やはり俺がボーダーに所属しないのはまちがっている。   作:犬ころ大佐

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終わる気配のない千葉村。

千葉村って群馬にあるんですね。


13話(千葉村)

 

迅さんと由比ヶ浜の会話の録音を聞いた俺は宿舎に戻った。

 

他の奴らはまだ騒いでいるが、俺は布団に入って目を閉じている。

周りから見れば寝ているように見えるだろう。

 

ちなみに迅さんはこの部屋にはいない。小南は総武高の女子と同室らしいが、迅さんと

陽太郎は別の部屋らしい。迅さんの部屋に押しかけても良かったが、まずは自分の中で整理したい。

 

録音の内容はこうだ。

 

由比ヶ浜の母親はネイバーで由比ヶ浜はこっちの世界で生まれたらしい。

この場合は由比ヶ浜もネイバー扱いなのか?

 

そして迅さんは母親と由比ヶ浜が殺される未来が見えたから警告に来た。

迅さんのサイドエフェクトは未来予知らしい。なんだそのチート。

ともかく由比ヶ浜が殺される未来なんてのは俺だって見たくない。だが問題はここからだ。

 

 

『ガハマちゃん、腐り目君に打ち明ける勇気はあるか?』

 

 

逃亡中のブラックトリガー使いとは言わなかったものの、こんなことを言えば俺が少なくともボーダー関係者のように思われてしまうだろう。迅さんは何がしたいんだ? まずは俺に相談してくれよ。

 

 

「腐り目君いるかー?」

 

 

まったく、迅さんはいつも裏でコソコソと何かをやってるからな。そういうとこは平塚先生に似たというか……。

 

 

「おっ、腐り目君ぼんち揚げ食う?」

 

 

「もがあっ!!」

 

 

急に口の中に異物が入ってきたのを感じた俺は切磋に飛び起きる。

すると目の前にはいつも通りのニヤニヤした迅さん、口の中にはぼんち揚げが丸々入っていた。いやマジで何してんのこの人。

 

 

 

 

 

 

「それふぇ、なんにょ用でふか?」

 

 

食べ物を捨てるのは忍びないので口の中のぼんち揚げをばりぼり食べながら、迅さんに用件を聞く。

 

 

「ちょっと外で話そうか」

 

 

少し真顔で答えた迅さんは部屋から出て行ったので、俺も後に続く。

 

 

「八幡……?」

 

 

「戸塚、ちょっと迅さんと話してくるから先に寝ててくれ」

 

 

「う、うん・・・・・・」

 

 

何か言いたそうに不安そうな顔をする戸塚を見て、少し胸が痛む。ああ、やっぱり俺は

戸塚が好きだな。

 

 

 

 

 

 

 

そして今、俺はまた森にいる。すぐにでも迅さんを問い詰めたいが、ここは冷静になるべきだ。

 

 

「それで、話ってなんですか? 」

 

 

「いやぁ、実は俺って未来が見えるんだよねー」

 

 

「は? 」

 

 

おいおい、そんな軽いノリでカミングアウトしていいようなことじゃないだろ。

少し探りを入れてみるか。俺がサイドエフェクトを知ってることを迅さんは知らないはずだよな。

 

 

「そういえば迅さんは未来が見えるサイドエフェクトを持ってるんですよね」

 

 

「ああ、そうだよ」

 

 

俺がそれを知ってるのがさも当然のように、躊躇無く答える迅さん。やはり俺の未来も

見えているのか? となると俺のサイドエフェクトは何だ。

よし、この際だ、由比ヶ浜のことも聞こう。

 

 

「由比ヶ浜が死ぬ未来ってのも本当なんですか? 」

 

 

「本当だ」

 

 

これまた躊躇なく答える迅さん。こりゃ俺の未来が見えてるの確定だな。

とりあえず、すべて知られているなら情報収集にシフトしよう。

 

 

「由比ヶ浜はなんで死ぬんですか?」

 

 

これを聞かねば、対策の立てようもない。

 

 

「そうだな、今は人型ネイバーに殺される確率が6割くらいだな」

 

 

人型ネイバー・・・・・・ということはネイバーが侵攻してくるのか。由比ヶ浜の母親も

ネイバーというのなら最低限の自衛手段くらいはあるはずだ。それでも6割という高確率で殺されるというのなら、偶然の被害というより由比ヶ浜の母親を狙って侵攻してくると見るべきだろう。

 

 

「じゃあ由比ヶ浜を守るために俺は何をすればいいんですかね?」

 

 

こればっかりは迅さんの未来予知に頼るしかない。俺に打ち明けさせようとするくらいだ、何かやるべきことがあるはずだ。

由比ヶ浜親子が死なない最善の行動を教えてくれ。

 

しかし迅さんは首を横に振る。

 

 

「腐り目君の未来は俺には見えないよ。おそらくお前のサイドエフェクトが影響しているんじゃないか?」

 

 

なんだと? 迅さんには見えてなかったのか・・・・・・ということは本当に俺のサイドエフェクトは能力無効化なのか? ってことは俺が迅さんのサイドエフェクトを知ってたってことも知らなかったはずだよな。腹芸うますぎだろ。

そこである疑問が浮かぶ。

 

 

「でも見えてないなら、なんで俺に秘密を打ち明けるよう由比ヶ浜に言ったんですか」

 

 

「あー、やっぱりさっきの会話聞かれてたかー。まあガハマちゃん達の未来と照らし合わせた結果さ。腐り目君が何かしてくれるんだろ?」

 

 

そう言ってウインクする迅さん。

未来が見えてないはずなのに俺の行動筒抜けじゃねえか。ってかこれで俺が何かしなくちゃいけなくなった気がするぞ。

 

 

「いやいや、だったら玉狛支部にでも匿ってくださいよ。俺一人で守るとか無理ですよ」

 

 

家には小町もいるんだ。かまくらがいるとはいえ、小町を守りながら由比ヶ浜親子を守るとか明らかに手が足りない。普通の身辺警護でさえ一人の警護に2名以上必要だというのに。

 

 

「わかってるよ。だからガハマちゃんにはボーダーに入ってもらおうと思う」

 

 

……由比ヶ浜をボーダーにか。確かに自衛手段としてトリガーを持つことができるボーダーは最適だろう。

だがボーダーに入る以上、戦闘能力も必要だ。あのおバカな由比ヶ浜に戦闘ができるのか? オペレーターはもっと無理そうだし。

それに俺としては由比ヶ浜がボーダーに入るのは複雑な心境だ。だがあいつの命がかかってるんだ、そんなことは言っていられないか。

 

 

「一応話はつけてあるから腐り目君はガハマちゃん入隊の後押しをしてくれ。それに―――」

 

 

そう言って俺の後ろの森に目を向ける。

 

 

「雪乃ちゃんもボーダーに入隊してほしいんだ」

 

 

「はあっ?!」

 

 

俺はすぐさま後ろを振り返る。

 

 

「気づいていたのね・・・・・・」

 

 

木の陰から雪ノ下が出てくる。まさか聞かれてたのか?

 

 

「話は聞いてただろ? ガハマちゃんの為にどうだい?」

 

 

迅さんに焦ってる様子は見られない。

 

 

「そういうこと・・・・・・あなたの未来を見る力で私が聞いてることもわかっていたのね。

まるであなたの思惑に乗せられているようで不愉快だわ」

 

 

迅さんを睨む雪ノ下。

やっぱりチート能力だろ。マジで俺には効かなくて良かったわ。ああ、今はそうも言ってられないか。

 

 

「雪ノ下・・・・・・」

 

 

「そうね、まず比企谷君のことを教えてもらえるかしら? やっぱりボーダー隊員なの?」

 

 

もう話すしかないのか・・・・・・だが俺の正体を知った雪ノ下はどう思うだろうか。俺は

玉狛の奴らと交流はあるがボーダーの敵だ……いや、今さら何を迷ってるんだ。俺と雪ノ下はただの部活仲間だ。今さら正体がバレようが関係ない。

 

 

「腐り目君」

 

 

そんなことを考えていると迅さんに声をかけられる。

 

 

「雪乃ちゃんは大丈夫だよ」

 

 

未来予知を知った今、迅さんの言葉は何故か俺を安堵させる。

 

 

「俺は・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど・・・・・・まさかあなたにそんな大それたことができるとは驚きだわ。さすがに

実力派エリートぼっちを名乗るだけのことはあるわね」

 

 

「いやいや雪乃ちゃん、それ俺と混じってるから。俺はぼっちじゃないよ!」

 

 

俺は覚悟を決めて、すべてを話した・・・・・・はずなんだが。なんだこの緩い空気感・・・・・・。

 

 

「・・・・・・雪ノ下、お前は俺のことを知ってなんとも思わないのか?」

 

 

「そうね・・・・・・これであなたの不審な部分に合点がいったわ」

 

 

「それだけか? 俺はボーダーの敵だぞ」

 

 

雪ノ下はため息をつき、こめかみに手をあてる。

 

 

「あなたは私になんと言って欲しいのかしら。逆にあなたのような捻くれた生き物がボーダーに所属していたら、そのほうがおかしいと思うのだけれど」

 

 

「おい、俺より捻くれた奴なんてボーダーにもいるぞ」

 

 

唯我とか菊地原とか色々な。

 

 

「それ菊地原のことか?」

 

 

ニヤニヤしながら正解を言うんじゃねえよ迅さん。

 

 

「あなたは私の家がボーダー関係だから心配しているのかもしれないけれど、私は別に

ボーダーに入ることが絶対とは思っていないわ。それに、あなたや由比ヶ浜さんと過ごした数ヶ月を私は存外気に入っているのよ? 今更、あなたがボーダーから逃げているとか、由比ヶ浜さんがネイバーだと言われても態度を変える気はないわ」

 

 

「お、おう・・・・・・そうか」

 

 

一瞬ポカンとしてしまった。あの氷の女王雪ノ下がまさかこの関係を気に入ってるとは

思わなかった。由比ヶ浜だけならわかるが、そこに俺も含まれてるのか・・・・・・。

え? じゃあなんであんなに毒舌なの?

 

 

そんなことを考えていると迅さんがパンと手を叩いた。

 

 

「さて、後はガハマちゃんも含めて三人で話してくれ。ただし明日は無理だけどな」

 

 

「明日はキャンプファイヤーと肝試しですもんね」

 

 

「いや、おそらくだけど明日の夜にネイバーの襲撃がある」

 

 

「?! まさか由比ヶ浜を狙ったネイバーが襲ってくるんすか?!」

 

 

おいおい、さっきから重要な情報を軽いトーンで言うんじゃねえよ。

警戒区域外の外も外の千葉村に襲撃なんてどう考えてもイレギュラーだ。となるとイレギュラーな存在の由比ヶ浜を直接狙って来たと考えるべきだろう。

 

 

「目的まではわからないな。ただ小学生が何人か巻き込まれる可能性があるな」

 

 

「だったら中止して全員帰らせましょうよ。千葉村封鎖でもして待ちかまえればいいじゃないですか」

 

 

襲撃がわかってるなら、林間学校なんてやってる場合じゃないだろ。

だが迅さんは少し苦い顔をする。

 

 

「それが出来ないんだ。ここは群馬、三門市やその周辺都市とは勝手が違う。民間組織の俺たちがここを封鎖しようと思ったら、時間がかかりすぎるからな」

 

 

なんだと、千葉村は治外法権じゃなかったのか。むしろ群馬は千葉だと思ってたわ。

 

 

「私から父に頼んでみましょうか? あの人なら或いは……」

 

 

すると雪ノ下が不安気な表情で提案する。マジか! アイアンマン見れんのか?

 

 

「雪乃ちゃん……君の言葉じゃ、あの人は動かないよ」

 

 

「――っ! 」

 

 

悲しそうな迅さんの言葉にビクリと身体を震わせ俯く雪ノ下。

雪ノ下家も複雑なんだろうか。まあ雪ノ下陽乃、雪ノ下雪乃の親だもんな。俺が小さい頃に会った時は優しいおじさんのイメージがあんのは何でだ。

 

 

「そういう訳で林間学校を中止には出来ないけど、ボーダー上層部は少数部隊による隠密作戦の実施を決定した」

 

 

「隠密作戦? 」

 

 

「ああ、すでに風間隊、駿、香取隊が展開している。小学生の護衛には小南とレイジさん、京介、そして万が一の為に荒船隊が狙撃支援でカバーする予定だ」

 

 

えええ、いつの間にかボーダー隊員がそんなに入り込んでたのかよ。

 

風間隊は全員がカメレオンを使ってるから、こういう作戦に向いてるな。風間さんって

真面目そうだから、事あるごとに俺を捕まえようとしてくるし正直苦手なんだよな。菊地原は言うまでもないし、歌川は知らん。

 

そして緑川、そもそも草壁隊ってのを見たことがないんだが緑川だけぼっちなの? まぁ、あいつはなんだかんだ言っても可愛い後輩みたいなとこはあるからぼっちな訳ないか。いつも米屋とかと一緒にいるし。

鶴見といい、緑川といい、最近の年下は俺を呼び捨てにすんのが流行ってんのか? まったく、千佳や三雲を見習って欲しいもんだ。

 

次に香取隊か……確か染井がいるとこだよな? 他のメンバーはあんまり知らんけど染井とは4年以上前に会っている。

 

両親がブラックトリガーになって助かった俺は旧ボーダーの人たちと救助活動の手伝いをしていた。

その時に助けたのが染井だ。母親しか救い出せず、罪悪感に駆られて動けなかった俺にビンタを食らわせ、隣の家に住んでいる友達を助けるのを手伝えと言ってきた。家族が死んでも、両手がボロボロになっても、泣きもせずにただただ瓦礫を掘る彼女の姿は今でも覚えている。総武高の入学式であいつを見かけた時は驚いたが、今ではメールや電話でたまにやり取りをするようになった。だが学校ではお互いに一切無関心を装っている。そもそも染井は会っても話しかけてこないし、俺から話しかけるような無粋な真似はしないからな。前に教えてないのに奉仕部入部のことを聞かれたときは焦ったな。なんか不機嫌そうだったし。

 

 

「腐り目君にも頼みがあるんだ。戦闘後にトリオン兵の残骸を吸収してほしい、証拠隠滅ってやつだな」

 

 

「まぁ、そのくらいならいいっすよ」

 

 

「さんきゅ。じゃあ明日は俺たち居ないから、総武高の皆で小学生のお守りよろしく」

 

 

そう言って、どこかへ去って行く迅さん。おそらく宿舎にはもう戻らないのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宿舎への帰り道、俺と雪ノ下は並んで歩いている。雪ノ下は未だに俯いているし会話は一切無い。

本来なら会話など無くても問題無いが、今は空気が痛い。

 

 

「なぁ雪ノ下、ボーダーに入るのか? 」

 

 

父親の話題に触れないように今後のことを聞いてみる。俺としては雪ノ下と由比ヶ浜がボーダーに入ってもらいたい。奉仕部は解散になるだろうが、由比ヶ浜も雪ノ下がいれば安心するだろう。

できれば玉狛支部に入って欲しいが雪ノ下家の関係上、本部で大事に大事に囲い込まれるだろうな。

 

唯我や雪ノ下さんみたいにA級のチームに入れてもらえれば安全度は増すと思うが、それは一般隊員でしかもネイバーの娘である由比ヶ浜には適用されないだろう。殺される未来が見えているのは雪ノ下じゃなくて由比ヶ浜なのに。

 

 

「え……あ、そうね。私が入るかは由比ヶ浜さん次第なのだけれど、私個人としては入隊に問題は無いわ……父は私が何をしようと興味など無いのだから」

 

 

うわ、こいつ自分から地雷原に招き入れやがった。そんなことを言われたら聞くしかねえじゃねえか。

ってか思い出したけど雪ノ下の親父さんって良い人だよな? 小学生の時に会ったきりだけど、確か俺と小町を養子にするとか言ってたのを覚えてる。あの時は知らんおじさんにそんなこと言われてめっちゃ警戒してたけど。

いや、もし養子になってたら義姉が雪ノ下さんとか地獄かよ。玩具にされて終わりな未来しか見えない。

って迅さんのサイドエフェクトごっこしてる場合じゃなかった。

 

 

 

「話せる親がいるだけいいだろ。俺なんか両親、ブラックトリガーになっちまったぞ」

 

 

そう言ってブラックトリガーを見せる。母ちゃんはともかく親父が生きてたらまともに会話してくれてたのか気になるがな。

すると雪ノ下はトリガーをジッと見つめたかと思うと、トリガーごと俺の手を両手でそっと包み込むように握る。

 

は?

 

 

「……何してんのお前」

 

 

「あなたのご両親にご挨拶しようと思って」

 

 

「は? 」

 

 

ああ、今度は口に出ちまった。え、何? お前ハムの人なの? 夏の元気なご挨拶なの?

 

 

「お歳暮ありがとな」

 

 

「意味がわからないのだけれど……」

 

 

ついつい口に出しちまった俺にもわかんねえよ。

 

 

「ってかいつまで手、握ってんの? 恥ずかしいんだけど」

 

 

せっかくもらったハムもお前のひんやりした手のおかげで霜がついてんぞ。

 

 

「……もう少しだけこのままでいさせてくれないかしら」

 

 

どうやらこいつは本気で俺の両親と話せるらしい。そんなに顔を真っ赤にして何を話してるやら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「八幡? 雪ノ下さん? 」

 

 

「―――うわっ! 」

 

 

しばらく俺の手とトリガーを雪ノ下のしたいようにさせていたら、急に後ろから女に声を掛けられた。

すぐに雪ノ下の手を振りほどき、トリガーをしまう。雪ノ下もハッと我に返ったように手を引っ込める。

 

誰だよ、いったい……って

 

 

「……鶴見か」

 

 

そこにはぼっち小学生、鶴見留美がいた。

いろんなことがありすぎて存在を忘れかけていたが、こいつがハブられてる状況をどうにかしようとしてたんだったな。明日は出来れば他の小学生と一緒に居てもらいたいが。

 

 

「鶴見じゃない。留美って呼んで八幡」

 

 

「なんでだよ。ってか雪ノ下はさん付けで俺のことは呼び捨てかよ」

 

 

「私が八幡って呼びたいから、八幡も留美って呼んでいいよ」

 

 

「へいへい、ありがとな鶴見」

 

 

そう言うと、むっとした顔で俺を睨む鶴見。ふっ、まだまだ甘いな。雪ノ下の顔面の毛細血管が全て切れんばかりの睨み付けに比べたら子供子供。赤子もいいとこだ。

 

 

「そこのロリ谷君のことは置いておくとして、何故鶴見さんがここにいるのかしら? こんな時間に、しかも一人で外に出るのは感心しないわね」

 

 

おい、誰がロリ谷だ。それじゃ俺がロリみたいじゃねえか。ロリ八幡とか需要あんのか?

しかし、さすが雪ノ下。睨みがまさに氷の視線だ。鶴見も雪ノ下に睨まれて萎縮している。

 

 

「そうだ。せっかく会ったんだから少し話さねえか? 」

 

 

「話? 」

 

 

「……比企谷君? 」

 

 

鶴見はきょとん顔、雪ノ下は犯罪者を見るような目で俺を見てくる。いや違うからね?

鶴見には聞こえないよう、小声で雪ノ下に話しかける。

 

 

「クラスでハブられてる鶴見をどうするかってことだ。本人が居た方が話が早い」

 

 

「何か解決策が浮かんだのかしら」

 

 

「あぁ……なぁ鶴見、ボーダー入らねえか? 」

 

 

俺の言葉を聞いて、何を言われたかわからなかったのだろう鶴見は一瞬呆けた顔になる。

 

 

「私がボーダー? なんで? 」

 

 

「鶴見さんまでボーダーに誘うなんて、貴方いつからボーダーのスカウトマンになったのかしら」

 

 

そう考えるとこれから由比ヶ浜をボーダーに入隊させて、雪ノ下、鶴見まで入隊させるとか俺ボーダーに貢献しすぎだろ。なんなら俺の手配書を消して、自由の保障を求めてもいいレベルだ。

 

 

「クラスでハブられてる状況を打開するにはボーダーに入るのが一番だ。それに防衛任務で学校休むとかちょっとアイドルっぽいだろ? すぐにクラスの人気者になって今までお前をハブってた奴らが掌を返したようにちやほやしてくれるぞ」

 

 

ネイバーを倒して本気で三門市を守ろうなんて奴はボーダーでもどれくらいいるんだろうな。

ちょっとしたゲーム感覚でやって学校で人気者になろうって考えるアホ共を今まで散々見てきたからな。

 

 

「能力次第で戦闘員にもなれるし、怖いならオペレーターって手もある。しかもA級になれば給料も出るらしいぞ」

 

 

ぶっちゃけA級云々は夢のまた夢だろう。精々、B級で小遣い稼ぎするくらいがちょうどいいんじゃね?

そもそもランク戦の仕組みとかもよく知らねえからな。とにかく勝てば昇格だろ。まず二宮さんと影浦先輩をノーマルトリガーで倒すとか無謀もいいとこだと思うけどな。

 

 

「ボーダー……八幡もボーダー隊員なの? 」

 

 

「いや、俺は違う。俺はボーダーに入れないんだ」

 

 

「彼は小学生の頃からボーダーに入らずにネイバーと戦っているのよ」

 

 

「おいっ!」

 

 

何バラしてんだ雪ノ下! お前と違って鶴見は完全な一般人だぞ。まぁ確かにボーダーじゃない俺の情報は機密扱いじゃないのかもしれんが、鶴見がそれを知って危険が及んだらどうすんだ。

昔、小町が俺の妹だと知ったボーダーの奴が小町を狙ったことがあった。当然カマクラが返り討ちにしたし、忍田さんや平塚先生にとっちめられて記憶封印の上、除隊処分になったらしいが。何の関係もない鶴見がボーダーに狙われたりしたら目も当てられない。

 

 

「……そうなんだ。八幡って私に似てるって思ってたけどホントはすごいんだね」

 

 

そう言って悲しそうに俯く鶴見。

違うんだ、俺はすごくなんかない。ただ逃げてるだけだ。ボーダーに入ったら俺のブラックトリガーが取り上げられるかもしれない。俺の存在価値なんて両親が遺してくれたブラックトリガーを使えることだけだ。俺は小町を守る力を失うのが怖い、小町に見捨てられるんじゃないかと怯えてる……つまりは自分を守るために戦ってるだけなんだ。

 

 

「そうね、彼はすごいわ。私も父や姉が戦っているのに、ボーダーにも入らず何もしていなかったわ。でも彼のことを知って、私も彼と一緒に戦おうと決めた。貴女はどうするの? このまま行動を起こさずに卒業するまで逃げ続けるのかしら? 」

 

 

雪ノ下の言葉が俺の心に突き刺さる。やめろ雪ノ下。今も昔も逃げ続けてるのは俺だ。

それにお前は由比ヶ浜次第だと言っただろ。やけに雪ノ下は鶴見のことを気にかけてるな。

 

 

「……八幡、雪ノ下さん、私ボーダーに入りたい。帰ったらお父さんとお母さんに聞いてみるね」

 

 

「そう、9月の入隊日に会えることを楽しみにしているわね。貴女とならチームを組みたいわ」

 

 

どうやら鶴見はボーダーに入ることを決めたらしい。まぁ親が何と言うか次第なんだが。

別にボーダーに入らなくても今の状況を打開する手段はあるはずだ。それを俺は由比ヶ浜と雪ノ下の為に少しでもしがらみのない人材をボーダーに入れようと、鶴見の選択肢を限定させたのだ。

 

 

「そうか。雪ノ下、悪いが鶴見を宿舎まで送ってくれ。小学生のとこは女子の宿舎と近かったろ」

 

 

「わかったわ。貴方はどうするの? 」

 

 

「もう少し風に当たってから寝る」

 

 

もう頭の中がぐちゃぐちゃだ。俺の最善の行動はなんだ……教えてくれよ迅さん。

 

 

「おやすみ、八幡」

 

 

「おやすみなさい、比企谷君」

 

 

雪ノ下と鶴見が並んで去っていく。こうして後ろ姿を見ると姉妹みたいだな。

どこか鶴見は雪ノ下や由比ヶ浜に似てる気がする。何がとは言えないが、ただそんな気がした。

 

 

 

 

 




次話も完成してますが、まだ終わりませんよ。

とにかく9月の入隊日までにボーダーにぶちこまないといけないんでスケジュール詰まってます。
まあ過去編を読んだ方はわかると思いますが、ゆきのんもガハマもすんなり入隊できます。なんでだろー。

あと香取ちゃん視点は千葉村終了話に全部書きます。
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