追記:16年3月7日、18年9月2日、誤字報告にて修正しました。
バスケ部が成立し、クローディアに僅かながらも変化が起こった。
『魔法薬学』の授業でマトモに調合が出来た試しがなかったにも関わらず、完璧にこなせるようになった。
部活動が勉学に影響するとは、正にこの事。
「マグルの競技に専念する暇があるなら、君への宿題もその分、増やしてしんぜよう。それに通常の調合では、満足できなくっているようだ。今後は特別に条件を厳しくし、精進するといい。嬉しかろう?」
だが、スネイプは不服な態度で、より厳しくクローディアを責め立てた。
――原因は、勿論ネビルにある。
ボガートの件、瞬く間に全校生徒へ広がり、話題を独占している。その為、元々スネイプに目をつけられていた生徒達にも、とばっちり食らう羽目になったのだ。
元凶である『闇の魔術への防衛術』はドラコ達以外の生徒に大人気である。男女問わず、ルーピンは名教師として尊敬された。
クローディアは授業を受ける毎に、ルーピンが嫌になってきた。
3度目の授業、題材は本物の河童。
生まれてから、初めて河童を見たクローディアは興奮した。同時に日本では、河童は清浄な水場の守り神として教わってきた。勿論、悪さをする者もいるが、それは極一部に過ぎない。人間に捕縛された河童が哀れに見えた。
「ルーピン先生、住処に帰してあげてください! 罰当たりです!」
「罰当たり……?」
涙ながらに訴えたが、授業で使用するためと拒否された。その後、授業を受けたチョウもクローディアと同じ反応で河童の解放を求めた。
「河童を生け捕るなんて、祟られても知らないから」
「そうさ、しかも授業で殺人狂みたいな言い方は頂けないさ」
夕食の際、クローディアはチョウと協力し、河童を解放しようとした。ペネロピーに止められた。それどころか、ハーマイオニーからも説教を受けた。
「あんなに良い先生は、他にいないわ。河童のことはあなたが妥協してあげるべきだわ」
『占い学』を棚に上げたハーマイオニーに言われたくない。しかし、トレローニーのせいで、パーバティやラベンダーと見解と才能の違いで酷く揉めたらしい。
確かにルーピンの授業は講義として良好だ。それだけは、認めることにした。
バーベッジが本当にマグルの競技を宿題にし、パドマとサリー、セシルは随分と悩まされた。図書館にはマグルに関する参考書などないに等しい。
故にマグル出身者に聞くしかない。ジャスティンはパドマから色々と質問攻めにあった。
「アーミーにも、同じこと聞かれたよ」
ジャスティンは疲れた顔で笑っていた。
「この卓球とビリヤードって、どう違うの? この競技台って、暴れたりしない?」
レポートを書きながら、サリーは何度もクローディアに質問した。
「……プロレス? ……相撲? ……ムエタイ? ……テコンドー?」
ほとんど格闘技系にばかり、セシルは興味を持ったらしい。しかし、彼女は資料を読み漁るだけで、誰にも質問しなかった。
気付けば、談話室の本棚にはマグルのスポーツ競技に関する本がずらりと並べられていた。それに便乗してか、小説や漫画も増えていた。
「『銀河鉄道の夜』って、日本人が書いたとは思えないわ。素敵な話ね」
ハーマイオニーはそんな感想を述べた。
「『ゼンダ城の虜』とか、下級生には早いわ。年齢別にしておきましょう」
監督生らしく、ペネロピーが本棚に魔法をかけた。これで、下級生は上級生向けの本に触れることは出来ない。ついでに、本棚に相応しくない書物も置けぬらしい。モラグが悪戯で官能小説を置くと、本棚は官能小説を吐きだした。
9月15日、ハーマイオニーの誕生日。
クローディアは彼女への贈り物として手製の鞄を渡した。現在、ハーマイオニーが使用する鞄は新学期早々に、痛み出している。彼女の髪と同じ栗色の布に、藤の模様を刺繍した鞄を用意したのだ。
「ありがとう、すごく嬉しい。可愛くて使うの、勿体ないかも」
鞄を肩にかけ、ハーマイオニーは嬉々として表情を綻ばせる。
「それさ、ハーマイオニーが喜ぶ仕掛けがあるさ」
自信満々にクローディアは、寮席になる食器を手当たり次第放り込んだ。しかし、鞄は一向に膨らまず、重さもない。仕掛けに気づいたハーマイオニーが感嘆する。
「すごーい、ベッロの虫籠がヒントよね? これを作ったの?」
「作ると意外に簡単さ、無限にいれるんじゃなく、ある程度制限するとすんなりさ。というわけで、物は入れられるけど。生物は入れられないさ」
見本としてベッロを鞄に入れようとしたが、鞄の口で壁が存在するかのように入れない。
「なら、このフォークが変身させられたカエルとか、そういうのを見分けられるってことよね?」
意外な活用法に、クローディアは納得して頷く。
「大切に使うね」
ハーマイオニーは鞄を抱きしめ、安心したような笑顔を見せる。微笑ましい光景を目にするだけで、クローディアの心臓は優しい日差しを浴び、そよ風に煽られる。
しかし、傍に居たベッロとクルックシャンクスが、スキャバーズに襲いかかった。ロンが憤怒して、2人に怒鳴ってきたので雰囲気をブチ壊された。
大広間で朝食を摂っていたクローディアに、母から段ボール一箱分の板チョコが送られてきた。
【商店街の福引で当てました。食べきって下さい。 かしこ】
(それだけさ……)
吸魂鬼のことが関与しているのだろうかと、クローディアは段ボールを睨んだ。
「日本のチョコだわ。ひとつ頂戴♪」
段ボールを覗き込むハーマイオニーが、チョコを手にする。
突然、クローディアの肩が重くなる。背後から、ジョージが体重をかけてきたのだ。
「うわお、これは多すぎだ」
期待に満ちた眼差しでジョージは、クローディアを見つめた。
「良かったら、食べるさ?」
「おお、なんとお優しいクロックフォード」
両手で一掴みし、ジョージは暖かい笑顔でフレッドにも板チョコを分け与えた。便乗し、クローディアも板チョコを配りにグリフィンドール席へと赴く。ハリーは喜んで受け取ったが、ロンは受け取らず不機嫌に顔を背けた。
「気にしないで、クルックシャンクスがスキャバーズを追い回すことを根に持ってるの」
「ベッロがスキャバーズを悪く言うこともあるぞ」
説明するハーマイオニーの言葉を遮り、ロンが悪態付く。出来るだけ諭す口調で、クローディアはロンに促す。
「ベッロの行動に意味があるって、わかんないさ?」
「だから、なんだって言うんだ! 僕はスキャバーズの味方だ!」
不快に顔を顰め、怒鳴るロンにハリーも肩を竦める。
「ご立派な精神さ……」
嘆息したクローディアは、板チョコをロンに投げ渡した。
大広間にいる大方の生徒にチョコを配ったが、それでも段ボールの中に余りができる。後は、時間をかけて平らげるしかない。段ボールを抱え、大広間を出ようとした。そこに、パンジーが横切った。
「パンキーソン」
クローディアに呼ばれ、パンジーはビクッと肩を痙攣させて恐る恐る振り返った。
「チョコ、あげるさ」
無理やりクローディアが手渡したチョコをパンジーは怪訝そうに見つめる。
「どうして、私にもくれるの?」
「できれば、これをそっちで配って欲しいさ」
意外な言葉に、パンジーは奇妙に眉を寄せる。
「私にチョコを配れですって? あなたよくもそんな……」
困り果てたパンジーは、焦り声を出す。彼女の後ろから、褐色の肌をした少し高貴な印象を受けさせるブレーズ=ザビニが、失礼のないように割って入ってきた。
「僕の聞き違いでなければ、このチョコを配れと聞こえただけど」
確認してくるブレーズに、クローディアは頷く。気取った笑顔で彼は、段ボールから両腕に抱えきれるだけのチョコを掴んだ。そのまま、スリザリン席で女子生徒にだけ、チョコを配っていた。
「あ~、ザビニってさ……。もしかして女の子好きさ?」
何気なく問いかけるクローディアに、パンジーは深く息を吐いた。
「女子に人気あるわよ。他の寮の女子からも受けがいいわ」
つまらなそうにパンジーは、説明した。彼女はドラコ以外の男子には、とことん冷たい。一体、あの御坊っちゃんの何処が良いのか、ホグワーツの七不思議だ。
(そういえば、この学校にも七不思議とかってあるさ?)
何気なく、周囲を見渡すクローディアの視界にダフネが入って来た。彼女は段ボールを見て、露骨に嫌そうな顔になる。
「また、何かしでかしているの?」
ダフネは『マグル学』のレポートで相当苦労した為、クローディアの行動を警戒しているのだ。
「チョコ、配っているだけさ。スリザリンには、ザビニが配っているさ」
素直に答えるクローディアに、ダフネは胡散臭そうな視線を返した。そして、何事もなかったようにパンジーと寮席へ向かう。
食事を終えたリサが、クローディアを引き止めに来た。
「ルーピン先生にも、お渡ししてはどうでしょうか? 甘いものもお好きなようですし」
朝から聞きたくない名前。複雑な笑顔のクローディアに、リサは吃驚する。
「そうでした。クローディアはルーピン先生が苦手でしたわね。でも、私達が入学してから一番良い『闇の魔術への防衛術』の教授ですわ」
「それは、ちゃんと認めているさ。よし、残ったチョコを全部、渡しに行くさ」
意気揚々とクローディアは教員席に目をやるが、ルーピンの姿はなかった。
「朝からルーピン先生見てないさ」
「そういえば、そうですね」
「お腹にナーグルが来たんだ」
リサの背後に現れたルーナが両手を大きく広げる。三つ編みで三つ編みを結び、髪が絡まっている。
「ルーナ、髪が痛むさ。解いて結びなおすさ」
「大丈夫だよ、こうするとひっかかるもン」
他愛なく話すクローディアとルーナに、リサは一歩下がる。
「ルーナも板チョコ食べるさ、美味しいさ」
「ありがとう、嬉しいな」
チョコを受け取ったルーナは、銀紙ごと食べようとした。慌てて、彼女に正しいチョコの食べ方を教えた。
ルーナには銀紙も食べられそうに見えたそうだ。
既に教室には生徒が集まり、始業の鐘が鳴るのを待つ。
クローディアはパドマやリサと予習がてらにと、適当に教科書を開きそのページに記載された生態を読み上げ、生物を当てる遊びをした。
「わかったさ、狼男さ!」
パドマが人差し指を動かし、舌を鳴らす。
「惜しい、人狼よ。男だけじゃなく、女性もいるから狼男は違うわ」
「雌の狼男……、毛深いさ。大変そうさ」
「着目するのが、そこなんですか?」
何の前触れのなく、教室の扉が力強く開かれた。そこには何故かスネイプが普段の表情で立ち、乱暴な足取りで教室に入る。生徒は即座に口を閉じ、彼に視線が集中する。
スネイプは、杖で教室にスクリーンを用意した後、生徒を見渡す。
「教科書、394ページを開け」
反論を許さない強い口調に、全員大人しく従う。パドマは偶然、そのページを開いていたので幸いした。生徒の動きを見張りながら、スネイプは教壇まで歩く。挙手したクローディアは身を乗り出した。
「スネイプ先生、ルーピン先生はどうしました?」
「君が気にすることかね? 諸君らのルーピン先生は、授業の出来ぬ状態にあるのだ」
冷徹な返しに、クローディアは頷く。
「394ページは、人狼に関することです。夜行性はまだ先です。いまは……」
「黙れ、ミス・クロックフォード」
咎められ、クローディアは口を閉じる。スネイプは教壇に杖で映写機を用意し、作動させる。スクリーンには人狼の人体構図、抽象画のような絵柄が映される。
「人狼と『動物もどき』の違いが分かるものはいるか?」
早速、パドマが挙手するが、スネイプは無視する。教室を見渡しせせら笑う。
「わからんか、嘆かわしいな」
反論しようと、クローディアが手を上げようとしたが、リサが止める。余計な発言は減点にされるからだ。
「何かね? ミス・クロックフォード。我輩の授業に不服でもあるのかな?」
クローディアとリサの様子に気づいたスネイプが、意地悪な笑顔を見せる。
一斉に視線がクローディアに集中する。スネイプは顎で起立を促した。
(文句を言わなければいいさ……質問を……)
視界に入る人狼の挿絵。
「質問があります」
丁寧に腰を上げるクローディアに、周囲は緊張する。
「もし、私が人狼であった場合。リサは私とどう接すればよいのでしょうか?」
何処からともなく、唾を飲み込む音が聞こえる。しかし、スネイプは小さく頷き、少し機嫌の良い笑みを見せた。
「成程、君にしては良い質問だ。座りたまえ」
促され、クローディアは腰を下ろす。リサと目配りで安堵する。
「教えてやろう。人狼は、卑怯な性格をしている。保身に走り、他人を恥じなく見捨てる。もし、君らが人狼に出くわしたなら、近づくな! その牙の餌食になることは、2つ。命を落とすことと、人狼にされるということだ。どちらの目にも遭いたくなければ、親しくなろうとなど、するな。もう一度、言うぞ。決して、近づくな」
普段とは違う迫力が胸に伝わる。恐怖とは違う感情で、教室の生徒はスネイプに視線が釘付けになる。
「先生、質問よろしいですか?」
熱の篭った声で、アンソニーが挙手し、スネイプはそれを許した。勢いで何人もスネイプに質問し、小気味よく返した。『魔法薬学』と違い、皆の視線は尊敬に満ちていた。
終業の鐘が鳴り、皆は有意義な時間を堪能した満足感で教室を去る。皆が去っていく中、クローディアはロープのポケットに入れた板チョコを思い出す。
「スネイプ先生、うちの母が送ってくれたチョコのお裾分けです。美味しいですよ」
「我輩は、甘いものは好かん」
差し出したチョコに見向きもせず、スネイプは足早に教室を出て行った。残ったクローディアに、リサが苦笑する。
「相変わらず、馴れ合う気はないようですね」
クローディアは、授業中のスネイプと拒否された言動を脳内で再生する。
「もしかして、自分のことは気にせず、吸魂鬼に備えろってことさ?」
「そうでしょうか? もし、今のがスリザリン生だったら、受け取っていると思いますよ」
否定されたが、クローディアは自身の言葉に強い確信を持てた。何故なら、人狼の話をしているスネイプの姿が、危険なことを警告するときの母と重なったのだ。
これまで叱る時のスネイプが誰かに似ていると感じていた。それは、クローディアの母で間違いない。
〝セブルスは誰も見捨てない〟
コンラッドの言葉が頭を過ぎる。
その言葉の真の意味をたった今、理解した。きっと、これからはスネイプを信じることが出来る。そんな確証に満足していた。
図書館で教科書を広げるクローディアは快調に羽根ペンを動かし、レポートを埋めていく。その正面に座るハーマイオニーは呻いた。
『闇の魔術への防衛術』をスネイプが代講した。そのことを耳にしたハーマイオニーは、授業内容よりも、珍しく彼の機嫌が良かったことを信じ難い。
「『魔法薬学』もあれぐらい、楽しいと嬉しいさ」
「全然想像できないわ」
ハーマイオニーの呟きをクローディアは苦笑する。再び羽根ペンを走らせ、レポートを書き上げた。
ハーマイオニーも急ぎ、羽根ペンを動かす。机を見渡し、クローディアは彼女の隣に重ねられたレポートの数に圧倒された。
「月曜日なのにさ、その宿題の量はおかしいさ……。時間、大丈夫さ?」
「ええ、問題ないわ。これまでもちゃんと出来たもの」
一心不乱に書き続けるハーマイオニーは自身へ言い聞かせた。
「それならいいけどさ」
納得できないが、代わりに宿題をやるわけにも行かない。せめて、傍で待とうとクローディアはハーマイオニーを眺めた。
スネイプの代講で人狼を学んだ。それが思いの外、楽しかったとコンラッドへの手紙に書く。書き終えたクローディアを見計らって、クララが部屋に入ってきた。
「クローディア、チェイサーやるわよね? やるでしょう?」
いきなり詰め寄ってくるクララに、顔を顰めたクローディアは両手で制す。
「ちょっと、待つさ。選手は、もう締め切ってるはずさ! 第一、私にはバスケ部があるさ」
抵抗するクローディアに、クララの口元が曲がる。
「そこよ。あなたのバッケだか、なんだかのマグルの競技! バーベッジ先生はすっかり気にいっていたわ。今日の授業でロジャーに話していたわ。『お互い、素晴らしい人材を逃しましたね』って!」
ロジャーが『マグル学』を選択していたとは、クローディアには意外だ。構わず、クララは切羽詰まったように目を見開いて、迫って来た。緊迫した顔が怖い。
「だからチェイサーよ。やるわよね!?」
「だが、断るさ」
即決するクローディアの肩を掴み、クララは縋る。
「お~ね~が~い~」
「クララ! 普段の冷静かつ物静かな態度は、何処に行ったさ!」
「捨てた」
執拗にクローディアへ抱きついてくるクララをリサが哀れんだ。
「一試合だけというのは、どうでしょう? それで、クローディアに見込みがあるのかを判断すれば……」
「一試合でも、大事な試合さ。誰かが、怪我して代わりが欲しいなら受けてもいいさ」
眠気が襲ってきたクローディアは、クララを追い返すために適当なことを言い放つ。すると、目を輝かせて彼女は両手を広げた。
「代理ならやってくれるのね! 聞いたわね? 聞いたわよ!」
大袈裟なクララはリサにも念を押す。勢いのあまり、頷き返した。
はしゃいだクララは風のように部屋を飛び出した。
「代理なら、やるって!」
半開きの扉の向こうから、クララの奇声が聞こえた。
クローディアはリサと顔を合わせ、呆然とした。
「もしかして、私、とんでもないこと言ったさ?」
発言を後悔したが、後の祭りである。
10月に入り、クィディッチの選考から漏れた生徒が自然とバスケ部を訪れた。
モラグは【バスケ入門】を読みながら、ボールをゴールに入れた。
「ああ、呪文よりずっと簡単だ」
フリースローの体勢が気に行ったらしく、モラグは1人でゴールに入れ続けた。しかし、対戦となると彼は非常に弱い。ゴールに意識しすぎて、守り切れない。しかし、シュートさせ出来れば、必ず入った。
マンディも挑戦しようとしたが、ボールが爪に当たってすぐに挫けた。それでも、見学だけはしてくれた。
アーミーは少しでも『マグル学』を理解しようと通い出した。彼はチームへのフォローが上手い。仲間の窮地を敏感に察知する。故に、モラグとの連携が良い。
エロイーズは、クローディアが劇的なダイエットに成功したのはバスケのお陰だと誤解した。訂正が面倒なので、そのまま部員として捕縛する。彼女は撹乱と妨害工作(ルール範囲内)が上手い。ボールも狙いさえ決めなければ、ゴールによく入った。ただし、狙いを定めると絶対、入らないので、ここは指導するしかない。
ジニーは時間がある時、必ず部活に顔を出してくれた。勧誘も手伝い、グリフィンドール2年生デメルザ=ロビンズが来てくれるようになった。
彼女は最初こそ、ただボールを入れる行為を疑問する。しかし、これが思いの外に楽しいと理解し出した。誰よりも熱心に励んでくれた。
「オリバー=ウッドは選考試験をやらない。今のチームに満足しているんだ。本人に聞いたからな。全く、不公平だと思わないか?」
傲慢な態度で、コーマックはオリバーの愚痴を溢す。肩幅も広く、体格の良い長身だ。一度、マンツーマンでボールの奪い合いをした。彼はディフェンスが非常に上手く、クローディアは何度もボールを取られた。反対にシュートは苦手のようだ。一度もゴールにボールが入らない。
ジャックとアンドリューは度胸は非常に良い。怪我を恐れず勇敢に挑戦する。好戦的で、行動派だ。だた、残念なことに下手だった。元気が空回りする性格らしい。実に、教え甲斐のある2人だ。
ハッフルパフの4年生クレメンス=サマーズも、クィディッチの選考から漏れて部活に顔を出し始めた。飲み込みが非常に良く、ルールとプレー技術もすぐに覚えた。しかし、ボールを怖がった。元がビーター志望だったらしく、パスされたボールを彼は器用に避けた。
「キャプテンのセドリックから、ここを勧められた。クィディッチの補欠が集まる場所なのか?」
全然違う解釈に、クローディアは苦笑以外返せなかった。
一番困ったのはコリンの扱いだ。最初の部活にハリーが来ていたと知り、文句を述べた。
「わざわざ魔法学校に来てまで、バスケなんて……。どうして、ハリーは誘ってくれなかったんで?」
それこそは、ハリーに理由を聞けばいい。
コリンはいつもハリー目当てに見学しに来ては、文句を述べて帰る。うんざりしたジニーが彼を叱りつけた。そして、強制的に入部させた。
ルーナも楽しんでくれるが、チームプレイには不向きだった。よく仲間に体当たりし、仲良く床に転んだ。ゴールにボールを入れるように指示しても、天井目がけて投げつけていた。
危ない。
クローディアを含めても13人が実質な部員となり、戦力配分を組んで試合をさせた。5対5の時もあれば、3対3でリーグ戦もやった。
ロジャーもセドリックを無理やり連れて、参加してくれた。
クレメンスは必死にセドリックへ自分をアピールした。力み過ぎらしく、ダンクシュートの際にコートをバックボードこそ倒す事態を招いた。
「緊張を解いてご覧、大丈夫だよ。君は勇気がある」
セドリックは優しく、クレメンスを宥めた。
楽しい時間は過ぎ、解散が迫った。皆を帰し、クローディアはバーベッジと部室を施錠する。しかし、コーマックは作業が終わるのを待っていた。
縁談の仲介人のように、バーベッジは含み笑いを見せて行ってしまう。
「ホグズミードでデートしよう」
受けるのが当然の態度でコーマックは誘ってきた。ロジャーと違い、彼はクローディアを完全に見下していた。性格に難はあるが、彼は大事な部員だ。
「ごめんさ、ハーマイオニーと約束があるさ」
丁寧に断ると、不満そうにコーマックはクローディアの瞳を覗きこむ。観察する目つきで眺めてから、急に納得した。
「そういうことか、なら、仕方ない。諦めるか」
残念そうにコーマックは、わざとらしく溜息をつく。去ろうとしたクローディアの頭を包み込むように抱き寄せた。彼の吐息が頭の皮膚で感じ取れた。
ぞっとする寒気がクローディアを襲い、硬直した。
「気が変わったら、いつでも相手してやるからな」
熱っぽい声で告げ、コーマックはクローディアの頭にキスを落とす。首筋の後が嫌悪で逆立った。思わず、クローディアの拳が振り上がる。
「手が滑った!!」
廊下の向こうから、大声を張り上げたジョージが『クソ爆弾』を投げつけてきた。吃驚したコーマックは、急いで廊下を走るが間に合わずに『クソ爆弾』の犠牲になった。
「ごめん、ごめん。手が滑っちまった。大丈夫か?」
いつもの快活な笑みでジョージは、コーマックを一切無視し、クローディアを気遣う。上げかけた拳を引っ込め、神妙に頷く。
「さ、フィルチに見つかる前に行こうぜ」
周囲を警戒し、ジョージはクローディアの背を押す。
背に触れたジョージの手は少しも嫌ではない。廊下に倒れ伏したコーマックを視界に入れ、クローディアは彼のスキンシップが急過ぎたせいだと判断した。
決して、異性を恐れたのではない。そう、自分に言い聞かせた。
閲覧ありがとうございました。
河童は何処から連れてきた!
●デメルザ=ロビンズ
原作六巻にて、登場。
●クレメンス=サマーズ
原作四巻にて、苗字のみ登場