こうして、私達は出会う(完結)   作:珍明

79 / 150
閲覧ありがとうございます。
毎日、多くの方にご覧頂き、本当に嬉しいです。

追記:16年3月15日、17年3月8日、誤字報告により修正しました。


21.ざわめく周囲

 4月の半ば、『姿現わし』試験は行われた。

 ロジャーやセドリック、フレッドとジョージを含めた数人が合格した。勿論、クララも合格だ。ジャックやリーのように次回へ持ち越された生徒が多数だった。

「いいですか? トワイクロス氏の注意事項を心に刻んでください。でないと、その身を刻みますよ?」

 フリットウィックからの警告に、6年生は乾いた笑いを見せた。

 自分の合格を各々の親に知らせる為、フクロウは今日も飛ぶ。

「親父とお袋に教えるとして、ロンとジニーにはどうする?」

「ん~、休暇に入ってからでいいんじゃない?」

 双子は悪だくみ満載の笑みで、頷き合った。成人した彼らは、家でも魔法を使ってロンとジニーに自慢することだろう。

「あんたら、少しは手加減してやるさ」

「「な~んのことかな」」

 わざとらしく口笛を吹く、双子の腹にクローディアの拳が襲った。

 

 5月が最後の週になり、学年末試験への勉強が佳境に入る。

 『魔法史』では、ゴブリンの反乱について復習が行われた。終業の鐘が鳴り、クローディアが筆記用具を片付けているとき、サリーが声をかけてきた。

「クローディア、教室の外でベッロが待っているわ」

「外で? 入ってくればいいさ」

 鞄を持ったクローディアが教室を出ると、先に出ていた生徒達にベッロが囲まれていた。それもそのはず、ベッロの口に太いコガネムシが銜えられていた。食いちぎらないように、羽根を押さえている。

「まあ、ベッロったら、捕まえた獲物を見せに来たのね。可愛い」

 上機嫌にパドマがベッロの喉を撫でる。

「普段なら、食べるのにさ。よっぽど、気に入ったさ」

 クローディアは細い紐を取り出し、じっとするコガネムシに紐を取り付けた。片方の紐をベッロの首に取り付け、離れられないようにした。

「これで、いつでも遊べるさ」

 ベッロが嬉しそうに舌を出し、尻尾の先でコガネムシを突いて遊びだしただ。見物していた生徒達がベッロに拍手を送る。そして、夕食であることを思い出し、自然と解散していく。

「ベッロを見ていたら、全ての蛇が可愛く思えて仕方ありませんわ」

 微笑ましい表情でリサがベッロを撫でて行った。クローディアがベッロを抱き上げようとしたが、廊下の先でクルックシャンクスが現れて、一緒にコガネムシで遊びだした。邪魔をしてはいけないので、そのままにした。

 廊下でクルックシャンクスを見かけたハーマイオニーもベッロが遊んでいるコガネムシに気付く。目を凝らしてコガネムシを睨んだ彼女は、不審そうに眉を寄せた。

 

 夜だけの授業、『天文学』が終わる。クローディア達は寮までシニストラに引率された。

「星って見ていると落ちつくなあ、嫌なこと忘れそうだ」

「モラグ、試験は来月だぞ」

 現実逃避しようとしたモラグに、アンソニーは苦笑する。

 皆がそれぞれの自室に戻ろうとしたが、クローディアは腕輪の文字に気付く。『グリフィンドール談話室』と書かれていた。

(こんな時間さ?)

 それだけ緊急事態だと察し、クローディアは忘れ物を言い訳にして談話室を去る。螺旋階段を上ってから、影へと変身した。

 急いで来てみれば、ハリーは上機嫌に表情を緩ませていた。

 午後9時、ハリー達・4人の選手はバグマンに呼び出された。自分の部下が死体で発見されたというのに、バグマンの態度は飄々としていた。

 ハリーは勿論、セドリックも自然とバグマンに不信感を抱く。

 最後の課題の内容を聞かされた。クィディッチ競技場が生垣の迷路に変えられており、何処かに優勝杯を置かれている。迷路には障害物があり、それを潜り抜けて優勝杯を見つけ出すというものだ。

 城に帰ろうとしたハリーは、何とビクトールに呼び止められた。理由は、ハーマイオニーとの関係を問いただす為だと言う。適当にあしらうことなど出来ぬ程、必死な態度で迫られた。故に、真剣な態度でハリーはハーマイオニーとは友達だと返した。その答えをビクトールは喜んだらしい。

「クラムが僕の箒捌きは凄かったって言ってくれたよ」

 世界最高のシーカーから賛辞を受け、ハリーは上機嫌である。城に着くまでの道のり、ハリーはクラムとクィディッチの話で意気投合したそうだ。

 全てを聞き終えてから、クローディアは杖を天井に向ける。わざわざ呼び出されたのに、ただの自慢話をされた。

 それよりも、重要なことがある。ハーマイオニーがビクトールの好意を嫌がっていない。寧ろ、若干、嬉しそうに口元が緩んでいる。

 嫉妬めいた感情がクローディアの中で渦巻く。何故だが、ロンも同じ気持ちのようだ。

「ハーマイオニーをダシにして、ハリーの作戦を聞こうとしたのかもしれないぜ」

「彼は、そんなことしません」

 苦々しく吐き捨てるロンを厳しい口調でハーマイオニーが咎めた。

「迷路の対策は、明日にしようさ。ちょっと、地図を見せてさ。フィルチの居場所見るからさ」

 クローディアに頼まれ、ハリーは羊皮紙を地図にした。瞬間、彼は驚いて目を見開いていた。

「スキーターが! 学校に忍び込んでる。ほら、ここ! 一階の廊下に名前がある!」

 地図にハリーが指差したところに、確かにスキーターの名がうろついている。クローディアとハーマイオニー、ロンは地図に飛びつき、食い入るように見つめた。

 スキーターの傍をフィルチが通りかかっていた。しかし、彼は素通りしていた。

 ハーマイオニーは、何かに気づいたように口を押さえる。

「クローディア、急いで寮に帰って確かめて欲しいの。ベッロの虫がまだいるかどうか、朝食のときに教えて欲しいの」

「……わかったさ」

 合点承知とクローディアは影へと変身する。影は素早い動きで談話室を去って行った。

「いま、クローディア、杖を使わずに変身しなかったかな?」

 我が目を疑うように、ロンは瞬きして瞼を擦る。そして、ハリーはハーマイオニーが意図したことにも気づく。

「もしかして、スキーターは『動物もどき』かもしれないってこと?」

「それは、明日になればわかるわ」

 いまいち信じられないとロンが怪訝そうにするが、ハーマイオニーは確信を得たように微笑んでいた。

 

 寝台の上で寝息を立てるベッロの紐が千切れている。コガネムシは逃げ去っていた。それを確認したクローディアもある確信を持ち、優越感で拳を握り締めた。

 知りえた情報が多いせいか、脳内が活発になりなかなか寝付けなかった。布団の中で、悶え続けた。

 ようやく寝付けたと思いきや、3時間足らずで目が覚めた。窓の外から差し込む淡い光と時計で起床時間より早い。

(ハーマイオニーのことだから、図書館で確認してそうさ)

 皆を起こさないように制服に着替えたクローディアは、足音を立てないように寮を出た。

 この時間で囁き声が聞こえるのは、絵の住人のせいだ。

「フレッド。それは、脅迫じゃないかな?」

「このまま泣き寝入りなんて冗談じゃない。露見して困るのは向こうなんだぞ」

 否、聞きなれたこの声は絵の住人ではない。しかも、耳に入った言葉は物騒な印象を受ける。クローディアは、声のする方向に廊下を曲がる。

 そこには、緊張した顔つきの双子が歩いていた。先にフレッドがクローディアを視界に入れた。彼女の表情から、話を聞かれたと察したようだ。

 フレッドはジョージの肩を掴んで、走り出した。足の長さから双子とクローディアの差が開いていく。しかし、彼女の瞬発力で一気に双子との距離を縮め、2人のローブを引っつかんだ。

「は~い♪おはようさ♪なんで逃げたさ?」

 クローディアが皮肉な笑顔で挨拶すると、フレッドが彼女の額を手で押さえる。

「追われたら逃げる。これが僕たちの流儀なんだ」

「ジョージは本当のこと話してくれるさ?」

 猫なで声でクローディアが問いかけると、ジョージは更なる媚び顔で瞬きする。

「本当のこと? そうだな。コーマック=マクラーゲンが君を狙っているぞ。アイツは、ちょっと性格に難ありだな。もともとバスケ部に入ろうとしたのだって、君に興味があったからだし」

 そんな話が聞きたかったのではない。全く関係のない話をするのは、話したくないからだ。双子の心情を察したクローディアは、満面の笑みを浮かべてローブから手を放す。

「マクラーゲンには一度だけ、デートに誘われたことはあるさ。その時は、断ったさ。でも、受けておけばよかったさ。次は私がデートでも、申し込むさ」

 クローディアは両手を後ろ手に組み、わざとらしく天井を何気なく見つめる。口の端を上げ、楽そうに笑って見せた。

「いいんじゃないか? 僕は応援するぜ」

 賛成したフレッドは笑い返したが、ジョージは言葉を失ったように口をパクパクと動かす。余程、クローディアの発言が衝撃なのだろう。

「ありがとうさ、フレッド。それじゃあ、ジョージ。良い一日を」

 嫌味を込めて言い放ち、クローディアはわざとらしくウィンクした。

 

 しかし、早朝から図書館が開いているはずもない。クローディアが座り込んでいると、ハーマイオニーが現れた。すぐに、コガネムシが消えていたことを報せる。マダム・ピンスが来るまで扉の前で座り込んだ2人は、小声でスキーターの行動について話した。

「私がベッロにスキーターを見つけたら、連れて来るように頼んださ。まさか、虫とは予想外さ」

「虫ほど小さいなら、何処にでも紛れこめるものね」

 1時間もせずに、マダム・ピンスがやってきた。早すぎる2人の存在に驚いていた。早速、『動物もどき』に関する本を見つけ、登録者の項目を確認する。マクゴナガル、シリウス、ペティグリューの名がある中、スキーターの名は記されていない。

 ちなみにペティグリューは(仮)と表記されていた。

「あの女は、非登録の『動物もどき』ね。そして、その姿はコガネムシ。触角の回りの模様があの女の眼鏡と同じだったから、嫌な感じがしてたのよ。起きたときに地図を確認したけど、スキーターはもういないわ。昆虫も『動物もどき』に含まれるかなんて、考えてもみなかったわ」

「次は逃がさないさ」

 語尾を強くして呟くクローディアに、ハーマイオニーはわざとらしく呟く。

「あの女……リータ=スキーターのことは、私に任せてくれる? ね、お願い」

 クローディアとしては、スキーターに制裁を与えたい。それが表情に出ていたのか、ハーマイオニーは彼女の手を両手で包み、上目遣いで微笑んだ。ここまでされたら、断れない。

「抵抗されたら、痛めつけるくらいはしてもいいさ?」

「駄目よ、クローディア。物騒ねえ、全く」

 スキーターの捕獲はクローディア、その後はハーマイオニーが対処することに決まった。

 

 本日の授業に備え、クローディアは快調な気分で朝食を貪る。向かいに座ったモラグが躊躇うように声をかけてきた。

「6月にも、部活の予定はあるかな? 去年は、バーベッジ先生が忙しくて出来なかったけど」

「1回はやるつもりさ。先生は試験作成で忙しいけど、去年と事情も違うしさ。絶対、やりたいさ」

 意気込むクローディアに、モラグは安心していた。

「俺も部活が楽しんだ。ありがとう」

 感謝を込めてもモラグは、クローディアの手を握った。そこまでバスケ部を喜ばれ、クローディアも嬉しくなる。

「ありがとうさ、マクドゥガル」

 思わず、クローディアはモラグの手を添えるように握り返す。

 グリフィンドール席にいたジョージは、本当に偶々、それを視界に入れた。知らず、手にしていたフォークに力が入って折り曲げた。

 

 ハリーがシリウスに手紙を出すと、『失神の呪文』と『武装解除呪文』を練習すべきと助言してきた。

「杖をなくしても、冷静に呪文を唱えられるようにしておくさ」

「そうね、基本から見直すのも大事よ」

 クローディアとハーマイオニーの提案をハリーは素直に受けた。

「取っ組み合いになるかもしれないから、パンチを繰り出す練習もしておく?」

 拳を構えるロンは良い点を突いている。万が一、魔法そのものを封じられた場合、残るは肉弾戦だ。

 4人で図書館に篭り、防衛系の魔法を調べた。

「あ、蜘蛛に対する魔法があるさ」

「え? どれどれ!?」

 『蜘蛛避け呪文』を見つけ、ロンは大いに喜んで羊皮紙に書き移した。

 授業の合間で使われない教室を見つけては、ハリーの訓練は行われた。しかし、この訓練には相手が必要不可欠である。クローディア、ハーマイオニー、ロンは、交代交替でハリーに吹き飛ばされた。

 勿論、ハーマイオニーに怪我を負わせたくないクローディアが主立って、相手をした。

「一通りやって、何が得意・不得意かを見つけよう」

 そういって、ハリーは真剣な態度で特訓に励んだ。最初の頃は嵌められたせいもあり、精神的にも追い込まれていた。今では、立派な選手の顔をして最後の課題に挑もうとしている。

 これで、ヴォルデモートのことさえなければ、喜ばしい限りだ。

 普段からの鬱憤を晴らすようにハリーは、クローディアを的にする。

「避けないでよ。当てる練習なんだから」

「だったら、もっと狙いを強くしてさ」

 だが、クローディアは反射的に魔法を避けてしまうので、訓練にならない。当たったとしても、彼女は効きが弱かった。よって、一番の被害者はロンだ。

「素直にルーピン先生とか、ムーディに相手になってもらったら、どうさ?」

 ハリーが放った『失神の呪文』で、大の字で床に倒れ伏したロンを見下ろしたクローディアは呟く。

「マッド‐アイにそんなことしたら、しっぺ返しを食らうよ! それにルーピン先生は、これまでも助けてくれたんだ。最後ぐらいは、自分でどうにかしたいよ」

「そういう心意気なら、私、喜んで力を貸すわ」

 力んだハリーの肩を優しくハーマイオニーが触れる。その光景に苛立ちながら、クローディアはロンを叩き起こす。

「ロンも折角、用意したクッションの上に倒れるようになるさ」

 教室の隅でハーマイオニーがクッションの山を並べる。

「無茶を言うなよ! クローディアなんて、避けるくせに!」

「避けれるんだから、しょうがないさ」

 わざとらしく肩を竦めたクローディアは、図書館で作った防護魔法項目を眺める。

「次の日曜日。バスケ部の活動があるけど、ハリーはどうするさ?」

「行くよ。あれって、集中力を鍛えるのに凄く良いんだ」

 ハリーの快い返事を聞き、クローディアは素直に喜んだ。

 

 部活動は、クローディアにも最高の息抜きである。だが、息抜きと称するのは生徒だけではないらしい。

 ルーピンやベクトル、マダム・フーチにビンズまでもが和気藹々と参加してくれば、生徒はただ驚く。

 教師の参戦よりも、幽霊のビンズに対する驚きだ。

 ビンズはボールに触れることなく放り投げ、ゴールへと命中させる。ネビルやアーミー達が感心して、幽霊教授に拍手を送っていた。しかし、ロジャーやアンジェリーナなどのクィディッチ選手は複雑そうに笑う。

 ビンズの反則にも見える行為に、クローディアは首を傾げる。

「あれえ? 『魔法封じ』が効いてないんでしょうか?」

「ビンズ先生は、魔法ではなく幽霊としてのお力を振るわれているのです。『嘆きのマートル』がよく女子生徒に洪水をぶっかけるのと同じ理屈です」

 可笑しそうに微笑みながら、バーベッジは説明する。

「つまり、幽霊達には別の対策が必要ということですか? しかし、これまでピーブズは部活で悪戯をしたりしていませんが、どうしてでしょう?」

 クローディアが素朴な疑問を口にすると、バーベッジは悪戯っぽく目を細めた。

「『血みどろ男爵』にお願いしたんですよ。大分、骨が折れましたがね」

「……左様でございますか……」

 何も聞くまいと、クローディアは均等な戦力配分によるチーム分けを行った。

 流石、『飛行術』の教授であるマダム・フーチの颯爽としたボール捌きに、ある種の感動を覚えた。いつの間にか、他校の教師達まで見物に訪れ、バスケを体験したがった。

「楽しそうで何よりです」

 スタニフラフがクローディアに笑いかける。

「本当に、先生達がこんなに楽しんでもらえるなんて、すっごく嬉しいさ」

「僕が言ったのは、あなたのことです」

 大真面目に微笑んだスタニフラフの発言に、クローディアは目を丸くする。

「最初、貴女にお会いした時は、ただ知り合えば良いと思いました。けど、今は……貴女の喜ぶ笑顔をずっと見てみたい」

 スタニフラフの手がクローディアの髪に触れ、熱っぽく囁かれた。

 この意味を十分、理解できる。彼の仕草や口調は、決して嫌ではない。寧ろ、心地よい。口説かれたことを心が喜んでいる証拠だ。

 ルーピンを視界の端に捉えてから、クローディアはスタニフラフを真っすぐ見上げる。口説きに対する返答を述べる前に、ロジャーが割って入って来た。

「クローディア、ネビルが調子悪そうだ。見てやってくれよ」

 ロジャーは不遜な態度で親指をネビルに向ける。

 ネビルは床に座り込んで、足元を擦っていた。シェーマスとディーンが彼を気遣っている。

「行って下さい。僕のことは、いつでも構いませんので」

 特に機嫌を損なうことなく、スタニフラフは穏やかに言い放つ。彼に感謝し、クローディアはネビルの傍へと駆け寄った。

 クローディアがいなくなり、ロジャーはスタニフラを品定めするような目つきで眺めた。

 しかし、スタニフラフは笑みを絶やさずに視線を受け止めた。

「クローディアはいずれ、僕の恋人になる。他を当たってくれ」

 挑戦的な態度で、ロジャーは断言する。動じることなく、スタニフラフは含み笑いを見せた。

 癪に障ったロジャーの目つきが鋭くなったが、スタニフラフは全く臆しない。それどころか、笑みが更に強くなった。

「恋人の位置で満足するなんて、彼女も舐められたものですね。僕なら、この身を一生捧げますよ」

 堂々とスタニフラフに返された。目の前の彼は、この時点で彼女の将来さえも奪おうとしている。落雷を受けた気分になり、ロジャーは深い眩暈に襲われた。

 

 ――彼女を絶対に渡したくない。独占欲に似た感情で滾る。

 

 動揺を誤魔化さないロジャーを見据え、スタニフラフは余裕綽々な態度で言葉を紡ぐ。

「ただ、僕は女性に固執しない主義です。もしも、僕が本気で口説き落としたくなる前に、彼女(クローディア)が貴方を選んだなら、潔く身を引きましょう」

「へえ、欲しい女を簡単に諦められるんだ」

 あからさまな敵意を剥き出し、ロジャーはスタニフラフとメンチを切った。

 同じ頃、ジョージは壁際で水分補給するコーマックを見つけた。偶然だろうが、彼の周囲に人はいない。皆、各々に部活を楽しんでいる。好機と踏んだジョージは、差し障りのないように声をかける。

「バスケは楽しいか?」

「ああ、勿論。所詮は、マグルの競技とか思ってたけど、割と楽しめる。クローディアもいるしな。アイツ、日に日に美人になっていくと思わないか?」

 コーマックは、顎でクローディアを示す。ネビルの靴を脱がしたクローディアは、中から木の破片を取りだす。

 ネビルの足痛の原因は、微かな木の破片のようだ。

 ジョージは普段の笑みを見せ、大げさに肩を落とす。

「クローディアには、好きな人がいる。相当、惚れ込んでいるから、諦めたほうが無難だぞ」

 ジョージは出来るだけ、口調と音程に気を遣った。コーマックを気遣っての忠告に聞こえさせる為だ。しかし、コーマックは喉を鳴らして愉快そうに笑う。

「そんなことは、とっくに知っているぜ」

 あまりにも、あっけらかんとしている。意外な返答が、ジョージから笑みを消してしまう。ジョージの動揺を気に留めず、コーマックは続ける。

「前に、デートに誘ったことがある。そん時に、気付いた。女子ってさ、恋している時が一番綺麗なんだよ。多分、彼女の恋は報われないな。そうなれば、俺の出番ってわけ」

「クローディアがおまえを選ぶってか?」

 可能性を否定するジョージに向かい、コーマックは悪戯っぽく口元を曲げる。

「違うな。必然的に、俺の女になるんだよ」

 

 ――カチン。

 

 運命を語る傲慢さを目の当たりにし、ジョージの脳髄で音が鳴った。多くの人に笑いを齎す『悪戯仕掛け人』の肩がきを捨て去り、ただ1人の男として、カチンッという音を確かに聞いた。

 ジョージは何も言わず、自然とコーマックを睨んでいた。最初、コーマックは驚いて目を丸くする。しかし、視線の意味を理解したらしく、真っ向からジョージと対峙した。

「何だか、ジョージの機嫌が悪いわ……」

「奇遇ですね、ロジャーもすこぶる機嫌が悪いです」

 ジニーとシーサーは、お互いの兄を気味悪く感じた。

 




閲覧ありがとうございました。
ペティグリューは杖がないと変身もできず、自分で解けないので仮免許のような扱いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。