虚になったけど質問ある?   作:明太子醬油

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虚への証

「・・・ノイトラなのか?」

 

 ノイトラは俺の問いに答えない。

 しかし、その代わりに地面に這いつくばる俺を蹴飛ばした。

 

「グハッ!」

 

 俺はそこでえづく。

 

「ハァ、ハァ、て、何すんだテメェッ!」

 

「何しけた面してんだ!アァ!?」

 

 ノイトラはそう言いながら俺の腹を何度も蹴り飛ばす。

 ノイトラが俺を蹴飛ばすたび、肺の中の空気が全て吐き出される。

 ノイトラは蹴りながら俺に罵声を浴びせる。

 

「なんだその戦い方は!テメェは雑魚だ。テメェは弱すぎる。何が『人間ですけど何か?』だ!!テメェは人間じゃねぇって言っただろうが!」

 

 そう言うとノイトラはやっと蹴るのをやめた。

 

「何が『勝ちてぇ』だ。雑魚に負けてる奴に勝ちも何もねぇんだよ!!」

 

 そう言う俺は吹き飛んだ。

 いや、思いっきりノイトラに蹴られた。

 俺は紙屑のように転がる。

 

「何が『奪う側になる』だ!結局負けてんじゃねぇかよ!」

 

 クソ、言いたいように言いやがって・・・!

 

「言いたいように言わせておけば・・・!」

 

「あんなカスみてぇな攻撃で立ち上がれねぇ奴が何言ってんだ。言いたいことがあるなら立ってから言いやがれ」

 

「・・・グッ」

 

 俺は立ち上がろうとする。

 体中が痛い。

 立ち上がらなくてもいいと心の隅で俺が叫ぶ。

 でも、ここで立ち上がらなければ後悔するような気がした。

 それは直感でしかなかったが、謎の確信めいたものを俺は感じ取っていた。

 

 しかし、立ち上がろうとすると更にノイトラに蹴られた痛みと爆発の痛みで体が悲鳴を上げる。

 それでも俺は立ち上がろうとする。

 まるで何トンもの重りが体に付いているように感じる。

 おぼつかない足元。

 揺れる視界。

 それでも俺は立ち上がる。

 

「グアアァァァァァァ!!」

 

 俺は震える足で立ち上がる。

 今の俺は生まれたての鹿みたいになっているだろう。

 

「ハァ、ハァ、おい、立ち上がってやったぞ」

 

 俺はできるだけ痛くないですよアピールをしながらニヤっと笑う。

 

 するとノイトラは口を三日月のようにして嗤う。

 

 

「やりゃ出来るじゃねぇか」

 

 

 ノイトラになぜか褒められた。

 

「あんままグッタリしてたらテメェを殺すつもりだったぜ」

 

 さらりととんでもないことをカミングアウトするノイトラ。

 

 ・・・俺の直感は正しかったようだ。

 

 もし、あのまま寝ていたらと考える。

 すると、嫌な汗が俺の背筋を伝った。

 

「なんでノイトラがここにいるんだ?」

 

「テメェが弱えからだよ」

 

「・・・さいですか」

 

 正直、なんで俺が弱いとノイトラが来るのか全く分からない。

 だからと言って、ノイトラが何の用も無しにここに来るとは考えにくい。

 そんなことを考えているとノイトラが口を開いた。

 

「強くなりてぇか?」

 

 

 

 

「え?」

 

 別にノイトラの言ったことが聞こえなかった訳ではなかった。

 しかし、あまりに唐突だったため、俺はつい聞き返してしまった。

 

 

 

 

「もう一回しか言わねぇぞ。______強くなりたいか?」

 

 

 ノイトラは笑いながら俺を見る。

 決して嘘を付いているようにはみえない。

 

 

「_________強くなれるのか?」

 

「それはテメェ次第だ。当たり前だが、世の中リスク無しにいきなり強くなれる、なんてことは一切ねぇ」

 

「・・・リスク?」

 

「アァ、それなりのリスクを負ってもらうぞ」

 

 それなりのリスクってなんだよ?

 それを言ってくれよ。

 

「・・・リスクってのはなんだ?」

 

「聞いていいのか?」

 

 ニヤリとノイトラが嗤う。

 俺はノイトラを見て思わず背筋がゾッとする。

 

「・・・どういうことだ?」

 

「聞いたら引き返せなくなるって意味だ」

 

 なんだ、そんなことか。

 俺は決めたんだ。

 あの日から。

 俺が死んだあの日から。

 死んで初めて気づいたこと。

 それはあまりにも単純、だけど俺はすることが出来なかった簡単なこと。

 

 本当は俺はあの日に死んだ。

 でも今生きているのは、正直運が良かったからだろう。

 

 

 あの日俺が決めたこと。

 それは_____

 

「俺はこんなところで立ち止まる訳には行かねぇ。それがどんな犠牲を払ってもだ。俺はあの日から絶対に後悔しなねぇって決めたんだ」

 

 

 __________後悔だけは絶対にしないこと。

 

 

「イイぜ、合格だ。そこまで言ったんだ。泣き言言うんじゃねぇぞ」

 

 

 そう言うとノイトラは俺に背を向ける。

 

 その瞬間、俺は落ちた。

 

「_________な!?」

 

 まるで地面が崩壊したように感じた。

 でも違う。

 地面にポッカリと穴が空いたのだ。

 

 俺は空中で下を見る。

 

 そこに広がるのは、無限の漆黒。

 どこまで落ちるか分からない程の深さ。

 まるで紙に黒い墨汁をドップリとブチまけたような不自然なまでの黒。

 

 しかし、俺は落ちながら、不思議と抵抗感はなかった。

 代わりに俺の感情は一つだった。

 

 

 懐かしい。

 

 

 それは俺があの日死んだ時に落ちた穴と同じように感じた。

 

 

 #

 

 

 やはり、俺が落ちた場所はあの白い砂漠だった。

 あの時と何一つ変わっていない。

 延々と続く白い砂漠。

 そのせいで遠近感が狂いそうになる。

 黒い、夜のような空。

 空には砂漠を照らす一つの三日月。

 

 後ろを振り向くと、そこにはドッシリと構えている白い巨大な城。

 あの時、チリになって消えてしまったが、ちゃんと最初の時に戻ったようだ。

 

 そして、その城の前で椅子に座っているノイトラ。

 

 まるであの日を再現しているように感じた。

 

「気づいたか?」

 

 ノイトラは俺に聞く。

 

 一体これの何に気づいたらいいのだろうか?

 俺は内心パニックになっているとノイトラがまた口を開いた。

 

「初めてテメェがここに来た日みてぇだろ?」

 

「え?」

 

 ノイトラに「あの日にみてぇだろ?」と言われて俺は気づく。

 この光景はあの日を再現したものだということを。

 

「・・・どういうことだ」

 

 まさか今からあの日の再現でもするつもりなんだろうか?

 しかし、なんでまたあの日を再現する必要がある?

 

 さっぱり分からん。

 

「大体テメェが思ってる通りだ。今からやるのはあの日の再現だ」

 

 本当にあの日の再現なのか・・・

 でも一体何をするんだ?

 

 俺は自分の胸を見る。

 しかし、そこには魂魄は付いていなかった。

 

 魂魄を再度引きちぎる訳ではない。

 となれば・・・

 

「・・・また、体の主導権を握って戦うのか?」

 

 これが外れたら、俺は何をするかさっぱり分からなくなる。

 ここでやったことは二つ。

 魂魄を引きちぎること。

 そして、主導権を握ってもう一人の俺と戦ったこと。

 

 しかし、あの時もう一人の俺はチリになって消えたはず。

 ならば一体何と戦うのだろうか?

 

 ・・・まさかノイトラとか言わないよな?

 

「どこ見てんだよ?テメェの相手はこいつだぞ」

 

 

 

 ノイトラの隣にはまるでずっといたかのように男が立っていた。

 

 俺はそいつを見て驚愕する。

 

 そいつは俺だった。

 あの時の俺と何一つ変わらない。

 

 服装も、靴も、体も、色彩も。

 

 しかし、あの時と一つ違うところがあった。

 それは最初から斬魄刀を持っているということだけだった。

 

 俺は自分の体を見る。

 そして本日二回目の驚愕をすることになる。

 

「_____なんだよこれ・・・」

 

 俺の髪、肌、眼帯。全ての色が全て白黒反転していた。

 斬魄刀でさえも白黒逆転している。

 服装はノイトラと同じ死装束になっている。

 

 

「まだ分かんねぇのか?」

 

 

 いや、分からない訳では無い。

 でもこれじゃまるで。

 

「そうだ。テメェが虚で、あいつはお前の中の人間だ」

 

「_________!?」

 

 あの日の立場が全て"ひっくり返って"いた。

 俺が虚で、あいつが人間。

 

 正直負ける気はしない。

 なぜならあいつは人間だから。

 虚と人間では大きく力の差がある。

 それなら負けるはずが無い。

 

 そう心で分かってももしかしたらを想像してしまう。

 

 なぜなら俺はあの時、"人間"だったのに関わらず、虚の俺を打ち負かしたのだから。

 

「今からテメェはこいつと身体の主導権を巡って闘ってもらう。もしテメェが負けたら_______また死ぬぜ?」

 

 あの時と一文字も違わずにノイトラが言う。

 

 あの時なら、白黒逆転した俺が世紀末のように叫びながら向かってきたが今回は違う。

 

 ____俺がその白黒逆転した自分なのだから。

 

 

 

 ___しかし、

 

「ヒャッハー!!」

 

 人間の俺は世紀末のように叫びながら突っ込んできた。

 俺は斬魄刀で相手の斬魄刀を弾こうとする。

 しかし_______

 

「_________な!?」

 

 虚である俺が力で負け、吹き飛ばされた。

 俺はすぐに体制を整える。

 

 しかし、なんで俺は力負けした?

 あり得るのか?

 虚が人間に負けることなど。

 

「やっぱりテメェは弱えぇ!あれからなんにも成長してねぇ!!」

 

 あれからとはやっぱり俺が初めて来た日だろうか?

 でもあいつは消えたはずだ。

 

「なんでお前が生きてるんだよ。あの時チリになっただろ!」

 

「あぁ、確かに俺は一回死んだね。それでも今俺は生きてるんだぜ」

 

 そう言うと奴は空を仰ぎながら、声に出して笑う。

 

「俺は生き帰ってからずっとテメェを見てた。俺がテメェを見て思った感想を言ってやるよ。

 _______テメェは雑魚過ぎる!!」

 

 そう言うと人間の俺は、脱兎の如く俺に向かってくる。

 

(ック!速い!!)

 

 奴は俺よりも、そして木場よりも断然速かった。

 そして奴の凶刃が俺に迫って来る直前に斬撃がくる場所を斬魄刀でガードする。

 そして俺はまた吹き飛ばされる。

 

 そして、俺が体制を整える前に、奴は俺の前に迫る。

 そして、当たる直前に斬魄刀を盾にして防ぐ。

 今度は足を踏ん張り、吹き飛ばされないようにする。

 しかし、奴は左腕の拳を俺の顔面に叩きこんだ。

 

「ブッ!!」

 

 俺は豚のような声を上げながら吹き飛ぶ。

 それでも奴は、俺に休憩の暇さえ与えない。

 

「ハハハ!!弱えぇな!おい!?どうしたよ!?こんなもんかよ!!!」

 

 奴は笑いながら俺に追撃をする。

 しかし、奴の一撃は時間が経つほど、鋭くなってきていた。

 そして奴の拳が俺のノーガードの腹にモロ決まった。

 

「グハッ」

 

 俺は膝を屈しながらやつを睨む。

 しかし、追撃は来なかった。

 奴は俺を見下ろしながら言う。

 

「せっかくだから教えてやるよ!なんでテメェが人間の俺に押されてるのかをよ!!」

 

 奴はククク、と笑いながら俺を見る。

 強者の余裕か、全く俺に警戒すらしていなかった。

 

「お前はなんでだと思うよ?」

 

「・・・」

 

 全く分からない。

 身体能力は虚の俺の方が上のはず。

 なのになんで_______

 

 

「_______テメェがまだ人間だからだよ」

 

「は?」

 

 俺は人間?

 そんなバカな。

 人間で俺みたいに運動神経いい奴を見たことないぞ・・・

 

「言い方が悪かったな。テメェの心がまだ人間ってことだよ」

 

「俺の心?」

 

「そうだ。少し質問を変えるが、俺はいつ復活したと思う?」

 

 そう、こいつは以前、俺と戦って、そしてチリになったはずである。

 ではいつ蘇ったのか?

 

 俺は思い当たる節を探す。

 しかし全く答えは出てこなかった。

 

「正解はオメェが、「俺は人間だ」って言った瞬間だ」

 

 俺は思い出す。

 虚になって初めて起きた時、俺は黒歌に「人間だ」と言った。

 しかも、それ以外にも自分は人間だと言い続けてきた。

 

 なら、俺が黒歌に言った瞬間からこいつは蘇ったということだろうか?

 

「今のお前は人間だ。だから限界が人間止まりなんだよ」

 

 おそらく、ここで言う奴の言った「人間」とは木場のことを指しているのだろう。

 なぜなら、俺は木場が魔剣創造を使っても勝率が五分五分だったからである。

 普通、いくら斬魄刀を使っても、相手がいきなり魔剣を使ってもきたら、負けるのが道理だろう。

 しかし、俺は木場に標準を合わせて、魔剣を使っても勝率を半々にすることが出来たのだろう。

 

 それは分かった。

 しかしどうする?

「俺は虚だ」とここで大きく叫んだとしても、心の中で思っても普通無駄だろう。

 

「・・・なら俺はどうしたらいいんだ?」

 

 気づけば俺は奴に質問していた。

 

「ハハハッ!バカじゃねぇのか、お前!敵に教えてもらおうなんざトンだバカだな。ついでに教えてやるよ。

 

 

 ________知るかよ!バカが!!」

 

 奴はまた俺に突っ込んできた。

 心なしか、さっきよりも素早くなっている。

 

「クソッ!!」

 

 俺は斬魄刀を構える。

 

「ハハハッ!」

 

 こうして一方的な攻撃が始まった。

 

 

 

 #

 

 

 

 

 俺は防戦一方の戦いを強いられていた。

 

「クソッ!」

 

 悪態をつきながら俺は頭の片隅で考える。

 虚とは一体なんなのかを。

 

 ノイトラは言った。

 悪霊だと。

 そして地縛霊だと。

 化け物だと。

 人間を喰らうと。

 

 しかし、どれも全く違う気がする。

 俺はきっと何かを見落としている。

 

 それさえ分かれば・・・!!

 

「何違うこと考えてんだ・・・よ!」

 

「クッ!」

 

 人間の俺は止まらない。

 攻撃ラッシュ。

 一瞬の気の緩みさえ許してくれない。

 

 それでも、頭の中で、あと一つ。あと一つだけピースが埋まらないようなモヤモヤ感が俺を焦らせる。

 早く見つけなければ、と。

 

 ノイトラは俺に言った。

 テメェは人間じゃねぇ、虚だ、と。

 お前が虚側だ、と。

 

 だが、これも違う。

 もっと基本的な何か!

 虚とは何なのか!

 その根底は何か!!

 

 

 俺は人間の俺を見る。

 絶対に何か違うところがあるはずだ!

 あいつをよく見ろ。

 冷静に観察しろ。

 

 奴は斬魄刀をメチャクチャに振り回す。

 まるで嵐のように。

 

 でもそこじゃない。

 注目すべきは体!

 

 俺と奴では根本的に違う場所が!!

 

「_______あ」

 

 俺は人間の俺に吹き飛ばされた。

 いつもなら悪態をつくだろう。

 しかし_______

 

「______ハハハ。見つけた。やっと見つけたよ」

 

 思わず笑ってしまう。

 しかし俺の声は枯れていた。

 

 なんで俺は気づかなかったんだろうか?

 本当にあんなにも"分かりやすい場所"にあったのに。

 

「ハハハ。灯台下暗しってとこか」

 

「何言ってんだ、テメェ?ついに気が狂ったか?」

 

 人間の奴には有って、虚の俺には無いもの。

 そう、逆だった。

 ずっと俺は、虚の俺に有って、人間の俺には無いものだと思っていた。

 ノイトラもちゃんと言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 虚になった証を。

 

 そして、俺には無くて、あいつに有るもの。

 それは_______

 

「______魂魄だ」

 

 俺は左眼があった場所を撫でる。

 この空洞は虚になった証。

 そして魂魄から解放された証でもある。

 

 確かに人間の奴には魂魄が見えない。

 だが、それが当たり前だ。

 奴は人間で、ちゃんと生きているんだから。

 

 

 

 そして、実感する。

 

 

 _______俺は人間じゃない。

 その瞬間、俺の心がポッカリと空いたような気がした。

 だからと言って、本当に体に穴が空いてる訳では無かったが・・・

 

 ずっと不思議だった。

 俺は死んだのに心臓が確かに動いていることを。

 それはなぜか?

 

 俺が完全に虚になることを拒んだから。

 だから中途半端な実力がついた。

 俺は完全に虚にも成りきれず、人間にも成りきれずにいた。

 

 俺は人間の俺を見る。

 おそらく、こいつがいなくなれば、俺の心臓は止まる。

 なぜならこいつは人間の部分の俺だから。

 こいつを斬れば、俺は確実に人間では無くなる。

 それでも・・・俺は______

 

「なんだぁ、その目はよ?」

 

「いや、ただお前に言いたいことがある」

 

「ケケケッ!最後の遺言か?ならちゃんと聞いてやるよ」

 

「______今までありがとう。俺は_______

 

 

 

 

 

 

 

 ______________虚だ」

 

 

「な!?」

 

 俺の言ったことがあまりにも以外だったのか、奴は目を剥く。

 しかし、奴は俺に突っ込んでくる。

 

「そんなこと言っても無駄だぜ!!!」

 

 俺は奴の斬魄刀を振り下ろす攻撃をギリギリ避ける。

 そして_______

 

「______じゃあな」

 

 俺は斬魄刀を振り下ろした。

 

 

 #

 

 

「また俺は負けたのか・・・」

 

「あぁ」

 

「・・・お前に会うのは今日で最後だろうな」

 

「あぁ」

 

「俺、なんだかんだ言ってお前の中楽しかったぜ。少なくとも俺は退屈しなかった」

 

「あぁ」

 

 奴はどんどんチリになって行く。

 それを止めることは出来ない。

 

「最後に、勝てよ。負けるな。今からもこれからも」

 

「あぁ、約束する」

 

「じゃぁな」

 

「ありがとう。そして、さようなら」

 

 奴はそして消えた。

 俺の中の空洞が広がっていくのを感じる。

 

 ・・・本当に心が抜け落ちた見たいだ。

 

 

 

 

「言っとくが、テメェはまだ弱い。俺たちの世界ならお前は一番弱い最下級大虚(ギリアン)の雑魚破面にも勝てはしねぇ」

 

 ・・・ノイトラの世界強過ぎない?

 

「だからって言い訳は無しだ。世界はそんな優しくねぇ。戦って負けたらそいつは生き延びたとしても、死んだも同然だ」

 

 俺はどんどん光に包まれて行く。

 おそらく、あの土煙からスタートなのだろう。

 

「幸い、テメェはまだ負けてねぇ。敗北は許さねぇ。勝てよ。そして奪え。

 _______そしてその心を埋めるまで奪い続けろ。いいな。カオル」

 

 そして俺は精神世界から現実に帰ってきた。

 

 #

 同時刻。

 グレイフィアサイド

 

「興味深いね。彼」

 

 グレイフィアの隣に腰掛けている人物、紅髪の魔王こと、サーぜクス・ルシファーがそう呟いた。

 

 グレイフィアは考える。

 自分の主にして、夫である彼が「興味深い」という人物を。

 

 彼、という言葉だけで自然と絞られてくる。

 ライザー眷属は全員が女子であるため、確実にない。

 となるとリアスお嬢様の眷属となる。

 リアスお嬢様の眷属の男子は二人。そして今回は例外が一人。

 

 まずは木場裕斗。

 リアスお嬢様の『騎士』。

 確かに神器も優秀だが、それでもインパクトが足りない。

 

 次に兵藤一誠。

 彼はまだ潜在能力が不明で、しかも神器はあの神滅具を所有している。

 

 最後に唯一人間の黒峰薫。

 神器はないが、人間から掛け離れた胆力を持っている。

 特徴的な獲物。

 そして黒い眼帯。

 未知数なのはダントツで彼だろう。

 

 初めは黒峰かとグレイフィアは思ったがすぐさま首を振る。

 

(確かに常識外れな実力。しかし、先ほどあんなにアッサリと負けた黒峰を果たして興味深いと言えるか?)

 

 答えはNO。

 ならば_______

 

「______兵藤一誠ですか?」

 

「残念。ハズレ」

 

「それでは黒峰薫ですか?」

 

「そうだよ」

 

「なぜ黒峰薫なんですか?あんな呆気なく負けたのに・・・」

 

「彼はまだ終わってないよ。きっと彼はライザーの女王に勝つよ。なんなら賭けてもいい」

 

 そう言われてグレイフィアは考える。

 とてもあの状況から勝てるとは思えない。

 

「いいですよ。私はライザー眷属の女王に賭けます」

 

 ザーゼクス様は笑いながら黒峰薫に賭けた。

 

「何を賭けます?」

 

「なんでもいいよ」

 

 そう言ってザーゼクス様は黒峰薫のモニターを眺める。

 

 その横顔は、子供のような好奇心。いや所有欲のようなものを灯していた。

 

 ザーゼクス様は小さく呟く。

 

「______さぁ、君の力を見させてもらおうか?」

 

 その時だった。

 土煙の中、人影がユラユラと写したのは。

 




案外短くする予定だったのにこんなに長くなったよ
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