やはり俺がボーダーに所属しないのはまちがっている。 作:犬ころ大佐
・・・・・・夏の話で正解ですね。当たった方おめでとうございます。
いやあ、最初に言っておきますよ。那須ファンの皆様ごめんなさい。
エアバックを作動させた状態で運転しております(つまり事故る
回想シーンの中で、過去編をやる詰め込みっぷりでとっ散らかっております。
ヒロインどうしよー(鼻ほじ
夏休み二日目、なぜか俺は四塚マリンワールドに来ていた。しかも水着を着せられている。
人が多すぎてやばいなおい。
「おうち帰りたい」
四塚市より戸塚氏のお家行きたい。
「何言ってんのよ!あたしと一緒じゃ不満な訳?!」
そう言ってうがーっと怒っているのは、どこかA級の爽やかイケメン隊長に似ている
鳥の羽のようなアホ毛を立てた茶髪の少女。まあ口を閉じていれば美少女と認めてやってもいいだろう。
雪ノ下といい、由比ヶ浜といい、こいつといい、なぜ外見だけ秀でた奴が多いのだろうか。
その点、戸塚ってすげえよな!内面まで優しさたっぷりだもん!
最近あざとくなってきている小町ちゃんに関してはノーコメントで。
「ちょっと!聞いてんの?! せっかくプールに来たんだからとことん遊ぶわよ!・・・・・・まずはウォータースライダーかしら」
この夏初めてのプールということもあってはしゃいでいるこいつは、俺の腕を掴み
ぐいぐい引っ張る。当然こいつも水着だ、しかも白いビキニ。
長い髪が揺れ、その隙間から覗く健康的な背中と形の良い尻。目のやり場に困ることこの上ない。
そんな不埒なことを考えているとは露知らず、こいつは俺が喋らないのを見て不安そうな表情を浮かべる。
「も、もしかして本当にあたしと一緒じゃ嫌だった? あんた、人ごみ苦手だもんね・・・・・・無理矢理連れてきて悪かったわよ・・・・・・」
シュンとして掴んでいた俺の腕に身体を寄せる。いやいや当たってるから!何がとは
言わないけど、雪ノ下以上小町以下な何かが当たってるから!・・・・・・雪ノ下もこいつも不憫だ。
そう思うと何かいやらしい気持ちが失せていく気がする、平常心。
「人ごみは苦手だが、別にお前と一緒なのは嫌じゃねえよ。ってか手を離せ、注目される」
そう、周りの男共の視線が痛いのだ。まずはこいつを引き離さねばと思い、腕を優しく振り払う。
「あっ、ごめん・・・・・・」
なんで顔を赤くしながら名残惜しそうな顔をするんですかね。昔はそんなしおらしい
態度じゃなかっただろ。
まあ今となってはこいつに勘違いすることもないが。
やはり俺の幼馴染が小南桐絵なのはまちがっている。
小南桐絵、俺と同い年だが旧ボーダー時代からネイバーと戦っている古株だ。
俺の母ちゃんを慕っていたらしく、よく家にも来ていた。なぜか親父は滅茶苦茶
嫌われていたが。
親父は家にいることが少なく、あまり喋ったり親父らしいことをしてくれた記憶もない。
だが小南は親父のことをよく知っているらしく、いつも親父の悪口を言っていた。
子供ながらに親父の悪口を言う生意気なこいつを俺は苦手に思っていた。
だが俺は見てしまった、親父と小南が共に戦ってる姿を。小南が片っ端からトリオン兵を斬りつけ、動きの止まった敵を吸収していく親父。初めて見たネイバーとの戦い。
俺は魅入られてしまったのだ。互いに憎まれ口を言い合いながら息の合ったコンビネーションを見せる二人、俺の知らない親父の姿。
その結果、後に第一次侵攻と呼ばれる戦いにおいて戦闘見たさに不用意に家から飛び出し、殺されかけた訳だが。
まあ昔のことは置いといて、今は何で俺が小南と二人でこんな場所に来ているかということだ。
あれは小町からの情報漏洩によって小南と那須に奉仕部のことが伝わってしまった日に遡る。
川なんとかさんの件を解決して家に帰った俺は、ふとスマホを見た。
サイレントにしていたため気づかなかったが、ちょうど着信がきていたようだ。
相手は小南桐絵、玉狛支部所属の俺の幼馴染だった。どうせ奉仕部の件だろうと思い、電話に出る。
「もしもし」
『あっ!あんた部活に入って美少女二人を侍らせてるってどういうことよ!!』
ピッ。
俺は無言で電話を切った。あれれ? 小町ちゃんなんて伝えたのかな? だいぶ現実と
違うようだけど。ん? なんかメールも来てるな。
すぐに電話がかかってきたため出る。
「もしもし」
『なんで切るのよー!!やっぱり小町ちゃんからのメールはホントだったのね!
どういうことか説明しなさいよ!!』
だいぶお怒りのご様子だ。事実はどうあれコミュ障の俺が女子を侍らせられたら
褒めろよ、すげえだろ。
小南は騙されやすい。それでよく烏丸をはじめとした玉狛連中にからかわれているのだ、怒りに任せて関係ない俺の頭にかじりつくのは止めてほしいが。
「確かに女子がいる部活に入ったが、平塚先生の強制入部だ。侍らせるどころか仲良くすらなってない」
『え、そうだったの? あんたいい加減にまともに友達作れるようになりなさいよ。
いつまでも静さんに頼ってちゃダメよ? そんなんだから美人で心優しいあたしとしか
仲良くなれないのよ!』
電話なのに小南のドヤ顔が見えるようだ。
怒りから哀れみによる説教に変わったのはいいとしよう。だが今回は平塚先生に頼った
訳じゃないし、幼馴染といってもそこまで仲良くなった覚えはない。あと心優しいはともかく美人とかいらねえから、自分で言うなよ。
「あー悪い、俺宿題の途中だからもう切るわ」
夜に幼馴染と電話なんてどこのラブコメだよ。それにさっきからキャッチがすげえな、
誰だよ。
『待って!あんたそろそろ玉狛に顔出しなさいよ・・・・・・最近全然来ないじゃない』
「平塚先生も忙しいみたいで全然訓練のお呼びがないからな、行く機会も減る」
『――じゃあ、あたしが訓練に付き合ってあげるわ!それならいいでしょ!』
「よくない、訓練なんてめんどくさい。まあそろそろ行こうとは思ってたんだよ、だから
夏休みになったら宿題持って行くから数学でも手伝ってくれ」
『ホント?! 夏休みに来るのね?! 数学でも何でも任せなさいよ!このあたしが
全部解いてあげるわ!!』
いや全部解いてもらったら宿題じゃねえから。それになんで宿題手伝うの頼まれて
嬉しそうなんだよ。
それから、夏休み初日に玉狛に来いと強制的に約束させられ電話を切った。
そういえば、さっき入ってたキャッチは誰からだろうと確認する。
メール通知 100通
不在着信 7件
は? 前にもこんなことあったぞ。俺はいつも通り冷静だ、常にクール、こんなことじゃ
動揺しない。どうせ平塚先生だろう。
恐る恐るメールの相手を見る。
那須玲
・・・・・・今は防衛任務中だろうか。この状態の那須は間違いなくトリオン体だ。
那須は今までメールを返すのを忘れたって追撃はしてこなかったから安心していた。
とにかくメールを開いてみる。
件名:小町ちゃんから聞きました。
八幡君が部活に入って美少女二人を侍らせてるってどういうことかな?
もちろん私は八幡君がそんなことしないって信じてるけど、八幡君の口から直接聞きたいです。
最近は身体の調子もいいので久しぶりに会いたいな。
でもあまり外出はできないので良かったら私の家でお話したいです。
八幡君の好きなお菓子やMAXコーヒーも用意するよ。今週末は親もいないし
気軽に遊びに来てほしいな。
お返事待ってます(ハートの絵文字)
なんでナチュラルに家に誘うかな・・・・・・熊谷、助けろください。
ちなみに同じメールが100通来ていた。ああ、送信ミスかサーバー的なサムシングかな。
そもそも俺と那須が初めて会ったのは彼女がボーダーに入る前だ。中学の頃、俺が
話しかけても嫌な顔をしなかった唯一のクラスメイト。
病弱だった彼女は学校も休みがちであまり目立つ生徒ではなかったが男子にも女子にも
人気はあった。
当時から俺はぼっちの嫌われ者をやっていたため、人のいないベストプレイスで
休み時間を過ごしていたのだが、そこに急に現れたのが那須だった。俺に気づかないまま何分か窓から外を見続け、帰ろうとしたのか振り向いた瞬間に彼女は膝から崩れ落ちるように倒れた。そのとき俺は目が合ったような気がした。
それから俺は彼女を抱え、保健室に走った。途中、多くの生徒に見られたがそんなことを気にしてる余裕はなかった。那須は病弱だ、事態は一刻も争う。そんな考えが
俺の頭の中を駆け巡った。
今にして思えば、何の病気かもわからない人間を不用意に動かすより、先生を呼んだほうが適切だったと思うが。俺も冷静ではなかったし、知識もなかった。
それから那須はすぐに迎えの車が来て搬送されていった。
この件があってから初めて登校した彼女にお礼を言われ、よく話すようになった。
まだ俺の鋼のぼっち精神は出来上がっていなかったため、初めての女子とのまともな会話に浮かれ那須を好きになった。
そこで俺は那須をベストプレイスに呼び出し、告白した。
「那須、お前のことが好きだ。俺と付き合ってくれ」
彼女は驚いた顔をして、すぐ悲しそうな表情を見せた。
「―――嬉しい。でも友達のままじゃダメかな、私って身体弱いから・・・・・・」
病弱を盾に断られれば、引き下がるしかない。まあ病弱じゃなくても断られていたんだろうが。
だが、俺は諦めなかった。明確な嫌悪感を感じ取れなかった俺はまだ脈があるなどとバカな考えを起こした。
「身体が弱いからなんだってんだ、倒れそうになったら俺がまた助けてやるよ。これからずっと一緒に居て俺がお前を幸せにしてやる」
・・・・・・うぐおおおおおおおおおおお。
思い出すのも辛い!恥ずかしい!背中かゆい!
俺の言葉に那須はまた驚いた顔をした。よくあんな告白をされて引かなかったと思う。
「ごめんね、比企谷君・・・・・・いえ八幡君。私ね、ボーダーに入ることになったの。
そこで元気な身体を取り戻せるかもしれないってお医者さんに言われたわ、だから本部に近い学校に転校することになったの」
そのとき那須は初めて俺を名前で呼んでくれた。だがボーダーに入ると聞いた瞬間、頭が真っ白になった。俺はボーダーが嫌いだと那須に言ってなかったが、身体の弱い那須がまさかボーダーに入るとは思わなかった。
自分勝手な理想を那須に押し付け、まるで那須に裏切られたかのような感覚に陥っていたのだ。
「だからね今はお付き合いはできないけど、学校が変わってもお友達でいてくれないかな。私もっと八幡君のこと知りたいの、それにいつか身体が良くなったら―――」
ボーダーに入る那須が俺のことを知ったらどう思うだろう。
どうせ敵になるなら俺のことを嫌ってくれた方がいい。変に知り合いな分、那須に迷惑をかけるかもしれない。
そこで俺は那須の言葉を遮って、最低な言葉を投げかける。
「友達になんかなれるわけないだろ、さっきの告白は無かったことにしてくれ、じゃあな」
それだけ言って俺は教室に戻った。その日、那須は教室に戻ってこなかった。
次の日には俺が那須にフラれた、逆恨みして那須を泣かせたという噂が学校中に流れていた。
俺が去ってから那須はずっと泣き続け、体調を崩したらしい。そして那須は学校に復帰することなく転校してしまった。
今まででさえ、俺は嫌われ者だったのだ。そこでさらに那須を泣かせ、転校までさせた
となれば、学校中からバッシングを受ける。殴る蹴る、教科書、鞄、靴が無くなるのは
当たり前で机や椅子がない日もあった。だが俺は学校に通い続けた。
途中、ボーダーのA級合同部隊が総力を上げて俺を襲ってきたが全員返り討ちにしたこともあった。
そして3年になるころには直接的ないじめも少なくなり、化け物のように扱われるだけになった。
そして俺はボーダーの那須に出会うことになる。
いつものようにトリオン兵を倒した俺は、これまたいつものように現着したボーダー隊員とかちあった。
珍しく女子二人の編成だ、おそらくスナイパーもどこかにいるだろうが。
「八幡君?」
ふと目の前の女子にそう呼ばれ、顔を見る。
「那須・・・・・・」
そう、中学で俺が傷つけた那須だったのだ。トリオン体だからだろうか、彼女は元気
そうだった。
「あんたが比企谷? 逃亡中のブラックトリガー使いで玲の彼氏って聞いたけど」
「はあ?」
黒髪の気の強そうな女子が俺と那須の間に割って入る。
待て待て!いつから俺と那須が付き合ったんだ!俺は告白してフラれた挙句、那須のことを傷つけたんだぞ? どうしてそうなる。
「私は那須隊のアタッカーで熊谷友子。玲があんたの話ばっかするからどうにかしてくんない? 会えなくて寂しいって言ってたよ」
「く、くまちゃん!恥ずかしいからやめて!八幡君そういうの嫌がるから!」
那須は顔を赤くして黒髪女子に怒っている。なに悠長に自己紹介なんかしてんだよ。
・・・・・・いったいどういうことだ。なぜ那須は否定しないんだ、俺達はあれから会ったことも話したこともないんだぞ。
するとバッグワームをつけた帽子の女子が屋根の上から現れる。
「スナイパーの日浦茜です!わー、彼氏さん素敵です!」
なんで元気に手を振ってんだ、俺は敵だぞ。それとお前はいい奴だ、八幡的にポイント高いぞ。
とにかく誤解を解こう。
「いや俺達、付き合ってないから」
「は?」
「え?」
熊谷と日浦が那須に視線を向ける。俺も那須を見る、彼女は今にも泣きそうな表情をしていた。
「八幡君・・・・・・なんでそんなこと言うの? 私とずっと一緒にいて幸せにしてくれるって
言ったのに、私のこと好きだって言ってくれたのに・・・・・・私がボーダーに入って転校したから嫌いになったの?」
「お、お前どうしたんだよ・・・・・・」
那須のあまりの豹変ぶりに俺は狼狽した。なんだ、ボーダーに記憶操作でもされたのか?
熊谷と日浦も困惑している。
「私ね、ボーダーに入って八幡君のこと知った時に気づいたの。告白してくれた時、
私がボーダーに入るって言ったからあんなこと言ったんでしょ? 大丈夫、私は八幡君
の味方だよ」
さっきまで泣きそうだった那須はすでに薄い笑みを浮かべている。
確かに那須が俺のせいで面倒くさいことにならないように、あの手段をとった。
だが今の方が余計面倒くさいことになっている。俺は手段を間違えたのだ。
「だからね、八幡君は私とずっと一緒にいるの。八幡君を鳥籠に閉じ込めてでも・・・・・・!」
そう言った瞬間、那須は俺に向けてバイパーを放つ。その数と複雑な弾道で、俺の
逃げ道を塞ぐように全方位からの攻撃を受ける。だが俺のシールドがその全てを受け止める。
こんなにバイパーを使いこなしてるのは雪ノ下さんや出水以外で初めてだった。後に聞いたが雪ノ下さんが那須にバイパーを教えたらしい。
バイパーを全て防がれたのが意外だったのか、驚いた顔をした那須はトリオンの塊で
何かをし始める。俺の見たことのない動作だったため、吸収モードに切り替える。
「バイパー+メテオラ、トマホーク」
那須から放たれたそれは最初のバイパーとなんら変わりなく全方位からの攻撃だった。
しかし、着弾と同時にバイパーが爆発したのだ。
これが後に俺がボーダーのトリガーでよく使う合成弾に初めて会った瞬間だった。
バイパーだろうがメテオラだろうが俺は吸収モードなので爆発も全て吸収する。
そして、そのまま那須も吸収した。その時の彼女の嬉しそうな顔は今でも忘れられない。
そこでやっと熊谷と日浦の存在に気づく。彼女達は呆然としていたが俺が話しかけると
我に返ったのか、すごい剣幕で俺に詰め寄ってきた。
俺は事情を説明し、那須を元に戻すためにどうしたらいいかを話し合った。
事情を聞いた二人は俺を軽蔑するような目で見ていたが那須の為なら協力してくれるらしい。
オペレーターを通して、那須も話し合いを聞いていたが、トリオン体じゃない那須は
いたって普通であった。俺が告白のことを謝罪すると彼女は許してくれた。
それから那須とは中学の頃のように普通に話せるようになったが、トリオン体になるとそうもいかなかった。俺に対してだけ、メンヘラが発動するのだ。
もちろんトリガーにメンヘラなんてチップはないため、オプショントリガーではない。
そして那須のメンヘラが発動する度に俺は熊谷に斬られ、日浦に撃たれる、全く効きは
しないが。つまりこいつらに目の仇にされているのだ。
那須隊こわい。
やはり俺の告白相手がメンヘラなのはまちがっている。
タイトルが二つもできたじゃねえか。
昔のことを思い出しベッドでごろごろ悶えていた俺は、那須に返信することなく眠りについた。
これが後々、俺の学校生活に大きく影響するとも知らずに。
・・・・・・そんなフラグあるわけないか。
そして夏休み初日、小南との約束通り俺は玉狛支部に来ていた。久しぶりということで小町も一緒だ。小町はなぜか大きいバッグを持っていた・・・・・・玉狛に泊まるの?
「おー腐り目君、小町ちゃん、久しぶり。ぼんち揚げ食う?」
「あ、迅さんご無沙汰してます。結構です」
「迅さんやっはろー!いただきまーす!ムシャムシャ」
小町ちゃん、その挨拶バカっぽいからやめなさい。それと人からむやみやたらに食べ物をもらわないように。
玉狛に来て一番最初に会ったこの人、何を隠そうボーダーで二人しかいないブラックトリガー持ちのS級隊員、ぼんち揚げの迅さんだ。名前はゆういち? だった気がする。
まあ軽そうな見た目や性格に反してすごい人なのだ。決してぼんち揚げの会社からいくらか貰ってるような人ではない。
「今日は小南に会いに来たんだろ? まだかまだかとずっと待ってたぞー、お熱いねえ」
「いや小南とはそういう関係じゃないですから。失礼します」
この人は何かと俺と小南をくっつけたがる。俺はともかく小南からしたらいい迷惑だろう、ああ小南は俺にすげえ怒ってくるから俺も迷惑だったわ。
「は・ち・ま・ん? 」
おや、小南さんではありませんか。怒ってらっしゃるようですねえ。
・・・・・・どこぞの警部殿の物真似になってしまった。
「おお小南、きたぞ。さっそく宿題を――」
「遅いわよ!!あたしがどれだけ楽しみにしてたと思ってるのよ!!」
「は?」
え? 何を楽しみにしてたの?
「は、じゃないわよ!どら焼きよどら焼き!!」
なんだよどら焼きって、話が見えないぞ。
「比企谷先輩どうも」
「おお烏丸、小南は何を言ってるんだ」
もさもさイケメンの烏丸が俺に挨拶してくる。
「とりまる!八幡がいいとこのどら焼きを持ってきてないわよ!!」
「はい、嘘ですから」
しーーーーん、とした空気が流れる。ああ、また嘘に引っかかったのか。
さて逃げないと―――
「騙したわねーーーー!!!!」
小南がキレて、逃げようとした俺の後頭部にかじりつく。
「いてえからやめろばか!!」
こんな玉狛でのやりとりも久しぶりだ。
あれから落ち着いた俺達はリビングで寛いでいた。
ここにいるのは、木崎さん、小南、烏丸、宇佐美、小町と俺だ。
林藤さんや陽太郎はいないらしい。さっきまでいた迅さんもどこかに出掛けたようだ。
「さて比企谷兄妹も来たし、そろそろ行くか」
そう言ったのは木崎さん、相も変わらずすごい筋肉だ。
しかし聞き捨てならないことを言ったな。
「どこに行くんですか?」
「なんだ聞いてないのか? 一泊二日で四塚市にあるボーダー合宿所に行くんだ」
あれー? 聞いてませんよ俺。じゃあ小町の持ってる荷物は・・・・・・。
そう思って小町を見る。
あ、ダメだ。とぼけた顔してやがる、可愛い。
こうして俺は無理矢理車に乗せられ、延々と小南に奉仕部の話を聞かれた。
「まさか陽乃の妹がいるとはねー。あの女、このこと知ってるのかしら」
不機嫌な表情で小南が呟く。
小南は雪ノ下さんが嫌いだ。まあ俺もあんな強化外骨格を好きになる奴の気がしれないが。
「知ってたら、俺を殺しに来るんじゃねえか?」
「八幡が殺されたら仇はとってあげるわ!」
そう言ってサムズアップする小南、俺は殺される前提かよ。
そういや那須のことを小南に聞いてみるか。
「なあ、那須からこんなメールが来たんだが・・・・・・」
そこからだ。小南の機嫌が突然悪くなり、合宿所に着くなり俺を引っ張って
四塚マリンワールドに来たのは。
今、俺達はウォータースライダーの列に並んでいる。
「なあ、どうして二人だけで来たんだよ。他の奴らも誘わなくて良かったのか?」
「小町ちゃんがあんたと一緒に行けってペアチケットくれたのよ。あんたは
忘れてるだろうけど、もうすぐあたし達の誕生日だからプレゼントらしいわ」
裏で画策してたのは小町か!最近ボーダーより愛すべき小町ちゃんが敵になってませんかね。それに小南の誕生日くらい俺だって覚えてる。
「7月28日だろ。俺とまあまあ近いからそのくらい覚えてる」
「え?!」
心底驚いたような顔を見せる小南。なにその反応ひどくない?
「覚えてたんなら何で毎年メールのひとつも寄こさないのよ!」
「いや、俺はあれであれだからその・・・・・・恥ずかしいんだよ」
本当は毎年プレゼントだけ買って結局渡せず仕舞いなのだ。いくら幼馴染と言っても
女の子にプレゼント渡すとか無理だから。
「それにお前だって俺の誕生日になんにも言って来なかっただろ」
そう言い返すと、あたふた慌てだす小南。
「あ、あたしはちゃんと毎年プレゼントも用意してるしメールだって送ろうと思ってたわよ!ただ文面を考えてたら次の日になっちゃっただけで・・・・・・」
ごにょごにょと段々、尻すぼみになっていく小南。
なんだその可愛い理由。ってかこいつもプレゼント買ってたのかよ、やめろよ意識
しちゃうだろ。
「じゃあ、相殺ってことで。今度玉狛行ったときプレゼントくれよ、俺も今まで買った
プレゼント渡すわ」
「へ? あんたもプレゼント買ってくれてたの?!」
しまった!墓穴掘った!
小南の顔が段々赤くなっていく。俺の顔もめちゃくちゃ赤いに違いない。
照れ隠しに言った言葉が仇になるとは・・・・・・。
お互い無言が続く―――。
「次の方どーぞー!!」
係員に呼ばれる。俺達の順番が来たようだ、助かった。ナイス美人の係員さん。
「では彼氏さんがまず座って、彼女さんを後ろから抱きしめてあげる形にしてください。彼女さんはお尻浮かせないようにしてくださいねー」
全然ナイスじゃなかった。俺達付き合ってないから。こういうのって別々に滑る
もんじゃないの?
八幡やったことないからわかんない!
小南にどうするんだという視線を送る。
「早く座りなさいよ。後の人がつかえてるわ」
さも自分は問題ないみたいなこと言ってるけど顔、超真っ赤だからね? 茹でたタコかよ、アスタキサンチンたっぷりだな。
しぶしぶだが座ると、小南が俺の股の間に腰を下ろす。座ったのを確認し、そっと腰から手を前に回す。
「ひゃうっ!」
おい、なんて声上げてんだ。我慢しろ、周囲に注目されてんだ。さっさと終わらせるぞ。
俺の身体に小南の背中から腰が密着する。これは・・・・・・マジでやばいんじゃね?
スベスベで気持ちいいとか思ってないからね?
「あ、あんまりお腹触らないでよ・・・・・・」
「す、すまん」
そんなことを言われも無理だ、俺の手は小南のへそ辺りで組まれている。後ろから
抱きしめる態勢になってる以上、手は腹に触れる。
「準備はいいですね!では行ってらっしゃーい!!」
係員に押され、滑り始める。最初はゆっくりだが段々加速がついていく。
おおおおおお、意外とスリルがあるな。
「きゃあああああああああああああああああああああ」
小南も俺に抱きしめられてることも忘れ、楽しそうに叫んでいる。
そしてそのままプールに放出される。すげえ勢いだな、もがきながら水から顔を出す。
「ぷはっ!」
小南も水から顔を出し息を吹きだした。
「面白かったわね八幡!」
「ああ、中々良かった」
「はっ!あんた、あたしに触れて良かったとか思ってるんじゃないでしょうねえ・・・・・・」
小南がジト目でこちらを見てくる。俺はさっきの感触を思い出し、小南から目を逸らす。
「ま、まあ今回は特別よ。誕生日プレゼントみたいなものね!感謝しなさいよ」
そう言って、小南もフンと顔を背ける。
・・・・・・小南が誕生日プレゼントって解釈でいいんですかね? うへ、ぐぼあ!
そんなことを考えてると顔面に水をかけられる。
「なに、にやけてんのよ!メテオラ!」
「お、おいやめ、うぽっ」
ただ水をいっぱいかけてるだけじゃねえか。くそ、そっちがその気ならこっちもお返しだ。
「くらえトマホーク!」
俺は両手を使って交互に水をぶっかける。
「きゃっ!、やったわねー!ギムレット!!」
小南は手で水鉄砲を作り、俺に撃ってくる。
「うわっ、お前アステロイドなんか使ってないだろ!ずりいぞ!」
「ふん!今日はたまたま双月じゃなくてアステロイドを入れてたのよ!」
そんなこんなで俺達は泳ぐのも忘れ、水をかけて遊んでいた。
「死にたいわ」
「奇遇だな、俺も同じだ」
四塚マリンワールドから帰るバスの中、俺達は水の掛け合いではしゃいで注目を浴び、
係員に注意までされたことで自己嫌悪に陥っていた。
高校生にもなってなにやってんだ俺、マジで四塚市でよかった。地元で学校の奴に見られてたらと思ったらマジで死んでたわ。ああ俺を知ってる奴なんていないか・・・・・・って訓練で1位になってから認知度が多少上がったんだった。
「ねえ八幡」
「あん?」
気怠そうに窓の外を見ながら話しかけてくる小南。
「あんた、まだ玲のこと好きなの?」
いきなり何を言うんだこいつは。突拍子無さ過ぎて肘掛から肘カクンってなったわ。
「なんでそんなこと聞くんだよ」
「いいから答えなさいよ」
少し語尾が強くなったが、小南は窓の外を見たままの姿勢を崩さない。
「正直、わからん。確かにあの時俺は那須に告白したが今となっては本当に好きだったのか、俺の気持ちは本物だったのかはわからない」
きっと勘違いだろう。優しくされて、話してくれて、俺はそれが嬉しかっただけなのだ。
トリオン体の那須は俺を好きだと言うが、それが本心なのかどうなのかもわからない。
「じゃあ、今は好きな人とかいないわけ?」
今日はぐいぐい来るなこいつ。今までだって小南と恋バナをしたことはあった。
俺が中学で告白してフラれるたびに、小南にバカにされる。そんなことの繰り返し。
「いない、小町は妹だし、戸塚は男だしな」
だから俺はいつものやりとりに戻す。小南との関係を壊さない為に。
「ふん、相変わらずのシスコンぷりね。っていうかその戸塚ってのに会わせなさいよ!」
「あいつは俺だけの戸塚だ、お前には会わせん」
「なんなのよそれー!!」
いつもの調子に戻った小南は怒りながらヘッドロックをかけてくる。
きっと俺は小南や那須とずっとこのままの関係でいたいのだ。ボーダー嫌いな俺も
地に落ちたもんだな。
そこでふと、雪ノ下や由比ヶ浜の顔が浮かぶ。
こいつらとの関係はいったいなんだろう。わからないがこの関係を壊したくない、俺は
無意識にそう思っていた。
そして俺と小南はバスの運転手にも注意され、さらに気落ちして合宿所に帰るのであった。
比企谷八幡定時報告。
とうとう夏休みだ。はちま……比企谷の監視は困難を極める為、任務を一時中断する。
八幡に会いたーーーーーーーーい!!
いつになったら八幡に話しかけれるんだろ。
アニオリはやるつもりがないので四塚市をここで出しました。ただし水着は
八幡と小南のみ。
それとキャラ紹介で八幡と平塚先生のパラメーターは作りました。
遠征艇で遠征艇を撃破できるのかなー。