ソードアート・オンライン~運命を穿つ者~   作:エンジ

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第三話 いきなりの危機

 

 

 

 《はじまりの街》の東門をでてからすでに一時間以上が経過した。

 茅場のチュートリアル終了後、すぐさま行動を開始した俺は、道中のモンスターたちを片っ端から倒しながら走り続け、ようやく次の村へとたどり着いた。

 

 あれだけのモンスターを倒したというのに、レベルは相変わらず1だ。だが、ここまで来るのにHPが二割ほどしか減っていないのは、我ながらにラッキーだっただろう。これも、現実世界での身体能力と、《索敵(サーチング)》というスキルのおかげだ。

 《索敵》とは、数多あるプレイヤースキルの一つで、これを入れると通常よりも広範囲に『敵』および味方を視認できるため、俺のようなソロ――パーティを組んでいないプレイヤーにとっては、ありがたいスキルだ。

 レベル1のプレイヤーに与えられる《スキルスロット》の数は2つであり、一つは今日の午後一時に武器を選んでから、《片手用直剣(ワンハンドソード)》を入れ、もう一つは、おそらく必要になるだろうと予想して《索敵》を入れた。感でいれたスキルがこうも役に立つとは、自分でもびっくりだ。

 

 

 

 新たな村の入り口で、所々小さく欠けている《スモールソード》をゆっくり納刀すると、ふぅ、と一呼吸する。

 小さな門のようなものの横には、《ミストリア》と書かれた看板があり、見たところ小さな村ではなさそうだ。

 迷いなく入り口に足を踏み入れる。

 途端、明るいサウンドと共に《INNER AREA》という文字が視界に表示された。これは、あらゆるダメージがキャンセルされる《安全圏》と呼ばれるエリアに入ったことを知らせる表示だ。もちろん《はじまりの街》に入れば、同様の文字が視界に表示される。しかし、道中で見つけた小さな集落に入っても表示されなかったことから、おそらくそこそこ大きな村や街でなければ、《安全圏》ではないのだろう。

 

 

 

 俺は門を潜るや否や、すぐさま剣が描かれた看板の店に立ち寄った。ここまで来る間の分と、茅場のチュートリアル前の分とで、結構な素材アイテムが貯まっている。現状、それらは必要がないのですべて売却すると、新たな片手用直剣《ブロンズソード》を購入した。

 この武器は、《スモールソード》よりも耐久度が低いという欠点があるが、威力が高いため、素早くモンスターを倒したい俺にとって打ってつけの武器だ。

 しかし、思った以上に値段が高く、もう一本購入もしくは防具を購入することは叶わなかった。

 

「ま、スモールソードがあるし、防具は攻撃を食らわなければいいだけだしな。何とかなるだろ」

 

 さっそく《ブロンズソード》を装備した俺は武器屋を出ると、数メートル離れた掲示板へと足を運んだ。

 そこには数々の張り紙があり、その中の討伐クエストを片っ端から選択する。それと同時に、視界左上に表示されているクエストログのタスクが複数更新された。

 この村の掲示板に貼られているということは、この周辺に対象モンスターが出現するということだ。元々はこの村を拠点にしレベルを上げるのが目的であったため、それらを討伐しさらに経験値がもらえるというのは一石二鳥だろう。

 

 

 タスクを確認し、俺は村を出ると、近くの森へと足を運んだ。

 時刻はすでに午後七時をまわっており、辺り一面が暗闇に包まれている。月明かりがなければ、一メートル先も見えない状況だ。

 視界が悪いと、反応が遅れる。

 それは今のところソロプレイヤーである俺にとっては、大きなリスクだ。いち早くレベルを上げて、危険を回避しなければならない。夜の森に入った時点で、常に危険状態ではあるが。

 

 

 木々が増えるにつれて、視界にいくつものカーソルが表示される。その色は、ミストリアに着くまでに出会ってきたモンスターの赤色よりも少し濃く、レッドならぬローズマダーといったところだ。おそらく、1レベルの俺よりもレベルが高いことを意味しているのだろう。

 俺は迷いなくそのカーソルの方向へ足を運ぶ。自分よりもレベルが高いからって、怖気づいてはいられない。

 カーソルの近くまで来ると、そのモンスターの全容が見て取れた。

 全長一メートル半。体毛は黒く、月明かりに反射して艶のある毛並みをしているようにも見える。そして、真っ赤な瞳と獰猛な牙。そのモンスターの名は《ミストウルフ》。先のモンスターの中にいた《ウルフ》よりも強く、素早いと予想できる。

 俺は《ブロンズソード》の柄を握ると、ミストウルフは耳をぴくっと動かし、こちらに真っ赤な瞳を向けた。

 

(Oh……奇襲作戦早くも失敗か……)

 

 心の中で笑いながら俺は、勢いよく抜剣する。それと同時にミストウルフは毛並みを逆立て、ぐるる、と唸り声をあげる。

 ウルフ系のモンスターは素早い代わりに、攻撃力があまりない。単体ならさして脅威にはならない。そう。単体(・・)なら。

 

 

 ミストウルフは、俺が踏み込むのと同時に大きく後ろへ跳躍する。そしてすぐさま遠吠えを始めた。

 

「げっ、まじかよ……」

 

 俺はすぐに目前のミストウルフを仕留めようと駆け出すが、時すでに遅し。最初のミストウルフを仕留めるころには、十体近くの新たなミストウルフに囲まれていた。

 

「くそったれが。お前ら、よってたかってレベル1の俺をいじめるのがそんなに楽しいか! 全員まとめて調教してやるから、かかってこい!」

 

 そう叫ぶと同時に、背後にいたミストウルフが飛びかかってくる。左足を軸に半回転し、飛びつき攻撃を避けると、遠心力を利用して空中で無防備状態にあるミストウルフを斬り上げる。

 もちろんレベル1の攻撃が、レベル3を一撃で仕留められるわけがなく、きゃうんと短く鳴いたミストウルフは回転しながら、まるで何事もなかったかのように着地をした。見ると、HPは二割ほどしか減っていない。二割減っているだけましだが。

 

 

 俺は一旦瞼を閉じると、神経を集中させる。現状のように、複数に囲まれたときは、一匹ずつ確実に仕留めていくのがセオリーだ。しかし、今の俺のレベルでは、一、二撃目で仕留めることはできない。ソードスキルを弱点にヒットさせれば不可能ではないが、その分リスクも大きいため、有効な手段ではない。

 ならばどうするべきか。

 攻撃を避け続け、全体的に少しずつHPを減らしていく。

 

 

 普通に考えて、十匹近くに囲まれ、連続的に攻撃される状況で、一撃ももらわずに倒し切るのはほぼ不可能だ。特にウルフ系モンスター相手だと、一回でも噛みつかれたら動きが止まり、その隙に総攻撃を受け、簡単にやられてしまう。それに加え、ウルフ系モンスターは素早い。奴らが動いてから反応するのではおそらく遅いだろう。

 ならば神経を集中させ、常に動き、考え、予測し、反応する。そして、諦めない。

 

 

 SAOが始まって……いや、このデスゲームが始まって早々全力モードで動くとは思わなかった。せいぜいボス級のモンスターにしか必要ないと思っていたが、やはり甘い考えだったらしい。

 

 

 俺は瞼を開けると、目の前にミストウルフが迫っていた。しかし、地を蹴った音により、それは把握(・・)している。

 《ブロンズソード》を真正面から叩き付けると、体重を乗せた右足に力を入れ、左方向に転がる。すると、先ほどまで俺がいた場所にミストウルフが着地した。すぐさま左足に力を入れ、横っ飛びをし、右足が着地するのと同時に思い切り振り上げる。それにより、ミストウルフは吹き飛んだが、足場が悪かったのか、思いもよらぬアクシデントにより、俺は地面に背中を叩き付けられる。そんなところをミストウルフが見逃すはずもなく、すぐさま一匹が飛びかかってくるが、《ブロンズソード》を思い切りミストウルフの胴体に突き刺し、空中で停止させる。

 だが、やはりレベルの差が大きいのか、現実世界では致命傷であろう攻撃はHPの半分も削ることができなかった。

 串刺し状態のミストウルフは尚も暴れ続け、唾液が飛び散り、俺の頬に付着する。

 

「愛情表現、過激すぎだろ。俺は平等に愛してやるから安心しろ……って!」

 

 笑みを浮かべながら片手剣を横に振り切り、素早く立ち上がる。

 相当HPを削ることはできたが、数自体は数分前と変わっていない。

 

(ここからが正念場だな……)

 

 俺は大きく深呼吸すると、剣を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後の一匹に単発ソードスキル《スラント》浴びせると、可愛らしい断末魔と共に、無数のポリゴン片へと姿を変え消えていった。

 六匹目を倒したあたりで、レベルアップを告げるファンファーレが鳴り響いたのを思い出し、メインメニュー・ウインドウを出現させ、ステータスタブに移動する。加算されたステータスポイントは3で、すべて敏捷力に振る。見た限り基本的に振り分けることができるのは筋力と敏捷力の二つらしく、個人的には敏捷力重視で振り分けていこうと思っている。

 それを完了すると、《ブロンズソード》を納刀し、大きく伸びをした。

 

 

 戦闘自体は十分と大して長くはなかったのだが、精神的に相当疲れがたまってしまった。それでも、同じ状況に立たされたら生還できる人数のほうが圧倒的に少ないであろう状況を突破することができたのだ。それはそれで良しとしようと思う。

 同じ状況は正直御免だがこのペースでいけば、日付が変わるころには4、5レベルくらいにはなっているだろう。

 

「あと四時間半。頑張りますかぁ」

 

 《ブロンズソード》の残り耐久値を改めて確認した俺は、先ほどよりも強くなった月明かりの中、森を突き進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから五時間経つのはあっという間だった。

 カーソルが出てき次第片っ端からモンスターを仕留めていった俺は、すでにレベル4に到達していた。短時間で、馬鹿みたいにレベリングを行っていた結果、デスゲームによる精神的疲労と肉体的疲労により今までに感じたことがないくらいに疲れ切っていた。

 

 

 両脚は鉛のように重く、思考回路がうまく働いていない。しかし、これぐらい、もしくはこれ以上のレベリングをしなければ、短時間でSAO百層攻略などできないはずだ。 

 βテストのときは、二ヶ月で六層しか攻略できなかったことを踏まえれば、こんなレベリングをしても二年、下手したら三年以上はかかると見積もってもいいかもしれない。少々気が遠くなるが、この世界を出るためには仕方がないのかもしれない。

 

 

 ミストリアへの帰り道は驚くほど静かで、六時間前よりも熟練度が上昇している《索敵》にも一切モンスターの反応はなかった。

 時節現れるカーソルに気を引き締めていたが、それらは全員、俺同様ミストリアを拠点にレベリングを行おうと考えてやって来たであろうプレイヤーたちで、すれ違いざまに「全然モンスターいねぇ」「次の村を拠点にしたほうがいいのかぁ?」と言っていたことから、ここら辺のモンスターはまだ再湧出(リポップ)していないのかもしれない。

 

 

 しばらく歩くと、結局モンスターと出会わずにミストリアへと到着した。おそらくモンスターを無意識に避けていたのかもしれない。

 門を潜るや否や、最初に来た時と同じように武器屋に入ると、この五時間で貯まりにたまったアイテムをすべて売り、レザーコート、二本のブロンズソードを購入する。最初に買ったブロンズソードは、二時間ほど前に折れてしまっていて、念のために売らずに残していたスモールソードも、耐久値は残りわずかだ。今後このようなレベリングを続けるなら、同じ武器を二本持っていても損はないだろう。

 

 

 武器屋を出ると、すぐさま宿屋に入り込む。

 時刻は午前一時をまわっており、装備を外すと、何の躊躇いもなくベットへダイブした。

 この村にもプレイヤーが集まっている。となれば、早めに次の村を拠点にする必要がありそうだ。

 

(今から寝て……五時に起きて……一日中…………睡眠は四時間あればいいほうか……)

 

 頭の中で明日の計画を立てるにつれて、瞼が重くなっていく。

 完全に閉じきる前に、メインメニュー・ウインドウを開き、アラームを設定する。無理やり起こすために、少々大音量に設定したのと同時に、俺は完全に瞼を閉じた。

 

 

 





レベル3のモンスター十体に、レベル1で勝つ。
ちょっと無茶苦茶ですかね?(笑)

まあ彼ならやってくれるでしょう!(笑)


今回、コペルのようにオリキャラを出そうかなとも思っていたのですが、私自身オリキャラはできるだけ少なくしたい系男子ですので、登場させませんでした。
まあ今後にいっp……おっと危ない危ない。皆さんの話術により、危うく喋るところでした。

ちなみに主人公のプレイヤーネームはまだ出ていないという(笑) もうすぐ判明しますよ!(小声

これからもこの作品をよろしくお願いします!
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