こうして、私達は出会う(完結)   作:珍明

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閲覧ありがとうございます。

クローディアとハリーの視点を分けるのが当たり前になってしまい、その分、長くなります。

追記:18年8月8日、18年9月3日、20年1月6日の誤字報告により修正しました。


15.親愛

 レイブンクロー生にとっての催し、模擬試験。

 6年生が一致団結し、学年毎に試験内容を決めて監督する。例年で最も参加人数が少なく、その分、用意する答案用紙も少なかった。

「作る枚数が楽になったと喜ぶべきか、それだけ少ない生徒数を寂しく思うべきか……」

 答案用紙作成担当のアンソニーは溜息を吐いた。

「これだけの大仕事したら、学期末試験免除してくれてもよくねえかな?」

「ねえよ、現実見ろって」

 実技試験担当のモラグをマイケルは厳しい言葉で窘めた。

「6年生だけ『姿現わし』の模擬試験を出来たら、いいのにさ」

「流石に資格試験ですから、一般の生徒には手に負えません」

 会場担当のクローディアはそんな疑問を呟き、リサはクスクスっと笑った。

「準備できたかしら? それじゃあ、席へ案内をお願い」

 監督責任のパドマが号令し、案内担当のセシルが順番に下級生を導く。自由に席を決めさせないのは、カンニング防止対策の一環だ。

 普段の小テストとは違う雰囲気に1年生は緊張を露に模擬試験へ挑む。7年生は6年生の作った試験の出来栄えを確認する目つきだ。

 6年生も監督する立場故の緊張感を味わい、問題なく終了した。

「へえ、今回は全員合格だ。誰も補習しなくていいぞ」

 採点担当のテリーは全員の答案用紙を感心して眺める。

「なーんだ、補習になっちゃって7年生に怯える後輩を慰める名目で親しくなろうと思ったのに」

「ついに年下へ標的を変えたの!?」

 サリーの発言にマンディはドン引きだ。

「7年生の恐怖を味わってみたかったです」

 1年生に補習なしを報せたが、何故かベーカーはガッカリしていた。

 

 大仕事を終えたクローディアには次がある。そう、次期部長を決める会議だ。

 バーベッジの事務所を借り、7年生だけ呼び出す。

「部長って先生が決めんじゃねえの? バーベッジに任せちまえよ」

「おもしろいじゃないか、僕で決められるなんて」

 面倒そうなコーマックをクレメンスは目を輝せて、座らせる。顧問のバーベッジには部活を任せている為に不在だ。

「君以外の6年生はいないのか?」

「来年のクリスマスに部長交代引退するって言ったっしょ。今の6年生を後任にしてどうすんの」

 ジャックの疑問にミムが答えてくれた。

「私はデレクを推薦するさ。理由は成長の伸びが早い、身長じゃなくて腕前の……」

「僕はデニス、やっぱり一番、腕がいいからね」

「俺はジニー、責任感が強いし、部活中でクローディアに次いでリーダーシップを取れているな」

「俺もジニーに一票、クィディッチとの両立も上手い」

 クローディアの意見に続き、クレメンス、コーマック、ジャックが答える。今のところ、ジニーに票が多い。

「あたしはルーナ、マグルの世界にもないオリジナルのバスケにしてくれるかも」

 たっぷり時間をかけて出た発言、本人のミム以外は表情が凍りついた。

 結局、ジニーとデレクに意見が分かれる。1時間以上経っても決定打に欠けて決断できない。それでも誰も席を立たず、投げ出さずに真剣だ。

「難しいわ。先生ってこんなに考えて決めているんだねえ」

 椅子の背もたれに思いっ切りたれかかり、ミムは疲れを溜息にする。

「これが監督生なら、この2人で決定なのにね」

 クレメンスの一言にクローディアは思い出す。すっかり忘れていた副部長の存在だ。

「デレクを部長、ジニーを副部長に就かせるさ。ジニーは来年もクィディッチを掛け持ちするから、副部長なら負担も減らせるさ」

「「「「異議なし」」」」

 4人は一瞬、お互いに顔を合わせて全員一致で答えた。

 会議を終え、部活中の部室へ入る。真っ先にバーベッジへ結果を報告した。

「私も顧問として、皆さんに従います。ジニー、デレク。こちらへ」

 よく通る声に応じ、皆に指導をしていたジニーとデレクはすぐに集まる。そして、2人にはバーベッジから伝えて貰った。

「ぼ、僕が来年の冬に部長!? クローディアはその頃には学校にいないんですか!?」

 在学中に部長引き継ぎの習慣がない為、デレクは次期部長よりもクローディアの退学を心配した。

「成程、私が7年生になった頃にはクィディッチのキャプテンになっているでしょうから、調整は利くわ」

 ジニーは自信満々にハリーの後任は自分だと言い切った。

 反応はそれぞれだが、2人は承諾した。

「記念に1枚撮ろう」

 何処から聞いていたのか、コリンがカメラを構えて現れる。

「まだ決まっただけなのにさ……コリンは何でも撮りたがるさ」

「本音を言えば、ハリーとジニーのツーショットが欲しいなあ」

 ギラギラと目を輝かせ、コリンはおねだりしてくる。ジニーは黙り、デレクとクローディアの腕を絡めて撮られる姿勢になる。彼女に逆らわず、2人は笑顔で構えた。

「ジニーも笑って」

 コリンの後ろから、ルーナに声をかけられてジニーも自信に溢れた笑顔を見せた。

 

 

 3月1日、ロンは17歳になり成人を迎える。彼の寝台には各方面から届けられた贈物で山積みになり、彼は浮かれ喜ぶだろう。

 そんなロンの姿を想像し、クローディアは朝食にありつく。

「クローディア、今夜の晩餐会に行かないか? 野郎ばっかりって言うのもムサ苦しいし、何よりロンの誕生日会とかやってらんねえし」

 朝からコーマックに絡まれ、うんざりする。

「というか、コーマックはロンとお友達でしたっけ?」

「何言ってんだ。俺とロンは身内に魔法省関係、クィディッチはキーパーを争った中だぜ。ここまで来たら、マブ達だろ」

 パドマの嫌味もコーマックは軽く交わす。彼女は呆れてシッシッと手で追い払う。

「ミス・パチル、ミス・クロックフォード」

 フリックウィックの緊張した声に振り返る。

「こちらへ来なさい」

 クローディアとパドマだけ、奇妙な組み合わせで呼ばれたと疑問しつつ、大人しく従う。リサが仲間外れにされた寂しさか、二重扉を過ぎるまで見送ってくれた。

 連れて来られた校長室には、ダンブルドアとスラグホーンが待っていた。

「先ずはワシから説明しよう」

 穏やかに深刻さを含め、ダンブルドアは手袋の裾を引っ張る。

「つい先ほど、ラベンダー=ブラウンがグリフィンドール寮の部屋にて毒を呷った」

 聞き違いを疑いたかった。

 全身の体温が一気に冷め、手足の感覚がおぼろげになっても聴覚は働く。

「パーバティは!? 先生、パーバティは!?」

 無表情に切羽詰った声を出し、パドマは詰め寄る。クローディアもハーマイオニーの安否を聞きたいが、恐ろしい事態に言葉が出ない。聞くのも怖かった。

「ミス・パチルとミス・グレンジャーは無事じゃ。ミス・グレンジャーはスラグホーン先生のベアゾール石でミス・ブラウンに応急処置を施し、ミス・パチルはマクゴナガル先生に助けを求めた。2人の適切な行動により、ミス・ブラウンは助かったと言っても過言ではない。ただ、かなり動揺しておる故にマダム・ポンフリーから気付け薬を貰っておるところじゃ。ミス・パチル、傍にいておやりなさい」

 姉妹の無事を知り、安心したパドマは涙を浮かべて一礼し、校長室を去った。

「さてと、君を呼んだのは……毒はこの酒に盛られておったからだ。クローディア、見覚えはないかね?」

 机の上に置かれたオーク樽熟成の蜂蜜酒。

「スラグホーン先生に貰った物です。ですが、ハーマイオニーに預けていました」

 没収という言葉は使わず、クローディアの意思でハーマイオニーに渡したと説明する。言い終えた瞬間、スラグホーンは青ざめて棚にもたれた。

「私の酒を飲んで……ラベンダーが……?」

 つまり、標的はクローディアだ。

 また巻き込んだ。

 下手をすれば、ハーマイオニーとパーバティまで倒れるところだった。

「早合点するでない。スラグホーン先生が狙われておった可能性もある。ホラス、酒を贈る事を誰かに吹聴したかね?」

「『三本箒』で注文した時に贈り物だとは……話した……。相手までは……」

 罪悪感に慄き、スラグホーンの顎がガタガタと震える。

 一瞬、ドラコを疑うが、彼はクリーチャーに監視されている。酒に毒を盛れば、すぐにハリーへ報告されるはずだ。

 だが、監視をつける前であったなら、別の誰かにやらせたならと疑いの要素が脳内で広がる。

「ご苦労じゃった、クローディア。君も友人の元へ行っておやり」

 自分でもわかる程、クローディアの体温は下がっている。ダンブルドアは彼女が思考の坩堝に嵌りかけぬように声をかけてくれた。

 ダンブルドアの気遣いに頷き、クローディアは信頼のある視線に見送られながら部屋を出た。

 校長室の前にはハリーが待っていてくれた。

「ハーマイオニーの見舞いに医務室にいたら、パドマが来てね。君がここにいるって教えてくれたんだ」

「まだハーマイオニーの気分は良くならないさ?」

 応急処置をしたというなら、ルームメイトが倒れた瞬間には傍にいたのだ。気の強いハーマイオニーでも精神的に参ってしまう。

「ラベンダーが起きるまで医務室を離れないって、言い張ってね。ロンが付いている」

 やはり、ハーマイオニーはラベンダーに対し、責任を感じている。校長室にいたスラグホーンも同様に生徒達うを危険に晒した責任を感じていた。

「そういえば、スラグホーン先生の石を使ったって聞いたさ」

「ウィンキーのお陰だ。ハーマイオニーが石を必要としていたから、ウィンキーは先生の所から持って来たんだ」

 本当の命の恩人はウィンキーだ。

 先ほどの会話でダンブルドアが教えてくれなかったのは、何故かを考える。いくら、10月の首飾りに続いての事件に頭を抱えているとしても、生徒を実質的に救った『屋敷妖精』を紹介しない。

 何か違和感を覚えるが、医務室の前で座り込むハーマイオニーを見てすぐに吹き飛んだ。

 ロンの腕に抱かれていたハーマイオニーはクローディアに気づき、静かに抱きついてきた。

「クルックシャンクスが鞄から出そうとしていたのを見つかって、ラベンダーはロンへ用意していたと思ったらしくて、……一口だけだからって……飲んじゃって……」

 ハーマイオニーは断固として断った。

 諦められなかったラベンダーは彼女が眠っている間を狙い、盗み飲んだ。

「犯人はスラグホーン先生の性格をわかっていない人よ。先生は美味しい物なら、贈り物でも自分用にしてしまう人だもの。先生が飲んでしまう可能性もあったわ!」

 段々と興奮してくるハーマイオニーの手をクローディアは握る。

「応急処置が良かったって聞いたさ。ラベンダーはハーマイオニーが傍にいたから、助かったさ。誇りに思っていいさ」

 本心からの言葉。ハーマイオニーは安心のあまり、零れそうになる涙を堪えてクローディアの肩に顔を埋めた。

 

 ラベンダーへの面会が叶ったのは、夕方。

 それまで待つと決めたハーマイオニーに付き合い、クローディアとハリー、ロンは医務室前で待機する。授業をサボっている4人はフィルチに連行されそうになったが、わざわざスラグホーンが来てまで許可を出したと庇ってくれた。

 パーバティも待とうとしたが、授業のノートを取る人が必要だと言うパドマに連れて行かれた。

 マダム・ポンフリーから許可を受け、ラベンダーを見舞う。いくつも寝台の並ぶ中、眠っているのは彼女1人だ。

 ハーマイオニーは慌てず、ラベンダーの手を取る。

「あんまり気にするなよ、正直、そんなに仲良くないだろ? 『占い学』でよく言いあってたじゃないか」

「ええ、私とは考えとか趣味とか色々と合わないわ。でもね、こんな酷い目に遭っていいような子じゃないのよ……」

 悔しそうに唇を噛むハーマイオニーは犯人に怒っていた。否、己自身にもだ。

 この雰囲気の中、コーマックがズカズカと入ってきた。

「ラベンダー=ブラウン。君がこんな目に遭って、君の大切さを痛感した! 俺と付き合ってくれ、一生大事にする」

 まだ目を覚ましてもいないラベンダーの前に片膝を付き、コーマックは大仰に愛の告白をやってのけた。

 マダム・ポンフリーを含めた面子から、ドン引きされているとも知らず――。

「嫌……」

 うわ言よりもハッキリした声で断られた。

 起きているのかと顔を近づけたが、規則正しい寝息を立てている。あくまでも反射的に答えただけだ。

 その後、面会に来たラベンダーの両親は娘の痛ましい姿に嘆いた。

「ラベンダー、まだ起きない?」

「なんでコーマックがいるの?」

「面会は一度に6人までですよ」

 パドマとパーバティも現れ、9人になっている。仕方なく、ロンとハリーは放心状態のコーマックを引き摺るように連れ出した。

 ハーマイオニーとパーバティがルームメイトと知り、ラベンダーの両親は2人を娘の恩人と呼んで感謝した。

 その様子にクローディアは強い罪悪感に苛まれ、非常に居た堪れない気持ちになった。

「おお、ミス・ブラウン! あたくしがたまたま垣間見た闇の前兆はこういう事だったのですね!」

 騒がしいトレローニーまで現れる。面会の人数が超える理由にクローディアは廊下へ出た。

 ジニーとルーナが待ち構えており、どういうわけか『灰色のレディ』までいる。クローディアの護衛のつもりのようだ。

「ふうん、もしも酒瓶に盛られていたなら、犯人はスラグホーン先生の性格をよくわかっていない奴よ」

「ハーマイオニーも言っていたさ、私も先生がそういう人だとは気付かなかったさ。つまり、あまり先生と関わりのない人……晩餐会とかに招かれていない生徒」

「違うよ、知ってたんだもン」

 クローディアとジニ―の憶測をルーナは真っ向から否定した。

「届いて欲しくなかったんだ。先生が飲みそうになっても、毒の匂いに気づいて飲まないと望みをかけたんだもン」

 まるで犯人を弁護しているように聞こえるが違う。犯人の行動であり、その心情を推理しているのだ。

「ルーナは……犯人は失敗して欲しかったと?」

 クローディアの問いにルーナは頷く。自分の推理を理解されて喜んでいる。

「……確かに失敗を前提にしているなら、犯人はスラグホーン先生をよく知っている人ね」

 ジニーも驚きつつ、納得した。

 考えもしない。思いつきもしない。あまりにも意表を突いている。

「では何の為にこんな事をしたと? 失敗を望むならむしろ、最初から何もしなければ良いではありませんか?」

 『灰色のレディ』は眉を寄せ、怒りのままに犯人を罵る。

 標的に死んで欲しくない。

 でも、行動に移さなければいけない圧力を受けている。誰にも相談できない。だから、ドラコは泣いている。誰にも見られないところで、独りで苦しむ。

「ルーナ、犯人が次に動くのはいつ頃だと思うさ?」

「しばらくは動かないよ。動いても次は自分が犯人だと証拠を残してしまいそうになる。だから、次は確実に失敗しない方法を取るんだ。でも、準備がいる。まだ、決め手がないんだ」

 淡々と相手の心情を語るルーナに、流石のジニーも慄いて唾を飲み込む。

 クローディアも武者震いに似た震えが起こる。やはり、犯人を……否、ドラコを止めるには直接対決しかない。文字通り、命を賭けた説得だ。

「わかったさ、ありがとう。ルーナは本当に頼りになるさ」

 本心で褒め、ルーナは曖昧に微笑む。あまり、嬉しそうに見えない。

「次までに学校は閉鎖しているかもしれません」

 3人にしか聞こえないか細い声で囁かれ、胃が痙攣する。

「どういうことさ?」

「そのままの意味です。ここは親が生徒を預ける場。以前の首飾りの件も解決していません。そんな状態の中で次の事件……いつまでも犯人がわからなければ、どんな偉大な魔法使いが創設しようとも信頼を失います」

「『秘密の部屋』の繰り返し」

 『灰色のレディ』が遠慮した言葉をルーナは呟き、ジニーは青褪めつつも納得した。

「尚の事、試験まで学校は閉鎖しないさ。……バジリスクの時も校長先生が不在のままだったしさ」

 クローディアが言い終える前に『灰色のレディ』は顔を寄せ、憂いを帯びた表情で睨んできた。

「話を聞いて下さいますか? 2人きりで」

 断れる雰囲気ではない為、クローディアは適当な空き教室に入る。ジニーとルーナは扉で待機だ。

 誰が何処から見ているかわからない為、『耳塞ぎ呪文』を使い、口元をハンカチで覆う。『灰色のレディ』に怪訝された。

「盗み聞き対策さ、それで話って?」

 『灰色のレディ』はクローディアに椅子を勧め、彼女自身は机に腰掛ける。

「貴女は私の母の髪飾りを見つけて下さった」

「……ああ、うん。確かにさ、あんなボロボロだったけどさ」

 すっかり忘れていたが、目の前の幽霊はロウェナ=レイブンクローの娘。『失われた髪飾り』は母親の形見なのだろう。そんな大切な物が『分霊箱』でしたとは言えない。

「あの髪飾りを……母から盗みました」

 唐突な罪の告白。

 驚きのあまり、疑問の声も出ない。『灰色のレディ』は続けた。

「私は母よりも賢く、重要な人物になりたかった。髪飾りは知恵を与える物、だから、私はそれを持って逃げたのです」

 『灰色のレディ』はクローディアを一瞥し、更に続ける。

「母は私の裏切りを決して認めず、まだ自分が持っている振りをしたと言われています。その事をホグワーツの他の創設者にさえ打ち明けなかったのです。やがて、母は重い病気を患い、死を前にして私に会いたがりました。ある男に探させてまで……、私にずっと恋をしていた男です。その男ならば、自分の死にまで私を連れ戻せると信じたのでしょう」

 息苦しそうに語る様子から『灰色のレディ』の死もまた近づいていると気付く。それでも止まらない。

「男は私が隠れていた森を探し当てました。私が一緒に帰る事を拒むと……暴力を振るい、そして、刺しました。元々、頭に血が上りやすい性質で2度も私に断られて激怒したんです」 

 言い切った『灰色のレディ』は胸元を開いて、刺された傷跡を見せる。若くして亡くなったとは思ったが、殺されたとは予想外だ。

「その人は後悔したのか?」

「ええ、勿論。私を殺した凶器で自ら命を断ちました。ずっと悔悟の証として鎖を身に着けています」

 鎖の男。

 思い当ったのは『血みどろ男爵』だ。

「可哀想に辛かったろう……」

 殺し殺された2人が1000年もこの世に留まり、しかも、同じ領域に住んでいる。お互いの感情が未練という鎖で、逝く事も出来ない。これ程の酷い真実を知り、クローディアは思わず涙した。

「言っておきますが、男爵は当然の報いですわ」

 予想外の涙に『灰色のレディ』は驚いたが、躊躇いがちに続ける。

「男爵のうろつく物音に気付いて、私は木の虚に隠しました。アルバニアの森です。母の手の届かぬ寂しい場所です。実際、母は髪飾りを見つけられず、私にも会えぬまま、逝ってしまいました」

「幽霊になっても会わなかった?」

 その問いに『灰色のレディ』は沈黙で答えた。

「私は……この話をしてしまいました。あの人が……お世辞を言っているとはわからず……」

 今までと違い、言い訳がましくなった。

「あの人はダンブルドア……じゃないさ」

「……自らを『卿』と呼ぶ、あの人です」

 言われた瞬間、繋がった。

 アルバニアの森にあったはずの髪飾りが学校で発見された。それはヴォルデモートが職を求めに訪問した際に隠して行ったのだ。

「何故、そんな大事な話を私に?」

「……ここからが本題です。私と男爵のしがらみのせいか、否か、レイブンクロー生とスリザリン生との間には命に関わる危険がグリフィンドールよりも多いのです。近年で言うならば、『嘆きのマートル』がその例です」

 50年前の出来事を近年ならば、どれだけの生徒が死に瀕したのか想像できない。それらを見届けてきた『灰色のレディ』は、警告している。

 

 スリザリン生に気をつけろと――。

 

「それでも、私はここにいる。ありがとう、レディ」

 犯人に立ち向かう決意を聞き、『灰色のレディ』は呆れたような困った笑顔を見せた。

「どうか、ヘレナと呼んでください。貴女になら、そう呼ばれていい」

「ヘレナ……」

 呼ばれたヘレナは照れ臭そうだ。

「これからは食べる物にも注意なさい。いつもフラフラしている貴女の使い魔も離さないように」

 『灰色のレディ』に呼ばれたかのようにベッロはひょっこりと顔を出す。ラベンダーが倒れてから一度も見ていなかった使い魔は、呑気すぎる。クローディアは段々と腹が立ってきた。

「ベッロ、ハリーの所へ行くのは禁止さ」

 雷に打たれたように硬直し、ベッロは顎が外れんばかりに口を開けた。

 

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 アルバニアとヴォルデモートを結びつけた髪飾りの話を聞き、ハリーはをパズルのピースが埋まる感覚を味わった。

 髪飾りを見事に隠しきった木の虚は、ヴォルデモートにとっても身を隠すには最高の場所だったのだ。

「マルフォイの監視は今まで通り、但し、こちらからは何も仕掛けない」

 未遂とはいえ犠牲者が出たにも関わらず、クローディアは他人事のように提案した。

 ハリーとしては『開心術』や『真実薬』を使ってでも、ドラコの悪行を暴きだしてヴォルデモートの企みを阻止したい。そう訴えれば、彼女は態度を変えずに「それはスネイプ先生に任せる」とだけ返した。

 クローディアは知らない。スネイプは最早、以前ほどダンブルドアの為に働こうとしてないのだ。

 ハグリッドが2人の口論する場面を目撃した。

 偶然、立ち聞きしてしまい詳細は聞き取れなかったようだが、スネイプは現状に不満を感じていたという。

 その事も伝えたかったが、ハリーは黙る。きっと、知ったところで彼女のスネイプへの信頼は揺るがない。今まで自分達の絆が繋がり続けたようにだ。

「追い詰められた奴は何をするか、見当もつかないぜ。わざと泳がせて、いざって時に動けるように構えて置いたほうが疲れないって」

 泳がせすぎた気がするが、ハリーは自分の意見は通らないと判断して取りあえず合意した。

「それより聞いてくれよ、フレッドとジョージから文句の手紙が来たんだぜ」

「……文句?」

 ドラコの行動を「それより」呼ばわり出来るロンの気楽さに少々、イラッとしつつも聞く。

「僕の誕生日がホグズミードの外出と重なっていただろ? それで村で僕を祝ってくれるつもりだったんだと、外出が中止なったなら知らせろって……決めたの僕じゃないのに」

「それはロンが悪いよ」

「ロンのせいさ」

「ロン、もう少し気を遣いましょうね」

 3人から容赦の突っ込みに襲われ、ロンはげんなりした。

 

 ラベンダーの退院まで2週間かかった。

 酒の件について、ラベンダーとパーバティに誤解させたままである。犯人がドラコであろうとなかろうと本当の標的はハリー達だけの秘密だ。

 事件は既に学校中に伝わっており、しかも、教師陣の目が届きにくい自室が犯行現場。生徒の間でも、いつ我が身に危険が及ぶかもしれない恐怖も広がる。その分、警戒心も強まり隠し持っていた品々をフィルチに提出する者まで現れた。

 フィルチの事務所にある没収箱も満杯になり、『闇払い』が出向いて処分する程だ。

「赤毛の男子に気をつけろってこういう事だったんだわ!」

 勝手に毒を飲んだ身でありながら、ラベンダーはロンに対して悪態を吐く。それだけ元気を取り戻した姿を喜び、彼は理不尽な怒りを受け入れていた。

「本当に懲りてね、あんな思いは2度とゴメンよ」

「わかっているわ。皆、助けてくれてありがとう」

 パーバティに叱られ、ラベンダーは心底反省する。2人を連れ、ハリーはロンとハーマイオニー、クローディアとパドマと共に厨房を訪れた。

 ウィンキーに感謝を伝える為だ。

 ぞろぞろと現われた生徒は『屋敷妖精』に歓迎され、ウィンキーを見つけたハーマイオニーはラベンダーへ紹介する。

「まあ、貴女がウィンキーね! 本当にありがとう。貴女のお陰だわ!」

 小さな命の恩人を前にラベンダーは片膝を付き、その手を取る。すっかり恐縮したウィンキーはか細い声で「光栄です」と答えた。

「ウィンキー、私達でクッキーを焼いたの。たくさん焼いたから、皆で食べて貰いたいわ。どうかしら?」

 ラベンダーは缶に詰めたクッキーをウィンキーに見せる。以前、クローディアの母親が彼女へジュースを渡そうとした時、抵抗しつつも飲み物に興味津々だった。

 ハリー達がクリスマスにクリーチャーへクッキーを贈った。ドビーにこっそり確認すれば、ちゃんと食べていたそうだ。

 着る物は与えられないが、食べ物は受け取って貰える。ラベンダーは最初こそ、『屋敷妖精』へのお礼に疑問を感じていたが、クッキー作りの楽しさから最後にはまるで自分の提案のように乗り気になった。

 ウィンキーは小さな指を手の中で弄び、ゆっくりと考え込んでから受け取ってくれた。

「『屋敷妖精』は地図に名前が載ってない理由を考えたんだけどさ。彼らは幽霊のように次元の違う種族なんじゃないかって思うさ」

 周囲に聞こえぬように、クローディアはハリーの耳元で問う。彼女に聞かれるまで思いつきさえしなかった。

 懐に入れた地図をローブ越しに触り、厨房の『屋敷妖精』を見渡す。地図を作製した4人はまだ学生、しかも、シリウスはクリーチャーとの諍いで『屋敷妖精』の名を載せるという考えまで至らなかったのではないかと憶測を立てた。

「『屋敷妖精』の次元が違うのと……おじさん達はそこまで努力しなかったんだよ」

 父親達の未熟を認める発言が意外だったらしく、クローディアは目を点にした。

 

 

 ダンブルドアに呼ばれたのは、ハッフルパフ対スリザリン戦が終わった翌週。1月の授業から随分と間が空き、ハリーは決してそんな事はないが正直、忘れられたと思っていた。

「あらまあ、あたくしを邪険に放り出されるのは、このせいでしたのね、ダンブルドア!」

 校長室の扉を開けた瞬間、ハリーの記憶からほとんど忘れていたトレローニーと鉢合わせした。

 ダンブルドアが丁寧に説明しても、癇癪を起こした自称『予見者』は辞職を仄めかして螺旋階段を下りて行った。

 椅子を勧められながら、ハリーは確認する。

「まだトレローニー先生はフィレンツェの授業を認めていないのですか?」

「そうじゃ。わし自身が『占い学』を学ばんかったが為に、わしの予見を超えて厄介な事になっておる。仲間から追放されたフィレンツェに森へ帰れと言えぬ。かと言って、トレローニー先生にとってこの城以外に安全な場所などありはせぬ」

 ただでさえ、ダンブルドアは様々な対応に追われている身だ。トレローニーにまで頭を悩まされては堪らない。

「トレローニー先生に本当の事を話しても、受け入れないと思います」

 3年生の折、ハリーへ2度目の予言を告げた際に詳細を問いただしても狼狽するばかりで取り繕うともしなかった。

 普段が自尊心を高く見せようと見栄を張る故、本番に弱い性だ。

「その通り、トレローニー先生は何も知らせんのが賢明と言えよう。教職員の問題については心配するでない」

 教職員の問題と聞き、咄嗟にスネイプが浮かぶ。口論について問いただしても、流されるだけだ。

「まずは前回までの復習をしよう。ハリー、わしに説明してくれるかね?」

 前回の分ではなく、それまでという意味に捉えてハリーは搔い摘んで述べる。ダンブルドアは満足そうにほほ笑んだ。

「では、君の考えを聞きたい。ボニフェースは何故、遺言を作る以前にヴォルデモートに関して、わしへ真っ先に相談しなかったのであろう?」

 ダンブルドアは期待している。

 ハリーがこの疑問を疑問として終わらせるのではなく、信頼に足る友に相談して自分達なりの答えを導き出した。

 そんな期待を抱いている。

「ボニフェースは敵討ちを目論んでいました。それを外でもない先生に知られたくなかった」

 文章を読み上げるようにハリーは語った。

 ボニフェースの復讐と苦悩と決意、『記憶』を見てもなく、ベッロから聞いてもない憶測だけの答えだ。

「君達の推理力には脱帽する。まるで見てきたようじゃ」

 感嘆の息を吐き、ダンブルドアは椅子に深くもたれた。

「では、本当にボニフェースは……マートルの仇を討とうと……」

 それ程、想われていたのにマートルはボニフェースを知らない。

「まず、間違いあるまい。あの頃のわしはトム=リドルという生徒を監視することばかりに躍起になっておった。ボニフェース=アロンダイトという生徒の気持ちを少しも汲み取ろうとはせなんだ」

「先生はハグリッドを助けてくれました。先生だけがハグリッドの為に行動してくれました。それはボニフェースもわかっているはずです」

 思わず、ダンブルドアを擁護する。校長は穏やかながらも後悔を顔に滲ませた。

「じゃが、ルビウス=ハグリッドの無罪を証明するのに尽力を注がなかった。わしの退職を賭ける事になろうとも、トム=リドルを追い詰めて更なる悲劇を招く結果になろうとも、努めなかった。それがボニフェースから不信を買っておったんじゃよ。気づいたのは、彼が卒業した日にベッロの『記憶』を求めた時じゃ」

 

〝先生、最初に言って欲しかったです〟

 

 太陽のように穏やかな笑みから、窺がえた拒否。

「それじゃあ、ボニフェースはハグリッドを見捨てたんですか!? 親友だったのに!」

「ボニフェースはルビウス=ハグリッドの名誉はトム=リドルを殺してから取り戻しても遅くはないと考えおった。その為にも、闇の帝王という存在が必要であった。恐怖による支配であっても、半巨人の彼を偽りでなく公に受け入れてくれるなら、何でも良かった」

 怒りが脳髄で沸騰する感覚にハリーは言葉を失う。

 どんな理不尽な目に遭おうとも、決してハグリッドはヴォルデモートを受け入れない。ボニフェースは親友を最悪な方向に誤解している。

「ねじ曲がった復讐を諦めたのは、君らの推理通りにヴォルデモートの正体を知った時じゃ。そして、己の兄たるベンジャミンの未来と完全に袂を分かった」

 ベンジャミンの名を聞き、急にハリーの頭が冷静になる。

「ベッロを使って訴えを起こし、捜査の見直しがされて『秘密の部屋』は発見される。けど、そうなる前にヴォルデモートはハグリッドを殺すかもしれない……。ボニフェースはそこまで考えて、先生にハグリッドを託したんですね。先生に相談しなかったのは、自分で決着をつけようとしていたから……あくまでも死んでしまった場合にだけ、先生を頼ろうと」

 ハリーの推理にダンブルドアは満足げに頷く。

「そうとも、不満じゃろうがボニフェースは親友の命を選んだ。その頃にはヴォルデモートとの決着を付けてからでも、ハグリッドの名誉を取り戻しても遅くはないと考えたのじゃ。じゃが、わしがボニフェースの意図に気づいたのはコンラッドが遺言を持って来た時……」

 嘆息し、ダンブルドアは一瞬だけ『憂いの篩』を見やる。

「トム=リドルの『記憶』を集める際、ボニフェースを忘れておったのではない。しかし、どうしても彼に会える資格はなく、また協力を求めるには遅すぎると勝手に思い込んでおった。……又しても、わしはボニフェースの気持ちを汲んでやれなんだ」

 その嘆きは、懺悔のようにも聞こえる。ボニフェースも愚かな復讐に捉われ、ダンブルドアから要請を断わり、後に後悔した。

「……だから、校長ではなく『変身術』の先生なんですか? ダンブルドア先生への贖罪を込めて」

 

 ――親友を助けてくれてありがとう。そして、何の力にもなれず、ごめんなさい。

 

 遺言はその時に知る偉大な魔法使いダンブルドアにではなく、かつての恩師への想いが込められていた。

「僕にはわかりません。先生は『不死鳥の騎士団』を創設する程、ヴォルデモートと真っ向から対峙していた。本当に奴と決着をつけたかったなら、尚の事、先生と協力すれば良かったんです」

「ハリー、それは結果論に過ぎぬ。彼は未来から来ていても、そこに到る道筋までは知らぬ。だが、断言しよう。わしが騎士団を立ち上げた時、ボニフェースが生きておれば必ずわしの下へ馳せ参じたであろうて」

 表面だけなら、共にヴォルデモートを討つ為に集ったように聞こえる。だが、ハリーは別の意味を感じ取った。ただ、それを説明できない。

「先生がそこまでボニフェースの性格を見抜いているなら、ヴォルデモートも同じくらいに見抜いていたのではありませんか? 何故、自分の敵になるボニフェースを殺さなかったのでしょう」

「君なら、どう考える?」

 真っ直ぐ見据えた蒼い瞳は、試験を見守るような目つきだ。

 その視線を受け、ハリーは今夜の課題を気づく。悔恨の為などではなく、ボニフェースの心情を知る事で、更にヴォルデモートを理解させようとしていた。

 そして、今この瞬間にハリーがヴォルデモートをどれだけ理解できたかを問うている。

 ハリーは考える。

 ヴォルデモートの気持ちに寄り添うのではなく、相手を理解して考えを見抜く。

「殺すほどの価値がない……と思いたかった。ヴォルデモートはボニフェースへの気持ちを認めたくなかったから、忘れたかったんです。奴にとっての殺人はある意味、最も利用する価値があった証明でもあります。相手の存在を無視し続けていれば、いずれ、愛は枯渇していくと思っていたのでしょう」

 母メローピーは夫を愛したが、捨てられたとヴォルデモートは言った。

 それは殺す前に父親本人から聞き出した。おそらく、メローピーの最期を聞いても父親には無関心のような態度を示されたのだろう。

 魔法の力でさえ、完璧に得られない愛などに拘ってメローピーのような末路を迎えたくなかった。

 ハリーの推理を最後まで聞き、ダンブルドアは穏やかに厳格な雰囲気を混ぜて頷く。

「ヴォルデモートの誤算は最大の敵が君であることじゃ、ハリー」

 称賛を受けても、少しも嬉しくない。『予言』を覆さんが為にハリーの両親は殺された。

「僕が敵になったんじゃありません。奴が僕を敵にしたんです。正直に言います、トム=リドルはその気になれば魅力的になれました。どんな人も虜にできたでしょう。僕だって、2年生の時に日記の彼に親しみを感じました。彼を理解できるのは自分だけだと……」

 ダンブルドアは言葉を遮らず、真剣に耳を傾けてくる。

「今でも、僕は奴を理解できます。でも、そこに親しみなんかない! ましてや愛なんかじゃない! あいつは僕の父さんと母さんを殺した! 予言なんかなくても僕は必ず、あいつを滅ぼす!」

 沸々と湧き起る感情のままに口走れば、声を荒げて宣言した。

 その言葉を待っていたと言わんばかりにダンブルドアの瞳は輝き、手を大きく広げて感激した。

「それが愛じゃ、ハリー。ボニフェースもまた利用という意味ではヴォルデモートの傘下に加わろうとしたが、愛する者の仇と知り、退けられた。愛こそ、ヴォルデモートが持つ類の力の誘惑に抗する唯一の護りじゃ!」

「……愛……。つまり、予言で僕にある力とは……ただの愛?」

 肯定されて、ハリーは拍子抜けする。だが、妙に胸へと入り込んだ。

「ヴォルデモートは愛を知っていても、……理解せずに拒んだ」

 魔法は意思の力、一瞬の集中力。

 だが、感情は歳月で変化していく。育まれるし、枯れていく。酷く曖昧で不安定だが、自分の行動を示してくれる。

「ハリー」

 椅子から立ち上がったダンブルドアは、長年の友のようにハリーの肩に手を置く。しわがれた手の感触を受け入れ、背筋を伸ばす。

「これまで、わしは君とヴォルデモートの相違点について話してきた。もっとも君達が違うのは『予言』に対する姿勢じゃ。君は言った、『予言』は関係ないとな。じゃが、奴は違う。魔法に拘る故、『予言』に固執しておる。君が何所に行こうと、君の死を確信するまで追ってくるぞ」

「わかっています、けど……」

 結局、対峙するに変わりはないと言いかけて、やめた。

 何故なら、ボニフェースがハグリッドの無罪を先延ばしにした2つの理由は似て非なる物だった。

 決して同じではない。むしろ、天の地との差がある。

 ハリーはダンブルドアの今日の課題を真に理解した。

「一方が他方の手にかかって死ぬ」

 かつて、ハリーはその言葉を先の見えぬ不安に駆られて吐いた。

 今は行くべき道を見据えた感情を込め、言ってのける。ハリーの心境を察し、ダンブルドアは大層満足そうに手を離した。

 

 校長室を後にし、ハリーはグリフィンドール寮へ帰った。

 談話室にはジニーがデメルザと話し込んでいる。他にも人目はあったが、ハリーは気にせず愛しき人へ就寝のキスをする。

 唐突に乱入され、ジニーは驚いていたが怒らなかった。

 そのままの勢いで自室へ行き、寝台に置いてあった『半純血のプリンス』の教科書を捲った。

(セクタムセンプラ――)

 『魔法薬学』の授業中に偶然、見つけた走り書き。

 敵に向けて使うとだけ書かれ、効果については何も書かれていない。効果は試す暇がなかったが、クローディアには教えておこう。彼女もドラコとの対峙を覚悟している。他人事のように見えるのは、感情を押し殺していたからだ。

 クローディアを守るにはプリンスの力が必要だと、信じた。

 




閲覧ありがとうございました。

バスケ部の次期部長はデレクです。おめでとう。

毒はラベンダーが煽りました。ごめんね。
洋画とか洋書を読むと勝手に人の酒を飲む描写が多いですが、日常茶飯事なのでしょうか?

『灰色のレディ』と『血みどろ男爵』、何故に同じ城で過ごしているんでしょう。魔法省命令だったら、本当に惨い。

「一方が他方の手にかかって死ぬ」
 原作にてこの言葉は予言の為ではなく、自分の意志で戦うと決意した瞬間でもあります。好きなシーンのひとつです。
 何故、映画でカットした。
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