悩んでも、年は明けて新学期は来ます。
年明けと共に、ハーマイオニーは宿題を完了させた。
約束通り、クローディアと弁論文を仕上げた。毎日のようにハグリッドの家を訪れ、何度も裁判の練習を行う。子供2人を相手に、彼は緊張でガチガチに固まり、上擦った声で何度も台詞を噛んだ。
ロジャーやチョウが学校に戻り、クローディアは新学期早々に行われる試合に向けて特訓に参加すると言いだした。しかも、彼女はパドマやリサ、ルーナに裁判の練習に加わるように頼んだのだ。
最初、ハーマイオニーは3人が加わることを反対した。ハグリッドを助けるのは、自分達だけだという自尊心が合った。何処から、聞きつけたかペネロピーやジニー、パーシーまで参加してきた。ハグリッドが協力してくれる生徒が増えたことを喜んだため、渋々納得した。
特訓と裁判を両立させるだけでなく、時間の隙を見つければバスケ部の勧誘を行う。とにかく、忙しない行動をクローディアは取り続けた。
そんな彼女を見て、ハーマイオニーは不安を覚え出す。
不安が的中したのは、ハグリッドの家で裁判の練習をして時のことだ。
裁判官役のクローディアとマルフォイ役のパーシーに、ハグリッドはタジタジになっていた。ペネロピーとジニーが彼の態度を事細かく注意し、パドマとリサは陪審員役で意見を述べた。ハーマイオニーがルーナと椅子を並べ、彼らを見ていた。
「クローディアは、潰れそうだね」
耳元で囁かれ、ハーマイオニーはビクッと肩を震わせ、ルーナに振り向く。
「クローディアが潰れるって?」
訝しげに眉を寄せるハーマイオニーに、ルーナはゆっくりと首を傾げる。
「前にもあったんだ。苦しくて悲しいことに、クローディアは本当に包まれてた。完全に治ってなかったけど、少し治ってたんだ。でも、いまは比べ物にならないよ。立っているのが、やっとなんだ」
ルーナを不信に思いつつ、ハーマイオニーは適当に頷く。
「じゃあ、クローディアに言えばいいじゃない。そのままじゃ潰れるわよって」
「根本的なことが解決しないから、言えないんだ。トドメになるかもしれないもン。私じゃ、駄目なんだと思う」
口元を自らの手で覆いルーナは、クローディアを瞬きせずに見つめる。ルーナの言葉を半分も理解できないが、彼女の身に何かが起こっていることは確かだ。
練習を終え、ハグリッドの引率で皆は城へ帰った。夕食目当てに皆が大広間へ向かう中、ハーマイオニーは図書館に本を返却するといって、クローディアを連れ出した。そして、無理やり空き教室に連れ込んだ。
「あなた、何処かおかしいわ」
困惑したクローディアは、両手を広げ狼狽する。
「ハーマイオニー、どうしたさ? おかしくなんかないさ」
「クィディッチに積極的だし、裁判に他の人も混ぜるし、狂ったようにバスケ部に勧誘するし、変じゃないっていうほうが変!」
断言してクローディアを睨み付けた後、淋しげに微笑んだ。
「あなたが誰にも言わないと決めたなら、聞かないわ?」
2人はお互い見つめあい、沈黙を起こした。廊下を行きかう生徒の足音が聞こえる。
クローディアは自分の髪を撫で、意を決したように深呼吸する。
「用があってルーピン先生の事務所に行ったさ。そこにはスネイプ先生がいて……、よくわからないけど、私のお父さんの話をしてたさ」
一旦、躊躇ってから、クローディアは続けた。
「……スネイプ先生は、私がお父さんの子じゃないって言ってたさ」
衝撃の言葉を聞き、ハーマイオニーは慄き両手で口を覆う。クローディアを凝視する栗色の瞳が恐怖で潤み出す。
苦悶に眉を寄せたクローディアは、ハーマイオニーの肩に弱弱しく手を置く。
「このことを……お父さんに聞く気はないさ。誰にも……聞かないさ。でもさ、もしも……、スネイプ先生の言うことが……本当だったら……、どうしようって……、どうしたらいいんだろうって」
肩に置いた手が、徐々に震えるのがわかる。
「ゴメンなさい……。ええ、誰だって不安になるわ。私が同じ立場でも……怖いもの。それは、当然のことだわ」
怯える声でハーマイオニーは、クローディアを抱きしめた。
「ハーマイオニー、聞いてくれてありがとうさ。うん、話すって大事さ」
「こちらこそ、ありがとう」
ああ、彼女が傍にいてくれて、良かった。
2人は同じ思いに駆られた。
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「殴ったことは謝るさ。ゴメンなさい」
いきなり、クローディアは頭を下げてくる。流石に驚きを隠せず、フレッドとジョージは目を丸くした。彼女の態度もそうだが、わざわざ男子のお手洗いに張り込み、双子が出てくるのを待ち構えていた。それを驚くなというほうが無理だ。
「じゃ、そういうことさ」
まるで挨拶のような軽さでクローディアは、廊下を歩いていってしまった。
フレッドは頭を掻き、ジョージは頬を掻いた。
「ジョージ、日本人はいちいち過ぎたことを掘り返してまで謝罪するものなのかい?」
「全くだ。俺らはもう気にしていないというのに」
棒読みする双子は、お互いの顔を見やった。
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廊下を過ぎ、階段を降りると、レイブンクロー寮の入り口のドアノッカーがある。周囲に誰もいないことを確認し、クローディアは腹から息を吐き出した。双子への謝罪で緊張していた糸がようやく緩んだ。
「真面目に謝るのって、いつ振りさ」
自分がしたいことを成した達成感で、クローディアは少し気が楽になった。ドアノッカーに近寄ろうとしたが、肩を掴まれた。振り返ると赤毛の双子が1人だけいた。
「……、ジョージ?」
「正解……」
困り顔の笑みでジョージは、階段に腰掛ける。
「こっちの話がまだだ。勝手に帰るな」
「あ……そうでしょうさ。聞くさ」
如何なる罵倒も覚悟し、クローディアはジョージと向き合う。彼は咳払いしてから、胸を張って背筋を伸ばす。
「俺、ジュリアと付き合ってる」
「……へえ?」
これまでの話と一変している。唐突な告白をされ、クローディアは目が点だ。反応に構わず、ジョージは続ける。
「クリスマスのとき、家に呼んだ。ジュリアと色んな話をした。君に、殴られたことも話した。そしたら、ジュリアから怒られた」
「ジュリアが? 私じゃなくて、あんたをさ?」
意外だ。ジュリアはジョージの味方だと思っていた。
「俺が……俺達が喜ばせようとしていることが、本当に誰かを悲しませることもあるんだぞって。君がそこまで怒ったのは、我慢ならない程、悲しませたからだって。俺達の精進が足りないともな」
意外な人物からの弁護に、クローディアは反応に困る。
これまで、ジュリアに一度も手紙を出したことなどない。それなのに、クローディアは彼女にそれだけ理解されている。
ジュリアは、聡明だ。それは人として優れているに他ならない。
急に、己の存在が小さく思えた。ジュリアは目の前ではなく、もっと遠い先のことを重んじている。
「それと、ジュリアから伝言。『魔法薬学』の貸しは、これで返した。だと」
「貸し?」
記憶を辿るが、クローディアがジュリアに貸しを作った件が思いつかない。
「覚えてないさ」
正直に吐くクローディアに、ジョージはイタズラっぽく笑う。
「あいつ、意外と記憶力いいんだ。人から、受けた恩に関してはな。この辺でいうのも、なんだけど……。俺達、君に何したんだ?」
クローディアは、もう一度周囲に人がいないことを確認した。ジョージに『忍びの地図』の件を耳打ちした。ブラックがハリーの名付け親であることは、伏せた。ただ、ブラックが両親を死に追いやったきっかけだと知ってしまったことをそれとなく伝えた。
緊迫した表情でジョージは、唾を飲み込んだ。
「通りでハリーが、アレの感想をくれないと思ったぜ。……じゃ、改めて……。ゴメンな」
真剣なジョージの謝罪に対し、クローディアは真摯な態度で頷き返した。
「それで、クローディア。あの地図のこと、誰にも言うなよ?」
ジョージは念を押した。クローディアとしては、悩みどころであった。またあの地図を使い、ハリーは城を抜け出すかもしれない。
「殴った貸しあるよな」
普段の笑みでジョージは、更に念を押した。その手で来るとは思わず、クローディアは悔しそうに唇を尖らせる。
「うう、卑怯さ。わかったさ」
安心したジョージは、わざとらしく息を吐いた。
「そろそろ、謎かけを出しても良いでしょうか?」
ドアノッカーの不機嫌な口調に、クローディアとジョージは心臓が跳ねる程、驚いた。
新学期は始まった。土曜の試合に向け、時間は容赦なく過ぎていく。宿題と特訓と裁判、無論すべきことはそれだけではない。故に、時間を一切持て余せない。
ハグリッドは授業への取り組みが変わり、寒い時期に相応しい『火トカゲ』を教えた。これが予想以上に好評で、クローディアは「その調子だ」と彼にウィンクした。
木曜日の夕食時、ハグリッドからベッロを返してもらった。いつまでもベッロに甘えるわけには行かないと、彼は気合を入れなおしたのだ。ベッロは家事から解放されたと喜んでいるように、見えた。
普段より激しい特訓が終わり、着替え終えた選手達は覚束ない足取りで寮を目指した。流石のクローディアも疲労していたが、勝手にベッロが廊下を突き進むのを無視することは出来なかった。チョウに声をかけ、急いでベッロを追いかけた。
ベッロはある教室に滑り込むように入っていった。『魔法史』の教室だ。時間が時間なだけに誰もいないはずだ。
「ベッロ、そこに誰かいるさ?」
小声でクローディアは足を忍ばせる。教室から、僅かな灯りと人の気配がした。誰かが補習を受けているかもしれない。
(ベッロを迎えに来ただけだし、堂々と行くさ)
咳払いしクローディアは、弾みよく扉を開ける。
「ちゃんら~ん♪」
チョコレートを口にしたハリーがきょとんと、クローディアを見た。傍では、ルーピンが旅行鞄を無理やり閉じようとしていた。ベッロはハリーの足元で、くすりと笑う仕草をした。
2人の視線を受け、恥ずかしい気持ちを誤魔化す為に咳き込んだ。
「お邪魔して、すみません。ベッロがこちらに来たので……、すぐ帰ります」
ベッロを呼ぶが、ハリーの足元から離れようとしない。仕方なく、クローディアはハリーに近寄った。
薄暗い中でも、ハリーの目が泣いたように充血しているとわかる。
「いつも、妙なとことで出くわすね」
若干、ハリーは迷惑そうにしていた。『ファイアボルト』のことで、クローディアとも距離を置いている状態だったことを思い出す。聞き流して、ベッロを持ち上げようとしたが、何故だがテコでも動こうとしない。
「こら~、ベッロ~っ」
「その子は、ハリーを待っているんだと思うよ」
ルーピンが優しい口調でベッロを眺める。彼はルーピンに見られることを嫌がっていた。仕方なく、クローディアはハリーの用事が終わるのを待とうとした。
「後で君のところに帰るように言うから、先に帰ってなよ」
チョコレートを齧り、ハリーは煙たそうにした。
「ハリー、君達は友達だろ? そんな言い方は感心しないな」
ルーピンに窘められ、ハリーはバツが悪そうに「はい」と答えた。
「クローディア。君の貸してくれた本、とても興味深かったよ。ありがとう」
「はい、ありがとうございます」
【フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス】。あの本を届けに行った晩のことを思い返しそうになり、クローディアはわざとらしく明るい声で返事する。
「河童の時も思ったけど、君は妖怪や魔物に詳しいのかな?」
「興味があった頃に、いろいろと調べたこともあります。何より、祖父が寝物語で聞かせてくれたんです。3歳の私に『3枚のお札』の話をしたんですよ。怖くて、夜トイレに行けなくなりましたよ」
『3枚のお札』を知らないハリーとルーピンは、曖昧な反応をした。大まかに、鬼婆に襲われた少年が3枚のお札を使い、難を逃れようとする話だと説明した。
「寝物語で、フランケンシュタインの話なんてするの?」
ようやくチョコレートを食べ終えたハリーが何気なく聞いてきた。
「それは……、お父さんが翻訳した本を読んだから知ったのさ。ああ、お父さんは翻訳家の仕事をしているさ」
「え? 君のお父さんは、魔法使いでしょう?」
目を丸くしたハリーに、クローディアは苦笑する。
「魔法使いだからって、魔法界の仕事をするってことないさ。お祖父ちゃんも医者だしさ」
「トトさんって医者だったの?」
そういえば、ハリーは祖父の職業を知らなかった。
急にルーピンが腰かけていた旅行鞄が音を立てて、僅かに暴れ出した。
「気にしないで、ただの真似妖怪だ」
気にしないはずがない。旅行鞄から、更に離れた。
「僕が特訓するから、ここに閉じ込めているんだ」
「真似妖怪を使った……特訓さ?」
ここに来て、クローディアは初めて寒気に襲われた。自分の恐怖を使う特訓を想像するだけで、嫌だ。以前、ハリーとボガートが相対すれば、吸魂鬼に変身するかもしれないと話していたことを思い返した。クィディッチの試合中、奴らはハリーを襲ってきた。ならば、彼の特訓は吸魂鬼対策だと納得した。
「無理だけはしないで欲しいさ」
「うん、ありがとう」
普段の親しげな雰囲気で、ハリーは無理やり笑みを作った。
ルーピンと就寝の挨拶を交わし、クローディアはハリーと寮に向かう。
静かな廊下は、ひんやりと冷たい空気で不気味だが、もう慣れた気分だ。ベッロの舌を出し入れする音が一定の音調で音楽に聞こえてくる。
「クローディア」
寮への分かれ道で、ハリーが絞るように声を出した。
「さっきは、冷たくしてゴメンね。おやすみ」
ハリーは就寝の挨拶をして寮へと帰っていった。
(情けない……)
ハリーは恐怖を克服しようと頑張っている。自らに失望したクローディアは、腕に痛みを感じた。無意識に爪を立てて、腕を引っ掻いていた。
レイブンクロー対スリザリン戦は、圧倒的な点差でレイブンクローが勝利した。最早、今年度のクィディッチの優勝杯はレイブンクローに決まったのも当然であった。
「油断はいけません。まだ、グリフィンドールが残っていますよ」
フリットウィックは忠告したが、顔が笑っていたので説得力がない。
廊下を歩く度、クローディアは対抗心に満ちたオリバーの視線を終始感じるようになった。
無論、敗北したドラコからは憎悪の視線が送られてきた。スリザリンの女生徒から分かりやすい嫌がらせを受けるようになり、そのせいでチョウが足に怪我をするという事態が起きた。
「軽く捻っただけよ。すぐにマダム・ポンフリーに治してもらえるわ」
チョウは冷静に振舞ったが、納得できない。即刻、犯人の女生徒を見つけ出し、深く警告しておいた。それから、嫌がらせがピタリと止んだ。
クローディアの活躍は、ハグリッドにも良い影響を与えた。
裁判の練習中、毅然とした態度でハグリッドはメモを読むようになった。ハーマイオニーがメモなしで読めるように訓練すべきと指摘した。これを彼は快く受けた。
ハグリッドが素晴らしいと思う生物達を授業と言う形で教えて欲しい。かつて、クローディアは彼にお願いした。ほとんど、勇気づける為の建て前だった。
目の前にいる三頭犬を見上げ、前言撤回したかった。一度だけ、目にした経験はあるが、恐すぎる。
「どうだ、すげえだろ! こいつは三頭犬のフラッフィーだ」
フラッフィーは生徒に届かないように頑丈な首輪と鎖で、太い幹の木に括られていた。
「首がみっつある……」
「……でか……」
唖然と生徒達はフラッフィーを見上げた。あまりの巨体に恐怖したザカリアスは、その場に倒れ込んだ。
「三頭犬は、警戒心が強くて飼い主以外には決して懐かねえ。3つも首があるから、ひとつを手名付けても他のふたつが襲いかかってくる。だから、大きな屋敷などで番犬として活用されることが多い。撫でてみたい奴いるか?」
おそるおそるテリーだけが、挙手した。
この騒動とは関係ないが、エロイーズがマダム・ポンフリーの世話になる羽目になった。原因は顔のニキビを魔法で消そうとしたが、顔の皮膚そのものを削る大惨事を招いたからだ。
スプラウトは勿論、マダム・ポンフリーはエロイーズの行動に激怒した。女子の間でこの事は笑い話にされたが、クローディアは全く笑えない。
「私だって、クローディアみたいに綺麗になりたかったにえ。前に先輩がそうやって顔の気に入らないホクロとかニキビを消しているのを見たことあったにえ」
マダム・ポンフリーの治療で、傷は癒えた。しかし、相当の激痛を味わったらしく、エロイーズは意気消沈していた。
「それで鼻を失ったら、元も子もないさ」
「うん、二度としないにえ」
顔に魔法をかける行為には、懲りたらしい。しかし、エロイーズは【週刊魔女】の掲載されている通販項目を熱心に読み耽っていた。それを知ったスプラウトは、彼女に美容に関する魔法・道具を一切禁じた。
「あなた達は成長期です。自然の流れに任せなさい」
寮監命令にエロイーズは、従うしかなかった。
次なる試合に向けて、ロジャーは勢いが増す。
「いいか、向こうは死に物狂いで俺達から得点を奪おうとする。だから、試合開始と同時にスニッチを取る! 決して、奴らに点数を与えない! その為に、次はスニッチをチョウに追い込む作戦で行く!」
口で言うのは容易いが、実戦は難い。
グリフィンドールとの試合に備え、濃厚かつ壮絶な特訓をやり遂げた。選手は、談話室へ流れ込むように戻った。誰も部屋に行く気力もなく、適温な暖炉の前に寝転がる。7人が無様に倒れている姿に、通りすがる生徒は驚いていた。
「クローディア!!」
金切り声を上げたハーマイオニーが乱入してきたが、クローディアに顔をあげる力はない。
構わずにハーマイオニーは涙を流しながら、クローディアを揺さぶった。
「ハリーと話して! お願い! ベッロとハリーを話させて!」
しゃくり上げるハーマイオニーに、クローディアの意識は覚醒した。
「ロンのシーツに、スキャバーズの血が、クルックシャンクスの毛が!」
ロンの寝台のシーツに血とオレンジ色の毛が落ちていた。それを発見したロンは、とうとうスキャバーズがクルックシャンクスに食い殺されたと言い張った。いつかは起こりうる事態を目の当たりにし、ハーマイオニーは咄嗟に否定した。
故に、ベッロに彼らの部屋を調べてもらいハリーを通じ、クルックシャンクスは無罪であり、スキャバーズは死んでいないと証明したいのだ。
行動あるのみ。
クローディアは自室からベッロを虫籠ごと連れ出し、ハーマイオニーと寮を目指そうとした。深刻なペネロピーに呼び止められた。
「私も行くわ。こんな時間だし、監督生の私がいれば、文句は言ってこないわよ」
心強かった。
☈☈☈
ロン達を談話室に無理やり追い出し、ハリーはクルックシャンクスを抱きしめる。そして、ベッロをただ見つめる。蛇語を話すところを出来るだけ見られないようにするためだ。それにロンが邪魔をしないとも限らない。
シーツに鼻を押し付け、ベッロは匂いを確かめる。
[これは、ネズミの匂い……。だが、コイツからヤツの匂いがしない。逃げたぞ。ヤツは逃げた!]
クルックシャンクスの口元を嗅ぎ、激昂したベッロは窓に向かって吼えた。
「つまり、スキャバーズは無事なんだね?」
[探さねば、害にならぬうちに]
殺意の籠もるベッロの気迫に、ハリーは首を横に振る。
「ダメだ。見つけたら、僕に言うんだ。絶対、殺しちゃダメ!」
強く命じられ、ベッロは忌々しげに体をくねらせる。
[わかった。しかし、コイツも殺す気はない。なら、誰がヤツを殺すのだ?]
意外な言葉にハリーは驚いた。
「クルックシャンクスは、スキャバーズを殺す気がない?」
[そうだ。コイツは捕らえるだけだ]
これにハリーは、少し安心した。もしかして、クルックシャンクスはスキャバーズにじゃれているだけだったかもしれない。
ベッロとクルックシャンクスを抱え、ハリーは談話室に下りた。
ロンが飛び掛るように説明を求めてきたので、ハリーはベッロの言葉を正確に伝えた。冷静になれないロンは、食って掛かった。
「ベッロはクルックシャンクスを庇ってんだよ! 狙ってたんだから!!」
激しい剣幕のロンをハリーは窘めようとしたが、彼はそれを振り払った。
「君がベッロに、そう言えって命令したんだ! ファイアボルトのときもハーマイオニーにマクゴナガルにチクるように言ったんだろ! そうすれば、君のチームに有利になる! そういう計算なんだろ!」
人差し指を眼前に押し付けられ、流石の彼女も狼狽した。
「君の顔なんか見たくない! 消えろ! レイブンクローの間諜! ハーマイオニーにも近づくな!」
吐き捨てた言葉と共に、ロンはクローディアを突き飛ばした。彼女は抵抗もせず、絨毯の上に尻餅をついた。
ペネロピーが軽く悲鳴を上げ、クローディアに駆け寄った。
「ロン、酷いわ! 私達は、ずっと友達よ!」
ハーマイオニーがロンに噛みつかんばかりの勢いだったが、それより先にパーシーが止めに入った。
「ロン! いい加減にしろ! これ以上は、この話をしたら減点だ! さあ、時間だ。皆、部屋に戻って、ほら!早く!」
一喝。パーシーに急かされるように各々が無理やり部屋に戻された。ロンもハリー、ネビルに引き摺られるように部屋に連れて行かれた。ハーマイオニーは、クローディアに駆け寄ろうとしたが、パーバティーやケイティに連行された。
「ロンはスキャバーズがいなくなって、気が動転しているんだ。代わりに僕が謝るよ。ごめんね」
残ったパーシーは、ペネロピーにロンが情緒不安定だと説明した。それにペネロピーは答えず、クローディアを連れてレイブンクロー寮に帰っていった。
談話室が静かになり、忘れ去られたようなベッロはクルックシャンクスと向き合う。
[ヤツはハリーに引き渡さなければならない。早い者勝ちだ]
クルックシャンクスは、挑戦的な視線で鼻を鳴らした。
閲覧ありがとうございました。
タイトルをネズミにした割に、最後の出番になった。
そういえば、原作のフラッフィー何処行ったんでしょう?