こうして、私達は出会う(完結)   作:珍明

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事件は、現場で起こっている!


7.そして事件は起こる

 談話室で、ベッロの事情を知らない1年生が悲鳴を上げ、上級生がそれを笑う風景は馴染みのものとなった。此処までくると、最早、慣例である。

 『灰色のレディ』と監督生達の説明によって、混乱は治められた。朝から余分な体力を消耗したとペネロピーが、文句を述べていた。

「でも、ああいう1年生を見ると新学期が始まったって思うわ」

 最後にそう締めくくったペネロピーに、クローディアはノドを鳴らして笑う。制服に着替え、同室のリサとパドマと共に大広間を目指す。

廊下の窓から見える空は、昨日の雨が嘘のように、快晴を伝える青空を見せていた。珍しく気持ちの良い目覚めもあり、クローディアは清々しい気分に浸れた。

 

 大広間に着くと、その気分は虚しく消え去った。

 まずは、スリザリン席でドラコが気絶するハリーの物まねをして取り巻き達を湧かせ、グリフィンドール席ではシェーマスやディーンが怯えて人に抱きつくドラコの物まねをすることで対抗している。

(泥沼さ……)

 クローディアは肩を落とす。彼女に気づいたドラコはわざとらしく用事を思い出したと主張し、取り巻きを引き連れて大広間を後にした。

 入れ違いにハーマイオニーがハリー、ロンと現れた。

「おはようさ、ハーマイオニー」

「おはよう、クローディア」

 機嫌良くクローディアは、ハーマイオニーと挨拶した。

「あ~ら、ポッター。吸魂鬼が来るわよ。ほら、ポッター、ううううううう!」

 甲高い声でパンジーが、ハリーを侮辱してきた。ハーマイオニー達は、それを無視するように早々とグリフィンドール席に向かってしまった。

 ハーマイオニーとの爽快な時間を邪魔されたクローディアは、大人気ないと知りながらも、パンジーに横目で睨みつける。

 意地悪な笑みを見せていたパンジーは、すぐに竦んで口を噤んだ。

 苛立ったクローディアは、レイブンクロー席に乱暴に腰掛ける。

「ミス・クロックフォード」

 聞き慣れたフリットウィックの声に振り返りながら、クローディアは席から立つ。

「おはようございます。フリットウィック先生」

「おはよう。休暇はどうじゃったかね?」

 フリットウィックは、僅かな躊躇いを見せて問うてきた。それを疑問せず、クローディアは普段のまま快活の笑みを見せる。

「はい、充実した夏を過ごしました」

「それならいいんです。しかし、ご家族の方は『吼えメール』を送って来る程のお怒りだったようですから、肩身の狭い思いをしたのではありませんか? 学校では気兼ねなく、栄養を摂るのですよ? 気分が悪ければ、すぐにマダム・ポンフリーに言いなさい」

 不安そうな視線で心配された。どうやら、フリットウィックは体型の変化を重い病か栄養不足と勘違いしている。

 クローディアが夏のダイエットに励んだと説明すれば、フリットウィックは胸を撫で下ろしていた。

「いやあ、取り越し苦労で良かった。昨日の宴から、少し心配していたんです。マクゴナガル先生もダイエットが成功したのではと推測をして下さいましたよ」

 流石、教頭先生。女子生徒のご理解が深い。

 手早く朝食を済ませた頃、お決まりのフクロウ便が大広間に突入する。彼らは忙しなく、寮席に荷物や手紙を運んできた。

 その中から、見慣れたシマフクロウが母からの手紙を携える。

(あ……、このフクロウのこと……聞くの、忘れてたさ……)

 シマフクロウから手紙を受け取り、適当なバターロールを与えて内容を読む。

【新学期こそ、危ない目に合わないで下さい かしこ】

 深い警告が込められた手紙を読み終えて、クローディアは重苦しく息を吐く。ブラックや吸魂鬼の件を思えば、その願いは叶わない気がした。

 ペネロピーから、今年度の時間割を配布してもらい、クローディアは不機嫌さを露にする。隣にいたサリーも酷似した表情で、時間割を見つめていた。

「一時限目から……スリザリンと『薬草学』さ」

 嘆息しつつも、新科目が始まることも喜んだ。

「『マグル学』はスリザリンと合同ね、選んだ人は少なそう」

「『魔法生物飼育学』取らなかったの?」

 皆で時間割を見せ合い、クローディアは皆と授業が分かれることに少々の不安を覚える。

 意気揚々とハグリッドが大広間に入り、ハリー達と軽く会話していた。

「私もハグリットの授業が受けたいです。でも、『占い学』も捨てがたいですし……」

「いっそのこと分身でもしたら、どうさ?」

 何気なく、クローディアはリサに提案した。

「そんなことしたら、宿題も増えるぞ……」

 聞こえていたモラグが青ざめている。

(グリフィンドールとの合同授業は『数占い』だけさ。良かったさ。ハーマイオニーは、全科目選んでたから、きっと一緒さ)

 クローディアがハーマイオニーと時間割を見比べようとしたが、何故か強く拒まれた。

 そして、ハーマイオニー達は、『占い学』のために大広間を後にしていく。

「クロックフォードも『魔法生物飼育学』をとったのか?」

 油断していた背後から、フレッドがクローディアの時間割表を覗き込む。

「ハグリッドが講師のときとは、運がいいな。ハリーとロンもとっていた。ハグリッドの最初の授業を受けるんだと」

 ジョージがクローディアの時間割表を軽く取り上げる。

「ああ、やっぱり『数占い』があるな。ジュリアに教科書見せてもらったことあるけど、俺には無縁だな」

 わざとらしく肩を竦めるジョージに、クローディアは目を細める。

「あんた、それで『O・W・L試験』どうするさ……?」

 『普通魔法レベル試験』であり、6年生からの進路を決定する重要な試験だ。5年生はこれに向けて本格的に取り組む授業内容になると、ペネロピーは教えてくれた。

「いいか、自分にとって必要な教科が合格出来ればいいんだよ」

 満面の笑顔で親指を立てるジョージに、クローディアは嘲笑めいた声を上げる。それを見たジョージが大袈裟に泣きマネをし、机を叩いた。

「必要な教科って、将来に何になるか決めてるさ?」

「そりゃあ、勿論! 店を開くことだ!」

 あっさり、泣き真似をやめたジョージは両手を広げて主張した。快活な笑みの中に真摯な態度を見たクローディアは、ジョージの本気を感じ取る。

「店を持つさ?」

「そう、その名もWWW(ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ)だ。簡単に開業できるなんて、思ってないぜ。だから、今から準備しておかないといけないんだ。客層を見極めるのは、勿論だけど。在学中に俺達の顧客を持っておきたい。そのくらいしないと『ギャンボル・アンド・ジェイズいたずら専門店』や『ゾンゴのいたずら専門店』に勝てないからな」

 素直に驚いた。双子は、悪戯ばかりして将来など後回しにしていると思っていた。それが既に将来の夢に向け、今から取り組んでいるのだ。意外過ぎる一面は、クローディアにジョージへの感心と応援を湧きおこらせた。

 同時に自身への不安も過る。

 同じ年代の子供達は、既に自分の将来を考え始めている。それなのに、クローディアは3年生という立場に甘えている。本来なら、自分も彼らのように進路を定めなければいけない。

「なあ、俺ばっかり喋ってないで、クロックフォードの夢を教えてくれよ。暫定でいいから」

 いきなり、隣に座ったジョージの質問にクローディアは言葉が出ない。

 

 ――かつて、夢は持っていた。

 

 中学・高校では、女子バスケットボールチームによる大会優勝。大学は関東を選び、某有名リーグ戦に出場。行く行くは、アジア大会から世界大会への進出。そんな話を友達にすれば、田沢ぐらいしか応援してくれなかった。今考えても、かなり夢見がちだと自覚はある。

 今から、日本に帰れば間に合うのではないか? ここでなくとも、魔法を学ぶことは出来る。

 まるで、得体の知れないモノの誘いに思えて不気味に感じた。

「夢は……ないさ」

 ようやく絞り出した声は、素っ気ない。

「それなら……、クロックフォード。俺達の店で働かないか? 絶対、繁盛すること間違いないし……」

「ジョージ、そろそろ行こうぜ」

 リーに呼ばれ、ジョージは渋々言葉を切った。蠢くあやふやな感情を制御しきれないクローディアは、彼のほうを見なかった。

 一時限目の時間が迫ってきたので生徒達は次々と大広間を後にする。教材を取りに寮に向かうクローディアにリサが提案してきた。

「ベッロを連れて頂けませんか? 吸魂鬼のこともありますし、もしシリウス=ブラックが近くに来ても、ベッロならわかるのではないでしょうか?」

 要望通り、クローディアは寮の自室からベッロを入れた虫籠を抱えて温室を目指した。

 フレッドとリーの後を着いて行くジョージに、ジャックは下卑た笑みを浮かべる。

「なあ、ジョージ。あんな可愛い奴と知り合いか?」

「知り合いって、おまえも知ってんじゃん。クロックフォードだよ」

 素っ気ないジョージの返事を聞き、ジャックの笑みは驚愕に引き攣った。

 

 温室内は生徒達の異様な沈黙で、スプラウトの穏やかな声が行渡った。

「『花咲か豆』は、ちょっとした衝撃で花を咲かせてしまいます。土に埋めていないと急速に枯れてしまいますので、絶対に落さないように」

 説明が終わり、皆は黙々と作業を行う。

 順調なはずが、空気は重かった。それもそのはず、ドラコ連中が黙りこくっているからだ。作業に集中したかと思ったが、クローディアと目が合えば、彼は驚いて桶を落したり『毒触手草』に噛まれたりした。

「(どうしたさ……あいつ)」

「(知らない、無視よ)」

 パドマは順調に豆の木から、熟れた莢を毟り取り桶に入れる。

 温室の窓の空、遠くに見える城門に吸魂鬼がいる。それはクローディアだけでなく、他の生徒の視力でも十分、捉えられた。彼女以外の生徒は吸魂鬼を視界に入れた後、自然とドラコへと視線が移す。彼の汽車での行動が原因だろう。

(ああ、成程さ)

 何となくではあるが、クローディアは温室の空気を理解した。ドラコが彼女にやたらと構えば、吸魂鬼への恐怖を誤魔化していると思われる。そんな誤解を生まない為に、彼は大人しく作業に没頭するのだ。

(いつまで持つか、わからないけどさ)

 寧ろ、その分、ハリーが被害を受けそうだ。

 無意識にクローディアは、深く溜息をつく。

 そんな授業に構わず、ベッロは暢気に『毒触手草』と格闘していた。

 

 終業の鐘が鳴り響き、バスシバ=バブリングの『古代ルーン文字学』の教室から這い出るように現れたクローディアは、精根尽き果てていた。寮に戻らず、大広間でレイブンクロー席に倒れこんだ。

「あったま痛いさ……」

 肩を揺らして笑うリサが労わるように、クローディアの肩を擦る。マンディはまだ教科書を睨んでいた。あれは文字ではない。きっと、誰かのイタズラ書きだと信じたかった。

 大広間に『マグル学』を選択していたパドマ、サリー、セシルが入ってきた。3人は笑顔を輝かせてクローディアの元に歩み寄る。

「スリザリン生は、ブレーズ=ザビニとダフネ=グリーングラスしかいなかったわ! あいつら、罰ゲームで選択させられたんですってよ!」

「そこじゃないでしょ! クローディア、あなたがバスケ部を作りたいってこと『マグル学』のバーベッジ先生に相談したら、顧問をして下さるって!」

 軽くコントをするパドマとサリーは、両手を広げた。

「え!? 本当にさ?」

 思わぬ吉報に、クローディアは疲労感が吹き飛んだ。校内でバスケ部を発足する。この目論見が早くも叶いつつあった。喜んだクローディアは、勢いよく顔をあげる。我がことのように喜んだセシルが、拍手した。

「昼の間に職員室に来て欲しいって」

 3人に深く感謝したクローディアは、善は急げと適当に昼を摂った。口に食べ物を残したままクローディアは、勇み足でグリフィンドール席を横切ろうとした。

「あの授業は『数占い』に比べたら、まったくのクズよ!」

 聞き慣れた喚き声に、クローディアは足を止めて振り返る。癇癪を起こしたハーマイオニーが手提げ鞄を乱暴に掴み、クローディアのほうへと迫ってきた。

 これが何を意味するのか、クローディアにはわかっていた。

(おお……、お約束さ)

 案の定、ハーマイオニーは『占い学』の授業そのものと、その教授シビル=トレローニーを徹底的に批判した。

「たかが紅茶の葉が形を成したからって、何でもかんでも不幸の前兆ですって! ハリーなんてグリムが取り憑くだとか! ロンまでビクビクしちゃって!」

 『死神犬(グリム)』。墓場に住まう巨大な亡霊犬、最も不吉なことの前触れらしい。

「魔法界は、神秘的なことが実際起こるからさ。その分、怖いことも起こりやすいさ」

 不満そうに睨んでくるハーマイオニーに、クローディアは苦笑する。

「あなたは取ってないのよね? 『占い学』。とても賢明だわ! そういえば『古代ルーン文字学』の授業どうだった?」

「楽しかったさ、暗号みたいで」

 目を逸らすクローディアに、察したハーマイオニーは苦笑する。

「あ、バーベッジ先生よ。『マグル学』の教授!」

 職員室前に長い黒髪を編みこんだ魔女がいた。チャリティ=バーベッジだ。ハーマイオニーは、すぐに彼女を呼び止める。

「クローディア=クロックフォードです。バーベッジ先生」

 丁寧に頭を下げるクローディアに、バーベッジは気づいたように頷く。

「ミス・パチルから話は聞いているとも、マグルのスポーツで部を興したいそうですね。私のところへそれに関する資料をもって来なさい」

 週末に適度な教室を使用し、クローディアが実技を見せることを約束した。

 意気揚々と廊下を歩くクローディアは、体を弾ませる。機嫌を直したハーマイオニーが微笑んでくる。

「嬉しそうね、そういえばクローディアがバスケしているところ見たことない。私も見に行っていい?」

「勿論さ♪」

 上機嫌にクローディアは、廊下に飾られた絵たちに手を振る。

「授業が増えても、部活が出来るなら……ん?」

 不意に疑問が浮かぶクローディアは、足を止めてハーマイオニーを振り返る。

「さっき『数占い学』がどうのってどういう意味さ? 午前中の選択科目は『占い学』だったのにさ」

「私、次は外だから急ぐわね」

 小走りでハーマイオニーは、廊下を突っ切って行った。

(……まさか……分身の術でも使っているさ?)

 自身の考えに、クローディアは頭を振って否定した。

 

 『変身術』の授業で『動物もどき』の説明をし、マクゴナガルは縞トラ猫に変身する。感激した教室の生徒達は歓喜の拍手を起こした。影への変身が可能なクローディアは、複雑な気分に駆られながらも拍手を送る。

「他者を変身させることは、自分を変身させることに比べると簡単なものです。つまり、自身の姿を変じることは容易ではないということです」

 少し得意げなマクゴナガルが教室を回り、魔法でチョークを操り黒板に文字を書き込む。

「では、もし自分が動物に変じるなら何になりたいかを、1人1人、発表なさい」

 モラグが挙手し「鳥」と答えた。

「先生、ファイアボルトになりたいです」

 勢いよく答えるマイケルに、マクゴナガルが指摘する。

「いま、ミスタ・コーナーが言ったように動物以外のものに変じることが『動物もどき』として認められるか……、答えは否です。理由はいくつかありますが、一番は身の危険性が最も高いからです。もし、ミスタ・コーナーが古本に変身したとしましょう。それに気づかず、暖炉に放り込まれたら、彼は終わりです。もうひとつは利点がないことです。本には、目も耳もありませんので見ることも聞くことも歩くこともできません」

 クローディアは自身の足元にある影を見つめる。

(……影になっても、視覚は狂うけど、聴覚はちゃんと働いているし、影は物じゃないということさ……。でも……、影は生物とは程、遠いし……)

「ミス・クロックフォード、質問ですか?」

 呼ばれ、クローディアは席を立つ。

「では、植物はどうなりますか? 生物ですが、除外されるのでしょうか?」

「いい質問です。これまで完璧に植物へと変じた魔法使いはいません。これも危険性と利点の有無にあります」

 一先ず、納得しクローディアは着席する。次にサリーが発言を許された。

「2年生のとき、『魔法薬学』で『ポリジュース薬』について簡単に習いました。他人に変じることは『動物もどき』には当たらないのですか?」

「その通りです」

 サリーが座り、アンソニーが挙手する。

「マクゴナガル先生は、猫以外の動物には他に何に変身できますか?」

 急にマクゴナガルは、教室を見渡す。

「注目ですよ。『動物もどき』が変身できるのは、ひとつだけです。例外として『七変化』があります。これは生まれ乍らの特異体質でまさに変幻自在です。こればかりは熟練の魔法使いでもなることは出来ません」

 アンソニーが座ると、マンディが挙手する。

「先生は杖を使わずに猫に変身しましたが、杖がなくても変身できるようになるのですか?」

「正しくは、杖なしで完璧に変身を遂げ、解く。これが最低条件です。大方の魔法使いは、杖で自分を変身させるところで、挫折してしまいます。以上のことを踏まえて『動物もどき』のレポートを金曜までに提出なさい」

 マンディが座り、リサが挙手する。

「分身することは出来ないのでしょうか?」

 そのときのマクゴナガルの崩れた表情を教室の誰もが脳内から消し去ることを決めた。

 

 教室を出るリサは、少し表情が暗かった。

「私、そんなに変なことを言いましたか?」

 それを尻目に、クローディアは今まで読んだ漫画の内容を思い返す。

(……忍者ハットリくんって、スゴイさ。蛙になれるし……『七変化』って、あれは……変装さ)

 寮を目指すクローディアは、螺旋階段の所でパドマに呼び止められる。

「クローディア、お客様よ」

 困り笑顔のパドマが教えた先には、不安そうに眉を寄せるハーマイオニーであった。 さっさと寮の自室に教科書を置き、ベッロを首に巻く。ハーマイオニーと共に大広間を目指した。

 『魔法生物飼育学』でドラコがハグリッドの忠告を無視し、ヒッポグリフのバックビークを罵倒したため、襲撃された。それをスリザリン生が大袈裟に騒いでいるという。

「マルフォイが怪我って、大丈夫さ?」

「ええ……、マダム・ポンフリーが治してくれるはずだから……。でも、これをマルフォイが利用してハグリッドをクビにしたらどうしよう……」

 滅多にドラコを心配しないハーマイオニーは、真剣に彼の怪我とハグリッドのことを案じている。

「自業自得って言いたいけどさ、痛いんだろうさ……」

 クローディアもドラコの身を案じ、医務室の方角を見やる。

 大広間に着くと、パンジーが目に涙を浮かべてクローディアに迫る。

「あなたのお友達のハグリッドが! ドラコに怪我させたのよ! あら、グレンジャーいたの」

 おまけ程度にパンジーは、ハーマイオニーを睨んだ。

「それで、マルフォイはどうだったの? 医務室に行ったんでしょ?」

「すごく痛そうにして、死んじゃうって泣いてたわ。可哀想なドラコ……」

 口元に手をやり、俯くパンジーにクローディアは励まそうと手を伸ばした。

 しかし、即座にパンジーに弾かれた。代わりに、ベッロがパンジーの目元の涙を拭うと急に笑顔になった。

「ありがとう、ベッロ。誰かさんと違って、あなたはとても優しいのね」

 明らかに侮辱する態度に、クローディアは小さく嘆息した。パンジーを無視すると決め込み、夕食の為に自寮の席に座った。

 夕食の間に『魔法生物飼育学』の出来事が広まっていったが、何故かドラコがハグリッドの尻を触ったとか、吸魂鬼に驚いてバックビークに抱きついたなどの尾ひれが付いていた。

 そんな噂を不愉快に思うのは、スリザリン生だけではない。

「御機嫌よう、ミス・クロックフォード」

 黒真珠の瞳を細くし、皮肉っぽく口元を曲げたスネイプがクローディアの背に声をかけた。

 ぎこちなく振り返ったクローディアは、必死に笑顔を取り繕う。

「見違えましたな、ミス・クロックフォード。我輩としましては、以前の御姿のほうが健康的かつ防寒にも優れていたと考えておりましたが、いやいやいや、まさに残念としか言いようがない。今年の冬は例年より寒さが堪えるでしょうな。言っておくが、またくだらぬモノを学校に持ち込まぬように……」

 減点や罰則はなかったが、ネタが尽きるまでクローディアは延々と罵られた。昨日、スネイプを少しでも理解しようとした自分を撤回したかった。

 

 図書室で明日の授業に関し予習するクローディアとパドマ、リサの3人は、窓から城の周囲を徘徊する吸魂鬼を目にする。

「吸魂鬼って、いつ寝るさ?」

「さあ、私も吸魂鬼に詳しいわけではありませんけど、年中アズカバンを監視しているのですから、睡眠は取らないのではないでしょうか?」

「クローディアって変なこと気にするわね……。この本に載ってるんじゃない?」

 パドマが本棚から適当な本を取り出し、吸魂鬼の項目を読む。しかし、基本的なことのみで生態系などは一切記載されていない。

「閉館ですよ。本を戻しなさい。貸出と返却はお早めに」

 他に参考になる書物を探そうとしたが、マダム・ピンスが閉館を告げ、生徒達の追い出しにかかった。3人も急いで図書館を後にした。

 寮に戻るため、玄関ホール付近を通りかかる。何処からか、乱暴な地響きが床に伝わってくる。

「変な音するさ……」

 周囲を見渡し、クローディアは震源地を探す。音は段々と迫ってくる。

「何かしら?」

 パドマとリサも足を止め、玄関ホールの向こうを見やる。

 珍しく目つきを厳しくしたハグリッドが、ハリーを抱えて走ってきていた。こちらに失態はないが、3人はハグリッドに叱責をもらうのではないかと焦る。

「おお、クローディア。ハリーを寮まで送ってくれ、絶対に目を離すなよ!」

 投げ渡されたハリーをクローディアは全身で受け取った。意外に彼が軽いことに気づく。ハグリッドの後ろから、全速力で走ってきたハーマイオニーとロンが疲労感のあまり肩で息をする。

「それから、暗くなって城をうろつくなら、ベッロを連れておけ! ベッロが近づくなという場所にも行くな! 絶対だぞ!」

 鬼気迫る勢いに、クローディアはドラコのことを聞きそびれた。

 ハグリッドに押され、6人は自寮を目指す。

「ハグリッドったら、マルフォイの怪我は自分のせいだって言うのよ。ヒッポグリフを教えるのは、早すぎたって!」

 ドラコの為に、ハグリッドが心を痛めている。そのことをハーマイオニーから説明され、パドマが憤慨する。

「新学期から、ウザイ。マルフォイったら、呪いかけてやろうかしら」

 杖を振り回すパドマは、本気だ。

「後からスネイプ先生がお仕置きしてくるさ。バレないようにこっそりやるさ」

 クローディアは、愉快そうにパドマへ耳打ちした。

「同感だな。ひっどい呪いをかけてやる」

「駄目だよ、ロン。いまは一刻も早くマルフォイが回復してくれないと、ハグリッドが悲しむよ」

 窘めるハリーをクローディアは苦笑する。

「元気になってからのほうが、マルフォイは大変さ」

 6人は、これからドラコが仕掛けるであろう悪だくみを想定して、溜息をついた。

 




閲覧ありがとうございました。
ハーマイオニーの時間割りは原作を読んでも、全然わかりません!
●ブレーズ=ザビニ
 原作六巻にて、いきなり出てきた男子生徒。いい性格していると思う。
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