桐原静矢になったけどとりあえず最強目指す   作:田中

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この話は三人称視点です。

おそらく、またしばらくドロンします。


【落第騎士】と戦いました。

観客席にはほぼ全校生徒が自主的に集まり席を埋め、立って見る人も現れるくらいに集まっていた。闘技場の中心にまだ誰もいないが、いずれメインとなる者達が現れる。何があると言われればそれはエキシビションマッチ。【七星剣王】が行うものである。それだけで興味が唆られる。さらにその相手はAランク騎士ステラ・ヴァーミリオンに土をかけたFランク騎士。誰もが見せしめであろうと思った。圧倒的な力を見せてくれる気持ちの良い試合になるのだろうと思った。会場の九割九分九厘がそう思っているだろう。

 

「シズクとアリスも来たのね……」

 

「お兄様と静矢さんの試合となれば見るのは当たり前です」

 

「私も個人的に【七星剣王】の実力が気になっちゃってね。ここにいる人は皆そうだと思うわ」

 

「シズクはどちらが勝つと思ってるの?」

 

「………ステラさん。この試合で聞く言葉を間違っていませんか?お兄様には悪いと思いますが、聞くのはお兄様が静矢さん相手に何分持つか……です」

 

「!? 一輝にだって勝つチャンスは……」

 

「自分に勝ったお兄様を評価するのはわかります。私も静矢さんのためにもお兄様に勝ってもらいたいと思っています。ですが静矢さんの負ける姿が想像つかないのです」

 

悲しそうな顔をする珠雫を見てステラは悟る。本当に一輝に勝つチャンスはないのだろうかと考える。

 

「剣でなら一輝に分があるんじゃ…」

 

「はっきり言って今の静矢さん相手に剣で戦うのは勝てません」

 

「モールで一瞬だけ見たけど確かにあれには勝てなさそうね。あれで本気を出してなければ正真正銘の化物ね」

 

「ならどうして桐原先輩は一輝をエキシビションマッチの相手に選んだというの?」

 

「多分静矢さんは初めからお兄様と戦ってみたかったのでしょう。あの人はあれで戦闘狂なところがありますから。お兄様の剣を認めているからこそ選ばれたのかと思います」

 

「ねぇ、珠雫は一輝が何分で負けると思ってるの?」

 

「1分ちょっとです。お兄様の一刀修羅が切れると同時に終わると思います」

 

「それは一刀修羅の状態なら互角に戦えるということ?」

 

「……おそらく、ギリギリ互角になれるかどうかだと思います」

 

「一体どれだけ強いというのよ桐原先輩は……」

 

「理事長にすらハンデなしで勝ってるみたいですからもう魔導騎士として完成されていると思いますよ」

 

3人が話していると他の観客が騒ぎ出した。闘技場の中心の舞台に2人が入場してきたのだ。

 

「逃げずに来てくれてよかったよ黒鉄君」

 

「こんなチャンス自分から逃すわけがないよ」

 

「それならいいよ。観客がこんなに集まってるんだ。あまりはやく倒れないでくれよ?」

 

「桐原君には悪いけど勝たせてもらうよ」

 

2人の話し合いは観客には聞こえない。だがそこに不正が働いていないことだけ把握したため気にならない。

 

『1年生にして【七星剣王】にまで上り詰めた天才桐原静矢選手のエキシビションマッチ。対する相手はまさかの落第生である黒鉄一輝選手!解説には西京先生に来てもらっています。どちらが勝つと思われますか?』

 

『しずやん鬼強いからなー。しずやんじゃね?』

 

『やはり黒鉄選手には勝ち目がないというわけですか?』

 

『いんや、勝てる可能性は0.3%くらいかね。普通にやったら勝てない』

 

『では特殊な方法であれば勝てるというわけですか?』

 

『わかんね』

 

適当な解説をする西京先生。だがわからないのも仕方ないことだ。1年間同じクラスにいたのだからある程度の情報はある。さらに公式戦のデータがかなり残っているのだ。対策しようと思えばいくらでもできる。

 

「来てくれ【陰鉄】」

 

「【朧月】」

 

『さぁ、両者位置につき、固有霊装を出しました。間もなく始まります……』

 

ーーーlet's goahead

 

2人の戦いが始まった。

 

「【一刀しゅ…」

 

一刀修羅を使おうとした一輝は息を飲んだ。ありえない。そう、開幕で速攻を仕掛けるのはありえないと思っていたのだ。

だが、既に静矢は目の前に移動しており、拳を放っていた。

驚きと緊張で一輝は避けることができず一撃を鳩尾に叩き込まれ、飛ばされる。

 

「試合は始まってるんだ。悠長に待つわけがないだろう」

 

会場もいきなりのことで静まり返っていたが静矢の言葉で歓声が生まれる。

場外ギリギリまで飛ばされた一輝は立ち上がる。

 

「【一刀修羅】!」

 

自身の身体能力を上げる。だが一輝自身これで勝てるかどうか危ういと感じていた。先程の鳩尾のダメージは深かったのだ。

 

「桐原君が中国の拳法を使うとは思わなかったよ」

 

静矢の背後へ瞬時に移動して斬りつける。だがその一振りを手を掴まれることで防がれる。単純に強い。一輝はそう感じた。少し前に戦ったステラとは比べ物にならない程強いと感じてしまった。

 

「黒鉄君。初めての公式戦で緊張するのは分かるけどこれは公式戦のじゃなくエキシビションマッチなんだ。そんな緊張せずかかってきてよ。そうでなければ君を選んだ意味がない!」

 

腕をつかんだまま蹴りを横腹へと叩き込み再び一輝は飛ばされる。一方的な光景に観客は再び静まり返った。

飛ばされた一輝は静矢にダメ出しをされた自分を反省し、立ち上がる。そして自分の頬を殴る。

目が変わった。頭の中を切り替えたのだ。それを確認した静矢は好戦的な笑みを浮かべ、【朧月】の能力の副産物である木刀を取り出す。

 

「此処からが本当の勝負だ!」

 

一輝が先程と同じように背後に回り斬りつける。今度は木刀で受け止めようと刀の軌道に合わせるが途中で軌道が切り替わる。変則的な剣戟に即座に対応し、一撃を防ぐ。この一撃で先程とは一味違うことを認識し、反撃に一撃繰り出すが刀で受けられ、一撃を繰り出される。それを再び木刀で防御する。

時間にして3秒。その間に起きたことである。闘技場で繰り広げられた攻防に観客は息を飲む。予想していた【七星剣王】の圧勝とは違い同等の実力に見えるからだ。

だが、そう見えない者も一部いる。そのほとんどは実力者である。実力者の見解は拮抗ではなく、一方的である。

 

『信じられません!私の目には【七星剣王】と【落第騎士】が拮抗しているように見えます!』

 

『いんや、全く拮抗してないよ。正直こんな技術トッププロですらできるかどうかわからない』

 

『それは黒鉄選手のことでしょうか?』

 

『しずやんだよ。完全に黒坊の動きを誘導してる。パターンから抜け出そうと黒坊は本来の動きから離れないギリギリで頑張ってるけど、これは無理かね。まるで鳥籠に閉じ込められた鳥を見てる気分だね』

 

『桐原選手が黒鉄選手の動きを操作してるというと、いったいどうやってですか?』

 

『さっきからしずやんの防御パターンがほぼ同じになってるのに気づけば分かる。ほら、黒坊は色んな攻撃の仕方をしてるけど全て弾き返され、しずやんはギリギリ防げる場所に攻撃することで黒坊を消耗させてる』

 

『その結果が動きを操作しているというわけですか』

 

『そういうこと』

 

(どうにか桐原君から優位を取らないとやられる)

 

前にステラ相手に剣技模倣をし、その結果太刀筋が乱れ一撃を入れることができた。これはそれと同じなのだ。相手が本来の動きと違う動きをすれば容赦なく潰しに来る。鳥籠から出ても再び捕らえられるか殺されるか。2つに1つだ。

 

(これを破るには2つある。1つは桐原君のの反応速度を超えて一撃与える。2つは決死の覚悟で一撃を受ける)

 

一輝の思考はすでにこの2つに絞られていた。だが初めの一撃が祟り、1つ目の案は確実に行えない。そもそも、万全の状態でもできるか危うい。詰まる所1つだけなのだ。

 

「今、一撃喰らおうと思わなかったかい?」

 

「っ!?」

 

図星だ。思考を読まれたことに冷や汗をかく。これも操作されているのかと焦る。

 

「いや、それはこの技から出るには打って付けの案だ。それの対応は考えていないからね」

 

静矢の言葉に成る程と納得する。もし、ダメージを受ければ確実に決定打を奪われることになる。それは敗北を意味することである。

 

既に30秒間も斬り合いを続けられている。見てる側には一瞬だが攻防を繰り広げている2人にとってはとてつもなく長い。そして【一刀修羅】の効果時間から考えて一輝に焦りが見え始めた。

 

「焦れば焦るほど抜け出せないよ?ほら、今こそ限界を超える時だよ黒鉄君。まだ出せる物があるはずだ」

 

一輝は考えた。どうすればこの技から抜けられるか。どうすれば勝てるか。そして答を導き出した。

まだ出せるものはある。何を1分で全魔力を使うという悠長な真似をしている。そんなもの桐原君相手に意味ないだろ。残り30秒。そんなもの5秒…いや、3秒でいい。体が付いてこない?無理やり引っ張ればいい。

 

「いくよ桐原君。僕の最弱を以て、君の最強を打ち破る!」

 

それは【一刀修羅】を超えた【一刀修羅】。名付けるならば【一刀夜叉】。本来ならこのような物語序盤で出る技ではない【一刀羅刹】の応用である。だが出した。それはつまり自身の限界を破ったということである。

 

先程までとは比べものにならない速度で木刀を持つ左腕を切り落とした。そして次は右腕を切り落とそうとすると顔面に裏拳が入る。いや、これは裏拳とは呼べないだろう。なぜなら切り落とした左腕を右手で掴み振り回したのだから。

常人なら思いつかない手段で、思いついても実践しない手段で攻撃した静矢に一輝は少し戸惑う。だが残り2秒しかないことを考え、再び突撃する。だが…

 

次に見た光景は天井だった。何をされたかわからない。置かれてあるモニターも目に入る。なぜ自分が倒れているのか理解できていない。

まだ魔力も一秒分ギリギリ残ってある。なのになぜ……。

その答えは立ち上がろうとしたことで分かる。

両足がない。なぜこんなことになった。体が付いてこなかったのか?……違う。断面は綺麗な切断面だ。それはつまりーー桐原君が斬った?

 

「いや、僕の技……名付けるなら【鳥籠】から抜け出し、あまつさえ左腕も奪うとは見事だった。でも、それじゃあ僕には届かない」

 

一輝が最後に聞いたのはそんな言葉だった。

 

『試合終了!!!勝ったのは【七星剣王】桐原静矢選手!強い!強すぎる!!両足を斬った時なんて私には全く見えなかったです!』

 

『しずやんは予想をはるかに超えて強かった。それは黒坊も同じ。予想をはるかに上回っていた。特に【鳥籠】を抜ける時の動きは此れ迄とは違う。でも、最後のしずやんの一撃は避けるのほぼ不可能だったよ』

 

『それはどうしてですか?』

 

『あまり言いたくないけど私にも見えなかった。【狩人の森】を使って見えなかったのか速すぎて見えなかったのかはわからないけどね。しずやんの底がまた見えなくなった』

 

中心で左腕を拾う静矢を楽しそうな目で見る。そして担架で運ばれていく一輝にも目をやる。

 

『2人ともこれでまだ成長するんだから恐ろしい』

 

最後に本音を漏らして解説が終了した。観客達も試合のレベルの高さに静まり返っている。一輝を、【落第騎士】が自分達より強いと認識してしまったのだ。どれだけ努力しなければあの高みにいけるのか検討がつかない。そう感じていた。

 

それはステラ達も同じだった。一輝の【一刀羅刹】それだけでも凄いと感じたのにさらにそれを上回る不可視の斬撃。これが【七星剣王】なのかと思い知らされた。

 

「静矢さん。去年の七星剣武祭の時より格段に強いです。あれでまだ【狩人の森】を使っていないとなればまさにチートですね」

 

「何よあれ。一輝をコントロールしてやっと抜け出したと思えばあんな一撃。どれだけ研鑽すればあそこまでなれるのよ」

 

「彼、学生から逸脱してるわね。強すぎるわ」

 

「仮面ランナーとしての活動が実戦経験を産み、成長させたのだろうな。どうだヴァーミリオン。日本に来ることで大きな目標ができたんじゃないか?」

 

「一輝を超えることを目標にしてましたけど、私はさらにその上、桐原先輩を超えることを目標に頑張っていきます。本当に日本に来て良かったと思いますよ」

 

いつの間にか現れた理事長に全く驚きもせず答える。ステラのその目は熱く燃えていた。

 




この試合は学生へ向けたレクリエーションのようなものなので勝敗が代表選に繋がるわけではありません。
桐原くんの相手するのに【完全掌握】は必要ですが猶予がないため使えません。さらに言うなら次に戦うときはまた違った手法で攻めるため【完全掌握】をするのには少し時間が必要です。結果、桐原くんの勝利はほぼ確定します。この桐原くんの能力の良さはレパートリーの多さです。
【一刀夜叉】は使用する時間を濃縮することでより短い時間をより強化するという技です。名前の由来はマグナカルタの戦闘モードに修羅、羅刹、夜叉というものがあり、これでいいやと適当に判断したためです。
尚、今回使用された【鳥籠】は前回の後書きに書いたバードケージのようなものと思っていただければ幸いです。

最後に、7つの秘剣を持つ一輝君てすがどれがどんな秘剣なのかわからないため使用しませんでした。許してください。
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