こうして、私達は出会う(完結)   作:珍明

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追記:16年3月12日、18年10月1日、誤字報告により修正しました。


18.特訓

 

 ハリーはネビルと【地中海の水生魔法植物とその特性】を読みながら、相談する。

「湖に潜るなら、『エラ昆布』がオススメだよ。ただ、真水と海水で効果が一時間持つかどうかは、意見が分かれてるよ」

「そんなに、曖昧なの?」

 その後、ネビルの解説は続いたが、結局、ハリーは『エラ昆布』を使うと決めた。

 無事に潜る方法がなったなら、他にやるべき事はひとつ。

 2月はまだ寒い。その中で、ハリーに水に慣れてもらうことだ。

 

 3日後、クローディアはドリスから水着を2人分、送って貰う。陽が昇っている昼食の時間、ハグリッドの小屋にハリーを連行し、魔法で水着に着替えさせた。

 クローディアも水着に着替え、水泳帽子を被り、ハグリッドの引率で湖に向かう。

「もう湖の氷は解けちょるから、泳ぐには最適だ。水の中が暖かいぞ」

 寒気のあまり自分の肩を抱いて震えるハリーに、ハグリッドの言葉はほとんど聞こえない。反対にクローディアは準備体操で態勢を整える。

「ほらさ、ハリー。私に倣ってちゃんと体操するさ。イッチ、二、サン、シ! こら! ハリー」

「クローディア……寒いから城に帰ろうよ……」

 寒さで悶えるハリーを叱りつけ、クローディアは彼の頭に水泳帽子を被せた。

「眼鏡が危ないさ。この水中眼鏡をかけるさ。魔法で度を入れて置いたからさ」

 抵抗する力をなくし、ハリーは眼鏡を外して水中眼鏡を取り付ける。クローディアが先に湖へ足をつけてから、身を沈ませる。ハグリッドが優しく彼の背を押した。

 水はハグリッドの言うとおり、温かさがある。水中眼鏡で初めて目にする湖の中は、深く暗い。

「もっと、バタ足を利かせるさ。恥ずかしがってちゃだめさ!」

 時間ギリギリまで水泳をさせられ、ハリーは本日の体力が限界であった。しかし、体力が有り余ったクローディアは練習が物足りないと不満を感じていた。

 『占い学』の時間、ハリーは机を枕代わりにし、寝入る。トレローニーが相も変わらず、ハリーに対する不吉な予言劇を盛大に言い放ったが、反応も出来なかった。

 クローディアは『数占い』が異常に楽しい気分で授業を終えた。

 

 バレンタインの日、ハリーは例年より多くの贈り物を貰った。フレッドとジョージが選手の誰が一番、多くのプレゼントを貰うかで賭けをしたらしく、どうやったか知らないが調べ上げていた。結果、フラーが一番だ。ロジャーが等身大もある大きさのプレゼントを手渡したのが決めてらしい。

 クローディアは変わらず、親しい友人にチョコを配る。ハーマイオニーの分だけは、誰よりも気合いを入れた。

「あの……、これ、使って下さい」

 耳まで真っ赤に染めたデレクから、汗を瞬時に吸収するタオルを貰う。デレクに何も用意していなかった為、クローディアはお礼だけ述べた。

「その言葉だけで、十分です」

 デレクは幸せそうに笑った。

 

 3日後に迫った日曜日、クローディアは部活を中止してまでハリーを湖に連れだした。朝から夕方まで、彼は散々しごかれた。ハグリッドの暖かいミルクがなければ、きっと昇天していたに違いないと語った。

「明日も昼にやるから、覚悟するさ」

 ハグリッドの小屋で私服に着替えたクローディアと一緒に大広間へ向かう。グリフィンドール席で疲労しきったハリーは倒れこんだ。

「「なんでそんなに、クタクタなんだ?」」

 向かいの席でフレッドとジョージが不思議そうにハリーの顔を覗き込んでくる。僅かに残った体力で唇を動かす。

「……ク、クローディアに殺される」

「そういえば、ここのところ毎日、なにしてんの? 特訓?」

 フレッドがハリーの口に、プチトマトを入れて体力を回復させようとした。ハリーの隣に座ったロンが答える。

「ハリーが水に慣れるように寒中水泳だってよ。クローディアまで水着に着替えてハリーを泳がせてるんだと」

 やれやれとロンは呆れる。しかし、紅茶を口にしていたジョージは突然、咳き込んだ。

「なんで、俺たちを呼んでくれないんだ! そんなおもしろそうなことに!」

「寒中水泳がおもしろいのかよ!」

 ジョージが真剣な表情で訴えてきたので、吃驚したロンがミートボールを盛り付けた皿をひっくり返した。通りがかったネビルが顔面にミートボールを受けた。

「ごめん、ネビル……」

「ううん、大丈夫だよ」

 ロンの謝罪を受け、テーブルナプキンで顔を拭きながらネビルはハリーの隣に腰かけた。

「ハリー。『エラ昆布』のことだけど、ルーピン先生に相談したんだ。僕が使ってみたいって言ってね。そしたら、用意してくれるらしいよ。明後日には間に合うからね」

「ありがとう、……ネビル」

 ネビルに感謝しながら、ハリーは課題よりもクローディアの特訓から解放されることを強く願った。

 

☈☈☈☈

 流石に疲労したクローディアは、自室の寝台に横になる。今なら5秒で眠りにつける。そこにチョウが足を忍ばせて近寄ってくる。気付いき、上体だけ起こす。

 驚かずにチョウは深刻そうに問いかけてきた。

「ねえ、クローディア。最近、ハリーと何してるの?」

「課題に向けての特訓さ」

 素直に答えたクローディアに、チョウは少し驚き上目遣いで見つめてきた。

「じゃあ、ハリーは心配ないのね。私、彼が心配なの。勿論、セドリックも心配だわ。でも……、私じゃ何の役にも立たないから」

「それなら、応援すればいいさ。チョウが頑張れっていうだけで、ハリーもディゴリーもメロメロさ」

 途端にチョウは耳まで真っ赤に染まり、両手で頬を擦った。その態度に、クローディアは不意に思いつく。

「もしかして、チョウはディゴリーと付き合ってるさ?」

「付き合う一歩手前かしら、……彼、私に試験の話はしないから……。私もクローディアのように、特訓できたらいいのに」

 チョウは段々と顔色を青くし、気を静めていく。

「さっきも言ったさ。ディゴリーは、チョウの応援だけで勇気百倍さ。私が保証するさ」

「……うん、ありがとう。私、ハリーのことも応援してるからね」

 表情を綻ばせたチョウは、クローディアの頬にキスしてから自分の部屋へと帰っていった。

 チョウのキスを頬に受けてから、不意にクローディアは疑問が浮かんだ。

 これまで友愛の意味でキスを受けてきた。しかし、誰かにキスをしたことがない。

 ドリスが家族の挨拶でキスをしても、クローディアは返さない。祖母は環境の違いを理解しているので、文句は言ってこない。

 だが、ホグワーツ(イギリス)に来てから大切な触れ合いとして、キスを行うと学び実感してきた。そういえば、コンラッドでさえベッロにキスをしていた。

 それなのに、クローディアは誰にもキスをしたいと思わない。

 好きなはずのハーマイオニーが相手でも、その衝動が起こったことは微塵もない。

(私が変さ?)

 突如、胸に不安が押し寄せる。好きな人にキスが出来ないなど、悲しすぎる。

 経験豊富……ではないが、頼れるペネロピーに相談したのはクローディアがそれだけ信頼しているからだ。

 実際、ペネロピーは真剣に話を聞いてくれた。

「ただの国民性だと思うわ。後は、あなた自身がキスで愛情を表現する性格ではないということよ。とっても純情だわ。まあ、ルーピン先生は生徒に手を出す人じゃないから、間違ってもお付き合いして下さいなんて言っちゃ駄目よ」

 一切、ルーピンの名を出していないのに、ペネロピーは警告した。一体、誰から誰まで気付かれているのか想像もしたくない。

「とっくに振られたさ」

 事後報告を受け、ペネロピーは目を丸くする。そして、いきなりクローディアの肩を掴んだ

「素敵! やるじゃない! 奥手だと思ってたのに!」

 まるで、どこぞのアニメのように「クララが立った!」と騒ぐ山小屋少女のようだ。

「告白が出来るなら、キスの心配はないわ。案外、キスをしたいって衝動と似ているのよ。その場の雰囲気と勢いだわ」

 クリスマス・パーティでの出来事を思い返し、納得した。

(心配ない……か)

 ペネロピーのお陰で、気持ちが軽くなる。クローディアは深く感謝し、溜まっていた不安をなくすように息を吐いた。

 

 翌日の昼、早々に昼食を済ませたクローディアは、ハリーを連れて湖に向かう。微笑ましい表情でハグリッドが見守る中、今日のハリーはやたらと機嫌がよい。全く、弱音を吐かない。

「ハリー、なんかいいことあったさ?」

「今日、シリウスから手紙が来て、次のホグズミードで会おうだって」

「ほお、良かったじゃねえかハリー。いっぱい話してこいな」

 ハグリッドの声に、ハリーは嬉しそうに微笑んだ。

 こうして水に慣れる訓練を行い、ネビルに『エラ昆布』の調達を頼み、シリウスに正式に面会できる。課題の日への緊張はあるが、ハリーは順調である。

「ふうん、ブラックが……面会さ」

 一方のクローディアは、シリウスの名を聞き、一気に不愉快な気分に陥った。ハリー曰く、今日の寒中水泳はこれまでで一番、キツかった。

 『占い学』の時間、ハリーは白目を剥いて机に倒れこんだ。トレローニーは珍しく何も言わず、自分のスパンコールを彼に被せて寝かせた。

 

 前夜、図書室でハリーがすべきことは水中生物への対処法だ。

 既にルーピンの授業でハリーも学習したが、復習に意味があるとハーマイオニーが提案したのだ。クローディアはネビルから【地中海の水生魔法植物とその特性】を借り、読み耽る。

「ご相談中、申し訳ないが」

 突然の低い声、ハリーが驚いて振り返る。ムーディの義足が一切音を立てず、彼の背後まで来ていたのだ。

 他の3人もムーディに驚いて、動きをとめる。

「グレンジャー、ウィーズリー、マクゴナガル先生がお呼びだ。ポッターは明日に備えて寝ろ。クロックフォード、明日はポッターに任せて余計なことはせぬようにな」

「わかりました」

 最後の言葉は余計ではないかとクローディアは少しだけ苛立つ。

 ハーマイオニーとロンはムーディに連れられ図書館を後にした。残った2人は本を整頓してから廊下へ出た。

「2人が呼び出されるなんて、珍しいね」

「思い当たる節はないさ。まあ、ハーマイオニーも一緒なら、心配ないさ」

 寮への分かれ道で、ペネロピーと歩くチョウの姿を目にする。

 急にハリーがクローディアの影に隠れた。ペネロピーが気づき、彼に不可解な視線を送る。

「消灯時間が近いのに、何処行くさ?」

「私がフリットウィック先生に呼ばれたの」

 チョウが自らを指差し、そしてハリーへ優しい視線を送る。

「ハリー、明日、頑張ってね」

「……う、うん」

 何故かハリーは頬だけ赤くし、チョウへと会釈した。

 ペネロピーとチョウの背を見送った後、ベッロとクルックシャンクスがお互いの寮から飛び出したように現れた。

「あ、迎えに来てくれたさ。ありがとうさ」

 クローディアはベッロとクルックシャンクスの頭を撫でる。

「クルックシャンクス、ハリーが9時までに起きなかったら、その爪で起こしてさ」

「そんなことされなくても、僕は起きれるから」

 クルックシャンクスはクローディアの言葉を理解したと爪を構えた。親しみのある意地悪な笑みで、彼女はベッロを抱えてハリーへ手を振る。

「おやすみ、ハリー」

「うん、クローディア。おやすみ」

 明日に緊張したハリーはクルックシャンクスを追うように階段を上っていった。

 

 第2の課題が始まる。

 皆はさっさと朝食を済ませ、湖に集合する。湖の岸辺には昨晩にはなかったはずの観客席が築かれていた。その傍で、フレッドとジョージが皆に賭博を薦めていた。

「いくらなんでも、酷いわ」

 ジニーが侮蔑した視線で兄の双子を軽蔑する。それに怯むことなく、フレッドとジョージは和気藹々と皆に賭け金を要求していた。

 クローディアはハリーの前を歩き、その隣をネビルが歩いて湖を目指す。

「はい、『エラ昆布』」

 ネビルが手渡したのは奇妙な緑の団子だ。緊張したハリーはそれを握り締めて深呼吸する。

「ありがとう、ネビル。課題が終わったら、ルーピン先生にもお礼を言うよ」

「言わない方がいいかもしれないよ。なんか、スネイプ先生の研究室から持ってきたらしいから」

 楽しそうに笑うネビルと違い、クローディアとハリーは非常に気まずい空気が流れた。

 よりにもよって、スネイプの研究室から、拝借したとなれば、尋問されるのはハリーだ。否、寒中水泳の特訓を手伝ったクローディアも同じだ。遂に『真実薬』を使われるかもしれない。

「さあ、会場に行こうさ」

 都合の良いところだけ聞かなかったことにした。

 審査員席の傍で、ビクトールが準備万端で立っていた。後からセドリックが到着し、フラーも現れた。そして、フィルチが第一に課題で使用した大砲を磨いている。緊張で震えるハリーにクローディアは水着と水中眼鏡を渡し、ネビルと一緒に彼を見送った。

 ハリーはゆっくりと審査員席に足を踏み出していった。

「しかし、ハーマイオニーは何処に行ったさ? ロンもいないしさ」

「朝から寮にはいなかったよ。きっと、この課題の手伝いじゃないかな?」

 可能性は十分にある。

 クローディアとネビルは出来るだけ審査員席に近い場所を選んだ。ジニーもルーナと彼女の傍に座り、時間が来るのを待つ。生徒全員が会場に到着してから、フレッドとジョージも着席した。

 

 11時の鐘が鳴り、興奮が高まった観衆のざわめきがより大きくなる。

 選手4人が湖の前に並び、審査員席のバグマンが立ち上がる。

「いよいよ第2の課題が始まります。皆さんの大切な者が盗まれました。制限時間の1時間で取り戻してください。では、大砲の合図で……」

 

 ――ドオオオン!!

 

 バグマンが言い終える前に、フィルチが手にした松明が大砲を放ってしまった。

 慌ててハリーは、口の中にエラ昆布を放り込む。4人の選手は我先にと湖へと飛び込んだ。水しぶきが大袈裟に起こり、観衆の歓声が4人を見送った。

「そろそろ、ハーマイオニーも帰ってくるんじゃないさ? 始まったし」

 クローディアが周囲を見渡すと、ルーナが湖を指差した。

「沈んでるから、まだ帰ってこれないよ」

 クローディアの周囲だけ、無音になる。

「沈んでる? ハーマイオニーがさ?」

「……もしかして、ロンも?」

 おそるおそるネビルがルーナに問うと彼女は肯定した。兄が湖に沈んでいると知り、お祭り気分だったジニーは一気に青褪めた。

「うん、沈んでるよ。それを助けにいくんだもン」

 驚愕の課題内容に誰もが絶句する。流石のフレッドとジョージも妹のように青褪め、賭け金箱を落とした。

「どうして、課題の内容を知っているの?」

「バグマンさんがそう言ったもン。大切な『者』が盗まれたって」

 感心するネビルにルーナはあっけらかんと答える。知っていたのではなく、湖とバグマンの言葉だけで課題内容を理解したのだ。

「……あんたの推理力に脱帽するさ」

 湖に一時間潜る手立てに気を取られ、何を探すかはまでは考えもしなかった。

 

 それから20分足らずで、フラーが戻ってきた。水魔に邪魔をされ、自身にかけていた魔法が解けてしまったのだ。マダム・マクシームがフラーを抱き起こし、マダム・ポンフリーがタオルを被せて容態を診た。

 水面が乱れると、現れたのはセドリックとチョウだ。

 歓声と拍手が起こる中、クローディアは青ざめる。昨晩、チョウはこの為に呼ばれた。

 やはり、ハーマイオニーとロンもあの湖の中にいる。クローディアはすぐに観客席を飛び降り、チョウの下へと走った。

「大丈夫さ? 水の中はどうなってたさ?」

 タオルで身体を包んだチョウは、震えながら答える。

「わからないわ。私、眠っていたの」

 クローディアの肩をセドリックが指先で叩く。

「ハリーが来ていたから、すぐに助かるよ」

 そして、水しぶきが起こったと思うと鮫が現れた。しかも、ハーマイオニーを連れている。鮫は水面に顔を出すと、その顔をビクトールへと変化させた。

「ハーマイオニー!」

 歓喜と驚きでクローディアはハーマイオニーに手を伸ばして岸へと上がらせた。マダム・ポンフリーから、タオルを貰う彼女を抱きしめた。

 濡れたハーマイオニーは寒さで震えている。

「もう! どうしてこんな危ないことになってるさ!」

 タオルでハーマイオニーの身体を拭き、クローディアは杖を振るって彼女の衣服を乾かした。

 すぐにハリーも来るはずだったが、遅い。時計が間もなく、1時間を報せようとしている。人質を取り戻せなかったフラーは、仲間達と不安そうに湖を眺めていた。

 何かが上がってくるのを視認したとき、ロンが少女と共に現れた。その少女を見たフラーが半狂乱で湖に飛び込もうとしている。その態度で彼女の妹・ガブリエルだとわかった。

 ロンとガブリエルが岸に辿り着いたとき、ハリーも水面から飛び出してきた。

 選手全員の帰還に、拍手喝采が送られた。

 シェーマスが大量のタオルでハリーを拭きまわした。ジニーは涙目でロンを抱きしめ、フレッドとジョージも彼にしがみ付いた。

 クローディアがハリーに毛布を被せようとしたとき、フラーが割って入った。

「ありがとう! あなたのいとじちではなかったのに! 妹、助かりました! あなたも、妹を助けてくれました!」

 震えた声でフラーは、ハリーの手を強く握り何度も振り回した。そして、フラーはロンを振り返り、その頬にキスをした。ロンは、魅惑の術がかけられたように、蕩けた顔になった。

 ダンブルドアは湖の水面に現れた水中人(マーピープル)と会話していた。マーミッシュ語は傍から聞けば悲鳴だが、ダンブルドアは苦もなく、話している。まるで、ハリーとベッロの会話だ。

「点数について、協議の必要がある」

 ダンブルドアは審査員を集めて話しあいだした。

 その間、マダム・ポンフリーが選手と人質の容態を診る。全員の容態を看終わった頃、審査員席で動きがあった。バグマンが観客に静粛を求める。

「協議の結果、1位はセドリック=ディゴリー! ハリー=ポッターは全ての人質を救おうと時間を取ったので、第2位とする! 実に道徳的な行いである!! 素晴らしい!!」

 ハリーへの祝福の拍手が会場を湧かした。セドリックとフラーも彼に拍手したが、クラムは不機嫌な様子を見せた。それでも、カルカロフよりはマシだ。

 カルカロフは、ハリーが戻って来たこと事態が気に入らない様子だ。

「溺れちゃえばおもしろかったのに」

 ダフネが残念そうに呟き、つまらなそうなドラコ達と引き上げていった。

「良かったさ。ハリー、行いが報われたさ!」

「ハリー! やったわね!」

「ミスター道徳!」

 クローディア、ハーマイオニー、ロンに声をかけられるが、ハリーは嬉しさよりも驚きが勝り、困惑していた。

「アリー=ポッター」

 突如、マダム・マクシームがハリーへと顔を近づけた。麗しい巨体は、ハリーの為にわざわざ腰を屈めた。そして、彼の手を優しく握る。

「あなた、小さい男の子ですが、その心、とっても大きいです。私、とっても見直しました」

「ありがとう……、マダム・マクシーム」

 驚きながらもハリーがマダム・マクシームを見上げ、どうにか手を握り返す。

 すると、マダム・マクシームはハリーの額にキスを落とした。ハグリッドが吃驚して、飛び上がった。

「第3の課題は6月24日に行われます! 代表選手は一ヶ月前に課題の内容を伝えられますので、それまでよく休んでください! 紳士淑女の皆さん、応援ありがとう!」

 一層、盛大な歓声と共に、第2の課題は終わった。

 

 選手と人質をマダム・ポンフリーが医務室に連れて行ってしまう。カルカロフやマダム・マクシームはわかるが、何故かハグリッドも一緒だ。他はゾロゾロと城や船、家馬車へ帰る。

「やっぱり、ハリー=ポッターは最高よね!」

 我がことのようにはしゃいだサリーにセシルが相槌を打つ。

「僕、絶対ハリーからサイン貰おう! デニスに聞いたけど、ハリーは誰にもサインを上げたことないんだって!」

 浮き浮きしたナイジェルに、デレクは上機嫌に応援していた。

「大切なモノって、大切な人ってことにえ? うそ! セドリックは、チョウ=チャンが好きにえ!?」

「ダンスパーティーにも誘ったんだから、間違いないわ。すご~い!」

 エロイーズとハンナが黄色い声を上げた。

「でも、ハリーの大切な人が……ロンって、まあ彼らしいわ」

「仲良いものねえ。ロンなんて、私の趣味じゃないけど……。そういえば、トレローニー先生が初めての授業で、赤毛の男子に気をつけろって」

 パーバティとラベンダーがくすくすと笑い合う。朴念仁のハリーに呆れたような、深い友情に感心したような言い方だ。

「これで、後は……」

「最後の課題か」

 フレッドとジョージは賭博の儲けについて、真剣に話し合っていた。ある意味、ハリーよりも切羽詰まった様子が恐い。

(お金を貯めて、どうするつもり……あ。そういえば、将来、店を出すとか……)

 ジョージの話してくれた『W・W・W』。双子の夢、否、掲げている目標だ。在学中に、客層や顧客だけでなく、資金も調達していると言われれば納得できる。

 クローディアが双子に声をかけようとした時、隣を歩いていたネビルが急に遠巻きになっていく。彼だけでなく、ジニーやルーナまでもだ。慣れた光景を目に、振り返る。

 口元を痙攣させたスネイプがクローディアを見下ろしていた。黒真珠の瞳が憤怒に染まっている。

(ああ、やっぱりさ)

 ここまで来ると、緊張も何もない。無我の境地に行きついた気分で、クローディアはスネイプの言葉を待つ。

「ミス・クロックフォード、『エラ昆布』の出所につい、て!」

 スネイプが突然、言葉を切る。ルーピンが彼の肩に腕を回したのだ。マクゴガナルとスプラウトも腕や肩に掴まり、フリットウィックは足を掴んだ。

「セブルス! 辛気臭い顔をしてないで、もっと喜んだらどうだい? セドリックとハリーが高得点だよ!」

 ルーピンはわざとらしく、スネイプに顔を寄せる。

「ああ、こんなことがあるんですねえ。ホグワーツが他校を出し抜くなんて」

 上機嫌なマクゴガナルが厳格さを残して、微笑んでいた。

「私は最初から、セドリックとハリーならいけると思っていましたとも。しかし、ハリーの『エラ昆布』は良い発想です。ねえ、スネイプ先生もそう思われるでしょう?」

 ほっこりとした笑顔でスプラウトが声を弾ませる。 

「さあ、職員室で我々も会議ですぞ」

 金切り声を上げ、フリットウィックは叫んだ。4人の教師に引きずられ、スネイプは連行されていく。

 スネイプはクローディアに恨みがましい視線を向けたが、それはいくらなんでもお門違いだ。

 先生達がいなくなると、ネビルはシェーマス達を連れて戻ってくる。ジニーもコリンやシーサー、ルーナとクローディアの傍に寄る。

「スネイプが振り回される姿なんて、始めてみたかも」

 シェーマスの呟きに、ディーンは頷く。

「あれも撮っておいて」

 ルーナがカメラを持ったコリンに頼んだ。おそるおそる彼は、5人の教師の後ろ姿を撮影した。

 




閲覧ありがとうございました。

ハリーは、もうちょっと体鍛えたらいいのになあ。
黙ってスネイプの研究室から、拝借するルーピン…、おそろしや。

皆さんは、ご存じとは思いますが、フラーの「いとじち」とマダム・マクシームの「アリー」は誤字ではありません。念のために、書いておきます。
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