桐原静矢になったけどとりあえず最強目指す   作:田中

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お出迎えしました。

日本では今、1つの話題で持ちきりになっている。その話題とは、ヴァーミリオン皇国の皇女ステラ・ヴァーミリオンの日本の留学だ。人類最高峰の魔力を持っている彼女は幼少期からニュースなどで見たことある。来日の際にはかなり多くのマスゴミが現れるのは約束されている。破軍学園入学に対して理事長がインタビュー受けてる時点でお察しだろう。たかだか1人の少女が留学するだけというのにお祭り状態である。

ニュースで見たが、彼女は日本で何したいかと聞かれれば「ヴァーミリオン皇国に隠密していた解放軍を根こそぎ排除した仮面ランナーにお礼を言いたい」と答えていた。一体仮面ランナーとはなんだ!?と思う人もいるだろう。その正体は俺である。仮面ライダーの仮面をつけて走って去っていく姿からそんな名称になったらしい。ちなみに目立つのはあまり良くないため、名称がつくと同時にお小遣い稼ぎであった解放軍潰しは止めた。

兎も角、ステラ・ヴァーミリオンの留学には破軍学園でもざわざわしていた。特に話題になっていたのは七星剣舞祭優勝者である俺とステラ・ヴァーミリオンのどちらが強いかという議論だ。当事者である俺のいないところでやってほしいと思うがクラスの中核であるため俺もその議論に無理矢理参加させられている。

 

「実際のところ俺と、ヴァーミリオンさんが戦えば魔力の差で俺が負ける可能性は高い」

 

何度目の敗北宣言だろうか。同じ言葉を昨日も今日の朝も言ったと思う。いつもそう言った後に俺を保守しようとするやつらが「それでも桐原君は透明になれるわけだから」や「範囲攻撃に晒されても身軽だから避けれる」などとトンデモ理論で俺を勝たせたがるせいで数時間後にはまた同じ言葉を言うことになるのだ。無限ループって怖くね?

実際やってみれば五分五分だろうと思うし、日本人特有の謙虚を発動すれば負けると言ってもいいだろう。おそらく、相手が最初ナメプしてれば初手で勝てるだろうが中途半端に長引けば俺が負ける。だが長期戦となれば体力の差で勝てる。やはり五分五分である。といっても、五分五分の戦績になると思うのは原作の七星剣舞祭決勝で戦っている時の彼女である。今の彼女には絶対に負けないだろう。

 

「理事長から呼ばれているから、僕は行くよ」

 

早くこの場から消えたかったというのもあるが、普通に新宮寺さん……理事長に呼ばれているため、逃げるように会話から離れていく。なぜ、こういうどちらが強いかという話題で盛り上がれるのかわからない。高校生もまだ子供であるということを意識させられる。

 

 

 

 

 

 

 

「私の代わりに空港へ行ってステラ・ヴァーミリオンをここまで連れてきてくれ」

 

理事長室に入ればすぐに言われた。もっと説明がほしい。なぜ俺が抜擢されたのか。なぜ従者の1人や2人連れてきていないのか。なぜ理事長が行かないのか。分からないことだらけである。

 

「なぜ僕なんですかね?僕なんかより暇な人は沢山いるでしょう」

 

「ステラ・ヴァーミリオンに興味ないだろう?だからだ」

 

なるほど。少し考えればすぐ分かることだが興味のある人だったらちょっかいかけたりして外交問題になったり、少なくとも浮れるためまともに相手はできないだろう。その点俺は全くもってこれっぽっちも興味ないため、普段通り接することができる。

 

「理事長は行かないんですか?」

 

「マスコミの相手が嫌だ。その点お前は慣れてるだろ」

 

いや、貴女は元KoK世界3位でしょう。俺なんかよりもよっぽど慣れてるだろ。と言ってもどうせ俺が行くことになるのだ。なら早めに折れよう。

 

「で、いつですか?」

 

「明日だ」

 

俺の疑問への返答が早すぎた。だからこそ聞き取れなかったのかもしれない。もう一度聞いてみよう。

 

「いつ?」

 

「明日だ」

 

聞き間違いではなかった。なぜこんな大事なことを前日に、しかも午後に言ったんだ。無能な元理事長でも1週間前には言ってたぞ。

 

「でも入学式は明後日ですよ?」

 

「入学式当日に来日するやつがいると思うのか?」

 

「なぜ、もっと前から言わないんです?」

 

「桐原の焦る顔が見たかったからな。ほら、車の手配とかしておかないと明日困るぞ」

 

鬼!悪魔!どうしてこんな人が結婚できたんだ!世の中おかしい!と、とりあえずあれだ。車の手配とボディーガードの手配。俺たち伐刀者にはボディーガードなんて必要ないだろうけどマスコミ相手には数が必要だからなぁ。こんな仕事を一生徒にやらせるのは間違っていると思うが、新宮寺さんを理事長にしたのは俺であるからこういう仕事をさせられるのはしかたのないことである。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

次の日の朝、空港に着いてみれば人の数が異常だった。マスコミが多すぎて純粋に利用している人の迷惑にしかなっていない。カメラ持ってる人結構いるなー。と、ポケーっと見ているとマスコミの1人が俺の存在に気づいたようで近寄ってきた。寄ってくるな!

 

「破軍学園の桐原静矢さんですよね?」

 

人違いですと言いたいが破軍学園の制服着ていてこの顔していたら誰でもわかる。むしろ聞く方が失礼なんじゃないかと思うくらいである。

 

「はい。先に言っておくと今日は予定がありますので取材の方はご遠慮くたさい」

 

俺の言葉にマスコミは仕方ないとすごすごと帰るそぶりを見せた後、勢いよく振り返る。そのまま帰ってほしい。

 

「1つだけ、聞かせてもらえますか?ここにいらしたのはステラ・ヴァーミリオン皇女をお迎えに来たのでしょうか?」

 

それ以外に何があると言わせてもらいたい。俺のような学生がホイホイ空港にくることなんて中々無い。修学旅行くらいだろう。なぜきたかを知っていてこの質問をし、言質を取ろうとしてるのだろう。

 

「その質問にはYesとしか答えられません」

 

俺の回答に満足したマスコミはもう一度群れの中へと戻っていった。戻ってから数分後、奥の方からシャッター音が聞こえ出した。つまり、ステラ・ヴァーミリオンが来たのだ。徐々にシャッター音が近づいてくることから取材には応じずにこちらに来ているのか、回答しながらこちらに来ているのかのどちらかだろう。どちらにせよ待ち時間が短くなるためこちらとしてはありがたいものだ。

始めに見えたのは炎のように赤い髪。次に見えるのは……目がいってしまったのは豊満な胸。これは男の性なので仕方のないことである。次に顔、一輝くんがベタ惚れするのもわかるほど美人である。この容姿で強いって天は二物を与えずとか言うけど三物以上は与えるんだねってくらいだ。

 

「破軍学園から迎えに来た者です」

 

「ありがとうございます。待たせるのも悪いので早く行きましょう」

 

ステラ・ヴァーミリオンの合図で俺は斜め前を歩く。もちろん今は従者として接しているため彼女の荷物は俺が持つ。前日に車を手配しておいてよかった。待たせることになったら大事である。

空港から出て車に荷物を詰め、後部座席にヴァーミリオンさんを乗せて俺は運転手によろしくと伝えてバイクに乗る。なぜバイクかというと行きもタクシーなどを使うと余計に学園の予算を使うことになるためである。予算使うのは帰りだけで良いのだ。とにかく走り出した車の後ろを追走し、道中何事もなくヴァーミリオンさんを破軍学園まで送り届けるという任務を完遂した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「破軍学園へようこそヴァーミリオンさん。僕は二年になる桐原静矢。これ以降はあまり接触ないだろうから覚えなくてもいい」

 

バイクを置いてきて挨拶をする。緊張の色もない俺に怪訝な顔をするがすぐに普通になる。なんで一瞬怪しまれたかを問い詰めたいがやめておく。もうすぐここに来るであろう理事長に怒られたくない。

 

「知ってると思いますが私はステラ・ヴァーミリオンです。ステラと呼んでください」

 

はい知ってます。彼女に興味がないのも考えものだ。全く話の話題が出てこない。もうすぐ理事長が迎えに来てくれるのは確かなのだがその時間に会話なしなんて気まずい。どうにかならないものか。

 

「わざわざ日本に来た理由ってあるんですかね?」

 

何か会話をするため必死に出した話題がこれだ。これは知っている。たしか皇国にいても伸びないから、自分より強い伐刀者を求めて来たと言っていた気がする。

 

「皇国にいると上を目指せなくなるからです」

 

うん知ってる。特に反応を示さずへー程度にしか思わない俺にイラっとしたのか自分のことを語りだした。

 

「皇国では国民の皆が私を褒め称え、第二皇女様は天才だとよく言われました。最初はその言葉が誇らしく思えて、誰にも負けることはない。何でも出来るという気持ちでした」

 

仕方ないので聞いてやることにする。早く理事長こないかなー。と思いながら知っている内容を聞きながす。

 

「でも、その思い上がりが自分を押し込んで気力が削がれるのだと気付いたんです。誰かに褒められることは確かに嬉しい。でもその言葉を聞くことで知らないうちに逃げ道が出来てしまい、上を目指す努力を忘れてしまう」

 

俺を真正面から見てくるその表情はかなり真面目なものである。たしかに俺には褒めてくれる人間が少なく、それを嬉しいと感じるが頻度が少ない。だが彼女はその頻度が多すぎるのだ。そんな環境なら俺も努力せずまったりと暮らしていたことだろう。そして、今も尚留学なんて手段は確実に使わなかったと言える。彼女の覚悟は強いと思う。

 

「それじゃ駄目なんです。愛する皇国を守るために、私はもっと強くならないといけない。だから自分より強い伐刀者を求めて日本に来たんです」

 

あぁ、本を読んでいる時とは感情の移入が違う。今の俺には才能はある。だからこそ彼女の凄さというのがわかってしまう。国民のために強くなる。そのために日本という遠い国に来て己を磨くとは凄いことだ。応援したくなってしまうではないか。

 

「なら、少なくとも破軍学園に来て正解だよ」

 

意識せず言ってしまった俺の言葉に真剣に目を向ける。なぜと聞きたいのだろう。そんなこと聞かれなくても答えてやる。

 

「この学園には剣術の鬼がいる。クロスレンジにおいて負けを経験したことのない虎もいる。そして、七星の頂に立った人もいる。この学園は強者には全く困らない」

 

「その通りだヴァーミリオン」

 

背後から理事長の声が聞こえ、振り向けばやはりというか理事長が立っていた。気配も音もなく近くのやめてくれませんかね。ステラさんがビクってなってましたよ。

 

「理事長。僕はここで失礼します」

 

言葉を残して去っていく。理事長も俺の任務は完遂しているため、感謝の言葉を俺に伝えて許可してくれた。てか、好きでもなんでもない女の子と話が続かないというのは前世も今も変わらない。今後生きていく中の課題となりそうだ。

 

「桐原先輩、ありがとうございました」

 

背後からヴァーミリオンさんの 声が聞こえた。背を向けながら手を振ることで返事をする。後ろから理事長の中二病という言葉が俺に突き刺さるが、この行動は普通にカッコいいと思う。

 

かくして、 俺の『朝』の仕事は終わった。

 




次話に一輝君とステラァ!の模擬戦おきます。
この時点の桐原くんは良い意味では理事長の秘書的な役。悪い意味で雑用係になってます。ほぼ無理やり理事長にした負い目を感じてると思ってください。どこぞのヒッキーが生徒会の手伝いするようなものです。
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