IS~codename blade nine~   作:きりみや

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60:圧倒

 キャノンボール・ファストの会場から少し離れた海上。そこを一直線に飛翔する複数の影。濃蒼色が目を引くエムのサイレント・ゼフィルスと異様な形状をした機体、レギオンとその武器《レギオン・ビッド》である。

 

『えむ、てきがまたきた』

 

 つい先程学園の教師を墜としたレギオンが、こちらに接近する複数の機影を確認し報告する。だがエムは返事をせずに真っ直ぐに飛ぶだけだ。だがレギオンは気にした様子も無く己が体をくるくると回す。それに呼応する様にビット達もくるくると回っていた。

 

『えむ、さきにいく? わたしたちはきたいてすと。いろいろためしたい』

「……勝手にしろ。私は私でやらせてもらう」

『りょうかい。えむ、がんば』

「ふん」

 

 エムはレギオンを一瞥するが直ぐに視線を元に戻す。彼女はこの無人機には対して興味を持っていない。

 篠ノ之束が創り出し、川村静司によって一度は墜とされ、そしてカテーナによって復活しただけでなく妙に人間らしくなった無人機。その度合いは日に日に強くなっており好奇心も旺盛だ。カテーナが何を目的としてこの無人機を手に入れたかは知らないが、少なくともただの戦力アップだけでは無い事だけは確かだ。大方面白そうだからといった理由だろうが。

 

「あれか」

 

 少し考え事をしていた間に敵の姿は視認できるほどまで近くなっていた。数は4機。そのどれもが形状が違う。

 大きな鈍色のスラスターを背部に2対4基備えた、流線的なフォルムのIS――アメリカのストライク・イーグルⅢ。

 薄い紫の装甲と、異様に肥大した肩が特徴的なイギリスのメイルシュトローム。

 既にサーベルを展開し、もう片方の腕にもIS用機関銃を手にした薄緑の機体、イタリアのテンペスタⅡ型。

 そして全身燃えるような赤色でその背部には複数の砲塔を背負い、バイザーで顔の上半分を覆ったインドのIS、アグニ。

 あちらもこちらの姿を視認したのだろう。速度を上げ一直線にエムとレギオンに向かって来た。

 先手はテンペスタⅡ型。展開済みのサーベルでエムを襲う。エムも銃剣《スターブレイカー》を呼び出すとそれに迎え撃った。互いに速度を乗せた一撃がぶつかり合い、空気が大きく振動した。

 

「まさか本当に出てくるとはな! 相当頭がイカれてるらしい」

「……」

 

 テンペスタⅡ型の搭乗者が面白そうに話しかけてくるがエムは無言。代わりとばかりにビットを射出するとそのレーザーでテンペスタⅡ型を襲う。テンペスタⅡ型は即座に反応し、その場から離脱しそのレーザーを避けた。しかしそのレーザーが突然曲がり回避した筈のテンペスタⅡ型を襲う。

 

「ほう、これがイギリス自慢の偏向射撃(フレキシブル)とやらか」

 

 テンペスタⅡ型の搭乗者は焦る事も無く、機体を器用に捻りそれら全てを回避すると機関砲でエムを狙う。エムもそれを避けるべく上に飛ぶが、そこには回り込んだメイルシュトロームが両手にブレードを構えて待ち構えていた。

 

「それは我が国の機体よ。持ち帰らせてもらうわ」

 

 肉薄するメイルシュトロームの繰り出す剣戟をエムは《スターブレイカー》で受けつつこちらもビットで狙うが、それを察したメイルシュトロームは深追いせず直ぐに背後へと飛んだ。そしてテンペスタⅡ型と並び、エムの進路を塞ぐ。

 

「イギリスの半端機体(器用貧乏)とイタリアの第三世代試作機か。欧州連合の第三次イグニッション・プランの次期主力候補。丁度いい、それも頂くとする」

「身の程をわきまえろ。お前はここで掴まり然るべき所で裁きを受けるお仲間と共にな!」

「半端機体……。その言葉を撤回させてあげる」

 

 三機が構え、そして一斉に飛び出した。

 

 

 

 

 アグニの搭乗者は戦いを始めたテンペスタⅡ型達を横目に見つつ己の目標に注意を向けた。戦艦の様な形をした異様な兵器と、その周囲で飛ぶ小型の機動兵器。そのどちらも見た事が無いが、注意すべきなのはあの戦艦型だろう。小型の方は以前もIS学園を襲撃したと聞いていたが、その時の性能は対した物では無かったと聞く。無論、それから強化されている可能性もあるが、それよりはあの巨大な戦艦型の方が危険だと判断した。そしてそれはストライク・イーグルも同じだったらしい。

 

『デカブツを落とすぞ。露払いは任せた』

「了解」

 

 ストライク・イーグルからの通信に答えると背中の砲台を起動。背部をスライドしてきた砲台のグリップを握りその砲口を戦艦型へと向け、チャージを開始する。同時に他の武器の量子変換も開始。機体の各所アタッチメントへと複数の砲台が装備され、まるで針鼠の様に全身から砲塔を突き出すような形となった。

 

「砕け散れ」

 

 その言葉を合図に全ての砲台が一斉に火を噴いた。機体の名に恥じぬ威力と数の砲撃が戦艦型とその周囲の小型人型兵器を飲み込み火球を生んでいく。そしてその最中をストライク・イーグルが駆け抜ける。勿論、アグニの砲撃に当たるだなんて馬鹿な事はしない。

 ストライク・イーグルはその特徴でもある機動性を活かし戦艦型へと迫る。それを止めようと、アグニの砲撃を何とか躱していた小型兵器達が一斉に銃撃を浴びせるがそれらには当たる事も無く切り抜けていく。更にはその両手に高周波ブレードとライフルを呼び出すと即座にそれを振るい奇妙な形の機動兵器を破壊していく。そして一瞬で戦艦型の懐まで飛び込んだストライク・イーグルは高周波ブレードをそのまま叩き付ける様に振るった。しかし当たる直前に割り込んだ小型の機動兵器のブレードがそれを受けとめた。

 

『邪魔だっ!』

 

 ストライク・イーグルはもう片方の腕のライフルの銃口を直接突きつけ発砲。衝撃で吹き飛ばされ、小型兵器は戦艦型に叩き付けられた。それ目掛けてストライク・イーグルはライフル下部に搭載されていたグレネードを発射。そしてすぐさまその場を離脱した。

 大きな爆発が起こり、戦艦型が炎と煙に包まれる。その周囲を飛んでいた小型機動兵器達も衝撃でバランスを崩し、そこにアグニの砲撃が追い打ちをかけた。しかしその爆煙の中で、戦艦型は未だ健在なのがうっすらと見える。

 

『やれ』

「了解」

 

 アグニは砲台の全てを戦艦型に集中させる。一点集中して放たれた砲撃の嵐が戦艦型へ殺到した。通常のISなら残骸すらまともに残らないであろう攻撃だ。いくらあの巨体でも耐えられるはずもない。

 

「命中……」

 

 一通りの砲撃を終えると砲身冷却の為に機体を下がらせる。戦艦型の居た空は未だ煙に包まれているが無事である訳が無い。事実、煙の中から残骸らしきものが落ちてきている。後は難を逃れた小型を撃ち落とすのみだ。

 

『見かけ倒しだったか。まあいい。これより残存する敵の殲滅を――』

 

 そこで二機は異変に気づいた。爆炎の中から落ちてくる残骸。その数が少なすぎるのだ(・・・・・・・・・・・)。あれ程の大きさの兵器を破壊したのならもっと残骸は多い筈。なのに実際に確認できたのは数える程度の残骸であり、それは幾らなんでも少なすぎる。そしてその疑問に対する答えはゆっくりと姿を現した。

 

『健在だと……』

「……っ!?」

 

 煙の中からゆっくりと戦艦型が姿を現す。流石に無傷とは言わず、装甲の一部がひしゃげ、火花を散らしているが動くのには問題が無いのか危なげない様子で2機の前に姿を見せた。

 

『くそっ、どんな装甲だ!? それともシールドか!?』

「わからない……だけど効いていない訳では無い」

 

 そうは言ったが果たしてあとどれ程攻撃すれば倒せるのかは分からない。そう考えている間にも生き残った周囲の小型兵器に変化が起きる。その背中のバックパックらしきものが開いたかと思うと、そこから通常サイズのビット兵器が現れたのだ。その光景に2機は今度こそ言葉を失う。

ビット兵器は使いこなせれば強力な武器となるが、その操作には多分な集中を必要とする上に適性が低ければまともに扱えない。故に各国の第三世代の開発競争でもビット兵器を推す国は少ないのだ。

 だが目の前の敵は異常なまでの数のビットを操っている。あの小型兵器は無人である事は確認済みだが、だとするとそのビットを操るのはあの戦艦型の搭乗者だろう。だが果たして人間にそんな事が可能なのか? そもそもあの小型兵器も謎なのだ。当初はAI制御かと思っていたが、それにしては脅威は感じずとも不気味に感じるほどには動きが良い。だとするとあの小型兵器もビットか、それに準じた物か? だが人型のビットとなると通常の物よりもさらに制御が困難な筈であり、人間にそんな事出来る訳が無い。だがそうなると他に何も理由が思い浮かばない……!

 目の前の光景に唖然とする2機に、小型兵器とそのビット達が一斉に襲い掛かった。

 

 

 

 

『B9。例の連中が戦闘を開始した』

「こちらでも見えている。B5は?」

『準備完了っす。後はタイミングっすね。……大会の方はどうなってるんすか?』

『お偉いさん方の一部は既に避難済みだとよ。残りは気楽に見てるのか避難せず観戦中だ』

『って大会自体を中止にはしないんすっか?』

『……どうやら揉めてるらしい。男性操縦者や第四世代の参加したレースを止めるな、とな』

 

 C1の言葉に静司は思わず歯を噛みしめた。確かに言いたいことは分かる。今までもイベントの際は一夏とその白式に注目されていたが、今回はそこに篠ノ之束が自ら手掛けた第四世代機を持つ箒と紅椿が居る。それらの性能を直で見る機会などそうそう無い為に、ここぞとばかりに文句を付けているのだろう。それに今回はIS学園だけでなく、IS委員会の召集した機体も警備に加わっている為に気楽に見ているのかもしれない。だがそれはどれも学園生やその他の一般客の事など考えていない。何かがあってからでは遅いと言うのに。

 

『その件に関しては申し訳ないと思うよ』

 

 不意に通信に紛れた声はIS委員会の一人。静司が学園に来ることになった理由を持ってきた桐生のものだ。

 

『僕もとっとと中止にして避難させろって言ってるんだけどね。全く聞く耳持たずだ。お蔭でIS学園側もピリピリしてるよ』

「桐生さん、どうにかならないんですか?」

『僕もIS委員会の端くれとは言え流石に無理だよ。どうにかしたいとは思うけどね。……それにどうも委員会の一部は別の狙いもあるようだし』

『別ってなんっすか?』

『B9だよ。いや、正確にはそのISかな。事もあろうに、彼らは学園がピンチになればヒーローの如く君が出てくると思ってる様だ。そしてあわよくば捕獲しようという算段だ。いやあ、何とも醜いね』

「…………くそっ」

 

 静司が悪態をつく。これではまるで自分のせいで学園が危険に晒されている様では無いか。

 

『だからと言ってノコノコ出ていけばサイレント・ゼフィルスの相手をする前に囲まれるだけだ。だからこそ姿を現すのはギリギリまで待て。レースは継続中だがそんなに長くかかる物でも無い。その間だけでも守り切れば後はどうにでもなるし、その為の俺達だ。チャンスが出来次第即座に行動に移れ』

「っ……了解」

『了解っす』

 

 静司は苛立つ心を押さえつつ返事をすると己の構えていた物を一瞥する。既に黒翼は展開済みであるが、その左腕は何時もの鉤爪では無い。今その左腕には無骨な長筒――IS用スナイパーライフルが装備されている。そして静司の眼前ではアメリカとイギリスのISと戦闘を繰り広げるサイレント・ゼフィルスが映し出されていた。

 現在静司が居るのはキャノンボール・ファストが行われている会場から数キロ離れた倉庫街の一角。周囲には当然偽装工作をした状態で静かに機会を伺っていた。そして離れた場所で同じ武器を構えているB5もしかりだ。静司達の狙いは唯一つ。2機のISと戦うサイレント・ゼフィルスが隙を見せた瞬間に2砲口から同時に狙撃する事。

 IS委員会により召集された連中の目的は、1つは当然ながら大会の防衛であるだろうが、それとは別に静司の黒翼を狙っている事は勿論予想していた。だがそちらが敵の襲撃を利用するならこちらも同じことをするまでだ。各国のISとの戦いでサイレント・ゼフィルスが隙を見せた瞬間に仕留める。その為の作戦である。

 懸念事項はある。それはサイレント・ゼフィルスと共に現れた大型の機体だ。小型の人型機動兵器のビットらしきものと合わせればかなりの数となっているそれは静司から見ても明らかに脅威である。それにあれ程のビットらしきものを同時に操る事も。

 だが静司は知っている。あの機体の所属――亡国機業にはカテーナとシェーリがおり、彼女らは以前無人機を求めて学園に潜入していた。もしその時の無人機を奴らが掌握していたとしたら? 

 勿論、無人機だからと言ってあれほどの事が出来るとは限らない。しかし人間や、普通のAIが操作していると考えるよりかは遥かに現実的に思える。

 

『……状況が動いたぞ』

 

 静司の思考はC1からの通信で中断された。サイレント・ゼフィルス達の戦いは、あの小型兵器がビットを展開した事で一方的となっていた。ストライク・イーグルとメイルシュトロームはなんとかサイレント・ゼフィルスを墜とそうと上下左右に機動を取り攻撃を加えようとするが、それをビット達が妨害する。その隙にサイレント・ゼフィルスの巨大な銃剣が光を放ち、まずメイルシュトロームを撃ち落とした。

 1機味方が落とされた事で更に多くの敵を相手にする事になった残る3機だが、続いてもとより砲撃仕様であったアグニが一斉に囲まれ落とされてしまう。

 

「……?」

 

 一瞬、違和感を感じた。確かに敵の数は多く、囲まれればひとたまりもない。しかし余りにも早すぎる気がしたのだ。確かに敵は脅威だが、こんなには早く、あそこまで一方的に落とされるだろうか……?

 そんな静司の疑問も訪れた好機によって隅に追いやられる。小型人型兵器に囲まれ身動きを取れなくなったストライク・イーグル。その横でテンペスタⅡ型とサイレント・ゼフィルスが再度ぶつかり合い、そして拮抗した力により2機の動きが止まった。

 

『B9ッ!』

 

 B5の通信と静司が引き金を引いたのは同時。ライフルが轟音と共に必殺の一撃をサイレント・ゼフィルスへ放つ。そして銃弾はサイレント・ゼフィルスに吸い込まれていき――

そして躱された。

 

「なっ……!?」

『そんなのありっすか!?』

 

 たった今見た物が信じられず声を漏らす。完璧なタイミング。完璧な角度から放たれた筈の狙撃。サイレント・ゼフィルスはそれに気づき、事もあろうに眼前のテンペスタⅡ型を相手にしながら、二発とも見事に躱したのだ。それどころか突然の狙撃に戸惑ったテンペスタⅡ型を斬り伏せると、その銃剣をこちらに向けた。見ればビットも別の方向を向いている。あれはB5が居る方向だ。

 

『そこから逃げろ! B5、B9!』

 

 C1の叫びより早く静司は飛び出していた。アスファルトの地面に足跡を残す程に踏み込むと、黒翼の翼のスラスターを全開。偽装も何かも考えず一気に加速する。その静司の真横をサイレント・ゼフィルスが放ったレーザーが通り過ぎていき、先ほどまで隠れていた場所を焼いた。

 

「第一プランは失敗! これより第二プランへ移行する!」

 

 左腕のライフルを解除し、いつもの鉤爪を呼びだし一直線にサイレント・ゼフィルスへ迫る。狙撃が失敗した場合の第二プランは直接攻撃。つまりは何時もと同じだ。

 遠く、サイレント・ゼフィルスの搭乗者――エムと名乗っていた少女の口元が吊り上げる。それに真っ向から睨み返しながら静司は一気に空を駆けあがっていくが、不意に悪寒を感じた。

 

「―――っ!」

 

 それはあくまで勘だ。しかしそれに心よりも体が先に従い急制動をかけた。制御しきれないGに歯を食いしばりつつ前方に右腕の固定装備であるガトリングガンを撃ちこむと、何も無い空間が爆発した。

 

「こいつは……!」

「ええ、私ですよ」

 

 声は後ろから。振り返りつつ振るった左腕の鉤爪が灰色の丸みを帯びた腕に防がれた。ガギッ、と鈍い音が響く中、静司は目の前の敵を睨む。

 

「シェーリ! 貴様に構っている暇は無い!」

「つれないですね。あなたになくても私にはあるのですよ」

 

 敵――全身灰色の丸みを帯びた装甲。左右両脇に鋼鉄の棺桶を従えたIS、ブラッディ・ブラッディとそれを操るシェーリがそこに居た。

 

「エム。あなたは手筈通りに」

 

 シェーリが上空のエムに目配せをすると、エムは何も言わず飛び去っていく。

 

「行かせるかよ!」

「あなたもですよ」

 

 黒翼の翼の砲口が光を宿し、ブラッディ・ブラッディの棺桶が開きそこから銃器が飛び出す。

 

『死ね!』

 

 互いの武器が光を放ち爆発と共に両者は弾き飛ばされた。衝撃で機体をふら付かせながらも、静司は直ぐに姿勢制御を取り戻す。それはシェーリも同じで直ぐに態勢を立て直すとその背中から何かをばら撒いた。ばら撒かれた何かは直ぐにその姿を見せなくしたが、一瞬見えたあれには見覚えがある。姿を見せない浮遊機雷、以前シェーリが《ゴースト》と呼んでいた物だ。

 

「あまり動き回られては困るので」

「そうか……ならば全部叩き落す!」

 

 黒翼の右腕のガトリングガン。左腕のライフル。両翼のR/Lブラスト。その全てを一斉に構える。だがそれを放つ前に、別の場所からの銃弾が《ゴースト》を撃ち抜き破壊した。

 

「B9、無事っすね」

 

 声と共に現れたのは黒いラファール・リヴァイヴ。但し、以前B2が使用した物とは少し装備が違う。B2が全身刃だとすれば、こちらは全身銃だ。両手は勿論の事、両肩と両足にまで銃口らしきものが伺える。だがインドのアグニの様にずんぐりとはしておらず、あくまで少数の銃器を全身に装備している。だが中でも目立つのはその片腕に巨大なスナイパーライフルがバインドされている事か。

 

「サイレント・ゼフィルスはどうした?」

「あの速度はラファールじゃ無理っすよ。こちらは元々長距離戦仕様っす。だから当初の作戦通りB9がいくっすよ。黒翼なら追いかけれる」

 

 そうなのだ。当初の予定では第一プランが失敗した場合は静司がサイレント・ゼフィルスの相手を。B5が援護かつ、IS委員会側の機体の牽制をする筈だった。しかし静司がサイレント・ゼフィルスに追いつく前にシェーリの邪魔が入り、IS委員会側の機体はストライク・イーグルを残し全て撃墜。そのストライク・イーグルも敵に囲まれ動きが取れない状態だ。故にB5がシェーリを請け負うと言う事だろう。

 不安はある。ストライク・イーグルが落ちればあの戦艦型と小型兵器も一斉にB5を狙うだろう。そうしたらとても耐えられるとは思えない。だが、

 

「B9、あくまで私たちは私たちの仕事をするっすよ」

「…………わかった。頼む」

 

 そう、あくまで優先すべきが護衛対象だ。その為には静司は行くしかない。

 

「増援ですか。ですがそう簡単には行かせませんよ」

「見くびって貰っちゃ困るっすね。私、それなりに強いっすよ?」

 

 言うが否や、B5の黒いラファールが眼にも止まらぬ速さでライフルをシェーリに向け発砲した。シェーリは咄嗟に鋼鉄の棺桶《ヴァカント・コフィン》で防いだが、元々は長距離からでも致命打を与えるために作られたライフルの一撃を間近で受けたのだ。その衝撃でシェーリがよろめいた。

そしてB5はそれだけでは止まらない。静司から距離を離す為に、あえてシェーリの懐に飛び込むとその腕に固定された銃口をシェーリへ向け、撃つ。シェーリも体勢を立て直しつつ両腕で防ぐが、B5は尚も止まらない。腕、肩、そして脚。それぞれに装備された銃口を用いて次々と至近距離で襲い掛かる。蹴りを加えればその脚から銃弾が飛び出し、それを躱しても両肩両腕が残っている。それらを防ぎ、躱したかと思えば放たれる至近距離からのライフルの一撃。そのB5の猛攻にシェーリは次第に静司から引き離されていく。

 

「長距離仕様? 聞いて呆れますね!」

「そりゃどうもっす! 行くっすよ! B9!」

 

 猛攻の最中に叫んだB5の言葉を背に、静司はサイレント・ゼフィルスを追う為に再び空を駆けだした。

 

 

 

 

 目まぐるしく変わっていく風景。それらに驚く暇も無く、一夏は超高速で空を飛んでいた。

 

「一夏、覚悟!」

「そうはいくかよ!」

 

 箒が放った刃状のレーザーを《雪羅》で弾き、一夏は更に加速する。その前方には先を飛ぶラウラとシャルロットの姿が見えた。

 キャノン・ボールファスト。その一年専用機持ち組達のレースは中盤に差し掛かろうとしていた。トップを行くのはラウラ。続いてシャルロット。その背後を一夏、箒、セシリア、鈴が追いかけている形だ。一夏達は下手に動けば一斉に攻撃を受けてしまう為、お互いに牽制しあい思う様に前に出れずにいた。だがこのままではラウラのシャルロットの一騎打ち状態だ。それは面白く無い。

 

「行くわよ!」

 

 先に動いたのは鈴だった。出力を上げ加速していくと一夏達より一歩前に躍り出る。途端にセシリア、箒、そして一夏はそれぞれの射撃武器を鈴に向け放った。だがそこで鈴の口元が笑う。

 

「ふっ!」

 

 突然鈴は速度を落とした。そして機体を横にロールする様に動かしそれぞれの攻撃を回避すると、甲龍の両肩に装備された衝撃砲を連続で撃つ。

 

「うおっ!?」

 

 突然の減速と、そこから繰り出された衝撃砲の連射に一夏は慌てて回避を試みるがそのせいでバランスを崩してしまう。それは箒も同じだったようで一夏と二人、置いて行かれてしまう。だがセシリアは違った。

 

「甘くてよ!」

 

 衝撃砲の合間を縫う様に飛びぬけると大出力BTライフル《ブルー・ピアス》を鈴に向け撃つ。鈴は回避行動を取るがその間にセシリアが鈴に追いついていく。

 

「ちっ、流石にやるわね!」

「まだまだですわ!」

 

 二人はお互いに不敵な笑みを浮かべ並走していく。そしてその背後を一夏と箒が追いかけていく。

 

「くそっ、このままじゃまずいな」

「泣きごとか一夏! 私は先に行かせてもらう!」

「そうはいくかよ!」

 

 お互い更に出力を上げ加速していく。レースの盛り上がりはいよいよ最高潮に達しようとしていた。だがそれを不意に入った通信がぶち壊してしまう。

 

『全員レースは中止だ! 速やかに誘導に従いそこから離脱しろ!』

「って千冬姉!? いきなり何を――」

『襲撃だ。委員会の用意した機体と学園の警備を突破した奴がそちらに向かっている』

「なんだって!?」

 

 千冬の言葉にぎょっ、とする。そんな危険な奴がこちらに来ていると言う事実に一夏の背筋が凍った。

 

『指定した場所に緊急脱出用の通路があるからそこから離脱しろ! こちらも直ぐ向かう』

 

 白式が送られてきたデータを参照する。このレースコースは上部は空が見えシールドバリアに覆われているが、下部は通常のレース用施設だ。なので当然、物資搬入用や緊急用の通路はある。

 

「一夏!」

 

 前方を飛んでいた鈴達が引き返してきた。その後ろには距離は離れているがラウラ達の姿も見える。一夏は頷くと指定されたポイントへ向かおうと白式を動かした。だが突如響いた轟音と共に目の前を青いレーザーが駆け抜けていく。

 

「こいつは!?」

「もう来たのか!」

「サイレント……ゼフィルス!」

 

 きっ、とセシリアが睨みつける先にはコースのシールドバリアーを破ったサイレント・ゼフィルスが悠然と見下ろしていた。

 

 

 

 

 悲鳴が上がる。事情を知らない観客たちが、突然の出来事にパニックとなり我先にと逃げだしていく。大会のスタッフや学園の教師達はそれらを出来るだけ落ち着かせ、安全に避難させようとするがその効果は対してない様だった。

 そんな混乱の最中、千冬は机に拳を叩き付けた。スチール製の机が軋み、近くに居た教師たちが驚き肩を震わせる。だが千冬はそんな事は気にしていない。

 

「だから言ったんだ……!」

 

 サイレント・ゼフィルス――亡国機業らしき者達を補足した時点で千冬は直ぐに大会の中止を進言していた。しかしそれは上層部に却下されていた。千冬が何度も危険性を訴えても彼らは首を縦には振らなかったのだ。それだけ楽観視していたのだろうが、そのツケがこれだ。委員会傘下のIS達を突破したサイレント・ゼフィルスは学園の教師達が操縦するラファールや打鉄の警備もものともせず一直線に一夏達の下へ向かってしまった。一夏達には逃げるように連絡したが、このタイミングでは間に合わないのは明確だ。故に千冬は打鉄を使い一夏達の救助へ向かおうと考えていた。だがそれを止める声がある。

 

「織斑先生! 委員会のISが……!」

 

 声に導かれる様に眼前のスクリーンを見れば、最後まで戦っていたストライク・イーグルが撃ち落とされている所だった。これで委員会が召集したIS達は全滅。それどころかあの異様な形状をした戦艦型までもがこちらにくる可能性がある。こんな状況で千冬がこの場を離れる事はおそらく許されないだろう。一夏達の安否は不安だが、観客たちも忘れてはならない。

 ちらり、と別のスクリーンに眼を移す。そこでは見た事ない灰色のISと黒いラファールの戦闘が映し出されていた。この両者も正体不明の危険要素だ。恐らく片方――灰色のISは亡国機業の仲間だろうが、黒い方はどうだろうか。おそらくは幾度と現れた黒い翼のISと仲間だろうと言う事くらいか。そこまで考えて千冬はその黒い翼のISがスクリーンに移っていない事に気づいた。

 

「奴は何処に――」

 

 居るんだ、という言葉は途切れる。不意に見上げた上空、そこにサイレント・ゼフィルスを追いかけるように空を駆ける黒い翼のISの姿を見たからだ。

 やはり近くに居たのかという思いと、それならばなぜもっと早く現れなかったという八つ当たりに近い感情が過るが今はそれを押しこめる。恐らくはサイレント・ゼフィルスを追撃しているのだろうが、あの黒い翼のISの目的も明確では無いのだ。任せっきりになど出来る訳が無い。

 目的、その言葉を思い浮かべた時に不意に気づく。サイレント・ゼフィルスの目的は一夏達だろう。その理由が男性操縦者だからか、第四世代の機体をもつからかは分からない。だがもし前者だとしたら? この学園にはもう一人、男性操縦者が居るでは無いか!

 

「っ! 川村はどこに居る!?」

 

 今の今までその考えに至らなかった自分の愚かさを呪いつつ、千冬は即座に川村静司の捜索を開始した。

 

 

 

 

「さて、いよいよ本番ね」

 

 観戦用のスクリーンに浮かぶ光景――エムと専用機持ち達の戦いにその女は楽しそうに目を細めた。豪奢な赤いスーツに豊満な体を納めた金髪。サングラス越しでも整っていると一目でわかる顔立ちのその女は、周囲の混乱の最中でもペースを崩さず悠然としている。

 彼女が居るのは既に大方の観客が逃げている観客席の一角。端の方であり人目には付きにくい場所だ。

 

「しかしもうちょっと頑張ってくれないかしらね。これじゃあ折角エムにお願いしたのに意味が無いわ」

 

 スクリーンの中ではエムと戦闘に入った織斑一夏達の姿が見える。しかしその戦局は一方的であり、専用機持ちが6人がかりであるのにも関わらずエムが圧倒していた。ラウラの砲撃を容易く躱し、シャルロットとセシリアからの射撃も全て防ぐ。接近した鈴をその銃剣で弾き飛ばし、死角を突こうとした一夏と箒にはビットのレーザーが襲い掛かる。一年の専用機持ち達は自分達と相手との力量差に歯噛みしている様だ。

 

「無様ねえ」

「よく言うわね。イベントに勝手に参加しておいて」

 

 背中から声がかかる。女は振り向かずにくすり、と笑った。

 

「あら、意外に早かったわね。生徒会長さん」

「お生憎様。うちのスタッフは優秀なのよ……それで何が目的かしら? 亡国機業」

 

 お互いに顔は見えない。しかし女には声の主である更識楯無がどんな顔をしているか想像がついていた。

 

「こんな所でのんびりしてていいのかしら? 早く行かないと織斑一夏が危ないわよ? それにこの会場もね」

「ええ、そうね。あの奇妙な形のIS達も気になる所だし、教えてくれないかしら? あれが何で、そしてあなた達が何を考えているか」

 

 楯無の声に険が籠る。恐らくその気になれば今すぐにでもISを展開してこちらを拘束する気だろう。だが女は気にした様子も無い。

 

「そうね。しいて言うなら戦力調査かしら? 噂の第四世代機の能力……それの再確認ってとこね」

 

 素直に話した女に楯無は訝しむ。そんな反応は面白く、女は更に続けた。

 

「後はまあこちらの新型の試験ってとこね。これで良かったかしら?」

「ええ。残りは冷たい鉄格子のなかで聞いてあげる」

「ふふ、無理よ」

 

 何の予備動作も無しに女が振り返る。その手にはナイフが握られており振り向き様に楯無へ投擲。楯無も警戒はしていた為にそれを避ける事は出来たが、互いの距離は離れた。

 

「見た目と違って随分野蛮ね」

「見た目に捕らわれる様じゃまだまだお子様よ。……さて、では私は御暇しようかしら」

「逃がすとでも?」

 

 楯無が直ぐにでもISを展開しようとするが女は首を振った。

 

「ええ。こうやってね」

 

 不意に女のスーツの裾から金色の糸の様な者が流れ出す。ふわふわとなびく様に伸ばされていた糸が、まるで薙ぎ払うかのように楯無に叩き付けられた。

 

「くっ!?」

 

 楯無もISを即時に展開しその一撃を防ぐ。しかしその糸は楯無とミステリアス・レイデイにぶつかった瞬間眩い閃光を放ち楯無の視界を奪う。

 

「…………やられたわね」

 

 楯無がようやく視界を取り戻した頃には女の姿はそこに無かった。

 

 

 

 

 サイレント・ゼフィルスの放ったレーザーがラウラのシュヴァルツェア・レーゲンを貫いた。

 

「ラウラ!」

「くっ、大丈夫だ。だがこれでは……!」

 

 貫かれたのはレース用の増設スラスターの様だ。既に爆発寸前なまでに不安定なそれを解除したラウラが機体を確認し、眉を潜めた。

 

「駄目だ、スラスターが完全に死んだ。飛ぶだけでは何とかなるが、それよりもここから支援する!」

「わかった。無茶するなよ!」

 

 ラウラら自身が無事な事に安堵した一夏だが、その間にもサイレント・ゼフィルスは鈴とセシリア。そしてシャルロットと箒を相手に立ち回っていた。

 

「こんのっ、落ちなさい!」

 

 鈴が《双天牙月》をサイレント・ゼフィルスへ振り下ろす。それを銃剣で防いだ所に箒が《空裂》による斬撃を繰り出すが、それを新たに展開したプラズマナイフで受け止めた。

 

「これで!」

「どうですか!」

 

 動きが止まった所にシャルロットがショットガンをセシリアがレーザーライフルを放とうとするが、そこにサイレント・ゼフィルスのビットから放たれたレーザーが邪魔をする。二人は何とか避けたものも、その隙に鈴と箒は弾き飛ばされていた。

 

「強い……!」

「なんなのよコイツは!」

 

 歯噛みするシャルロットと鈴の横に並び一夏も相手を見据える。そのサイレント・ゼフィルスは詰まらなそうに呟いた。

 

「この程度か。代表候補生に第四世代機が聞いてあきれるな」

「馬鹿にして……!」

 

 再び鈴が飛び出す。それに箒が追随し、セシリアとシャルロットが援護に入る。

 一夏も白式のスラスターを吹かせ、鈴と箒と共に接近戦に持ち込むべくサイレント・ゼフィルスへと向かっていく。だがその最中、サイレント・ゼフィルスの姿が掻き消えた。

 

「え?」

 

 気づいた時には一夏の真後ろでサイレント・ゼフィルスが銃剣を振りかぶっていた。予備動作なしからの瞬時加速。それに全く反応できなかった一夏にその銃剣の一撃が叩きこまれる刹那、咄嗟に反応したシャルロットが身を割り込ませる。

 

「一夏!」

 

 近接ブレード《ブレッド・スライサー》でそれを受け止めたシャルロットだが、想像以上のサイレント・ゼフィルスの力に弾き飛ばされコースの壁に叩き付けられてしまった。

 

「シャルロッ――っが!?」」

 

 慌て、その場に向かおうとする一夏に蹴りが叩きこまれ、シャルロットと同じくコースの壁へと叩き付けられた。更にはサイレント・ゼフィルスはBTライフルとビット、その両方から無造作にレーザーを発射。見当違いの方向に撃たれたと思われたそれは、突然進路を変えセシリアと鈴を貫いた。

 

 

「きゃああ!?」

「くっ……!?」

 

 二人もそのまま墜落して行き残されたのは箒一人。サイレント・ゼフィルスがゆっくりと箒にその銃剣の剣先を向ける。

 

「くっ、このぉ!」

 

 箒も《空裂》と《雨月》を手にサイレント・ゼフィルスへと斬りかかった。右に、左に。交互に繰り出す剣戟をサイレント・ゼフィルスはいともたやすく防ぐ。それならば、と箒は《空裂》を楯の様に構えつつ、《雨月》を持つ腕を引く。そして切っ先をサイレント・ゼフィルスへ向けると一気に突き出した。これは唯の突きでは無い。《雨月》は刺突と同時にレーザーを放出。サイレント・ゼフィルスを貫かんと迫る。だがそんな一撃もサイレント・ゼフィルスは機体を少し捻るだけで回避してしまう。そしてお返しとばかりに箒目掛けてナイフを投擲した。

 投擲されたナイフは箒に当たる前に紅椿のシールドが防いだ。ばちり、と音がして一瞬箒の眼前が白く染まる。そしてそれが晴れた時には、先程の自分と同じように刺突の構えを取ったサイレント・ゼフィルスの姿があった。

 

「―――っ!?」

「興ざめだ。第四世代もこうなればただの玩具か」

 

 紅椿の様にレーザーを発射したわけでは無い。だがその余りにも早い刺突によって空気が唸る音共に放たれた突きが紅椿に直撃。痛みと衝撃に箒の意識が途絶えた。がくり、と力を失った箒はサイレント・ゼフィルスの銃剣の上で、まるで干し物の様に垂れ下がっていた。

 

「くっ……箒……!」

 

 一夏はふら付く体に鞭を打ち動かすが思う様に動かない。そんな一夏を一瞥するとサイレント・ゼフィルスは馬鹿にする様な笑みを浮かべた。

 

「あの――弟――この程度――」

 

 小さく何かを呟いた様だが一夏には聞き取れなかった。そしてそのまま箒を連れたまま上昇していく。その光景に一夏の心に焦燥感と怒りが湧きあがる。

 

「待ち……やがれ! 箒を、離せ!」

 

 《雪羅》を構えるが、サイレント。ゼフィルスは気にした様子も無い。その事が一夏の怒りに油を注ぐ。

 

「待てって言ってんだよ!」

 

 痛みを振り切って飛び出す。片手に《雪片弐型》。もう片手には《雪羅》を構えサイレント・ゼフィルスに向かった一夏だが、彼がたどり着くよりも早く、空から降ってきた光がサイレント・ゼフィルスを霞めた。続いて黒い何かが超高速でサイレント・ゼフィルスへとぶつかる。ごうっ、と大気が振動し続いて響いたのは鈍い金属音。

 

「あいつは……!」

 

 そして一夏はその正体を見た。漆黒の装甲に時折紅い光が線の様に走る、巨大な翼を持ったISがその巨大な鉤爪を、サイレント・ゼフィルスの銃剣に押し当てている光景を。

 そしてサイレント・ゼフィルスもまた、その相手を見て口元を歪めた。

 

「やっと来たか」

『ああ、来たとも』

 

 機械によって変えられた無機質な声が答え、その背中から刺々しい尻尾の様なパーツがサイレント・ゼフィルスを襲う。サイレント・ゼフィルスは咄嗟に避けたがその際に黒いISは銃剣の上の箒を霞め取ると一夏に向けて放り出した。慌てた一夏が落下していく箒を受け止め、怒りをあらわにする。

 

「おい! 危ないだろ!」

 

 だがそんな言葉は聞こえていないのか、黒いISとサイレント・ゼフィルスはシールドバリアを突き破り市街地へと突入していくのだった。

 

 

 

 

『……おい、やっと例の奴も現れたぞ』

『そのようね。と、いうことは私達も?』

『そうしたいのも山々だがあのイカれたデカブツはどうする? 相手にしている余裕は無いぞ』

『あの黒のラファールが相手をしてくれるだろう。だがあからさま過ぎても後が不味い。私が残ろう』

『一機じゃ駄目ね。私も残るわよ。さっきのがこちらの実力だと思われたら悔しいし。わざとやられるのって意外に難しいのよね』

『了解した……では後は手筈通りに』

『了解。あなたの国ではあれを鴉と呼んでいるんだっけ? ならこれは鴉狩り?』

『どうでもいい。私たちは仕事を果たすのみだ』

『了解。それでは行こう――レイヴンを捕獲しに』

 

 戦艦型とIS委員会によって召集されたIS達が戦った空。その下にある海中で4つの影が動き始めた。

 




メイルシュトロームとテンペスタⅡ型は原作でも名前だけでしたので、姿形は捏造です。
一応一夏たちがゲームでコンボが極悪とか言ってたテンペスタのⅡ型が最新鋭かつ能力的にも高いという事で。
ストライク・イーグルさんは臨海学校に出てきた連中の親戚筋。アグニはもう名前そのまんま。
そして敵にdisられるメイルシュトロームさん……

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