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追記:16年3月15日、17年3月8日、誤字報告により修正しました。
4月の半ば、『姿現わし』試験は行われた。
ロジャーやセドリック、フレッドとジョージを含めた数人が合格した。勿論、クララも合格だ。ジャックやリーのように次回へ持ち越された生徒が多数だった。
「いいですか? トワイクロス氏の注意事項を心に刻んでください。でないと、その身を刻みますよ?」
フリットウィックからの警告に、6年生は乾いた笑いを見せた。
自分の合格を各々の親に知らせる為、フクロウは今日も飛ぶ。
「親父とお袋に教えるとして、ロンとジニーにはどうする?」
「ん~、休暇に入ってからでいいんじゃない?」
双子は悪だくみ満載の笑みで、頷き合った。成人した彼らは、家でも魔法を使ってロンとジニーに自慢することだろう。
「あんたら、少しは手加減してやるさ」
「「な~んのことかな」」
わざとらしく口笛を吹く、双子の腹にクローディアの拳が襲った。
5月が最後の週になり、学年末試験への勉強が佳境に入る。
『魔法史』では、ゴブリンの反乱について復習が行われた。終業の鐘が鳴り、クローディアが筆記用具を片付けているとき、サリーが声をかけてきた。
「クローディア、教室の外でベッロが待っているわ」
「外で? 入ってくればいいさ」
鞄を持ったクローディアが教室を出ると、先に出ていた生徒達にベッロが囲まれていた。それもそのはず、ベッロの口に太いコガネムシが銜えられていた。食いちぎらないように、羽根を押さえている。
「まあ、ベッロったら、捕まえた獲物を見せに来たのね。可愛い」
上機嫌にパドマがベッロの喉を撫でる。
「普段なら、食べるのにさ。よっぽど、気に入ったさ」
クローディアは細い紐を取り出し、じっとするコガネムシに紐を取り付けた。片方の紐をベッロの首に取り付け、離れられないようにした。
「これで、いつでも遊べるさ」
ベッロが嬉しそうに舌を出し、尻尾の先でコガネムシを突いて遊びだしただ。見物していた生徒達がベッロに拍手を送る。そして、夕食であることを思い出し、自然と解散していく。
「ベッロを見ていたら、全ての蛇が可愛く思えて仕方ありませんわ」
微笑ましい表情でリサがベッロを撫でて行った。クローディアがベッロを抱き上げようとしたが、廊下の先でクルックシャンクスが現れて、一緒にコガネムシで遊びだした。邪魔をしてはいけないので、そのままにした。
廊下でクルックシャンクスを見かけたハーマイオニーもベッロが遊んでいるコガネムシに気付く。目を凝らしてコガネムシを睨んだ彼女は、不審そうに眉を寄せた。
夜だけの授業、『天文学』が終わる。クローディア達は寮までシニストラに引率された。
「星って見ていると落ちつくなあ、嫌なこと忘れそうだ」
「モラグ、試験は来月だぞ」
現実逃避しようとしたモラグに、アンソニーは苦笑する。
皆がそれぞれの自室に戻ろうとしたが、クローディアは腕輪の文字に気付く。『グリフィンドール談話室』と書かれていた。
(こんな時間さ?)
それだけ緊急事態だと察し、クローディアは忘れ物を言い訳にして談話室を去る。螺旋階段を上ってから、影へと変身した。
急いで来てみれば、ハリーは上機嫌に表情を緩ませていた。
午後9時、ハリー達・4人の選手はバグマンに呼び出された。自分の部下が死体で発見されたというのに、バグマンの態度は飄々としていた。
ハリーは勿論、セドリックも自然とバグマンに不信感を抱く。
最後の課題の内容を聞かされた。クィディッチ競技場が生垣の迷路に変えられており、何処かに優勝杯を置かれている。迷路には障害物があり、それを潜り抜けて優勝杯を見つけ出すというものだ。
城に帰ろうとしたハリーは、何とビクトールに呼び止められた。理由は、ハーマイオニーとの関係を問いただす為だと言う。適当にあしらうことなど出来ぬ程、必死な態度で迫られた。故に、真剣な態度でハリーはハーマイオニーとは友達だと返した。その答えをビクトールは喜んだらしい。
「クラムが僕の箒捌きは凄かったって言ってくれたよ」
世界最高のシーカーから賛辞を受け、ハリーは上機嫌である。城に着くまでの道のり、ハリーはクラムとクィディッチの話で意気投合したそうだ。
全てを聞き終えてから、クローディアは杖を天井に向ける。わざわざ呼び出されたのに、ただの自慢話をされた。
それよりも、重要なことがある。ハーマイオニーがビクトールの好意を嫌がっていない。寧ろ、若干、嬉しそうに口元が緩んでいる。
嫉妬めいた感情がクローディアの中で渦巻く。何故だが、ロンも同じ気持ちのようだ。
「ハーマイオニーをダシにして、ハリーの作戦を聞こうとしたのかもしれないぜ」
「彼は、そんなことしません」
苦々しく吐き捨てるロンを厳しい口調でハーマイオニーが咎めた。
「迷路の対策は、明日にしようさ。ちょっと、地図を見せてさ。フィルチの居場所見るからさ」
クローディアに頼まれ、ハリーは羊皮紙を地図にした。瞬間、彼は驚いて目を見開いていた。
「スキーターが! 学校に忍び込んでる。ほら、ここ! 一階の廊下に名前がある!」
地図にハリーが指差したところに、確かにスキーターの名がうろついている。クローディアとハーマイオニー、ロンは地図に飛びつき、食い入るように見つめた。
スキーターの傍をフィルチが通りかかっていた。しかし、彼は素通りしていた。
ハーマイオニーは、何かに気づいたように口を押さえる。
「クローディア、急いで寮に帰って確かめて欲しいの。ベッロの虫がまだいるかどうか、朝食のときに教えて欲しいの」
「……わかったさ」
合点承知とクローディアは影へと変身する。影は素早い動きで談話室を去って行った。
「いま、クローディア、杖を使わずに変身しなかったかな?」
我が目を疑うように、ロンは瞬きして瞼を擦る。そして、ハリーはハーマイオニーが意図したことにも気づく。
「もしかして、スキーターは『動物もどき』かもしれないってこと?」
「それは、明日になればわかるわ」
いまいち信じられないとロンが怪訝そうにするが、ハーマイオニーは確信を得たように微笑んでいた。
寝台の上で寝息を立てるベッロの紐が千切れている。コガネムシは逃げ去っていた。それを確認したクローディアもある確信を持ち、優越感で拳を握り締めた。
知りえた情報が多いせいか、脳内が活発になりなかなか寝付けなかった。布団の中で、悶え続けた。
ようやく寝付けたと思いきや、3時間足らずで目が覚めた。窓の外から差し込む淡い光と時計で起床時間より早い。
(ハーマイオニーのことだから、図書館で確認してそうさ)
皆を起こさないように制服に着替えたクローディアは、足音を立てないように寮を出た。
この時間で囁き声が聞こえるのは、絵の住人のせいだ。
「フレッド。それは、脅迫じゃないかな?」
「このまま泣き寝入りなんて冗談じゃない。露見して困るのは向こうなんだぞ」
否、聞きなれたこの声は絵の住人ではない。しかも、耳に入った言葉は物騒な印象を受ける。クローディアは、声のする方向に廊下を曲がる。
そこには、緊張した顔つきの双子が歩いていた。先にフレッドがクローディアを視界に入れた。彼女の表情から、話を聞かれたと察したようだ。
フレッドはジョージの肩を掴んで、走り出した。足の長さから双子とクローディアの差が開いていく。しかし、彼女の瞬発力で一気に双子との距離を縮め、2人のローブを引っつかんだ。
「は~い♪おはようさ♪なんで逃げたさ?」
クローディアが皮肉な笑顔で挨拶すると、フレッドが彼女の額を手で押さえる。
「追われたら逃げる。これが僕たちの流儀なんだ」
「ジョージは本当のこと話してくれるさ?」
猫なで声でクローディアが問いかけると、ジョージは更なる媚び顔で瞬きする。
「本当のこと? そうだな。コーマック=マクラーゲンが君を狙っているぞ。アイツは、ちょっと性格に難ありだな。もともとバスケ部に入ろうとしたのだって、君に興味があったからだし」
そんな話が聞きたかったのではない。全く関係のない話をするのは、話したくないからだ。双子の心情を察したクローディアは、満面の笑みを浮かべてローブから手を放す。
「マクラーゲンには一度だけ、デートに誘われたことはあるさ。その時は、断ったさ。でも、受けておけばよかったさ。次は私がデートでも、申し込むさ」
クローディアは両手を後ろ手に組み、わざとらしく天井を何気なく見つめる。口の端を上げ、楽そうに笑って見せた。
「いいんじゃないか? 僕は応援するぜ」
賛成したフレッドは笑い返したが、ジョージは言葉を失ったように口をパクパクと動かす。余程、クローディアの発言が衝撃なのだろう。
「ありがとうさ、フレッド。それじゃあ、ジョージ。良い一日を」
嫌味を込めて言い放ち、クローディアはわざとらしくウィンクした。
しかし、早朝から図書館が開いているはずもない。クローディアが座り込んでいると、ハーマイオニーが現れた。すぐに、コガネムシが消えていたことを報せる。マダム・ピンスが来るまで扉の前で座り込んだ2人は、小声でスキーターの行動について話した。
「私がベッロにスキーターを見つけたら、連れて来るように頼んださ。まさか、虫とは予想外さ」
「虫ほど小さいなら、何処にでも紛れこめるものね」
1時間もせずに、マダム・ピンスがやってきた。早すぎる2人の存在に驚いていた。早速、『動物もどき』に関する本を見つけ、登録者の項目を確認する。マクゴナガル、シリウス、ペティグリューの名がある中、スキーターの名は記されていない。
ちなみにペティグリューは(仮)と表記されていた。
「あの女は、非登録の『動物もどき』ね。そして、その姿はコガネムシ。触角の回りの模様があの女の眼鏡と同じだったから、嫌な感じがしてたのよ。起きたときに地図を確認したけど、スキーターはもういないわ。昆虫も『動物もどき』に含まれるかなんて、考えてもみなかったわ」
「次は逃がさないさ」
語尾を強くして呟くクローディアに、ハーマイオニーはわざとらしく呟く。
「あの女……リータ=スキーターのことは、私に任せてくれる? ね、お願い」
クローディアとしては、スキーターに制裁を与えたい。それが表情に出ていたのか、ハーマイオニーは彼女の手を両手で包み、上目遣いで微笑んだ。ここまでされたら、断れない。
「抵抗されたら、痛めつけるくらいはしてもいいさ?」
「駄目よ、クローディア。物騒ねえ、全く」
スキーターの捕獲はクローディア、その後はハーマイオニーが対処することに決まった。
本日の授業に備え、クローディアは快調な気分で朝食を貪る。向かいに座ったモラグが躊躇うように声をかけてきた。
「6月にも、部活の予定はあるかな? 去年は、バーベッジ先生が忙しくて出来なかったけど」
「1回はやるつもりさ。先生は試験作成で忙しいけど、去年と事情も違うしさ。絶対、やりたいさ」
意気込むクローディアに、モラグは安心していた。
「俺も部活が楽しんだ。ありがとう」
感謝を込めてもモラグは、クローディアの手を握った。そこまでバスケ部を喜ばれ、クローディアも嬉しくなる。
「ありがとうさ、マクドゥガル」
思わず、クローディアはモラグの手を添えるように握り返す。
グリフィンドール席にいたジョージは、本当に偶々、それを視界に入れた。知らず、手にしていたフォークに力が入って折り曲げた。
ハリーがシリウスに手紙を出すと、『失神の呪文』と『武装解除呪文』を練習すべきと助言してきた。
「杖をなくしても、冷静に呪文を唱えられるようにしておくさ」
「そうね、基本から見直すのも大事よ」
クローディアとハーマイオニーの提案をハリーは素直に受けた。
「取っ組み合いになるかもしれないから、パンチを繰り出す練習もしておく?」
拳を構えるロンは良い点を突いている。万が一、魔法そのものを封じられた場合、残るは肉弾戦だ。
4人で図書館に篭り、防衛系の魔法を調べた。
「あ、蜘蛛に対する魔法があるさ」
「え? どれどれ!?」
『蜘蛛避け呪文』を見つけ、ロンは大いに喜んで羊皮紙に書き移した。
授業の合間で使われない教室を見つけては、ハリーの訓練は行われた。しかし、この訓練には相手が必要不可欠である。クローディア、ハーマイオニー、ロンは、交代交替でハリーに吹き飛ばされた。
勿論、ハーマイオニーに怪我を負わせたくないクローディアが主立って、相手をした。
「一通りやって、何が得意・不得意かを見つけよう」
そういって、ハリーは真剣な態度で特訓に励んだ。最初の頃は嵌められたせいもあり、精神的にも追い込まれていた。今では、立派な選手の顔をして最後の課題に挑もうとしている。
これで、ヴォルデモートのことさえなければ、喜ばしい限りだ。
普段からの鬱憤を晴らすようにハリーは、クローディアを的にする。
「避けないでよ。当てる練習なんだから」
「だったら、もっと狙いを強くしてさ」
だが、クローディアは反射的に魔法を避けてしまうので、訓練にならない。当たったとしても、彼女は効きが弱かった。よって、一番の被害者はロンだ。
「素直にルーピン先生とか、ムーディに相手になってもらったら、どうさ?」
ハリーが放った『失神の呪文』で、大の字で床に倒れ伏したロンを見下ろしたクローディアは呟く。
「マッド‐アイにそんなことしたら、しっぺ返しを食らうよ! それにルーピン先生は、これまでも助けてくれたんだ。最後ぐらいは、自分でどうにかしたいよ」
「そういう心意気なら、私、喜んで力を貸すわ」
力んだハリーの肩を優しくハーマイオニーが触れる。その光景に苛立ちながら、クローディアはロンを叩き起こす。
「ロンも折角、用意したクッションの上に倒れるようになるさ」
教室の隅でハーマイオニーがクッションの山を並べる。
「無茶を言うなよ! クローディアなんて、避けるくせに!」
「避けれるんだから、しょうがないさ」
わざとらしく肩を竦めたクローディアは、図書館で作った防護魔法項目を眺める。
「次の日曜日。バスケ部の活動があるけど、ハリーはどうするさ?」
「行くよ。あれって、集中力を鍛えるのに凄く良いんだ」
ハリーの快い返事を聞き、クローディアは素直に喜んだ。
部活動は、クローディアにも最高の息抜きである。だが、息抜きと称するのは生徒だけではないらしい。
ルーピンやベクトル、マダム・フーチにビンズまでもが和気藹々と参加してくれば、生徒はただ驚く。
教師の参戦よりも、幽霊のビンズに対する驚きだ。
ビンズはボールに触れることなく放り投げ、ゴールへと命中させる。ネビルやアーミー達が感心して、幽霊教授に拍手を送っていた。しかし、ロジャーやアンジェリーナなどのクィディッチ選手は複雑そうに笑う。
ビンズの反則にも見える行為に、クローディアは首を傾げる。
「あれえ? 『魔法封じ』が効いてないんでしょうか?」
「ビンズ先生は、魔法ではなく幽霊としてのお力を振るわれているのです。『嘆きのマートル』がよく女子生徒に洪水をぶっかけるのと同じ理屈です」
可笑しそうに微笑みながら、バーベッジは説明する。
「つまり、幽霊達には別の対策が必要ということですか? しかし、これまでピーブズは部活で悪戯をしたりしていませんが、どうしてでしょう?」
クローディアが素朴な疑問を口にすると、バーベッジは悪戯っぽく目を細めた。
「『血みどろ男爵』にお願いしたんですよ。大分、骨が折れましたがね」
「……左様でございますか……」
何も聞くまいと、クローディアは均等な戦力配分によるチーム分けを行った。
流石、『飛行術』の教授であるマダム・フーチの颯爽としたボール捌きに、ある種の感動を覚えた。いつの間にか、他校の教師達まで見物に訪れ、バスケを体験したがった。
「楽しそうで何よりです」
スタニフラフがクローディアに笑いかける。
「本当に、先生達がこんなに楽しんでもらえるなんて、すっごく嬉しいさ」
「僕が言ったのは、あなたのことです」
大真面目に微笑んだスタニフラフの発言に、クローディアは目を丸くする。
「最初、貴女にお会いした時は、ただ知り合えば良いと思いました。けど、今は……貴女の喜ぶ笑顔をずっと見てみたい」
スタニフラフの手がクローディアの髪に触れ、熱っぽく囁かれた。
この意味を十分、理解できる。彼の仕草や口調は、決して嫌ではない。寧ろ、心地よい。口説かれたことを心が喜んでいる証拠だ。
ルーピンを視界の端に捉えてから、クローディアはスタニフラフを真っすぐ見上げる。口説きに対する返答を述べる前に、ロジャーが割って入って来た。
「クローディア、ネビルが調子悪そうだ。見てやってくれよ」
ロジャーは不遜な態度で親指をネビルに向ける。
ネビルは床に座り込んで、足元を擦っていた。シェーマスとディーンが彼を気遣っている。
「行って下さい。僕のことは、いつでも構いませんので」
特に機嫌を損なうことなく、スタニフラフは穏やかに言い放つ。彼に感謝し、クローディアはネビルの傍へと駆け寄った。
クローディアがいなくなり、ロジャーはスタニフラを品定めするような目つきで眺めた。
しかし、スタニフラフは笑みを絶やさずに視線を受け止めた。
「クローディアはいずれ、僕の恋人になる。他を当たってくれ」
挑戦的な態度で、ロジャーは断言する。動じることなく、スタニフラフは含み笑いを見せた。
癪に障ったロジャーの目つきが鋭くなったが、スタニフラフは全く臆しない。それどころか、笑みが更に強くなった。
「恋人の位置で満足するなんて、彼女も舐められたものですね。僕なら、この身を一生捧げますよ」
堂々とスタニフラフに返された。目の前の彼は、この時点で彼女の将来さえも奪おうとしている。落雷を受けた気分になり、ロジャーは深い眩暈に襲われた。
――彼女を絶対に渡したくない。独占欲に似た感情で滾る。
動揺を誤魔化さないロジャーを見据え、スタニフラフは余裕綽々な態度で言葉を紡ぐ。
「ただ、僕は女性に固執しない主義です。もしも、僕が本気で口説き落としたくなる前に、彼女(クローディア)が貴方を選んだなら、潔く身を引きましょう」
「へえ、欲しい女を簡単に諦められるんだ」
あからさまな敵意を剥き出し、ロジャーはスタニフラフとメンチを切った。
同じ頃、ジョージは壁際で水分補給するコーマックを見つけた。偶然だろうが、彼の周囲に人はいない。皆、各々に部活を楽しんでいる。好機と踏んだジョージは、差し障りのないように声をかける。
「バスケは楽しいか?」
「ああ、勿論。所詮は、マグルの競技とか思ってたけど、割と楽しめる。クローディアもいるしな。アイツ、日に日に美人になっていくと思わないか?」
コーマックは、顎でクローディアを示す。ネビルの靴を脱がしたクローディアは、中から木の破片を取りだす。
ネビルの足痛の原因は、微かな木の破片のようだ。
ジョージは普段の笑みを見せ、大げさに肩を落とす。
「クローディアには、好きな人がいる。相当、惚れ込んでいるから、諦めたほうが無難だぞ」
ジョージは出来るだけ、口調と音程に気を遣った。コーマックを気遣っての忠告に聞こえさせる為だ。しかし、コーマックは喉を鳴らして愉快そうに笑う。
「そんなことは、とっくに知っているぜ」
あまりにも、あっけらかんとしている。意外な返答が、ジョージから笑みを消してしまう。ジョージの動揺を気に留めず、コーマックは続ける。
「前に、デートに誘ったことがある。そん時に、気付いた。女子ってさ、恋している時が一番綺麗なんだよ。多分、彼女の恋は報われないな。そうなれば、俺の出番ってわけ」
「クローディアがおまえを選ぶってか?」
可能性を否定するジョージに向かい、コーマックは悪戯っぽく口元を曲げる。
「違うな。必然的に、俺の女になるんだよ」
――カチン。
運命を語る傲慢さを目の当たりにし、ジョージの脳髄で音が鳴った。多くの人に笑いを齎す『悪戯仕掛け人』の肩がきを捨て去り、ただ1人の男として、カチンッという音を確かに聞いた。
ジョージは何も言わず、自然とコーマックを睨んでいた。最初、コーマックは驚いて目を丸くする。しかし、視線の意味を理解したらしく、真っ向からジョージと対峙した。
「何だか、ジョージの機嫌が悪いわ……」
「奇遇ですね、ロジャーもすこぶる機嫌が悪いです」
ジニーとシーサーは、お互いの兄を気味悪く感じた。
閲覧ありがとうございました。
ペティグリューは杖がないと変身もできず、自分で解けないので仮免許のような扱いです。