ジュエルがあれば何でもできる   作:羊毛ローブ

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10猫「遺跡を出れば全て戻る」

 

 一応言っておくと、アイリスとキャトラは俺の知ってる限りは合体なんてしていなかった。

 いや俺も9島、他のゲーム的に言えば9章までしかストーリーを進めていないし読み飛ばしたりしてたけど合体なんてしてなかった事ぐらいは覚えてる。

 

 そりゃ白猫も話が進むにつれて色々な要素が増えてくるから俺が主人公に憑依してから合体したのかもゲームで実装されたのかも知れないが、この島では合体はしてなかったのは断言できる。

 伊達にリセマラ50回以上もしてないんだよ。

 

 しかしキャトラと合体したアイリス、いやキャリスは予想の遥か上を行くほどに強かった。

 まず攻撃の速度が尋常じゃなく速い。

「あ、マッドネスジャガーだ!」と認識した瞬間にレーザー光線のようなビームを3発当てると直ぐにマッドネスジャガーは倒れた。

 

「凄い必殺技だね……」

 

『え?今の準備体操みたいなもんだよ?』

 

 いやコレが準備体操って頭おかしいんじゃない?修行終えた悟空の初戦闘じゃないんだから……

 

「そういえば元に戻れるの?」

 

『戻れるよ、この姿は力が凄すぎて一日5時間しか保てないから……』

 

「そんだけあれば充分だよ」

 

 フュージョンでも30分が限界なのに……

 でもアレは回数制限とかないもんな。でも色々とおかしいのは間違いない。

 ファンネルみたいにキャトラの亡霊みたいなのがキャリスの周りをフワフワ浮いてるのは誰だっておかしいと思うに決まってる。

 

「……なぁコヨミ、俺の顔を一度殴ってくれないか?」

 

 カイルさんが自分の許容限界を越えたらしく目が死んでいる。

 

「カイルにーにのお顔を?嫌だよ、コヨミそんな酷い事したくないもん」

 

 コヨミちゃんは本当に良い子だなぁ……

 あー、俺もこんな子育てたいわぁ。

 

「じゃあタローで良いから俺の顔を引っ掻いてみてくれないか?」

 

「クゥーン……」

 

「タローもカイルにーにが痛がる事したくないって言ってるよ?」

 

 この姉弟達は本当に素晴らしい。

 子供らしくて親想い、他人の気持ちを察する事ができるとか学校の先生や周りの保護者からも絶賛されるのは間違いなし。

 雪のルーン集め絶対に手伝うからね!

 

 

 ……とりあえず装備を変えてレザーグローブにしておこう。

 

「じゃあジェク……「任せてください!」グハァァァァ!!」

 

 カイルさんの顔面をブン殴ってあげた。

 ジャスト三発、夢は覚めましたか?

 

「……お前、手加減ってもんをだな」

 

「小さい子に殴ってくれとか言うの本当にやめてください。その罰も兼ねてますから当然ですよ」

 

「……まだ夢見てるのかなぁ、そうだよな上手く行き過ぎてるもんな、島について早々に飛行島の手掛かりが見つかる訳ないもんなぁ」

 

 殴ってもまだ現実逃避しているカイルさんだがコヨミちゃんに殴ってくれとか教育上悪いからやめて下さいね?

 本当に殴ったりして性格が荒くれたりしたらどう責任をとるつもりなのやら……

 

 ……いやコヨミちゃん魔物は結構な勢いでブン殴ってたわ。

 あれ?そういやコヨミちゃん笑顔で魔物ブン殴ってなかった?

 

 ……あれ?

 ま、まぁ魔物は悪い存在だしコヨミちゃんは狼の獣人だから仕方ないという事にしてとおこう。

 考え出すと泥沼にハマりそうだから怖いし。

 

 そんなこんなで遺跡に着いてからも魔物の方が可哀想な位の強さの俺達はサクサクと進んでいった。

 

 扉があればビームで穴を空け、地面から槍が貫いてくる罠があればレーザーで槍ごとなぎ払い、火を吹く石像があれば雪だるまでブン殴り、星たぬきがいればカイルさんが率先して倒した。

 

「……ハッ!お前等、いくら罠と言っても古代遺跡の物だぞ!?歴史的にどれだけ価値があると思っているんだ!!?」

 

 カイルさんが正気に戻った。

 考古学者としての責任感が正気にさせたのだろうか?

 しかし罠は破壊され、石像は氷漬けでカチンコチン、扉に至ってはデッカイ穴が空いており扉の機能をなしていない。

 つまり簡単に言えば後の祭だ。

 

「……この古代遺跡にどれだけの歴史的価値があると……うぅ、うううぅぅぅぅ……」

 

 見るも無惨な遺跡の姿を見てカイルさんは自責の念で涙を流していた。

 もうその年齢で更年期なのか?

 別に壊したところで問題ないと思うんだけどなぁ。

 

「カイルさん、あのー……」

 

「俺が飛行島の存在に浮かれていなければこんな事にはならなかったのに……畜生、畜生オオォォォ!!!」

 

 吠えているし、マジ泣きだ……

 ……これってもしかしてカイルさんこの遺跡のシステム知らない感じ?

 確かにシステムを知っていたら泣く意味が分からないし、ここまで責任感じているってことは知らないんだろうな……

 

 なんか申し訳なくなってきたなぁ……

 

「カイルさん!この遺跡なんですけどね!」

 

「飛行島だけが冒険の醍醐味じゃないのに……歴史を後世にも伝えて行くのが考古学者の役割なのに……俺は俺は……」

 

 は、話を聞く耳を持ってないだ……と?

 

「カイルにーに……」

『カイルさん……』

 

 コヨミちゃんもキャリスもカイルさんの話に涙ぐんでいる。

 どうやら二人ともこの遺跡のシステムを知らないらしい。

 

 というか逆に知らないであんだけ壊してまくっていたのかと思うとこの二人も少しヤバくね?

 

 とりあえず今はカイルさんにこの遺跡のシステムについて話す事が先決だ。

 このままじゃ切腹でもしそうな勢いだもん。

 

「カイルさん!この遺跡は壊れても外に出たら修復されるんですよ!」

 

「俺って奴は……こうなったら……へ?今なんて?」

 

 間の抜けた声で俺の方を見たカイルさんは鼻水と涙で顔がグシャグシャで槍の先を自分の腹に向けていた。

 

 あ、危ねぇ……

 

 

「この遺跡の物は全て外に出れば元通りに戻るんです」

 

 俺は何百回もこの遺跡に行った事があり遺跡の罠を毎日の様に破壊していたから間違いない。

 この遺跡は不思議な力が働いているのか、どれだけ壊しても遺跡から一度出てまた入り直すと元に戻るのだ。

 

 俺がそれに気が付いた最初の切っ掛けは遺跡に転がっていたツボを壊してしまった時である。

 

 考えてみてほしい、俺が元々いた世界でならば古代遺跡にあるツボとか価値がどれだけあると思う?

 鑑定団ならうん億円の価値があるかもしれないし、それ以上になるかも知れない。

 まぁ100円とかになる可能性もあるにはあるがその可能性の方が低いだろう。

 

 こういう物は見つけた人間の所有物になるパターンもあれば土地の所有者の物になったりするパターンもある。

 後者だった場合は壊した場合弁償する羽目になる。

 そして俺は弁償するのは絶対に嫌だった。

 

 だって借金生活になるのが目に見えて浮かぶし、そうなると物語は始まらなくなる。

 いや始まらないなら良い方で最悪の事態、そう敵勢力である闇が世界を支配する可能性もあるのだ。

 ならその可能性は排除するべきだろう。

 

 べ、別にツボを壊して誰かに怒られるのが怖いとかそういうんじゃないんだからね!

 

 そうして俺は何が原因でバレるか分からないので持ち帰って海に捨てて証拠を隠滅しようとしたのだが遺跡から出るとそのツボは消え去ってしまった。

 

 それを不思議に思っていたのだが勝手に証拠がなくなったんだから都合が良いやと思ってその日は帰った。

 次の日に遺跡に帰るとまた同じ位置に壊れたはずのツボが壊れる前の姿で転がっていたのだ。

 

 そこで変だと気が付いた。

 そしておかしいと一度気が付くと他の違和感にも気付き易くなるものだ。

 ほぼ毎日通っていたのだが木樽や木箱は敵の攻撃のせいで粉々に壊れても元に戻って同じ位置にあったり、

 空の宝箱を移動させても次の日には同じ位置に中身が入った宝箱が置いてあった。

 

 色々と調べた結果、一度遺跡の外に出てしまえば自分が壊した物は元に戻る事が分かった。

 何故一度遺跡から出ると元に戻るのかという理由は分からないが、俺の初めてのダンジョンがこの遺跡なのでどこのダンジョンもそういう不思議システムが働いていると思っていたのだ。

 

 だからカイルさんが遺跡を破壊しても最初何も言わないのはそれを知っているからだと思ってたからなのである。

 

「ふ、そんなウソで俺を慰めようとしてくれるのか……気持ちは受けとっておくよ」

 

 全く信じてくれてなかった。

 いや確かに信じられない話だけどさ、実際にそうなんだもん仕方ないじゃん。

 

「あぁもう!とりあえず一旦遺跡の外に出ますよ!?落ち込むのはそれからにして下さいね!!」

 

「ぬおっ!?頭を、頭を引っ張るな!く、首が締まって……」

 

「あー待ってよジェクトにーに、カイルにーにぃー」

「ワン!」

 

『私達を置いていくなぁーー!』

 

 カイルさんの頭を掴みながら来た道を駆け抜けて戻っていき、俺達の後を追って二人が付いてくる。

 途中で魔物も復活していたらしく後方からキャリスはレーザーを連発しまくった。

 

 ビシュン!

 ビシュン!

 ジュ……

 ビシュン!

 

「うぉぉ!?今、レーザー俺の自慢の金髪に当たったよな?当たったよ!」

 

 少しだけレーザーが髪の毛先に当たったらしくカイルさんは大慌てである。

 

 もう勘弁してあげてよ!!カイルさんの精神力はもう0になりかけよ!?

 

『あー、カイルさんゴメンね?自動追尾レーザーにしてて味方攻撃オフにしてなかった』

 

「……自動追尾レーザー?いやレーザーって確か光だから曲がる訳ない筈だろう?ホーミングするにしても根性で曲がる訳でもあるまいし……」

 

 なんか考え出した。

 まぁ上手いこと現実逃避ができたと思っておこう。

 その後は何事もなく無事に遺跡の外に出る事ができた。

 

「ふぅ……よし皆一応聞くけど大事ないか?」

 

「……光は直進するがそれは3次元の場合としか証明できていない、ならキャリスは4次元以上の空間を作りあげて……」

 

『カイルさんが何を言ってるかチンプンカンプンだよ……』

 

「鬼ごっこみたいで楽しかったね!タロー」

 

「ワン!」

 

 頭を掴まれながら真剣に考える考古学者、その独り言を聞いて頭を回している巫女猫合体、走っていたのが鬼ごっこみたいだと楽しんでいる狼の獣人姉弟。

 

 ……こんなまとまりのないパーティーで大丈夫なのだろうか?

 俺は大丈夫じゃないと思う。

 

 因みに遺跡の中は完全に戻っていてカイルさんは嬉し泣きしていたがそれは長くなるので割愛させてもらう。

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