こうして、私達は出会う(完結)   作:珍明

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閲覧ありがとうございます。
決闘を申し込まれるのは、…勿論、ハリーです。
☈は視点変更に使います。

追記:2月25日マダム・ポンフリーが「プ」になっていたという指摘を受けました。ここから、修正しています。
追記:ミス・アン‐パークスをミス・パークスに修正しました。


5.決闘の申し込み

 医務室の天井は白いのがお決まりだ。

 しかし、ホグワーツの医務室は城の一室を利用。天井は遠く、白くもない。

 クローディアは寝台に寝かしつけられ、首にギブスを付けられた。見舞いに来てくれたハーマイオニーやパドマ、リサへ視線しか向けられない。

 ハッフルパフとの2度目の合同授業『飛行訓練』。

 マダム・フーチの愛称で親しまれるロランダ=フーチの指導の元。クローディアは箒を誰よりも先に呼び寄せ、喜んだ。いよいよ箒に跨り、笛の合図で皆が地面を強く蹴ると身体が浮かび上がった。

「お見事です。ミス・パークス」

 一番高く上がったサリーがマダム・フーチに賞賛される。彼女は優雅に皆を見下ろす。それを見たマンディは興奮し、両手離しで地上へ綺麗な線を作って降りた。

 その時、クローディアは地上が遠いことを認識してしまい、急に身体が竦んだ。気付けば、箒から手を離して地面へ激突した。

 肩で着地した際に、脱臼する始末であった。

「毎年、この時期は箒から落ちる生徒が来るものです」

 校医マダム・ポンフリーが慣れた手つきで、骨と筋肉に効く薬を飲ませてくれた。完治に2・3時間要するので、ギブスで安静している。

「私は明日だけど、本当に危ないわね。しっかり予習しないと!」

 パドマとリサがハーマイオニーの発言に驚いていた。彼女は気にせずブツブツと何かを呟いていた。実際にケガ人を見て、明日の我が身を案じているのはわかる。

しかし、実地訓練をどう予習するというのだろうかとクローディアも苦笑。

 

『飛行訓練』での怪我をドリスと母に報告すれば、翌日の昼食に返事が来た。

 だが、手紙を広げると筆跡がドリスのモノではなく、コンラッドであった。生まれて初めて父から手紙を貰ったことに驚きながらも興奮し、一文字一文字を丁寧に読んでいく。

【学校で、人に言えない傷を受けるかもしれないから、私が調合した塗り薬を送るよ

 足りなくなったら、ドリスに手紙を送りなさい  コンラッド】

 内容を読み終え、封筒の中を探る。しかし、この手紙が1枚以外の物は何もない。

(入れ忘れさ?)

 仮にそうならば、コンラッドは間抜けだ。

「クローディア」

 聞きなれた声に、反射的に振り返る。ハーマイオニーがネビルを連れてレイブンクロー席まで尋ねてきた。

 ネビルは昨日のクローディアが箒からの墜落したことを聞き、真顔で参考にしたいと述べた。呆れる。

「落ちたこと参考にしてどうするのさ! 大事なのは、箒から手を……アイタッ!」

 痛みで悲鳴を上げるとネビルが驚いて身を引いた。クローディアの頭に、硬い物が落ちてきたのだ。頭上にはカサブランカが飛び回り、机に黒塗り藤の模様が施された丸い薬入れがある。

〔薬ってこれさ?〕

 日本語で悪態付きながら、痛みで頭を撫でる。クローディアが薬入れを手にすると、ハーマイオニーが珍しそうに眺めてくる。

「コンパクト? でも、小さいわね」

「薬入れさ、お……お祖父ちゃんが怪我によく効くからって送ってくれたのさ」

 コンラッドのことは伏せておいた。ハーマイオニーに隠し事をするのは嫌だが、手紙は読み終わると同時に灰になって消えた。それ程、徹底しているのだと悟った。

 祖父の話題になり、ネビルが喰い尽きてきた。

「僕も今朝、お祖母ちゃんから『思い出し玉』を送ってくれたんだ。ねえ、次の授業で怪我したら、僕に使わせてくれない?」

「医務室、行けさ」

 クローディアが冷たくあしらうと、ネビルは傷ついた表情を浮かべてハーマイオニーに助けを求める。

 もちろん、ハーマイオニーはクローディアに賛成であった。

 

 クローディア達の様子を見ながら、ハリーは今しがた届いたドリスの手紙を読んでいた。

 先週、ハグリッドから一度、手紙が来ただけなのでとても嬉しい。ドラコ=マルフォイがスリザリン席から青白い顔を怪訝そうに歪めながら、ハリーの様子を窺っているので、更に気分が良かった。

【勇敢なるハリー=ポッター様

 このような手紙を送りましたご無礼をお許し下さい。先日、孫のクローディアが授業で怪我をしたと知らされまして、ハリー=ポッター様もくれぐれも御身に気をつけられるようお願いいたします。もし、ハリー=ポッター様に誰かが、危害を加えるようなら、孫が微力ながら、お守りできると思いますので、遠慮なく御用を言いつけてください。

 どうか、健やかに  ドリスより】

 過保護な感じが否めない文章だ。でも、自分をこんなに心配してくれる大人がいることを知れた。喜びで胸が温かくなる。ハリーはドリスに手短に感謝の手紙を書いて、ヘドウィックに持たせた。

 

 ハーマイオニー達の『飛行訓練』も心配だったが、クローディアは『変身術』の授業が始まるとそれどころではなかった。

 今日の課題は親指程の石を水晶に変えるというモノで、これが思いのほか難しい。

 パドマやリサも、お手上げ状態で、クローディアも水晶よりも硝子にしか変身しなかった。これでも変身が上手くいったのは、彼女だけだ。マイケルは石に杖を振り下ろしたと思ったら、石はテリーの頭に直撃した。その反動で集中力を欠いたテリーは、自分の石を粉々に砕いてしまった。

 瞬間、マクゴナガルが短い悲鳴を上げた。

 緊張して、皆がマクゴナガルに振り返るが、先生の視線は窓に向けられていた。

「今から、自習にします! 皆さんは終了の鐘が鳴ったら帰ってよろしい!」

 見たこともない剣幕で告げると、荒々しくも品のある足取りでマクゴナガルは教室を去っていった。扉が閉まったのを確認してから、皆、一斉に窓に群がる。騒音にベッロや、リサの猫・キュリーが迷惑そうに威嚇した。

 窓から遠くに校庭が見え、『飛行訓練』の授業をしているグリフィンドールとスリザリンの生徒たちが箒を手にしている。

 グリフィンドール生が両手を広げて騒ぎ、何故か、ハリーが草の上に転がっている。

 直後に、教頭が現れ、ハリーは恐怖に震えながら立ち上がっていた。

 パーバティやロンがマクゴナガルに何か訴えるように叫んでいた。それを拒むようにマクゴナガルは歩き出し、絶望した表情のハリーが無気力な足取りで着いていった。スリザリン生は嘲笑うようにお互いの顔を見合っている。

「ハリー=ポッターが何かやらかしたぞ!」

 何がおもしろいのか、興奮したアンソニーが窓を開けようとした。視線に気づいたのか、マクゴナガルはこちらを一瞥した。

 潮が引くように全員、席に座り、石ころと睨み合った。

「ハリー=ポッター、退学になるのかしら?」

「ただ注意しに行っただけかもしれないさ」

 リサが本気で心配し、機嫌を悪くしたキュリーを撫でる。クローディアもベッロを肩に抱いて考え込むが、悪い予感しかしない。結局、終了の鐘が鳴るまで、自習はマトモに行われず、ハリーのことで大いに盛り上がった。

 

 事情を聞こうとクローディアとパドマ、リサの3人と1匹は玄関ホールでハーマイオニーを待っていると、先にスリザリンが意気揚々と戻ってきた。

「ハリー=ポッターはお終いだ!」

 オールバックで金髪の少年ドラコが、わざわざクローディア達も前で足を止め、丁寧に宣言して行った。他のスリザリン生も何人か笑っている。

 その後をグリフィンドールが重い空気を背負いながら、戻ってきた。中でも、ハーマイオニーは可愛らしい顔が台無しに成るほど憤り、唇を震わせている。

 パドマとリサはハーマイオニーのあまりの形相にパーバティから事情を聞くと言って逃げたが、賢明な判断と思う。

(聞くのが恐いさ)

 嫌な予感は当たり、クローディアはハーマイオニーに捕まった。激しい剣幕で『飛行訓練』での出来事を延々と聞かされた。

 箒から落ちたネビルがマダム・フーチに連れて行かれた。その後、ネビルが落とした『思い出し玉』を巡って、ハリーとドラコが無断で箒に乗って追いかけっこした。ハリーは無事に『思い出し玉』を取り戻したが、箒に乗っている姿をマクゴガナルに見られてしまった。

「退学になっても文句は言えないわ!」

 ハーマイオニーは話の最後にそう締め括った頃には、夕食の時間が迫っていった。

 2人が大広間に着くと、既にハリーがグリフィンドール席にいる。彼は緊張しているが嬉しそうに笑っている様子だった。

 少なくとも、退学を言い渡されていないことがわかる。

「何なの、あの態度は?」

 反省が見当たらないハリーをハーマイオニーは癇癪を起こすように、悪態をつく。

「カリカリすることないさ」

 クローディアが宥めても、ハーマイオニーの機嫌は直らない。

「「や! ハーマイオニー=グレンジャー!」」

 油断した背後から、フレッドとジョージが大声をあげる。突然、耳元で叫ばれたので、彼女らは、ただ驚く。心臓の脈が速くなった気がして、自分の胸元を押さえた。

「聞いたか、ハリーがシーカーになった。最年少記録の更新だぜ」

 秘密の会話だと示すために、双子は声を押さえてハーマイオニーだけ教えようとしている。しかし、目の前にクローディアがいるのだから意味はない。

「マクゴガナル先生が推薦したんだってさ! これ、内緒だぜ」

 それが一番の衝撃だったらしく、ハーマイオニーは眼を見開いて指先を震わせる。

(シーカーって、なんだってろうさ? ハーマイオニーがこれだけ怒るってことは、何かの代表さ?)

 考え込むクローディアの視線が双子とぶつかる。すると、双子は初めて彼女に気づいたように、おどけるように驚いて見せた。

「「盗み聞きはよくないぞ、クロックフォード」」

 イタズラな笑みで、同じ顔が迫る。そもそも、盗み聞きなど、聞こえが悪い。

「諜報活動と言って欲しいさ」

「「結局、盗み聞きだよ」」

 双子が飛びかかるようにクローディアの両肩へ片肘を乗せる。途端、クローディアの両足に電撃が走り、思わず双子の腕を肩から払いのけた。

「「あれ? あんまり痛くない? おかしいな、ひょっとして我慢強い?」」

 再度、クローディアに近づこうとする双子から守るように、ベッロが牽制してきた。双子は、わざとらしく怯んだ姿を見せて逃げていく。

(なんだろうさ。すげえ、ムカつくさ)

 逃げていく双子を見送るクローディアの服をハーマイオニーが掴む。

「ねえ、そっちの寮席に座っていいかしら? いま、ハリーの顔は見たくないわ」

 仏頂面なハーマイオニーに、クローディアは喜んでレインブンクロー席に導く。ハリーとは背を向ける体勢で座った。

 ハーマイオニーは怒りが治まらないのか、乱暴にパンを食いちぎった

(シーカーのこと聞きたいけど、無理さ)

 着席している面子にチョウがいたので、クローディアは身を乗り出した。

「チョウ、シーカーって何さ?」

「クィディッチの選手のことよ。……クィディッチは知っているわよね?」

 意外そうに答えるチョウに、クローディアは曖昧に返事した。魔法界の競技だと認識しているが、目にしたことないので反応しにくかった。チョウは丁寧にシーカーが7人の選手の中で、かなり重要な役目を担っているのかを力説してくれた。

「うちのシーカーは誰さ」

 この時、チョウは背筋を伸ばし、今まで見たこともない自信に溢れた笑顔を向けた。

「今年から、私よ。前のシーカーが卒業してしまったから、マダム・フーチに薦められてね」

 得意気に話すチョウを見て、クローディアは胃が捻れる気分に襲われた。

(ポッターのことは言えないさ)

 どの道、フレッドとジョージが秘密に触れ回っているので、嫌でも耳に入ることになる。

「スゴイさ、チョウ! カッコいい!」

 褒めちぎるクローディアが余程、嬉しかったチョウは照れくさそうに笑みを浮かべた。

 マダム・フーチの名前で、クローディアはネビルのことを思い出す。隣のハーマイオニーに振り返ると彼女は、席から消えていた。代わりにベッロが、ステーキ・キドニーパイを平らげていた。

「全く、ここじゃ落ち着いて食べることもできないんですかね?」

 突っぱねる口調のロンの声が耳に入る。もしやとクローディアが振り返れば、グリフィンドール席でハーマイオニーがハリーやロンの後ろに立っていた。

 悪さを発見した教師のようなハーマイオニーの元へ急ごうと、クローディアは食事中のベッロを掴んで席を立った。

「全く、大きなお世話だよ」

「ハーマイオニー。何があったさ」

 ハリーの文句を遮ると、不機嫌に顔を顰めたハーマイオニーが彼を指差し、クローディアに訴える。

「ハリーがマルフォイと夜中に決闘……」

「バラすなよ」

 今度は、ロンがハーマイオニーの訴えを遮った。

 少し黙っていてもらうため、ロンの肩にベッロを丁寧に巻きつけてあげた。蛇は彼の制服の下に、頭を突っ込む。肌に鱗の冷たい感触を直接味わい、ロンは引きつった悲鳴を上げる。そのまま恐怖で全身を竦ませ、口を閉じた。

「ポッター、あんたはただでさえ、スネイプ先生に目を付けられてるさ。マルフォイは先生のお気に入りさ、そいつに怪我させたことがバレたら、どうなるさ?」

「魔法使いの決闘するんだ。マルフォイには触れないよ」

 ハリーも不愉快そうにクローディアから顔を逸らす。その態度が癇に障る。

「そうはいかないさ、明日は『魔法薬学』の授業があるさ。夜中にどっちが勝とうと、あんたらの変化にスネイプ先生は必ず気づくさ」

「君も大きなお世話だよ! これ以上、何か言ったら、ドリスさんに言いつけるよ」

 最後の手だと言わんばかりに、ハリーがクローディアを睨む。

 何故、ドリスの名が出るのかわからなかったが、よい意味ではないと理解した。沸々と怒りが湧き上がり、クローディアは冷静さを欠いて大声を上げる。

「お祖母ちゃんもこんなわからず屋の味方をする程、お人好しじゃないさ。マルフォイが決闘? そんなの罠に決まっているさ! 明日の手紙の内容はハリー=ポッターの退学、これで決まりさ!」

 嫌味を込めた笑顔を向け、ハーマイオニーの腕を引っ張り、レイブンクロー席に戻った。

 席に座って紅茶を何杯も飲むと、クローディアの頭が冴えてきた。柄にもなく、年下のハリーと張り合うような言い方をしてしまったことを後悔した。

「ちょっとハリーに言い過ぎたさ」

「どうかしらね。あれ、見てよ」

 眉間に皺を寄せたハーマイオニーの指先には、杖を睨むハリーがいる。先程のやりとりがなかったように、ハリーは脳内で決闘している様子だ。ロンはベッロを首に巻かれたまま、固まっている。

 後悔したことを更に後悔し、クローディアは諦めて両手をあげる。

「こうなったら、放っておくといいさ。私らじゃ止められないさ」

「深夜に寮を抜け出したら、減点物よ」

 不安と苛立ちでハーマイオニーは、何度もハリーを振りかえる。

(そんなに心配なら、パーシーにでも教えてとめて貰えばいいのにさ。ロンのお兄ちゃんだしさ)

 だが、スリザリン生であるドラコの挑戦をグリフィンドール生のハリーが無視など出来ない。この2つの寮は、何かと張り合っていることは周知の事実だ。

「管理人のフィルチさんに見つかる覚悟で、夜中うろつく度胸がマルフォイにあるとは思えないさ。ちょっとお灸を吸える意味でも、ポッターとロンには、痛い思いをしてもらうさ」

 学校の用務員ことホグワーツ城の管理人アーガス=フィルチは、生徒への規則が徹底している。しかも、愛猫のミセス・ノリスが規則破りをしていないか常に目を光らせているのだ。

「そんなの可哀そうだわ」

 本当に気の毒そうな声でハーマイオニーが淋しそうに呟く。彼女の表情に、クローディアは罪悪感が胸を走る。

「ハーマイオニー、あんまり……あの2人に優しくしないほうがいいさ」

 クローディアは思いついた言葉を適当に口走ったが、ハーマイオニーは答えなかった。

 

 鷲型ドアノッカーの謎かけに答え、クローディアがベッロを連れて談話室に戻る。目に入ったのは、暖炉の傍で友人達とハリーの話題で盛り上がるジュリアだ。

 目敏いジュリアは、クローディアと目が合い悪意に満ちた意地悪な笑みを向ける。

「誰かさんとは、大違いね。箒から落ちるなんて」

 談話室にいた他の生徒もクローディアに注目し、からかうように笑う。クローディアは彼女を無視して自室への階段を上がろうとした。

「あら、スリザリン生がどなたのお部屋に行こうとしているのかしら?」

 ジュリアの一言で、談話室に嘲笑が起こる。確かに、ある意味でジュリアは人望があると感じた。

「言いすぎよ、ジュリア。それはいけないわ。そろそろ明日の『魔法薬学』予習しましょう」

「え? ……うん、わかったわよ。クララ」

 ジュリアとクララの小声を聞き取り、クローディアは構わず彼女ら背を向ける。途端に風を切る雰囲気を感じ取り、振り向かず後頭部に裏手を当てる。

 すると、掌に紙屑の塊が舞い込み、クローディアはそれを握りつぶした。

 談話室に紙の音が不気味に響く。

「明日は、多分、『縮み薬』の調合になりますよ。ブッシュマン先輩」

 低音に呟き、クローディアはゴミ箱に振り返ることなく投げ入れた。

 




閲覧ありがとうざいました。
そういえば、学園モノで決闘は絶対。
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