こうして、私達は出会う(完結)   作:珍明

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閲覧ありがとうございます。
切りの良いところがなく、長文になっています。

追記:18年8月12日、誤字報告により修正しました。


15.対峙

 比喩でなく、これが最後の晩餐かもしれない。そんな考えを抱いているつもりはないが、夕食の料理はどれも味がしない。

「ベッロ、これ美味しいわよ。はい、どうぞ♪」

 上機嫌なパドマがベッロに食事を与える。リサがセシルと濁ったスープを飲み比べる。ロジャーがミムを口説く。アンソニーの飲み物にモラグが何か仕込んでいた。

 マクゴナガルの鋭い目つきがハリー達を監視していた。

 皆の顔が1人1人、脳裏に焼き付いていく。

 教員席にスネイプの姿はない。既に仕掛け扉へ向かったかもしれない。そう思う瞬間、怖れで手が震える。恐れてなどいられぬはずもない。自分がやらなければ、ここにいる全員が死ぬ。

 自分を追い込めば、気が楽になる。

 誰よりも早く自室に戻り、クローディアは支度する。寝台には適当に物を詰め込み、人が眠っているように見せかけた。

 動きやすいジーンズとワイシャツに着替える。ウェストポーチの中に杖、印籠、薬入れがあるのかを確認し、早くなる鼓動を鎮めようと深呼吸した。

 足元に擦り寄ってきたベッロが、虫籠を頭に乗せていた。

「一緒にきてくれるさ? ありがとう」

 ベッロの顎を撫で、クローディアは虫籠に入る。

 以前とは違い、中は清潔であった。おそらく、ハグリッドが掃除してくれたのだ。悪臭に悩まされないことを感謝し、クローディアは虫籠を内側から叩く。ベッロがすぐに虫籠を抱えて床を這い出した。

「おい! 蛇だ、蛇! こっちおいで!」

 無邪気な声を張り上げ、ドラコが夢中でベッロを追い回したのは誤算だった。だが、ベッロは慣れたように彼らの追跡を振り切った。

 

 4階の廊下に辿り着いたらしく、動きが止まる。

 確かめる為にも、クローディアは虫籠から出て廊下を見渡す。最低限の灯りが足元を照らし、奥には頑丈な木で作られた扉が固定されている。

(この中さ)

 ケルベロスならぬフラッフィーが番犬だ。

 襲われる事態を考慮し、片手で虫籠を構える。右手で杖を持ち、扉に開錠の呪文をかける。鍵の回る音がして、扉が開いた。

 ノーバートより確実にデカイ。人を丸のみ出来る大きさの犬がいた。しかも本当に首が3つある。ハグリッドと比べれば、ただの大型犬だろう。あくまでもハグリッドと比べたらの話だ。

 フラッフィーは寝息を立てて眠っていた。しかも、傍には自動の竪琴が音色を聞かせている。

(スネイプ先生さ?)

 誰がやったにせよ有り難い。

 フラッフィーの巨体に怯えながら、クローディアは虫籠を振り下ろした。巨体はすっぽりと虫籠に治まり、柱につけられた首輪の鎖だけが出ていた。その鎖を外し、虫籠を念入りに縛り上げた。

 一先ず安心したクローディアは息を吐く。戸口から物音が聞こえ、反射的に杖を向けた。

「私達よ!」

 布が落ちる音がしたかと思えば、私服のハーマイオニー、ハリー、ロンが現れた。床に落ちた銀色のマントは『透明マント』に間違いない。

「あんたら……」

 来てしまった落胆よりも、来てくれた安心が大きく勝る。否、きっと彼らは来てくれると確信していた。

「帰れなんて、言わないでよね」

 ロンが胸を張り、断言する。

「これは、3人で話し合って決めたんだから」

 ハーマイオニーが両腰に手をあて、にっこりと微笑んだ。

「年上だからって、1人で頑張らないでよ。僕達は友達なんだ」

 ハリーの言葉が心臓に、良い意味で突き刺さる。

 確かに自分は3人より年上である。ならば、年上として彼らの手本とならねばならない。それが先に生まれた者の義務だと何処かで思っていた。

 所詮は、ただの慢心でしかない。現に、クローディアは年上としての威厳を彼らに示したことはない。

 何故なら、目の前の友達は年上としての働きをクローディアに要求したことは、一度もないからだ。

 

 ――何を躍起になる必要があった?

 

 ただ一言。一緒に頑張ろうと言えば、きっと乗り越えられるはずだ。

 感傷に浸るクローディアの雰囲気を虫籠に閉じ込められたフラッフィーがぶち壊した。竪琴の音色が止まり、彼らが起きてしまった。

 盛大に暴れる虫籠を見て、ロンが不安がる。

「このままだと、朝までに虫籠を壊されるんじゃない?」

「待って、これがある」

 閃いたハリーが懐からフクロウの形を模した横笛を取り出し、唇をあてて吹き始めた。フクロウの鳴き声のような音程に虫籠の音が止んだ。

「ここで誰かが残って吹くしかないさ。……ベッロ、吹けるさ?」

 躊躇いながらもクローディアがベッロに問うと、ロンが鼻で笑う。

「おいおい、ベッロは蛇だよ。音がわかるの?」

 ロンがベッロの顔を屈めて覗き込む。侮辱を理解し、ベッロは尻尾で乱暴にハリーから横笛を奪う。小さな口で横笛を吹き出した。しかも、音色になっている。笛を吹く蛇など、見たことない。

「すご~い……」

「もう蛇じゃないね、ベッロは」

「もしも『動物もどき』だとしても、私は驚かないさ」

「それ、何?」

 3年生になれば授業で習うとだけ教え、クローディアは床にある仕掛け扉の引き手を引く。あっさりと簡単に扉が開いた。

 覗く必要もない。そこは暗く、井戸のように風が微かに吹いてきた。手を入れるが、梯子らしき物はない。ロープを吊るせばよいが、代わりになる鎖は使用済だ。

「一応聞くけどさ。校長先生に手紙だしたさ?」

「うん、夕食前にヘドウィグに行かせたよ。間に合うといいけど」

 もしもの時の対策は万全。

 クローディアは『透明マント』を振り返る。

「誰にも気づかれてないさ?」

「ネビルに談話室で止められたけど、朝まで硬直する魔法をかけておいたから大丈夫よ」

 それはネビルが大丈夫じゃない。彼を不憫に思い、クローディアは胸中で合掌した。

「私が先に行くさ。私が確認したら呼ぶから待っててさ」

 底の見えない穴を一瞥し、クローディアは深呼吸する。思い返すは、小学校の避難訓練の経験。緊急脱出ロを使った時、滑り台のようで楽しかった。

 これも同じだ。胸中で叫び、暗い穴に飛び込んだ。冷静な動悸が夢の中にいる気分させる。落下は腰と背中を柔らかい感触で受け止められた。

 クローディアは杖を掲げ、唱えた。

「ルーモス!(光よ)」

 杖の先が強い光を放ち、辺りを照らした。植物のツルがクッションの役目を果たしたのだ。クローディアが見上げ、手で掴めそうな大きさに見える入り口に向かい杖を振る。

 それを合図と察したハリーが飛び降り、ハーマイオニーとロンも続いてクローディアの傍に着地した。

 ハーマイオニーはツルの感触を確かめ、慌てて飛び起きた。

「クローディア! 明かりを消さないで!」

 ハーマイオニーが悲鳴を上げ、クローディアの傍に寄ってきた。

「これ、『悪魔の罠』だわ! ……ええと、確か……暗闇と湿気を好むって……」

 ハリーが叫んだ。

「だったら、火だ!」

 言葉通り、ツルは明かりの届かない場所から4人に迫ってきた。

「ぎゃああ! 早くなんとかしてくれ!」

 錯乱したロンは、クローディアの首にしがみ付く。ロンの腕が首を絞める位置にあり、彼女は声も上げられなくなった。

 必死にロンを剥がそうとするが、先に呼吸が苦しくなり杖を落としてしまう。光が消え、一斉にツルが襲いかかってきた。

「ああ、どうしましょう……。火が必要なの! こんなときに薪がないわ!」

 狼狽したハーマイオニーに、ロンは呆れたように叫んだ。

「君は、それでも魔女か!」

 当然の指摘にハーマイオニーは、自分が杖を持っていることに気づく。

「ラカーナム・インフラマレイ(燃え上がれ)」

 ハーマイオニーが杖をツルに向けて唱えると、いつかで見たジャム瓶の炎が植物めがけて噴射された。炎は襲い来るツルを燃やし、危険を感じた『悪魔の罠』は4人から遠く離れた。自分達の周囲からツルが消え、安堵したロンはクローディアの首を離した。

 呼吸を取り戻したクローディアは、酸素を求めて喘いだ。

「……ウィーズリーに殺されるかと思ったさ。でも、流石は、ハーマイオニーさ」

「全くだ。ハーマイオニーがしっかり勉強しててくれたから助かったよ。ロン、そう思うだろ?」

 額の汗を拭うハリーがロンに同意を求める。その事実を受け入れることがロンには、数秒の時間とそれなりの覚悟が必要だった。

「うん、ハーマイオニー。ありがとう」

 消えてしまいそうな声でロンはハーマイオニーに心から感謝した。気のせいかもしれないが、ロンが彼女に礼を述べる姿は初めて見た。

「どういたしまして」

 尊大な態度もなく、ハーマイオニーは感謝を受け入れた。

「それにしても、薪がないなんて」

 だが、それでも失言を繰り返す。そんなロンの口をクローディアは塞ぐ。恥辱に感じたハーマイオニーは耳まで真っ赤に染まっていた。

「さあ、こっちだ。扉がある」

 ハリーが奥に続く一本道を指した。

 鍵が空を飛んでいる光景は何処に行けば見える。

 それは、この場所だ。

 数えるのも面倒な数の鍵が飛びまわる中、用意された一本の箒。その向こうに鍵穴のついた扉があった。

「アナホモラ!」

 ロンが開錠呪文を唱えたが、ビクともしない。

「蹴破ったほうが早くないさ?」

 試しにクローディアが足へ全力を込め、扉を蹴る。足が先に駄目になる程、痛い。足首を押さえて蹲った。

「きっと、この箒が関係しているんだ」

 確かめる手つきで箒に触れ、ハリーは鍵達を眺める。

「この中から探せって? 1個1個やっていたら間に合わないぜ」

 ハリーを真似てロンも鍵を見上げる。

 2人の会話を聞きながら、足首がまだ痛むクローディアは適当な壁にもたれかかった。

 瞬間、もたれた壁をなくしたクローディアの身体は向こう側に倒れ込む。そこは滑り台のように斜めになっていた。

 何かに縋る手は虚しく宙を掴んで、クローディアを助けられない。

「クローディア!」

 ハーマイオニーが気付いた時、開いた壁は塞がれて見えなくなっていた。

 

 何もわからず、何処かに流されていく。目隠しをして滑り台に挑戦すれば、こんな気分になる。

(怖い!)

 言葉が胸に刻まれた時、滑りが止まった。

 着いた先は、月の光が入り込んで明るい。岩を切り取り作られた空間にクローディアは寝ころんでいる。

 自分の呼吸を聞き、激しい動悸が治まるのを待つ。手で身体を探り、四肢の無事を確認してから起きあがった。 滑り台を上っても、あの壁を通れるとは限らない。滑り台以外、ここから出られる物を探す。

 ひとつは、天井からぶら下がったロープ、暗くて何処に繋がっているか見えない。ひとつは、作られたばかりの頑丈な梯子、光を取り入れる円形の穴に繋がっている。

 梯子は、外に通じているだろう。誰かに助けを求めることも可能だ。呼び戻したダンブルドアを真っ先に案内も出来る。

(ハーマイオニー達は、次に行ったさ?)

 彼女達ならば、既に謎かけを解いて進んでいるに違いない。

 これを使うしかない。

 腹を括り、杖に灯りをともして口に銜える。袖を捲り深呼吸してから、ぶら下がったロープに掴まった。腕で身体を持ち上げるように、ロープを上っていく。

 段々とロープに掌が擦れ、痛みだす。身体は重く、腕だけで支えるのもキツくなってきた。手を離したくない。皆と合流したい。それだけを励みに痛む手を叱咤して進んだ。

 やがて、口に銜えた杖の光がロープの先を教える。四角い穴を通り抜け、廊下へと登りきった。ロープから手を離し、廊下の床に足をつける。途端に、ロープと四角い穴は消えて廊下が一列に光をともす。廊下の端と端には扉があるがどちらか何処に行けるかわからない。

 クローディアの手は擦り切れて血を流していた。体力を失い、強張った指で薬入れを使う。冷たい薬が気持ちよく、痛みと傷を癒す。比例して荒い呼吸も整っていくのを感じた。

 片方の扉が開いた。

 そこにはハーマイオニーとハリーが立っていた。

「クローディア! 無事だったのね」

「どうにかさ」

 お互いの無事を確認し合い、クローディアはハーマイオニーを抱きしめる。次いで、ハリーに抱きついた。そこで、ロンの姿ないことに気付く。

「ウィーズリーはさ?」

 笑みを消し、真摯な態度でハリーは胸元に手を当てる。

「ロンは、僕の為に勇敢に戦ったよ」

 鍵の部屋の次、部屋全体がチェス盤となった魔法がかけられていた。チェスの得意なロンが挑戦し、王手を決める為に犠牲となった。彼はあの部屋で気絶しているという。

「怪我人を置いていけないさ」

「駄目だよ。ロンは僕達を進ませる為にやってくれたんだ。誰かが残っていたんじゃ、ロンの気持が無駄になる」

 ハリーとしても苦渋の決断だと、悲痛な表情が教える。それはハーマイオニーも同じ気持ちだ。

 だから、クローディアの無事が本当に2人を安心させた。役に立てない自分を歯がゆく思い、薬入れを握りしめ、ポーチに収めた。

 次の扉を見つめ、クローディアは2人を振り返る。ハリーが頷いたので、彼女は扉を勢いよく開けた。

 

 ――襲ってきたのは、強烈な悪臭。

 

 思わず口元を押さえ、杖を構えたまま3人は部屋を進む。

 中央には三頭犬を遥かに上回る巨大なトロールが血だらけの頭で倒れていた。成程、以前のトロールが成人前だと納得した。

「なんで、トロールが倒れてるさ?」

「スネイプが倒したんだろ。こんな大きなトロールと戦わずに済んで、良かった」

 微かな安堵を口にし、ハリーは次の扉を開いた。

 その部屋はこれまでと違い、静寂であった。テーブルの上に形に違う瓶が7つ一列に並ぶ。近くで見ようと3人が扉を通り抜ける。同時に紫の炎が戸口を塞いだ。テーブルの向こうにある扉も黒い炎で塞がれた。

 瓶の横に置かれた巻紙には、この場を打破する謎かけが書かれていた。

「これ、絶対スネイプの仕業だ」

 ハリーが悪態つく中、ハーマイオニーは急に顔が綻び感嘆の声を上げる。

「これ論理よ、パズルだわ……」

 炎に囲まれた状況で、酔いしれた笑顔を見せるハーマイオニーが強い。彼女は謎かけを解くことに集中し、ぶつぶつと呟きだした。

 ただ、クローディアは2人と全く別のことを考え、これまで思いつきもしなかった結論に行きついた。

 自らの答えに驚愕したクローディアは眼を見開き、怯えた手で口元を押さえる。

「クィレル先生さ」

 呟きは、ハリーの耳に聞こえた。

「え? この仕掛けはどう考えてスネイプ…先生だよ」

「違うさ。一連の犯人がクィレル先生さ」

 一瞬の沈黙と思考の停止。

「何を言って……この後に及んでスネイプを庇うの?」

 信じられないハリーは思わず、引き攣って笑う。何故、そんなことを口走るのかも理解できない。彼の動揺はわかる。クローディアも同じ気持ちで胸が苦しい。

「クィレル先生はゾンビを物理的な力で倒したと言っていたさ。それはトロールを操って倒させたってことじゃないさ? だから、誰にも言えなかったさ。自分がトロールを従わせられるなんて知れたら、ハロウィンの時に利用できないからさ。スネイプ先生が言っていた『おかしなまやかし』は、そのことだとしたら……?」

「でもそれだけじゃ……それだけで……」

 クローディアは眼を見開いたまま、混乱したハリーを見やる。

「ベッロは危険を察知できるとハグリッドが教えてくれたさ。あの試合の日、クィレル先生を襲ったのは危険を感じたとかさ。例えば、ポッターを殺そうとしたとかさ」

「それはスネイプのはずだ!」

「……間違ってないかも」

 謎かけを解いたハーマイオニーがハリーに振り向く。

「反対呪文というものがあるのよ。呪いに対抗したね。上級生に教えてもらったわ。あの時、スネイプ先生は反対呪文を唱えてあなたを守っていたのかも」

「そんな……違うよ! だって……それは」

「スネイプ先生が『どちらの味方になるか』って脅したのは、ダンブルドア先生と『例のあの人』を指していたんじゃないさ?」

 2人の推理がハリーを悩ませる。

「クィレルにそんなこと出来るもんか、いっつもびくびくしている奴がダンブルドアを裏切れるはずないよ」

「誰も信じないさ。だから、スネイプ先生は誰にも言わず、クィレル先生を説得するしかなかったさ」

 こうして考えてみれば、スネイプの行動に説明がつく。だが、クィレルが犯人であることは、ずっと彼を励まし続けたハリーには残酷な真実でしかない。

「ここでこうしていても、仕方ないさ。あそこで待っているさ。スネイプ先生かクィレル先生のどちらかがさ」

「でもね。残念なんだけど、ここを抜けられるのは2人だけなの。しかも、片方の扉ひとつずつ」

 一番右端の丸い瓶が戻る薬。一番小さな瓶が進む薬。誰かが此処に残らなければならない。

「虫籠を持ってくれば良かったさ。もしくはベッロなら抱えて……」

 1人の人間しか飲めないなら、別のモノに変われば良い。

 頭に浮かんだのは、壁に貼り付けられたオリバーとジュリアの教科書に書かれた『動物もどき』だ。

「ハーマイオニー、君はロンの元に行ってくれ。クローディアはここに……」

「私は、他のモノに変身していく」

 突拍子のない閃きにハーマイオニーが叫ぶ。

「変身!? 自分を変身させるなんて! 誰が元に戻すの! ハリーには……」

 1年生であるクローディアが動物に変身する可能性は低い。だから、生き物ではないモノに変わる。自分には『変身術』の才能がある。これはマクゴガナルも高く評価していたから間違いない。

 きっと、出来る。

「ポッター。よく聞いてさ」

 緊張で震えたクローディアが、印籠を取りだして黒い粒をハリーに渡す。

「私がポッターの影に変身するさ。この炎を越えたら、この薬を影に落とすさ。それで、私は元の姿に戻れるさ」

「影に変身?」

 クローディアは強く頷き、次に薬入れをハーマイオニーに渡す。

「ハーマイオニー、この薬でロンの手当てをするさ」

 ハーマイオニーも不安で表情が強張っていた。

「相手が誰だとしても、『例のあの人』と一緒だったらどうするの?」

「尚のこと、私は行くさ。1人より2人さ」

「僕はね、2度も幸運はあると思っている」

 揺るぎない意志を見たハーマイオニーは、恐怖とは違う震えを持って叫んだ。

「あなた達は、偉大な魔法使いよ」

 最高の称賛を受け、ハリーは微笑んだ。

「ここの謎かけを解いたのは、君だよ」

「ううん、私はただのガリ勉だもん。大事なのは、勇気とか友情よ」

「だったら、皆が偉大さ。勿論、私もさ」

 クローディアがイタズラっぽく笑い、ハーマイオニーも笑い返した。

「どうか、お願い、気をつけてね!!」

 ハーマイオニーは列の端にある大きな丸い瓶を飲み干し、紫の炎の中を進んでいった。

 そして、緊張した面持ちでクローディアは自分に杖を向ける。

「ポッター、薬を忘れないで欲しいさ」

「わかってる。ちゃんと落とすよ」

 クローディアは今まで変身呪文をかけるときに、脳内で想像力を働かせた。自分の身体がハリーの影と同化している姿を思い浮かべる。杖を自分に振るった。

 視界は急激に遠くなっていく。

 

 ハリーは、目の前にいるクローディアの身体が床に吸い込まれている様を凝視した。そして床に黒い影が残り、影はハリーの足元に寄ってきた。本当に彼女は影になった。

 気持ちを落ち着かせるために、ハリーは息を吐く。

 クローディアの杖を拾い、手に中の黒い粒を見た。これで彼女が戻れるのは半信半疑であったが、信じる他はない。小さな瓶を一気に飲み干し、ハリーは黒い炎の中を突っ込んでいった。

 黒い炎の中を進むと、向こう側に出た。

 ハリーは、薬を落とした。

 目の前にある状況に愕然とし、薬を落としてしまった。

 落ちた薬は影に転がり、飲みこまれた。

 

 瞬間、クローディアが影から姿を現した。空気を求めて深呼吸を繰り返し、肩で息をした。

「あつ……火がアツ……」

 身体は焼けなかったが、クローディアは熱風を感じていた。影にも温度を感じられるのかと疑問する前に、彼女も部屋の中を見渡す。

 ハリーが唖然としている訳がわかった。彼の推理は外れていた。

 正しかったのは、クローディアだ。

「クィレル……先生」

 失望と落胆の混ざった声で呼ばれた男は、見たことのない冷酷な笑みを浮かべていた。

「ポッター、君に会えるとは思っていたが、まさかクロックフォードまで来るとな」

 上等な拵えの全身鏡の前で立つクィレルは、面倒そうにクローディアを睨んだ。

「どうして、スネイプじゃないんだ」

 受け入れがたい現実をハリーは嘆く。

「セブルスか? 確かに、セブルスはまさにそんなタイプだ。彼がいれば、誰が、クィ……クィレル……を疑いはしないだろう?」

 一切の淀みのない口調、別人としてか思えない。しかし、これがクィレルの本性だ。

 恐怖に心臓の鼓動が早まりつつも、クローディアはハリーの前に立った。そうして、少しでもハリーに気持ちの整理をつけさせたかった。彼女の背中越しにハリーはクィレルを目にする。

「試合のとき……僕を殺そうとしたのは、スネイプじゃないんですか?」

「違う! 私が殺そうとしたんだ! その小娘の蛇が邪魔さえしなければ、うまくいっていたのに! 君を救おうとしてセブルスは反対呪文を唱えていたのだよ」

 確認の意味でハリーは問うたが、クィレルは勘違いしていると思い憤慨した。

 憤慨しているのは、クローディアのほうだ。クィレルにではなく、少しも疑わなかった自分自身が許せない。

「謝って下さい」

 怒りに震えた唇は、クィレルに命じた。

 呆気にとられたクィレルは、冷酷さを残して皮肉っぽく口元を曲げる。

「謝る? 君達に? 何を謝るんだい? 勝手に騙されていた君が悪いんだろう? 私はいつ、信じてくれなんて言ったかな? 君らが私を励ます姿は見物だったよ! 私は全てヴォルデモート卿の為にやってきた! それを私に守られていると勘違いした! 何度も殺したくなったね!」

 氷の如く冷たい笑い声が部屋中に響く。

 怯むことなくクローディアは、クィレルを見据えた。

「私のことはいいんです。ベッロがあなたを襲った時に気付くべきだった。……そう、スネイプ先生は遠巻きに、私にあなたが危険だと教えてくれていた。あの先生が嫌いだったから、私は少しもわかってあげられなかった……。……だから、せめて、スネイプ先生に謝って下さい」

「クローディア……」

 心から憐れむハリーの声を聞き、クローディアは湧き起こる感情を理解した。

 憤慨ではない。これは慟哭である。

 だが、クローディアの訴えは、クィレルにとって蚊が鳴く程度の物にしか感じない。

「……セブルスか……。セブルスは最初から私を疑っていた。アイツは次の試合で私が何かしないように審判を買って出た。まあ、他の連中は気付かなかったがな。おまけにダンブルドアまで観戦していては、私でもポッターに何もできん。その次は私を脅してきた。私にはヴォルデモート卿がついているというのに……それでも脅せると思っていたんだろうかね。全く、忌々しい男だよ」

 悔しさで唇を噛みクィレルは、吐き捨てる。

 どんな感情が湧いたか、頭で理解する前にクローディアはクィレルに殴りかかっていた。

 素知らぬ顔でクィレルはクローディアの拳を避け、指を鳴らして縄を出現させた。縄は、身体を縛りあげた。手足の自由を奪われ、顔面から床に倒れ込んだ。

 抵抗できないクローディアの頭をクィレルは踏みつける。

「やめて!」

 クローディアを助けんとハリーは杖を向ける。何故だが、ハリーの杖が弾かれて壁に飛んだ。

「動けば小娘を殺すぞ! 君らはハロウィンのときから目障りだった! セブルスがいなければ、とっくに始末してやれたんだ! クロックフォードもだ! 下手な真似をすれば! ポッターを殺すぞ!」

 踏みつける足に力を入れられ、クローディアは苦痛に呻く。

(……誰も生かして返すつもりはないさ)

 クローディアは縄と格闘しながら、胸中で毒付く。

 無力な子供達を眺め、クィレルは満足そうに微笑んだ。クローディアの頭から足を退け、その腹を蹴って転がす。鏡に向かい、独り言を呟きだした。

「『石』が見える……あの方に石を差し出している……でも石そのものは……」

 クィレルが背を向けている隙に、クローディアは歩ふく前進でハリーに近寄る。屈んだハリーは、彼女の杖を縄の間にある手に渡した。

 杖を隠すため、クローディアは仰向けに転がった。

「(あの鏡が校長先生の仕掛けさ?)」

「(うん、僕が前に見た『みぞの鏡』だ)」

 望みを映し出す鏡。それなら、体験したことがあるハリーしか本当に使えない。

「(話をして校長が戻るまで時間を稼ぐさ)」

 クローディアの囁きをどうにか聞き取り、ハリーは頷く。

「スネイプは僕のことを憎んでいた! それは『あの人』が関係しているんじゃないんですか!?」

 クィレルが鏡の裏側に回りこみながら、事も無げに返した。

「違うな。セブルスがおまえを憎いのは、おまえの父親と彼がホグワーツの同窓で、お互いを毛嫌いしていたからだ。知らなかったか? だが、おまえを殺そうなんて思わないさ」

「スネイプ先生がホグワーツ!? うわ~、吃驚さ! 私らの大先輩さ!」

 わざとらしくクローディアは、大声を張り上げる。

「でも、あなたが泣いているのを聞きました。スネイプが脅しているんだと思った」

 クィレルの顔に初めて恐怖が過ぎり、鏡を探っていた動きが止まる。

「……弱い私では、ご主人様の命令に従うのが難しいこともある……あの方は偉大すぎる。それに私などでは答えきれぬ……」

「それじゃ、あの教室にいたのは……本当に『あの人』だったんですか!?」

 思わず、ハリーは唾を飲み込んだ。

「何も理解していなかった愚かな私に、あの方は魔法の本当の素晴らしさを教えて下さった。あの方に出会わなければ、私は間違った考えを今も抱き続けていただろう」

 神に祈る信者のように天へ縋るクィレルは、恍惚に満ちた笑顔で回想に耽る。そうなったかと思えば、突然、この世の罪を懺悔し出す。

「私はあの方の忠実な下僕でありながら、何度も失望させてしまった。そう……グリンゴッツの失敗を……お許しにならなかった。……そして、もっと間近で見張らないといけないと決心さなった」

 そこでクィレルの声は震えと共に止まった。

 グリンゴッツさえもクィレルの仕業だとは、クローディアも思いつかなかった。あの銀行に侵入する者は、命知らずだと誰もが口にする。そんな場所へ侵入しただけでも、クィレルはある意味、称賛されても良いはずだ。金庫が空だったのは、行き違いにすぎない。クィレルには何の落ち度もない。

 そんなこともわからないヴォルデモートが不快だ。否、奴はクィレルを仲間と思っていない。捨て駒なのだ。

「そんなダースベーダーもどきの何処が偉大さ! もっと偉大な人がいるさ!」

「そんなものいない!」

 クローディアの叫びが癪に触ったのか、クィレルは恐怖を消し怒りの表情で睨んできた。クローディアも不快さが勝ってクィレルに怯まなかった。

「いるさ! 私の前にさ! それはあんたさ、クィリナス=クィレル教授!」

 意外な名にハリー、クィレルが驚いて目を丸くする。

「私が偉大?」

「そうさ! 石が欲しいのは誰のためさ? 自分のためじゃないさ、ダースベーダーのためさ! その為だけに危険なグリンゴッツに侵入したし、恐いスネイプ先生の脅しにも屈しなかったさ! そんなに痩せてまで苦しんださ! ダースベーダーを助けたいっていう気持ちだけさ! それが偉大じゃないなら、誰も偉大じゃないさ!」

 クィレルは自分の手を凝視したが、直に考えを打ち消すように頭を振る。

「何も知らない小娘が勝手なことをほざくな!」

「捨て置け……それより石だ」

 この場にいる3人とは、全く違う別の低い声がした。何故だが、その声はクィレルから出ている。クィレルに動じた様子はなく、クローディアを睨んでから再び鏡を探りだした。

 不気味な気配を感じ、2人の背筋に寒気が走る。

「その子を使え……」

 目だけ動かしクィレルは、ハリーを凄んだ。

「ポッター、ここに来い! 来るんだ!」

 クローディアが視線で従うように促し、ハリーも視線で頷く。クローディアの傍に杖を置き、ハリーは何も持っていないことを知らしめるために両手を挙げて、クィレルの隣に立った。

 漸くクローディアは縄を解くことが出来た。転がっていたハリーの杖を拾い、いつでも動けるように走り出す体勢になる。

「僕がダンブルドアと握手しているのが見える。僕のおかげでグリフィンドールが寮杯を獲得したんだ」

「嘘をつくな! 本当のことを言え!!」

 怒鳴ったクィレルは、ハリーの胸倉を掴んだ。

「嘘をついておる……俺様が……直に話す……」

 また、低い声が響いた。

「それだけの力がございますか?」

「かまわん……」

 誰にするわけでもなく畏まったクィレルは、ハリーをクローディアの所に突き飛ばした。最早、彼女の縄が解けているなど、眼中にない様子だ。

 クィレルは2人を見るとはなしに見つめながら、紫のターバンを解きだした。

「(石、今は僕が持っている。あの声は気付いているんだ)」

 ハリーの囁きに驚くが、疑う暇はない。

 身構えたクローディアとハリーは、お互いの手を握り合う。ターバンが解き終えた時、目にした現実は受け入れ難く、2人は反射的に強張った笑みを浮かべてしまう。

 鏡はクィレルの後頭部を映していた。その頭には、蛇と人の顔が合わさった人面相が彫り込まれていた。決して、刺青や絵でもない。人面相は糸のように細い目を開き、金魚のような口を動かした。

「ハリー=ポッター……」

 ターバンが取れたせいで、声が正確に響く。

「このありさまを見ろ、誰かの体を借りて初めて形になることができる……寄生虫のようにな。だが、俺様はその『石』があれば再び俺様の肉体を手に入れる……さあ、寄こして貰おう」

 何がおかしいのか、ヴォルデモートは嗤っている。

 その嗤いは、クローディアを恐れさせるどころか激怒の感情以外何も与えなかった。

「それが理由か! 先生を見張るなど大嘘だ! 最初から体が欲しかっただけだ! あんたは、偉大でもなんでもない! あんたを恐れる理由なんかない! あんたに比べたら、アルマジロのほうがまだマシだ! 先生から出て行け!!」

 クィレルに杖を向け、クローディアはハリーを扉の方へ押す。

「ポッター、逃げろ!」

 ほとんど反射的に、ハリーは炎の燃え盛る扉へ走った。

「アレスト・モメンタム!(動きよ止まれ)」

 唱えるのはクローディアが早かったが、クィレルの体は見えない力で守られ、その場の空気が弾けただけであった。しかも、その衝撃で彼女の体が吹き飛ばれ、逃げていたハリーの背に倒れこんでしまった。

「その様、思い出す」

 クィレルが近寄りながら、ヴォルデモートは嘲笑する。ハリーの両親を殺害したときのことを思い出話のように語り出した。

「小僧、おまえの両親も、おまえを守ろうとした。そこの小娘のように……、まずは父親を殺した。その次に母親をな……。おまえの母親は死ぬ必要はなかったというのに、おまえを守ろうとしたため殺してやったのだ……。さあ小娘を殺されたくなければ『石』を寄越せ」

「「嫌だ!!」」

 叫んだ2人は、起き上がろうとした。その前にクィレルの手がクローディアの髪を乱暴に掴んだ。

「目を覚ませ! あんたは利用されてるだけだ!」

「ご主人様にならかまわない!」

「やめろ! 離せ! 離せ!」

 ハリーがクローディアを助けようとクィレルの手首を掴んだ。しかし、クィレルに触れた途端ハリーは悲鳴を上げ、額の傷を押さえ込んだ。悲鳴を上げたのは、クィレルも同じだった。彼女の髪から手を離し、自分の手首を苦痛に満ちた表情に歪ませて、見つめている。

 クローディアはクィレルの手首が強い炎に焼かれたように、ただれているのを目にした。

「何をしている! 捕まえろ!」

 癇癪を起こすヴォルデモートに応じようと痛みを堪えながら、クィレルはハリーに飛び掛ろうとした。クローディアはクィレルの片足を掴んで、抵抗した。

 すぐにクィレルはクローディアを振り払い、腹を強く蹴った。

「小娘は構わん、先に殺してしまえ!」

 即座にクィレルの手がクローディアの首を絞める。だが、手首が痛いせいかクィレルの手に力が入らない。

 額を押さえながらハリーは、クィレルの足を掴んだ。瞬間、クィレルは足の痛みで悲鳴を上げた。

(口が開いた!)

 

 ――今しかない。

 

 その衝動だけで、クローディアは印籠から黒い丸薬を取り出した。迷わず、それをクィレルの口に放り込んだ。

 突然の異物をクィレルは瞬きを繰り替えし、抵抗せずに喉を鳴らして飲み込んだ。

「な……なんだ、貴様、何を飲ませた……うう」

 ヴォルデモートが喘ぎ出し、クィレルがその場に蹲って嘔吐した。

 口からは泥のような真っ黒い塊が、洪水のように止めどなく溢れ出る。その泥に比例して、後頭部のヴォルデモートの顔が断末魔の叫びを残して消えていった。

 やがて、クィレルの嘔吐が終わる。黒い泥は砂のように霧散し、跡形もなくなった。

 無意識にクローディアとハリーは何度も互いの体に触れ合い、無事を確認しながら微笑みあう。

「やった……やったさ」

 それでも安心は出来ず、荒い息だけが部屋中に満たされる。

 ヴォルデモートが体から離れたクィレルは衰弱し、床に倒れ伏して気を失っていた。

「出よう……、クィレルが起きる前に……」

 クィレルを見下ろしながら、ハリーが扉に歩こうとする。

「待つさ、先生を連れて行くさ。2人なら運べるさ」

 クローディアがクィレルの首筋に手をあて、ハリーを引き止める。驚いて振り返るハリーは甲高い声で叫んだ。

「クローディア、正気!? 僕達を殺そうとしたんだよ!」

「この人を見捨てたら、私らもヴォルデモートと同じさ」

 クィレルに肩を貸しながら、クローディアはハリーを見上げる。

「お人よしだよ。君……」

 肩を大きく竦めて、ハリーはクィレルに触れようとしたが、急に思いとどまった。

「僕が触ったら……、さっきみたいになるんじゃない?」

 指摘されてクローディアは納得した。

「あ~、そうかもさ……。なら、ポッターは先に戻って誰か呼んで……」

 言い終わる前に、ハリーは糸が切れたようにその場に倒れこんだ。倒れたハリーとクィレルを交互に見つめ、クローディアは焦燥に駆られた。

〔うそん〕

 どちらも早急に治療の必要があり、放置できない。

 クローディアはクィレルの体を浮遊魔法で浮かばせ、ハリーを背負った。

 これが想像以上に体力がいる。片手は浮遊魔法の為に上げて置かねばならない。倒れそうな自分に鞭を打って、クローディアは足を動かす。

 何度も膝の力が抜けて倒れかけるが、その度に胸中でハーマイオニーとロンを想う。2人が自分の持てる力を出し切ったのに、クローディアがここで諦める訳には行かない。

 

 ――自分は無力などではない。

 

 ハリーとクィレルをどちらも死なせはしない。だが、早く適切な治療をしなければ2人は間に合わない。特にクィレルは『解呪薬』を飲んだ。あれを飲んだ者は身体に変化をもたらす。オリバーの時は腹痛で済んだ。だが、身体に寄生した物をはぎ取ったのだ。その反動も大きいに違いない。

 絶対に足を休めない。

 段々と視界が霞み、自分の喘ぎ声が耳障りな程に五月蠅い。

「もうよい、頑張ったの。ありがとう」

 白い布が視界を覆ったかと思えば、穏やかで全てを安心させる声色が耳の奥に届く。

 意識して眼前を見据えれば、待ち焦がれた人物が微笑んでいた。

「校長先生……」

 敬意と安堵を込めて彼の名を呼ぶクローディアの頭に、歳月の重ねたシワの刻まれた手が置かれた。その重みが嬉しくて、限界まで張り詰めいていた緊張の糸が柔らかくなる。

 それと共にクローディアの瞳から涙が溢れた。

 




閲覧ありがとうございました。
クィレルは生存です。ヴォルデモートが剝がれる薬…。恐ろしい。
ハーマイオニーの「薪がないわ!」は原作の名言だと思います。
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