ハリーよ、世の中そんなに甘くない!
追記:16年3月12日、誤字報告にて修正入りました。
入学以来、最悪の気分。
スキャバーズを庇うロンがベッロやクルックシャンクスを蹴ろうとすること、ドラコがスプラウトの人の良い性格を利用していること、『魔法薬学』の授業に一切の変化がないこと、それらなど霞んでしまう事態が起きた。
ハロウィーン当日。
3年生は待ちに待った『ホグズミード村』への初外出だ。特にクローディアは1年生の頃からジュリアにからかわれたせいもあり、一層待ち遠しかった。
だが、クローディアは『ホグズミード村』に行くことは出来ない。
許可証には、親権者・保護者の署名が絶対不可欠。だが、ハリーの許可証の署名は、ドリスによるニセモノであった。無論、クローディアはそんなこと知らなかった。知っていたのは、ロンだけだ。
ロンはドリスを称賛し、ハリーも署名入りの許可証を堂々とマクゴナガルに提出した。当然の事ながら、教頭に見抜かれてしまった。
「前代未聞です! グリフィンドール20点減点します!」
激怒したマクゴナガルは、ハリーにホグズミード外出を禁じた。ドリスにも抗議の手紙を送りつけた。
それだけなら、自業自得と思いつつもクローディアは、落胆したハリーを慰めたかもしれない。しかし、ドリスへの戒めにと矛先は彼女にも向けられた。彼と共に、居残りを命じられたのだ。
ハリーは心から謝罪し何度も詫びた。ドリスもお詫びの品に、運動服を贈ってくれた。謝罪は受け入れるが、怒りは治まらない。日本の中学に進学出来ないと知った時でさえ、こんなに機嫌が悪くなかったと断言できる。
スキャバーズの件で神経を尖らせていたロンも諍いを水に流す程、クローディアとハリーに同情した。
「まさか、保護者のサインを誤魔化そうとするなんてねえ。先生達に筆跡が見抜けないと思ったのかしら?」
「筆跡鑑定なら、私でも容易ですわよ」
クローディアの外出が取り消された理由をパドマとリサは嘆いた。
『ホグズミード村』に胸躍らせる生徒達が集まる玄関ホールでフィルチは最終確認を行う。壁際では、不機嫌さを全開にしたクローディアが元凶のハリーと共に友人達を見送る。
「居残りか? ポッター、クロックフォード。まさか吸魂鬼の傍を通るのが恐いのか?」
「ああ? 何か用さ?」
上機嫌なドラコが包帯を巻いた腕で2人を指差してくる。クローディアが睨めば、彼は脱兎の如く逃げ出した。それをパドマやリサ達が嘲笑う。
「お土産買ってくるからね」
「本当に、ごめんな」
ハーマイオニーとロンが皆と共に、行ってしまった。見送りを終え、クローディアはハリーの肩を叩くように掴む。
「ポッター、図書館でレポートやるさ」
不機嫌さを隠さない声で囁くクローディアとハリーは、目を合わさない。『ホグズミード村』に行けぬ歯痒さと、人を巻き込んだという責任感で、意気消沈しているからだ。
「いや、いいよ。そんな気分じゃないから」
ハリーの言い分を通さず、クローディアは図書館に連れて行こうとした。焦ったハリーは、寮から教材を取ってくると言い訳し、彼女の手から逃れた。
苛立ちに支配された感情は、ハリーを逃すまいと『太った婦人』の肖像画の前で待った。割とすぐに出てきたが、手ぶらであった。
「レポートはしないさ?」
「ねえ、クローディア。ベッロはどうしたの?」
話を逸らすため、ハリーは周囲を見渡しベッロを探す。わざとらしく嘆息するクローディアは冷たく返した。
「それなら、2年生の子と一緒さ。それより、レポート……」
「そんなに勉強したいなら、1人で行ってよ!」
我慢の糸が切れたようにハリーは、怒鳴る。反論されクローディアは、怒り心頭で震えた。
「何さ、その態度! ああ、そうですか、じゃあ勝手にしてください! 後からハーマイオニーに頼るのが見え見えさ!」
吐き捨てたクローディアは、図書室を目指す。
「勝手にするよ! そうだ、僕は城の中なら自由なんだ!」
売り言葉に買い言葉で返したハリーは、クローディアと別の方角へと歩いた。
図書室に向かう途中、クローディアは徐々に冷静さを取り戻す。城の中なら、自由だと叫んだハリーの気持が胸を打った。思えば、ハグリッドからも陽が暮れれば、城から出るなと言われている。今回の件を知ったハーマイオニーは、安全の為に城にいるべきだと話していた。
(なんで、私が悪いみたいな気持になるさ)
実際、少々大人げなかった。
「あら? クローディア、ホグズミードに行かないの?」
後ろから、マリエッタがエディーと腕を組んで現れた。その手には、いくつもの書物が重ねられていた。
「ちょっと、事情で行かないさ。2人は行かないさ?」
「今回は遠慮しようかなって、思ったの。こういう時にしか行けない場所があるから、ね? エディー」
マリエッタにウィンクされ、エディーは書物で顔を隠した。
「……あれ? マリエッタ、カーマイケルと仲良いさ?」
尋ねられマリエッタは、人差し指で自らの唇を軽く叩く。
「言ってなかったわね、ロジャーとは別れて、今はエディーと付き合ってるの。ロジャーも、確かグリフィンドールの子とデートするって言ってたわ」
衝撃だ。
(流石さ? なんか、こう別れたりくっついたり……、少女漫画みたいさ)
理解しづらい現状に、クローディアは嘆息する。
「つまり、2人はお城でデートさ。その本はどうするさ?」
「これから、読むためよ。そうだ、ねえ、ルーピン先生に本を返してきて貰えないかしら?」
エディーが抱えている本の山から、マリエッタは一冊の本を取りだした。
「いいけどさ、この貸しは高くつくさ」
「いいわよ、必ず返すから」
取引成立。クローディアはマリエッタから本を受け取り、廊下を進んだ。
途中でミセス・ノリスを踏みかけたが、それ以外は順調にルーピンの事務所に到着する。丁寧に扉を叩き、挨拶する。
「ルーピン先生。お借りしていた本をお返しに上がりました」
「どうぞ」
愛想の良い声が返り、クローディアは遠慮なく扉を開く。物が多くても整然とした部屋に、何故かハリーが椅子に座っている。その手には、紅茶だ。
ハリーもクローディアに驚き、気まずそうに視線を逸らす。
「あんた、何してるさ?」
「ルーピン先生に呼ばれたんだ」
ぶっきらぼうに返すハリーを見たルーピンは、首を傾げる。
「クローディアは、ホグズミードに行かないのかい?」
触れて欲しくない点に切り込まれ、ハリーの肩がビクッと震える。そこまで動揺する姿が哀れに思えた。胸中で苦笑したクローディアは、本をルーピンに差し出した。
「今日は朝から体調が悪くかったので、遠慮したんです」
短文のみで、ルーピンは追求せず頷く。
「そうか、残念だね。君も座りなさい。紅茶があるよ」
「いいえ、男同士でないと話せないことってありますから、失礼します」
「大丈夫です」
普段より高いハリーの声に、クローディアは目を丸くする。
「クローディアに聞かれて困ることじゃないから、一緒に紅茶を飲もうよ」
ハリーにも勧められたクローディアは、仕方ないと微笑んで見せた。ルーピンに会釈してから、彼の隣に腰掛ける。ハリーに会釈したとき、彼の唇が「ごめん」と動いたのを見逃さなかった。
水槽の中で百面相する水魔(グリンデロー)を観察するクローディアを余所に、ハリーは緊張した声を出す。
「ルーピン先生、聞きたいことがあります」
「何故、ボガートとの戦いを止めさせたか。だね?」
水槽を見ていたクローディアは、一瞬、眉を顰める。水槽の硝子に映されるハリーとルーピンの姿を認識した。
「ヴォルデモートの姿になると思ったからだよ」
意外な答えに、二重に驚いたハリーは目を見開いた。クローディアも思わず振り返った。『例のあの人』の名を口にしても、ルーピンの表情に怖れはない。それが知人の名前か、はたまた書物にある名を読むように当たり前の顔をしていた。
「ルーピン先生、いま、ダービートの名前を呼びました?」
「ダーなんだって?」
「クローディアは、ヴォルデモートの名前をうまく言えないんです」
目を見開いたままハリーの説明を受け、ルーピンは曖昧に納得する。
「そういう人には、初めてあったよ」
「言いにくい名前だと思います。ダービートって響きは」
おおげさに肩を竦めるクローディアに、ルーピンは怒ることなく笑いかけた。
「皆の前でヴォルデモートの姿を見せるのは、良くないと思ったんだ」
「確かに、最初はヴォルデモートを思い浮かべました。でも、僕は汽車でのことを思い出しました。吸魂鬼を……だから、僕がボガートと対面してもヴォルデモートにはならなかったと思います」
何の迷いなくハリーは言い終えた。ルーピンは安堵の笑みを向け、ハリーのカップに紅茶を足した。
「安心したよ。君が恐れるのは恐怖そのもの、ハリー、それはとても賢明なことだ」
賢明などと褒められ、ハリーは返答に戸惑う。だが、クローディアはルーピンのいうことは最もだと感じていた。
(何かを恐れるじゃなく……、恐怖……そのものを恐れる)
何より、ハリーはブラックを恐れていない。元々、『例のあの人』から、皆より恐怖を感じていないのかもしれない。1年生の頃にも、ハリーは『例のあの人』に挑んだ。2年生でも結果的に『例のあの人』と相対した。
クローディアよりも、小さな身体でハリーは3度も『例のあの人』を退けたのだ。
「それじゃ、私が君にはボガートと戦う能力がないと思った。そんなふうに考えていたのかい?」
「あの、はい」
素直なハリーは、何処か表情が明るい。
「そういえば、クローディアは何になったの?」
突然、話を振られたクローディアは、カップを落しそうになった。空になったカップを見つめ、唇を軽く噛む。
「さ、最初は、あ……アルマジロを……思い浮かべたさ」
「アルマジロ? そういえば……、君はヴォルデモートに向かって、アルマジロのほうが恐いって言ってたね」
そんな昔話もあった。
クローディアが反応に困ると、ルーピンは紅茶を噴き出しそうになって咽ていた。
――コンコン。
扉が叩かれた。ルーピンが応じると、ゴブレットを手にしたスネイプが現れた。スネイプは2人の先客を怪訝とは違う意味で、黒真珠の瞳を細める。
「ああ、セブルス。どうも、ありがとう。そこに置いていってくれないか?」
親しみのある口調と笑顔でルーピンは、スネイプに礼を述べた。
何も喋らず、スネイプは机にゴブレットを置く。その目は、警戒のように室内の3人を見ていた。
「ちょうど、ハリーとクローディアに水魔を見せていたところだ」
「そうか」
楽しそうに水槽を指差すルーピンと違い、スネイプは素っ気ない。しかも、水魔を見ようともしなかった。
「お薬ですか?」
何気なく、クローディアがスネイプに聞く。
「君が理解するには、まだ早いものだ」
急にスネイプの目がクローディアの周囲を探りだした。
「ミス・クロックフォード。……使い魔はどうしたかね?」
「2年生のルーナ=ラブグッドと一緒です」
今度は眉間にシワを入れ、スネイプは溜息をつく。
「不用意に使い魔を手放すでない。レイブンクロー3点減点」
「僕らはルーピン先生と一緒です」
反論するハリーは、反射的にスネイプを睨んだ。ハリーの肩に手を置き、クローディアは彼を窘めた。
「注意が足りませんでした。すみません、スネイプ先生」
反抗的や無視でもない。誠実な態度でクローディアはスネイプの注意を受け止めた。
意外そうに、ハリーは目を見開いた。意外に感じたのは、スネイプも同じだ。一瞬だけ、バツが悪そうに顔を顰めた。
「反省しているなら、良い」
それだけ告げ、スネイプは3人を見据えたまま部屋を去った。
「スネイプ先生が私の為に、わざわざ調合して下さったんだ。私は魔法薬が苦手でね、特にこれは複雑な薬なんだよ」
興味に駆られたクローディアは、微かな煙を上げるゴブレットを落ち着きなく見つめる。反対に、ハリーは警戒の眼差しを向けた。正反対の視線を受けるゴブレットを手に、ルーピンは微笑んだ。
「砂糖を入れると効き目が無くなるのは、残念だ。これは苦いなんてもんじゃないから」
「良薬、口に苦しですよ」
クローディアに応援され、ルーピンは薬を飲みだした。余程、苦いのか、ゆっくりと一口ずつ含んでいく。
「どうして、お薬がいるんですか?」
「私の体調の問題なんだ。この薬しか効き目がない。スネイプ先生と同じ職場に付けて、私は本当に幸運だ」
一切の皮肉がない。ルーピンは本当にスネイプに感謝している。
「クローディアは、魔法薬に興味があるのかい?」
「スネイプ先生が調合する薬に、とても関心があります。私もお世話になりましたから」
一口飲んだルーピンは、意外な言葉に驚いた。
「君が、スネイプ先生にかい?」
「以前、バジリスクに石化されたことがありまして、そのときスネイプ先生が蘇生薬を調合して下さったんです」
バジリスクという単語にルーピンは、吃驚していた。その辺を徘徊する怪物ではないから、当然の反応だ。
「でも、それは校長先生が命じたからです」
言い切るハリーに、クローディアは気分を害された。
「命令がなくても、スネイプ先生は、きっと蘇生薬を煎じたさ。スネイプ先生は、誰も見捨てたりしないさ。誰が一番、お世話になったさ」
1年生の頃を遠巻きに指摘され、ハリーは口ごもる。
「君は、スネイプ先生が好きなんだね」
優しい口調の指摘を受け、クローディアは急に戸惑う。別にスネイプが好きなのではない。ただ、コンラッド同様に信頼しているだけだ。
(こういうのって、好きっていうんだろうさ?)
薬を飲みきったルーピンは、苦さで顔を顰めて机にゴブレットを置く。
「2人とも、私は仕事を続けることにしよう。宴会で会おう」
ハリーは空になったゴブレッドをいつまでも睨んでいた。
それからクローディアは、ハリーを図書館に連行した。今度こそ、レポートを仕上げさせる為だ。
「あれは、本当に薬かな?」
「そうでしょうさ」
ハリーは小声で真剣に尋ねるが、クローディアは関心なく適当に返事する。
「もし、毒だったら」
「スネイプ先生は、そんな手は使わないさ。1年生のときも、クィレル先生がどんなに怪しくても、それだけはしなかったさ」
言葉を遮られたハリーは、渋々納得し頷いた。
『ホグズミード村』に行けなかったクローディアは、パドマ達からのお土産とハロウィンパーティーによって、心地よい気分に浸れた。
談話室でパーティーの余韻で盛り上がる中、突然『灰色のレディ』が乱入した。
「校長からの命令よ、いますぐ大広間に戻りなさい!」
普段の貴賓さはなく、焦燥する『灰色のレディ』に生徒達は呆然としていた。視線を受けた『灰色のレディ』が癇癪を起こし、我に返った監督生達が足早に大広間へと誘導する。
全校生徒が集結したのを確認し、ダンブルドアが簡単に事情を説明する。
「シリウス=ブラックが侵入した恐れがある。先生たち全員で、城の中を隈なく捜索せねばならん。ということは、気の毒じゃが、皆はこことに泊まることになろうの。安全の為じゃ」
ダンブルドアが杖を振るうと、寮席が払われたと思えば大広間は紫の寝袋に敷きつけられた。
「ぐっすりおやすみ」
監督生を連れて大広間を出たダンブルドアの笑顔に、皆の不安は消えた。
大広間で就寝。滅多にない機会に、興奮した生徒達は眠ることなど出来ず、盛り上がる。
グリフィンドール生は、『太った婦人』が襲撃されたことを自慢げに語っていた。
「不謹慎だわ、監督生として減点してやろうかな?」
ハップルパフ5年生ベストラ=フォーセットが呟いていた。
「大丈夫だよ、ここは先生達がいるからね」
セドリックがブラックの侵入に怯える下級生を宥めた。
「みんな寝袋に、入りなさい」
威張り切ったパーシーが指示し、皆は思い思いに寝袋を選ぶ。クローディアは真っ先にハーマイオニーのところに向かう。彼女と始めて夜を共にする嬉しさで胸が高鳴る。
しかし、数人の女子生徒の手がクローディアの腕を掴む。
「クローディア、待って。一緒に寝ましょう」
「すみません、行かないで下さい」
「ねえ、ベッロは? ベッロを枕にしていいかしら?」
クローディアの視線を感じたハーマイオニーが、ロンやネビルにハリーを任せてこちらに来てくれた。周囲を見渡せば、仲の良い男女が寄り添って寝袋に入っている。
ブラックについて、憶測を口にする生徒達の戯言を耳にしたハーマイオニーが呆れていた。
「ここでは『姿現し』はできないわ。防衛呪文が施されているんですから、【ホグワーツの歴史】に書いてあるでしょう。それに、吸魂鬼の裏をかくような変装があったら拝見したいものだわ。彼らには『透明マント』も通じないのに。秘密の抜け道はフィルチが全部知ってるから、そこも吸魂鬼が見逃してはいないはず」
律儀に頷くクローディアは、疑念が浮かぶ。
吸魂鬼を出し抜いてまでブラックは、脱獄した。しかし、ハリーが何処の寮かも確認せずに、真っ先にグリフィンドール寮に向かった。
これは、あまりにも要領が悪い。まるで、目的はハリーではなく、あの寮の城にあると言いたげだ。そもそも、ブラックはアズカバンにいながら、ハリーがホグワーツにいると確信を持っていた。
(魔法学校は、ここだけじゃないさ。どうしてホグワーツだと思ったさ?)
パーシーが消灯を告げる。大広間に浮かぶ蝋燭の火が消えていく。天井は満天の星空を映し、思わず見とれる者も現れる。
隣同士で横になる状態で眠るのが惜しく、クローディアの目は完全に覚めている。暗闇の中でハーマイオニーも目を開いている。
首を動かし、ベッロの位置を確認する。4・5人の生徒の枕にされ、恨みがましく舌を出し入れしている。
「暑い、何故こんな目に」
ベッロの嘆きは、ハリーの耳に届いていた。
皆が寝静まった頃、まどろんだ意識でクローディアは、ダンブルドアが大広間に現れたのを認識した。
「4階は隈なく捜しました。ヤツはおりません」
「フクロウ小屋にもいません」
「地下牢にもヤツの姿はありません」
スネイプとフリットウィック、フィルチが報告する。
「グズグズ残っているとは思わん」
「見事ですな。誰にも気づかれずに入り込むとは、どんな手を使ったのでしょう?」
「どれもありえんことじゃ」
声の位置は、ハリーの眠っている場所に近づいている。
「我輩、しかとご忠告もうしあげたはずですぞ。校長が新しく任命…」
「城の内の者が手引きしたとは、思っておらん」
反論を許さない断言。
「ポッターには、何か警告でも?」
「いまは、眠らせておやり。夢の世界は、自分だけのものじゃ、大空を羽ばたき、深海を自由に泳ぎまわることができる」
子守唄の口調に近いダンブルドアの言葉通り、クローディアは瞼の裏に青く広がる景色を見た。
翌日から、ハリーは執拗な監視を受けだした。教師(スネイプ以外)は理由をつけては廊下でハリーに張り付き、パーシーは犬のように着いて回った。彼らの心配は、クローディアも理解している。
だが、鬱陶しい。
ベッロをハリーの護衛にと提案したが、スキャバーズを理由に断られた。
『太った婦人』に代わり『カドガン卿』がグリフィンドール寮の守りを担った。『占い学』の塔に飾られている絵らしく、クローディアは見たことがない。
「『カドガン卿』ですか、お気の毒ですわ。あの方は、騒ぐだけですもの」
リサ曰く、護衛に向かないらしい。
その呟きは現実になり、コロコロと合言葉を変える『カドガン卿』は、グリフィンドール生に不評であった。一番の被害者はネビルだ。ただでさえ、合言葉を覚えるのが苦手なのに、再々、変えられては覚えようがなかった。そこでネビルは、毎週合言葉をメモに書いてポケットに忍ばせることにした。
「ネビル、なくしたら、わからなくなるさ。気を付けるさ」
「いやだな。クローディアったら、いくら僕でもメモをなくしたりしないよ」
自信満々にネビルは言ってのけた。
閲覧ありがとうございました。
映画版の校長先生の言葉は、すっごく好きです。
●ベストラ=フォーセット
原作四巻にて、苗字のみ登場。