やはり俺がボーダーに所属しないのはまちがっている。 作:犬ころ大佐
「八幡!」
俺を見つけるなり、周囲の誰もが見惚れるキラキラとした笑顔で駆け寄ってくる美少女。
「ごめんね待った?」
「ああ、すげえ待った」
「むう・・・・・・こういう時は、今来たところって言うんだよ? でも・・・・・・待たせてごめんね?」
彼女はハムスターのように頬をぷくっと膨らませて拗ねた表情を見せ、すぐに申し訳なさそうに上目遣いで謝ってくる。可愛いなおい。
「俺にそんな葉山みたいなこと言える訳ないだろ。それにまだ待ち合わせ時間じゃねえし
・・・・・・お前と会えるのが楽しみすぎて早く着いただけだ」
ポリポリと頬をかいて彼女から目を逸らす。
やっべえ。俺顔真っ赤じゃね? すげえ恥ずかしいこと言っちまった。
引いてねえよな?
「えっ!・・・・・・ず、ずるいよ八幡、僕だってすごく楽しみだったんだよ?」
彼女も顔を真っ赤にして、もじもじしながら俺の袖をちょこんと摘んでくる。
こいつが彼女で俺は幸せだ。俺の彼女がこんなに可愛いのはまちがっている。
「○○好きだ―ーー!!!!」
俺はたまらなくなり彼女に抱きつく。今日はもう帰さな―――
「んお?」
あれ、俺は彼女とデートをしていたはず・・・・・・ああ俺彼女いなかったわ。
口元の涎を拭いながら辺りを見渡す。ここは奉仕部の部室だ。
ってかこんな夢見るなんて欲求不満か俺。あと葉山って誰だよ。
「ひ、比企谷君・・・・・・?」
「どうした?」
居たのか雪ノ下。なんか人前で寝るの恥ずかしいな。いびきとか掻いてないよな?
ってか顔真っ赤だぞ、熱でもあんのか?
「あ、あなた今言ったことは本当かしら?」
「へ?」
俺なんか言ったっけ。
「しらばっくれないで。あなた今、私にその・・・・・・す、好きだと叫んだじゃない」
・・・・・・・・・・・・はあああああああああああああああ?!
いびきどころか告白しちゃってたよおい! なに? 寝て起きたら彼女できるの?
できるわけねえだろ!! はい黒歴史確定ー。さあて今日もベットが俺を待ってるぜ。
「・・・・・・落ち着け雪ノ下、それは寝言だ。フラれるとわかってて俺がお前に告白するわけないだろ。寝言は寝て言えよ」
あれえ? なんで俺、雪ノ下をdisってるの? 立場逆転したの? だが俺は寝言を寝てる
時に言ったから間違っていないはずだ。
「ね、寝言・・・・・・? そ、そうなの。私があまりにも可愛いから、いくら捻くれたあなたでも気持ちを抑えきれなくなってしまったのではないかと思って身の危険を感じたわ」
俺のdisには気づかず、ずずいと教室の隅に身を引く雪ノ下。逃げるの遅くないですかね。
「だから俺はお前に好意を持ってないから。安心してくれ」
「それはそれで腑に落ちないわね・・・・・・それにどんな夢を見ていたのかしら、告白谷君」
「言うわけないだろ。ボーダーに記憶封印されに警戒区域にでも行きたいくらいなんだよ」
「なら全ての記憶を封印してもらって一から始めたらどうかしら」
「うるせえよ。身体は高校生で幼稚園からやり直せってか」
こんな雪ノ下とのやりとりにも慣れたものだ。一方的に罵られるだけだが、案外この空間は心地いいものだ。いやMじゃないからね?
「やっはろー!」
そんなことを思っていると由比ヶ浜がやってきた。
「おう」
「こんにちは、由比ヶ浜さん」
「ゆきのん、ヒッキー!今日は依頼人を連れてきたよ!」
えっへんと胸を張る由比ヶ浜。やめろん。
「こ、こんにちはー」
由比ヶ浜の後ろからちょこんと顔を出す女の子がいた。
なっ!!
あ、あれは俺が夢で見た彼女じゃねえか! 実在してたのか。ってか正夢? 運命?
夢に出てきたからだろうか、意識してしまう俺がいる。
その時、彼女と目が合った。
「あれ? 比企谷君もこの部活なんだね!」
俺の名前を知ってるだと!!
しかも俺の名を呼びながら嬉しそうに微笑む彼女。
たいていの奴は俺の名前を口にする時は忌々しげな表情や気味悪がっているというのに。
・・・・・・自分で言ってて悲しい。
「お、おう。・・・・・・由比ヶ浜」
「なにー?」
ちょいちょいと由比ヶ浜を呼び寄せる。
向こうは俺を知ってるらしいが俺は彼女を知らん。
「あいつは誰だ?」
従順なわんこのように寄ってきた由比ヶ浜の耳元でそっと囁く。
あれ? 由比ヶ浜さんもさっきの雪ノ下みたいに顔赤いぞ?
「ひゃうっ!・・・・・・ってかヒッキー、さいちゃん知らないの?! 同じクラスじゃん!!」
耳を手で擦りながら顔を真っ赤にして怒る由比ヶ浜。そんなキレるなよ。
しかし同じクラスだとは・・・・・・運命かと思ったが、クラスで無意識に見かけてただけかもしれん。なんかそう考えると急に冷めてきた。
百年の恋も冷める瞬間というのはこのことか。俺も夢ごときで勘違いするとは、まだまだだな。
「あはは、同じクラスの戸塚彩加です」
彼女は苦笑を浮かべながら自己紹介してくる。可愛い。
「わ、悪いな。俺、女子との関わりとかないから・・・・・・」
なんなら男子との関わりもないまである。可愛い。
「僕・・・・・・男なんだけどな」
「は?!」
う、嘘だろ・・・・・・さっきまで運命の彼女だと思っていた奴が男?
いや待て、こんなに可愛いのに男? こんなに可愛いのに?! 可愛い。
「ええと・・・・・・僕、そんなに男っぽく見えないかな」
戸塚はそう言いながら頬を染め、上目遣いで聞いてくる。
ええ、何この気持ち、男ってわかってるはずなのに。
ああ・・・・・・もう勘違いでもいいかも。とつかわいい。
「比企谷君、気持ちが悪いからその顔をやめなさい。気持ち悪い」
「なんで2回言うんだよ」
せっかくの幸せな気分が台無しじゃねえか。
それから俺達は戸塚からの依頼を聞いた。
戸塚はテニス部に入っており、我が校のテニス部は弱小らしく今の3年が抜ければさらに弱体化し廃部の危機に陥ってしまう。
そこで自分が強くなれば他の2年生も触発され、やる気になる。あわよくば新入部員も増えるだろうとのこと。
その悩みを聞いた由比ヶ浜が奉仕部へと連れてきたわけだ。
「いやあ、あたしも奉仕部の一員だから頑張って働こうと思ってさ」
「由比ヶ浜さん・・・・・・別にあなたは部員ではないのだけれど」
「違うんだっ!!」
途端に泣きそうな顔になりショックを受ける由比ヶ浜。
違うんだ。よくわからんうちに部員になってるパターンじゃないのかよ。
「ええ、入部届けをもらっていないし顧問の承認もないから部員ではないわね」
「書くよー!!入部届けくらい何枚でも書くからー! うわーーーん!!」
半べそで喚きながらルーズリーフを取り出し、いそいそと入部届けを書き始める。
いや入部届けって専用の用紙があるんじゃないの? 俺も書いたことないから知らんけど。
・・・・・・入部届けくらい漢字で書こうね? どうやってここ受かったの?
「戸塚君、依頼を受けるわ。つまり、あなたの技術向上を助ければいいのね」
「は、はい!それで・・・・・・比企谷君ってテニス上手いよね?」
「そ、そうか?」
何、体育の時間に俺のこと見ててくれたの? 俺のこと好きなんじゃね?
男だけど。
「え、そうなん?」
「うん。いつも壁打ちしてるんだけどすごくフォームが綺麗なんだ」
嬉しいけど壁打ちのことは言わないでくれ。打つ相手がいないのバレちまうから。
「そこでなんだけど・・・・・・比企谷君にもテニス部に入って欲しいなって」
マジか、戸塚とテニス・・・・・・やりたい。
雪ノ下に許可をもらおうと視線を向ける。
「それは無理ね」
視線に気づいた雪ノ下はきっぱりと否定する。
なんだよ、俺に辞めてほしくないならそう言えよ。
「要するに俺がテニス部に入ってカンフル剤の役割をすればいいんだろ。なんで無理なんだよ」
「あなたに集団活動ができると思っているの? あなたみたいな生き物、受け入れて
もらえるはずがないでしょ」
そっちかよ。まあわかってたけど。
「もっともあなたという共通の敵を得て、部員が一致団結することはあるかもしれないわね。けれど排除するための努力をするだけで、自身の向上に向けられることはないわ。
だから解決にはならないわ。ソースは私」
「あん?」
材木座みたいになるってことか。それは嫌だな。
しかし雪ノ下も同じ経験をしてるのか。
「私、帰国子女なの。中学のときに編入したのだけれど、学校中の女子は私を排除しようと躍起になったわ。でも誰一人として私に負けないように自分を高める人間は居なかった・・・・・・あの低脳共」
「うげっ」
「ゆ、ゆきのん怖いよ」
「雪ノ下さん・・・・・・」
おい、由比ヶ浜と戸塚がどん引いてるじゃねえか。なに良い笑顔で言ってんだよ。
由比ヶ浜はともかく戸塚を脅かすんじゃねえよ。
「んじゃ、どうすんだよ。策はあんのか?」
「そうね、死ぬまで走らせてから死ぬまで素振り死ぬまで練習かしら?」
こいつやっぱり鬼畜だわ。3回死んでるじゃねえか。平塚先生と思考が同じだな。
「比企谷君・・・・・・僕どうなっちゃうの?」
不安そうに俺の袖を掴んでくる戸塚。ああ夢みたい。
安心しろ、俺が戸塚を守る。
場所も日付も変わってここはテニスコート。
あれから何日も雪ノ下考案の鬼畜メニューが行われたが意外や意外、戸塚は中々に体力も筋力もあったようで着々とメニューをこなしていった。あの細くてしなやかな身体のどこに筋肉が・・・・・・。
ちなみに由比ヶ浜はダイエットに良いと聞いて、鬼畜メニューをこなしたが初日でリタイアした。
「戸塚君なら私の下で学べば地区予選は突破できるわね」
雪ノ下は球出しをしながら戸塚の上達に気分を良くする始末。調子のんなよ。
その時、雪ノ下が打った球が鋭いコースだったのか、戸塚が飛び込むようにキャッチする。
「大丈夫か戸塚!」
俺は今までにない勢いで戸塚に駆け寄る。
見てみると膝を擦りむいていた。
「うん、大丈夫。まだいけるよ」
若干、顔をしかめているが真剣な表情で頷く戸塚。
「少し休憩にしましょう。救急箱を持ってくるわ」
そう言ってすぐに行ってしまう雪ノ下。
「雪ノ下さんって優しいんだね」
「うん!ゆきのんってほんとは優しいしすっごく可愛いんだよ!」
「俺にはそんな優しさを感じ取れないんだが」
そういえば由比ヶ浜の依頼の時にクッキーもらったっけか。
強いて言えばあれだけだ。
「あー、テニスしてんじゃん」
声のした方を見ると、同じクラスのトップカースト集団がこちらに向かって来ていた。
「戸塚、あーしらもここで遊んでいい?」
「三浦さん・・・・・・僕達遊んでるわけじゃなくて・・・・・・」
「え? なに? 聞こえないんだけど」
「れ、練習を・・・・・・」
金髪に圧され、声が小さくなっていく戸塚。
この金髪ビッチめ。戸塚が怪我してまで一生懸命練習してるってのに、お遊びでコートを奪うつもりか。
「ここは戸塚が許可取って使ってるものだから、他の人は無理なんだよ」
「は、あんたも使ってんじゃん」
「俺は練習に付き合ってるからな。申請もテニス部と奉仕部の合同ってことになってるし」
「奉仕部ってなに? 意味わかんないんだけど」
奉仕部がどうとかじゃねえよ。てめえにここを使う権利がないことくらいわかるだろ。
とっとと帰れ。
「まあまあ優美子、喧嘩腰にならないでさ。みんなでやったほうが楽しいよ」
金髪のいけすかない爽やかイケメンが金髪を諌める。どっちも金髪でわかりづらい。
それに・・・・・・みんなだと?
「みんなって誰だよ。母親にみんな持ってるよーって物ねだるときに言う、みんなかよ?
誰だよそいつら。友達も母親もいねえからそんな言い訳使えたことねえよ」
「そ、そういうつもりで言ったわけじゃないんだ。なんかごめんな。悩んでるなら相談に
のるからさ」
金髪イケメンは少し焦ったように言ってくる。お前に相談して何が解決すんだよ。
今どき親がいないとか珍しくないだろ。ネイバー侵攻で家族を失った人はたくさんいる。
「そこの金髪イケメン、お前の優しさは嬉しい。性格がいいのもよくわかった。それに
お顔までよろしいじゃないですか、さぞや女性にお持てになるんでしょうなー」
俺は皮肉をたっぷりこめて言った。
「いきなりなんだよ」
「そんないろいろと持ってるお前が、何も持ってない俺からテニスコートまで奪う気なの?人として恥ずかしいと思わないの?」
金髪イケメンが黙り、やっと諦めたかと思った瞬間打ち込まれたボールがネットを揺らす。
打った先を見ると金髪ビッチがだるそうな目でこちらを見ていた。
「ねー、隼人。あーしいい加減テニスしたいんだけどー」
それを聞いた金髪イケメンが一瞬考えこみ、すぐさま提案してくる。
「じゃあ、こうしよう。部外者同士、俺とヒキタニ君で勝負する。勝った方が今後休みは
ここを使えるってことで」
はあ?こいつは何を言ってるんだ。俺の話を聞いていないのか?
それにヒキタニだと? ボーダーの連中思い出すからやめてくれないですかね。
「もちろん練習にも付き合う。強い奴と練習したほうが戸塚のためにもなるし、いいかな?」
「いいわけないだろ、この金髪野郎。部外者はお前らだけなんだよ。さっさと失せろ」
一瞬で場が凍りつく。向こうだけでなくこちらサイドまで。
ん? あの眼鏡は・・・・・・海老名さんだったな確か、なんで笑ってるんですか。怖いです。
「ヒ、ヒッキー」
由比ヶ浜が不安そうに俺に近づいてくる。しまったな、こっちにはあいつらと友達の
由比ヶ浜がいたか。なんとか穏便に済ませないと・・・・・・テニス勝負を受けるしかないのか。
そう思ったときだった。
「何か揉め事ですか?」
どこか聞いたことがある声のした方に目を向ける。トップカースト連中のいる入口、ではなく部室棟のある方角の出入口にその主はいた。
総武高校で有名なのは誰か、と聞かれれば二人の名前があがる・・・・・・らしい。
一人は雪ノ下雪乃。進学校である我が校で一段階上の成績優秀者が集まりほぼ女子が
占める国際教養学科において圧倒的な美しさ、溢れ出る気品。他を寄せつけない孤高の存在。
だが雪ノ下はあまり女子受けがよくない。まるで猪のような真っ直ぐな性格、歯に絹着せぬ物言いだが男子には人気があるため当然と言えば当然である。
だがもう一人は違った。
容姿端麗成績優秀な点は雪ノ下と変わりない。だが彼女には男女問わず好意を持たれる
愛嬌たっぷりの親しみやすさがあった。そして我が校の生徒会副会長であり、メディアにも露出しボーダーの顔とも言われるA級部隊嵐山隊のオペレーター。
綾辻遥である。
「あ、綾辻さん・・・・・・」
名前を呼んだのは誰だろうか。突然の有名人の登場にトップカースト集団も呆然としている。
「何しに来た。綾辻」
「ひどいなー比企谷君。困ってるって聞いたから助けにきたんだよ?」
俺が綾辻に話しかけ、綾辻も俺と話していることが不思議なんだろう、ここにいる全員の視線が俺達に向いていた。
「誰に聞いた? そんな連絡はしてないが」
「んー。匿名の通報かな?」
曖昧な返事をする綾辻。何か隠している、まさか監視されてたのか・・・・・・?
「これはどういう状況かしら?」
なんてこった。
最悪のタイミングで戻ってきたのは雪ノ下。奇しくも校内二大有名人がこのテニスコートに揃ってしまった。このカオスな状況にはさすがの俺も引く。
「久しぶりだね雪乃ちゃん。さっき許可を得てない生徒がテニスコートを使おうとしていると連絡があったの」
「ええ、お久しぶりね綾辻さん。・・・・・・そうなの、見たところそれは葉山君達のようね。早速お引取り頂こうかしら」
雪ノ下の鋭い視線が金髪達を射抜く。
二人が知り合いだとは思っていたが、なんか見てるだけで緊張するんだが。
俺を見ながらニコニコするな綾辻。バレるだろうが。
「ちょっと!!あんたら意味わか―――」
「やめろ優美子」
金髪ビッチが文句を言おうとしたところで金髪野郎がそれを止める。
生徒会が出てきてるのによくそんな強気になれるな。
「隼人・・・・・・?」
「今回はいきなり押しかけた俺達が悪かった、帰ろう。ごめんな戸塚」
「う、うん・・・・・・」
さすがに分が悪かったらしく、のそのそと帰っていくトップカースト集団。
金髪ビッチは最後まで俺を睨んでたし。睨むなら雪ノ下や綾辻にしてね、泣いちゃうから。
そして帰り際、綾辻と海老名さんがアイコンタクトをしたのを俺は見逃さなかった。
やはり海老名さんはボーダー関係者か?
「なんか大変だったね・・・・・・」
そう言ったのは由比ヶ浜。お前は奴らと奉仕部の板ばさみでやばいもんな。
「ありがとう比企谷君!」
「礼なら綾辻と雪ノ下に言ってくれ。俺は時間を稼いだだけだ」
戸塚がお礼を言ってくる。天使なの?
だがいつまでも戸塚を愛でているわけにはいかない。確認すべきことがある。
「綾辻、ちょっといいか?」
「うん、いいよ。こっちで話そうか」
人に聞かれたくない話があるのだろうと察した綾辻が、少し離れた場所を指差す。
「比企谷君?」
「ヒッキー・・・・・・?」
離れた場所に向かう俺に雪ノ下の不審気な眼差しと由比ヶ浜の少し不安そうな眼差しが突き刺さる。
こりゃ部室で質問責めだな。どう切り抜けたもんか。
「で、なにかな比企谷君」
「なんで助けた」
「だから匿名の通報があったんだよ?」
なぜこいつは匿名の通報なんかでテニスコートまで来たんだ。しかも一人で。
「わざわざ忙しいお前が来る必要なかっただろ、ガセかもしれない。それにタイミングが
良すぎる。狙いはなんだ」
「ふふっ、考えすぎだよ。でも狙いがあるとしたら比企谷君にボーダーに入ってほしいなーってとこかな」
「なるほど、俺を助けて、ボーダーへの印象を良くしようとしているのか。さすが
ボーダーの顔と言われるA級部隊のオペレーター様だな。これからも広報頑張ってくれ、んじゃ」
「ええっ?! 比企谷君を助けたのはほんとに偶然だよっ!」
去っていく俺に綾辻が慌てたように両手をぶんぶん振って否定する。
おそらく通報したのは海老名さんか俺を監視してるかもしれない第三者。だから
綾辻も確信を持ってここに来たということだろう。
もしやこれは噂に聞くハニートラップってやつか? 差し詰め高校生版ハニートラップ。
確かに可愛くて有名な綾辻に助けられたら普通の奴は好きになるだろうな。そして
ボーダーに入る。だが彼女はA級、会う機会なんてほとんどないだろうに。
俺は勘違いをしない、だからハニートラップは効かん。でも・・・・・・戸塚になら勘違いしたい。
「それで綾辻さんとどうして知り合いなのかしら?」
「あたしも気になる!ヒッキーすごい楽しそうに話してたよね!!」
奉仕部の部室に戻った俺は懸念してた通り、二人に詰問されている。
遠目で見ると楽しそうに見えてたのか由比ヶ浜。
さてどうしたもんか。まさか綾辻とも従姉弟なんて設定は無茶があるし、雪ノ下が綾辻と知り合いな時点で無理だろう。
「そういう雪ノ下は綾辻とどんな関係なんだ?」
「私は姉さんを通じて知り合っただけよ。それほど親しくもないし挨拶するくらいの
面識しかないわ」
それだ。雪ノ下さんとの関係を聞かれた時と同じにすればいいんだ。
「そうか。俺も前にボーダー本部見学で訓練受けて雪ノ下さんに褒められたって言ったろ。
そのときに綾辻もその場にいたんだよ、だから顔見知り程度だ」
よし、これでなんとか大丈夫だろ。雪ノ下も、そうなのと言って興味を無くしたみたいだ。
由比ヶ浜は・・・・・・首をかしげて悩んでる? どうした、今日の晩飯が何かを考えてんのか。
「では今日は終わりにしましょうか。私は鍵を返してくるから先に帰っていてちょうだい」
「じゃあねゆきのん!」
「ええ、また明日」
鍵を閉め職員室に向かう雪ノ下。
由比ヶ浜と二人、昇降口に向かう。だがさっきから由比ヶ浜がこちらをちらちら見ている。
何? 俺のこと好きなの?
「ねえヒッキー・・・・・・」
「あん?」
ちょうど下駄箱の前に着いたときだった、由比ヶ浜が恐る恐る口を開く。
「ヒッキーってさ、ボーダー本部の見学休んでたよね・・・・・・?」
なに? なんでこいつがそれを知ってやがる。
「いくら俺の影が薄いからって休んだことにしないでくれませんかね。泣くぞ」
「ううん、ヒッキーはいなかったよ。あたし、1年も同じクラスだしヒッキーのこと前から知ってたから・・・・・・」
しまった、こいつ1年も同じクラスかよ。しかし前から俺を知ってるってなんだよ、俺のストーカーかよ。まさか・・・・・・こいつもボーダー関係者?
金髪ビッチのグループであの海老名さんが所属している、由比ヶ浜も・・・・・・。
「あっ・・・・・・ごめん!ヒッキーも何か事情があったんだよね!!あたしゆきのんにも
誰にも言わないから大丈夫だよ!じゃあね!」
そう言って急ぎ帰って行く由比ヶ浜。
あいつは誰にも言わないと言った、それがあいつになんのメリットがある?
別に雪ノ下にバレたところで多少面倒になるだけで俺を脅す材料にはならない。
まだ綾辻、海老名さんの件もあるし、由比ヶ浜も多少警戒しておくか。
比企谷八幡定時報告。
華が言うには、はちま……比企谷は奉仕部っていう部活に入ってるらしい。しかも部長があの
雪ノ下雪乃。A級の雪ノ下さんの妹でアタシより可愛いって校内で一番有名な女。
しかも由比ヶ浜さんも奉仕部の部員らしい。なんで八幡の周りに女ばっか集まってくんの!
今まではずっと独りだったのに……全部あの年増が悪いんだ。っていうか奉仕部ってなによ。
でも改めて見ると不思議なメンバーだ。八幡の入学式の事故の関係者が集まってる。
何か作為的なものを感じる……? でもあの事故現場を見てたおかげで八幡を見つけれたし
華と同じ総武高にも通えたし、別にいっか。
最近八幡たちはずっとテニスをしてる。テニス部の男子を強くするらしい。最初その男子を
見たとき、また女子かと思ってイライラしたんだよね。このアタシがちょっと可愛さで負けたって
思っちゃったし。ってか八幡デレデレしすぎじゃない?
ある日、テニスの練習をしてる八幡たちに邪魔が入る。イケメンで有名な葉山って奴と金髪縦ロールのダサい女……あれって雄太の親戚だっけ?
とりあえず海老名先輩がいたからメールを送る。
『八幡の邪魔をさせないでください』
これでおっけー。しばらくすると綾辻さんが来て葉山たちを解散させる。
……今度は綾辻さんと仲良さそうにしてる。何気に八幡ってボーダーの女子と知り合い多くない?
なんでアタシとは喋ってくんないの?
今のところヒロイン候補は戸塚、ガハマ、宇佐美、ゆきのん、平塚、小町の順です。
まだ俺ガイル側に寄ってますね。
もし戸塚ヒロインだとBLタグがいるんでしょうかね。