帰ってしまう!

 

 

「・・・なんでだよ」

 

「あ?」

 

「なんでこんなことするんだよ!!」

 

「は?」

 

 黒峰は何言ってんだとでも言いたげな目で俺を見た。

 

「てめえもどうせ殺そうしてたんだろ。何言ってんだよ」

 

「ッ!」

 

 そう、俺たちはレイナーレを遅かれ早かれ殺す定めだったのかもしれない。

 それでもこれは酷すぎる。

 

「・・・それでもここまでする必要あったのかよ」

 

「そんな過程なんてどうでもいいんだよ。俺が言ってんのは結果だ。結果が同じならやってることは同じなんだよ。お前らがあいつを殺そうと俺が殺そうと『殺した』ことに違いはねぇ。分かったか?」

 

 そう言って背を向ける。

 俺は黒峰を引き止めることができなかった。

 いや、動くことさえできなかった。

 

「待ちなさい!!」

 

 そんな俺に変わって部長が引き止めた。

 黒峰はまた面倒臭そうに振り向いた。

 

「貴方は黒峰薫ね?確かに貴方は死んだはずよ。どうして生きているのかしら?そしてなんで今でも姿を現さなかったのかしら?」

 

「知らねえよ。俺はただ眠ってたんだよ」

 

「貴方、私を馬鹿にしてるの?」

 

 部長は威圧を放ちながら黒峰に問う。

 しかし黒峰はそれでも自然に答える。

 

「本当に知らねぇんだよ。数日寝てたんだから」

 

「・・・そう」

 

 黒峰はどうやら嘘を言っていないようだった。

 

「貴方本当に何者?人間?そしてその獲物は何?」

 

「俺は・・・人間だよ。あとこれはただの武器だ」

 

 黒峰は人間と言う前に躊躇いのようなものを見せた。

 部長もそれに気付いたようだがあえて追及しなかった。

 

「明日学校に来なさい。そこで話しましょう」

 

「は?」

 

「だから明日学校に来なさい」

 

「・・・俺は死亡判定されてるんじゃねぇのかよ」

 

「あら、私の前にいるのは亡霊なのかしら?」

 

「・・・分かったよ」

 

 そう言うと黒峰は去って行ってしまった。

 

 取り残されたのはレイナーレの死体とオカルト研究部と冷たくなってしまったアーシアだけだった。

 

 

 

 

 

 

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