やはり俺がボーダーに所属しないのはまちがっている。   作:犬ころ大佐

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3話

放課後、奉仕部入部が決まった俺は部室の前に立っていた。

 

正直もう二度と行きたくないんだが先生には恩もあるし、ここは顔を立てて徐々にフェードアウトしよう。そう決意し、扉を開く。

 

 

「うっす」

 

 

すでに座って本を読んでいる雪ノ下に軽く挨拶をして椅子に座る。

 

・・・・・・

 

あれ・・・・・・雪ノ下さん無視ですか。俺の懇親の挨拶を無視ですか。

ああ本に集中してるんだな。

 

間違いない。

 

 

「こんにちは。もう来ないかと思ったわ。もしかしてマゾヒスト?」

 

 

「違う」

 

 

反応があったと思ったらこのざまである。

 

 

「もしかしてストーカーかしら?」

 

 

「なんで俺がお前に好意がある前提なんだよ」

 

 

「違うの?」

 

 

なにきょとんとした顔で聞いてんだよ。んな訳ねえだろ。

ってか容姿に騙されがちだが、こいつも結構アレな奴だな。

 

 

「お前さあ、友達とかいんの?」

 

 

「そうね。まずどこからどこまでが友達か定義してもらってもいいかしら」

 

 

「いやもういいから。それ友達いないやつのセリフだから。」

 

 

意外にも、というかやはりというかこいつには友達はいないらしい。

 

 

「私に友達がいないのは私についてこられる人間がいないからよ」

 

 

「どういうことだよ」

 

 

「私って昔から可愛かったから。近づいてきた男子はたいてい好意を寄せてきたわ」

 

 

そう言って雪ノ下は読んでいた本を閉じ窓から外を見つめる。

俺は当然真顔だ。苦虫を噛み潰した表情なんて毛ほども出ていない。

 

ほんとだよ?

 

 

「小学校の頃、60回ほど上履きを隠されたことがあったわ。内50回は女子に

やられたの。それにちょうどその頃ネイバーが侵攻してきたでしょ。家は当時から

ボーダーのスポンサーをやっていたからそれを知ったクラスの女子に直接的な

いじめを受けそうになったわ。このネイバーの被害は私のせいだそうよ。ボーダーが

いなかったらもっと被害が出ていたでしょうに。まあほぼ全員、お金をもらって

引っ越して行ったわ」

 

 

「そうか・・・・・・大変だったんだな」

 

 

雪ノ下にそんな過去があったとは。確かに当時も被害にあった市民がボーダーに怒りをぶつけていたな。

雪ノ下さんもボーダーのスポンサーである雪ノ下建設のイメージアップの為にボーダーに入隊したらしいし。まあ唯我と違って、実力も才能もA級トップクラスなのが腹立たしいが。

それに当時は俺もクラスの連中のストレスのはけ口になっていた。

常時トリオン体だったからまったく痛くなかったが。あいつらの化物を見るような目が今でも思い出される。

 

 

「ええ、大変よ。でも仕方ないと思うわ」

 

 

雪ノ下は俺を一瞥し、苦笑した表情を浮かべてそう言った。

 

 

「人は皆、完璧ではないから。弱くて醜くてすぐに嫉妬して蹴落とそうとする。

不思議なことに優秀な人間ほど生きづらいのよ。そんなのおかしいじゃない。

だから変えるのよ。人ごとこの世界を」

 

 

えええ。

 

世界を変えようとしてる人間が毎日空き教室で本なんか読んでていいんですかね。

 

 

「お前、努力の方向性がぶっ飛びすぎだろ」

 

 

「それでもあなたのように逃げ続けるよりマシだと思うけど。そうやって弱さを

肯定するところ、嫌いだわ」

 

 

雪ノ下は持つもの故の苦悩を抱えている。それを隠してごまかして生きていくことをしない。自らに決して嘘をつかない。俺は正直そんな彼女が羨ましかった。

 

彼女のような生き方がしたい。だが状況がそれを許さない。逃げて逃げて自分を偽って生きている現状があまりにもみじめに感じてしまう。

 

 

コンコン

 

 

「どうぞ」

 

 

「し、失礼しまーす」

 

 

そんなことを考えながら落ち込んでいると知らない女子が入ってきた。

 

依頼者か?

 

 

「平塚先生に言われて来たんですけど・・・・・・えっ!なんでヒッキーがここにいんの?!」

 

 

「はあ?」

 

 

ヒッキーって俺のことか?誰だよこいつ。染めた髪、胸元を開けた制服。完全にクソリア充じゃねえか。こんな知り合いボーダーにもいねえよ。

 

 

「2年F組、由比ヶ浜結衣さんね。座って。そこの置物のことは触れなくていいわ」

 

 

そう言って彼女に椅子を出す雪ノ下。俺はマスコットかなんかか。デフォルメされたら

さぞ見栄えがいいだろうよ。ってかそんなことよりこいつ同じクラスかよ。

 

しかもよりによって今度は―――

 

 

「唯我の姉かよ」

 

 

「「は?」」

 

 

二人同時?え、なんかマズイこと言った?もしかして前妻の娘とか複雑な関係?

 

そんなことを考えていると雪ノ下が頭に手を当てながら言った。

 

 

「あなたねえ、耳まで腐ってしまったの? 彼女は由比ヶ浜さんよ。唯我君ではないわ。

あなたって妙にボーダーに詳しいわね。訓練も体験したみたいだし、入りたいのかしら?」

 

 

「ヒッキー、ボーダー入るの?!」

 

 

「入らねえし、詳しくもない。ただ有名な部隊の面子は覚えてるだけだ」

 

 

あぶねえ。勘違いで墓穴掘るところだった。

 

 

「ボーダーに入ればあなたも少しは更生できるかも知れないわね。あなたのような

存在が受け入れられればの話だけれど。」

 

 

「まあ無理だろうな。俺が入隊したらすぐにA級に上がって他の奴らから嫉妬される

まで想像できる」

 

 

「荒唐無稽な話もそこまでいくと笑えないわね」

 

 

「なんか・・・・・・楽しそうな部活だね!!それにヒッキーよく喋るし!」

 

 

「これのどこが楽しそうに見えたんだ。あと俺は普通に喋る」

 

 

キラキラした目で俺と雪ノ下を交互に見てくる由比ヶ浜。そんな笑顔で見ないで。

好きになっちゃうからね。勘違いダメ絶対。

ってか雪ノ下さんもちょっと照れてませんか?

 

 

「そ、それで由比ヶ浜さん。話を戻すけど何を依頼しに来たのかしら」

 

 

「えっ?!えっと・・・・・・その・・・・・・」

 

 

今度は恥ずかしそうな顔でこっちをちらちら見てくる由比ヶ浜。だからやめてね?

 

 

「比企谷くん」

 

 

「飲み物でも買ってくる」

 

 

ボスから出てけと目で合図された。ちなみに氷のような冷たい目線だ。出てけじゃなくて死ねかもしれん。とにかくさっさと教室を出よう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今自販機の前にいる。マッ缶とあいつらには何を買おうか。

 

 

「比企谷か、久しぶりだな」

 

 

「ああ村上先輩ですか。どうも」

 

 

振り向いた先にいたのは鈴鳴支部の村上鋼先輩だ。なんかいつも以上に暗いな。

 

彼はボーダーながらあまり俺に敵対心を抱いていない。というか鈴鳴支部は玉狛と合同任務が多く、なぜか連れて来られた俺とも面識があり敵という認識が薄いのかもしれない。たまに俺の討伐任務と称した訓練に誘われるため、そうやって上手いこと本部と折り合いをつけているのだろう。

 

それに学内で襲われることはない。

 

いかにボーダーといえども平塚先生のいる総武高校で戦闘行為をすれば問答無用の鉄拳制裁があるため学内のボーダー隊員は直接的なちょっかいはかけてこないのだ。

だから校内では平塚先生の進言もあり、生身だ。

 

 

「比企谷、ちょっと時間あるか?」

 

 

「すんません。俺部活中なんですよ。だからすぐ戻らないと」

 

 

「お前が部活?・・・・・・そうかじゃあまた今度にさせてもらう」

 

 

「平塚先生にちょっと。また訓練すか?」

 

 

「ああ・・・・・・なるほど。いや今回は俺だけだ。それに少し相談がある。

っとすまん部活中だったな。じゃあな」

 

 

軽く挨拶を交わし、去っていく村上先輩。

 

それにちょっとって言っただけでわかられる平塚先生っていったい。あんた意外と人望ないのん?

ま、それはともかく村上先輩が俺に相談? あの人、俺が敵ってこと忘れてんじゃないだろうな。ボーダー辞めたいってんなら大歓迎だが来馬さん達がいるからそれはありえないな。

 

―――やべっ。結構時間経ってる。そろそろ戻らないと雪ノ下にどやされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クッキー作り?」

 

 

部室に戻った俺は雪ノ下の罵倒もそこそこに家庭科室に移動していた。

 

 

「手作りクッキーを食べて欲しい人がいるそうよ。でも自信がないから手伝って欲しい

というのが依頼よ」

 

 

雪ノ下がそう言うと、由比ヶ浜が一段とモジモジした表情でこちらを見ていた。

だからやめろっての。きょどっちゃうだろ。それにリア充の癖にえらく普通な依頼だな。

 

 

「そんなの友達に頼めよ。お前いっぱい友達いんだろ」

 

 

「それはその・・・・・・あんまり知られたくないし。こんなマジっぽいの友達

とは合わないから・・・・・・それに!この部って生徒のお願い叶えてくれるんでしょ!」

 

 

「いいえ、奉仕部はあくまで手助けするだけ。飢えた人の魚を与えるのではなく、獲り方を教えて自立を促すの」

 

 

「なんか・・・・・・すごいね」

 

 

俺は魚の獲り方すら教えてもらってませんがね。

 

 

「で、俺は何をすればいいんだ?」

 

 

「味見役をお願いするわ」

 

 

よく小町とお菓子作りをするがあれってモチベーションがないと、作ろうとする気さえなくなるんだよな。まあ小町がいればパティシエばりに凝ったスイーツを作るのもやぶさかではないが。まあクッキーを作らされると思ったが味見役なら楽でいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなことを思ってた1時間前の俺にバカヤローと言いたい。

 

俺の目の前にあるクッキー? いやいやこれは木炭だ。焚き火でクッキーを焼こうなんてワイルドだな。

まずは1時間かけて木炭から手作りするあたり彼女の熱意が伝わってくる。

 

そんな俺の隣では雪ノ下が机に突っ伏している。完全敗北だな。

 

 

「どうしてここまでミスを重ねられるのかしら・・・・・・」

 

 

そう、この木炭はクッキーを作ろうとして生み出された物なのだ。

 

卵の殻は入ったまま、粉はダマだらけでバターは固形だった。これだけならまだ予想の範疇だ。

だがこの焦げたような黒さの原因はなんだろうか。

オーブンは自動なので焦げるはずがない。この黒さはこれでもかと入れられたコーヒーの粉だ。なぜか由比ヶ浜は隠し味と言って大量のコーヒー豆を挽いてぶちこんでいた。

彼女は30分かけてコーヒー豆を電動ミルで挽いていたのだ。

これがどれほどの量かおわかりいただけるだろうか。それを止められなかった俺達にも責任はあるが、彼女の努力はまちがっている。

 

 

「完全に毒見だな」

 

 

「毒じゃないし!ヒッキー超失礼だし!」

 

 

「・・・・・・死なないかしら」

 

 

「雪ノ下さんまで!!」

 

 

由比ヶ浜はふてくされたように喚いているが、もう料理をしない方がいいだろう。これを渡される奴にはさすがに同情してしまう。

 

 

「やっぱりあたし、料理とか向いてないのかなあ。こんなんじゃ才能とか

なさそうだし・・・・・・」

 

 

そう言った由比ヶ浜は俯いてしまった。

 

 

「解決方法は努力あるのみよ。由比ヶ浜さん、あなたさっき才能がないって

言ったわよね。その認識を改めなさい。最低限の努力もしない人間には才能が

ある人を羨む資格はないわ」

 

 

「で、でもさあ。最近みんなやんないって言うし・・・・・・」

 

 

「その周囲に合わせようとするのやめてくれるかしら。ひどく不愉快だわ。

自分の不器用さの遠因を他人に求めるなんて、恥ずかしくないの?」

 

 

うわあ・・・・・・雪ノ下きっつ。俺まで泣きそうになっちゃった。絶対由比ヶ浜泣くだろ。

 

 

 

「か、かっこいい!」

 

 

 

「「はあ?!」」

 

 

おいおい驚きすぎて雪ノ下とハモッちまったじゃねえか。雪ノ下は恥ずかしかったのかこっちを睨んでいる。落ち着け。合唱コンクールと一緒だ。二人だが。

 

それとは関係なしに由比ヶ浜は真剣な表情で雪ノ下を見つめている。

 

 

「建前とか全然言わないんだ。そういうのかっこいい!」

 

 

「は、話を聞いていたのかしら・・・・・・私結構キツイこと言ったつもりだけど」

 

 

「確かに言葉はひどかったけど、本音って感じがするの。あたし・・・・・・人に

合わせてばっかだったから。ごめん。次はちゃんとやる!」

 

 

「正しいやり方教えてやれよ。結果はどうあれコーヒー豆を挽いてた由比ヶ浜は

努力もしてたろ」

 

 

「ヒッキー!!」

 

 

「まあ喫茶店でもやるんだな」

 

 

「それだと軽食で被害者が出るわ」

 

 

「二人ともひどいよ!あとヒッキーまじできもい!!」

 

 

なんだよ。俺がフォローしたと思って嬉しそうにしてたじゃねえか。

 

 

「では比企谷君。クッキーを作っている間にさっき作った木炭を片付けておいて

ちょうだい。捨てるのは忍びないからちゃんと食べるのよ。毒見役さん」

 

 

「お前、由比ヶ浜に謝れよ」

 

 

こいつ笑顔で何言ってんだよ。木炭って認めちまってるし。

 

 

「ヒッキーふぁいと!すぐにおいしいクッキー作るからね!」

 

 

仕方ねえ。食うか。

 

 

ガリッ。

 

 

苦えええええええええ!なんだこれ!野草だったら食っちゃダメな苦さだぞ。

 

苦味は毒だ。致死量10gだ。これはやばいぞ。ちまちま食ってても埒があかねえ。

 

もう全部一気食いだ!うおおおおおおおおおおおおおおお!!

 

あれ・・・・・・意識が―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと目が覚める。あれここはどこだ。確かクッキーを食って・・・・・・。

 

そうだ気絶したんだ。外はもう暗くなりはじめている。

 

 

「起きたのね。」

 

 

「うおっ!」

 

 

振り向くと雪ノ下が本を読んでいた。由比ヶ浜の姿はない。

俺を待っててくれたのだろうか。

 

 

「由比ヶ浜は?」

 

 

「彼女はもう帰ったわ。あなたにお礼を伝えて欲しいと言われたわ」

 

 

「そうか。待たせて悪かったな。帰るか」

 

 

そう言って起き上がると何かが落ちた。

 

ん?クッキーの入った袋?

 

 

「ひ、比企谷君。それは私が作ったクッキーよ。あなたが気絶したのは間接的には私のせいなのだから、そのお詫びよ。有り難く食べなさい」

 

 

雪ノ下はこういうことに慣れていないのだろう。顔を真っ赤にしてそう言った。

 

 

「お、おう。そ、そうか。あ、ありがと・・・・・・」

 

 

やべえ。すげえきょどった。直接的な原因は由比ヶ浜って言いたいのかとか上から目線とかつっこむことすらできなかった。初めて小町以外の女子からお菓子貰ったぞ。

 

あ、平塚先生は女子じゃないんで―――ドゴッ!

 

 

「もう下校時刻過ぎてるぞ!戸締りはするから早く帰ればかもん!」

 

 

いってえええええええ!!平塚先生、あんたエスパーですか。

ってか生身なんで拳骨は勘弁。

 

 

こうして俺の奉仕部最初の依頼は終わった。

 

 

雪ノ下のクッキーめちゃめちゃうめえぞ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日放課後。

 

今日も今日とて奉仕部だ。まあ座って本読むくらいしかやることないんだが。

 

 

コンコン

 

 

お、また依頼が―――

 

 

「やっはろー!!」

 

 

なんだその挨拶・・・・・・って由比ヶ浜じゃねえか。

 

 

「何か?」

 

 

「あ、あれ? あまり歓迎されてないっぽい? 雪ノ下さん、あたしのこと嫌い?」

 

 

「いいえ。でもちょっと苦手かしら」

 

 

「それ女子の間じゃ同じ意味だからね!!」

 

 

相も変わらずリア充はうるさいな。

 

 

「で、何か用かしら」

 

 

「この間のお礼!クッキー作ってきたの!」

 

 

そう言うと雪ノ下の隣に座る由比ヶ浜。

クッキーって単語聞いて露骨に嫌そうな顔すんなよ。

 

 

「わ、私あまり食欲がないの・・・・・・」

 

 

そりゃ俺が気絶したの見たんだから食欲も湧きませんよね。

ってか作り方教えたんだろ。なら大丈夫・・・・・・と言えないところが怖いな。

 

 

「いやあ、作ってみると楽しいんだよねー。お弁当とか作っちゃおうかなあ。

あ、でさゆきのん!部室で一緒にお弁当食べようよ」

 

 

「い、いえ私は独りが・・・・・・というかゆきのんって私のことかしら・・・・・・」

 

 

早口で捲し立てる由比ヶ浜に辟易する雪ノ下。うむ悪くないゆるゆり空間だ。

 

だがこんな空気に触れてたらおかしくなりそうだ。

俺はいちゃついてる二人を尻目に教室を後にする。

 

 

 

 

「ヒッキー!」

 

 

後ろからそう呼ばれ振り返ると由比ヶ浜が何かを投げてきたのでそれをキャッチする。

 

 

「おっと」

 

 

「い、一応ヒッキーにもお礼の気持ち。」

 

 

そう言って由比ヶ浜は部室へと戻っていった。

 

 

綺麗にラッピングされてる袋を開けると、そこにはいびつなハート型のクッキーが入っていた。ちょっと焦げているのはご愛嬌だろう。

 

お礼というなら有り難くもらうさ。さっそく食べてみるか。

 

 

 

ざくっ。

 

 

うぐっ・・・・・・またコーヒーだったか・・・・・・。

苦い。だが・・・・・・前よりは食えるようになってるぞ由比ヶ浜。

全部食べ切り、独り呟く。

 

 

 

「あと、ヒッキーって言うな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

比企谷八幡定時報告。

放課後、はちま……比企谷は昨日の特別棟の教室に入っていった。

平塚先生は職員室で生徒の相手をしていたから邪魔はないはずだ。

ってことは八幡は一人であの教室にいるの? 話しかけるチャンスじゃん!

そう思ってアタシは教室の扉の前まで進む。あれ? 誰かと話してる?

会話を聞こうと扉に耳をつけようとすると、階段から足音が聞こえた。

やばっ、誰か来る! 隠れなきゃ!

 

廊下に設置してあるロッカーの影に隠れ、近づいてくるやつを待つ。

……さっき先生と喋ってた生徒だ。確か2年の先輩で由比ヶ浜とか言ったっけ。

アタシほどじゃないけど可愛くてそれなりに有名だって雄太が言ってた気がする。

って待って! 由比ヶ浜さんって八幡が助けた犬の飼い主じゃん!

もしかして事故が原因で八幡と仲良く……今さら? あれから1年も経ってるじゃん。

でもそれ言うならアタシは助けられてから4年以上経ってる……。

 

あ、八幡が出てきた。教室から出てどこかに行くみたいだ。追わなきゃ!

 

自販機、Maxコーヒーでも買いに来たのかな。ちなみにアタシもチャレンジしてみたけど

甘すぎだし。

ふと向こうを見ると鈴鳴支部の村上鋼さんが歩いてくる。最近ヤバいって噂がある人じゃん。

八幡に何かしたらただじゃおかないから。

 

結局八幡と村上先輩は普通に話して普通に別れた。でも二人の会話を聞いてわかったことがある。

八幡はあの年増に無理やり部活に入れられたらしい。つまりあの教室は部室なんだ。

なにそれ、アタシも入りたい! 八幡の監視そっちのけで職員室に向かった。

 

 

結果から言う。あの年増に入部を断られた。なんなのあいつ! ほんとムカつく!

こうなりゃ直接部室に乗り込んでやる! まだ由比ヶ浜さんと八幡の関係もわかってないのに!

……なんで鍵かかってるの!! まだ下校時間じゃないのにもう部活終わり?

 

はあ……帰ろ。

 

 

 

 

 

 

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