こうして、私達は出会う(完結)   作:珍明

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閲覧ありがとうございます。
やっと、DA回に来ました。

追記:16年9月2日、誤字報告により修正しました


12.DA

 明日の『ホグズミード村』に向け、グリフィンドール談話室にて会議が行われた。就寝前は生徒が騒ぐので、意外と会話は聞かれない。

 フレッドはジョージが外出禁止を言い渡され、憤慨する。

「折角、重要な話が聞けるかもって時に!?」

「俺、残って商品、売りまくるよ~」

 何故か、上機嫌のジョージにフレッドは返答に困った。

「クローディアは普段のように変身して……。ハリーはマント被って、私は『目くらましの術』をかけましょう」

「え? ハーマイオニー、いつの間に『目くらましの術』を!?」

 ハーマイオニーが明日の最終確認し、ロンは吃驚する。

「僕らは普通に店行くわ。リーともよく行くし、ジニーもそれでいいな?」

「ええ、そのつもりよ。それで、本当に魔法を教える事になった場合の事も考えているの?」

「勿論、対策も色々と用意したわ。後は場所だけなのよね。ジョージ、良い場所をいくつかピックアップしておいて」

「いいよ~。ハーマイオニー、ど~んと俺に任せて~」

 皆が各々の意見を口にする中、クローディアとハリーは『予言』について、それとなく話す。

「(皆に話すなら、試験の後とかにしたらいいさ。ただでさえ、重い話になるさ)」

「(……皆に話すの?)」

 刺のある彼の口調に疑問させられる。

「(本部にいてくれた皆だからこそ、話しても問題ないと思うさ。これからも、きっと、一緒に戦ってくれるしさ)」

 ハリーの言葉を信じ、ダンブルドアは『不死鳥の騎士団』を再結成した。

 その本部の屋敷へと集まってくれたウィーズリー兄弟とハーマイオニーを深く信頼している。『予言』だけでなく、『ホムンクルス』の事も包み隠さず、話すつもりだ。

 彼は視線を逸らして、暗い声で答えた。

「(……考えておくよ)」

 誰にも話したくない。話す気持ちもない。

 ハリーから、そんな雰囲気を感じ取った。彼の気持ちを考えず、軽率だったとクローディアは反省した。

「(ごめんさ。話したくないなら、それでいいさ)」

 真摯な態度で謝罪する。

「ねえ、クローディア。ロンに眼鏡をかけようと思うんだけど」

 ハーマイオニーに話を振られ、クローディアの意識はそちらに向く。

「なんで、勝手に決めるんだ」

 蛇のように目を細めたハリーが睨んでいると、気づけなかった。彼の表情を見ていたのは、足元にいたベッロとクルックシャンクスだけだ。

 

 快晴の風が吹く。

 『ホグズミード村』に2体の吸魂鬼がクラウチJr捜索の為に派遣され、主に夜の巡回を行っていると看板が出ていた。

 『三本の箒』の裏手、クローディア、ハーマイオニー、ハリー、ジニー、フレッドの5人はロンを変装させる。ただの変装でない。ハリーが変装しているように、見せかけるのだ。

 髪を黒くし、ハリーの眼鏡をかけたロンの少し印象が違って見える。

 しかし、何故か賢く見えない。

 ハリーには別の眼鏡をかけて貰う。細めのレンズは知的な印象を与えた。

 クローディアは普段通り影に変じ、ロンの影に混ざる。初めて、変身を見たフレッドとジニーは感心した。

 ハーマイオニーも『目くらましの術』で姿を消す。

「すごいよ、ハーマイオニー。全く、見えない」

 ロンは吃驚して、周囲を見回す。

 それらを見届けてから、ハリーは『透明マント』を被る。マントの中にベッロが入り込み、彼の身体に絡まる。これで変装したセオドールを見破るのだ。

 準備万端、フレッドとジニーは先に行く。

 緊張したロンはハリーの足跡や音を頼りに歩く。『ゾンゴの店』、郵便局を通り過ぎ、大通りを逸れる横道に入る。道の突き当たりに、その『ホッグズ・ヘッド』はあった。

 

 ――失礼ながら、ボロい。

 

 古いではない。ボロイいのだ。手入れのされていない看板、窓。ただ、人の住む気配を感じるので、不潔と呼ぶべきかもしれない。

 初めての店、ロンは緊張してしまう。躊躇っている内、フレッドがリーやジャックと和気藹々に扉を開けて入って行く。それに混ざり、彼もようやく店内に入った。

 本当に営業中か、疑う程、汚い。

 しかも、ホグワーツの生徒以外はフードや包帯で体を覆った人ばかりである。これで立ち入り禁止ではないから、不思議だ。

 長い白髪に顎髭を無骨に伸ばしたバーテンがフレッド達に注文を聞きくが、全く愛想のない。客人を邪魔者のように睨む。

 床からでしか見えないが、クローディアはバーテンに見覚えがある。記憶を辿る前に、バーテンの声がよく通った。

「注文は?」

「ファイア・ウィスキーとバタービール、2本ずつ」

 ロンは心を弾ませて答える。金額を言われ、ハリーは『透明マント』の隙間から、カウンターに銀貨を置いた。

「(ちょっと、お酒じゃない!)」

 ハーマイオニーの咎める声が聞こえた気がする。

 ロンが4本の瓶を手にしている間、ハリーは店内を見渡す。既に、ベッロはセオドールの居場所がわかっている様子だ。

 暖炉脇に進む。全身を黒いベールで覆う魔女ではなく、その隣の席にいる全身毛むくじゃらの男。ベッロはマントから顔を出し、毛むくじゃらの肩に触れる。驚いた毛むくじゃらは、真後ろのロンを見上げた。

 ロンの眼鏡を見て、毛むくじゃらはゴクリッと喉を鳴らす。立ち上がり、顎で2階を差した。

 階段を登る時、ジニーがマイケルと店に入ってきた。

 

 2階の個室に入り、扉を閉める。室内は蜘蛛の巣と埃まみれで汚い。

 傍から見れば、ロンと毛むくじゃらの2人に見える。毛むくじゃらは外套を脱ぐようにセオドールの姿を見せ、探るような目つきで室内を警戒した。

「お付きの『穢れた血』はどうした? どうせ、一緒にいるんだろ?」

「その言葉を使うな!」

 蔑みの言葉、ロンは憤慨して一喝した。剣幕を物ともせず、セオドールは乱暴に椅子へ座り込む。

「別に責めてねえよ。1人で来いなんて言ってねえし、いいから、出て来いよ」

 若干、怯えた表情でセオドールは自嘲する。挑発に乗ったわけではないが、ハーマイオニーは魔法を解いて、姿を見せる。ハリーが『透明マント』を脱ぐ仕草に合わせ、クローディアも影から出てきた。

 クローディアに驚いてセオドールは肩をビクッと痙攣させた。ベッロは扉の傍に行き、見張りを行う。ハリーは、ロンから眼鏡を返して貰い、セオドールを睨む。

「腹の探り合いはなしだ、ノット。何を聞かせてくれるんだ?」

 冷徹なハリーの問いかけ、セオドールは目つきを鋭くする。

「俺は聞かせたいんじゃねえ。知りてえだけだ。教えろ、ポッター。おまえが闇の帝王から、生き延びた術そのものだ!」

「それは、おまえ達のご主人さまから、ご高説賜ったじゃないか? 父親に聞いただろ? その力は、もう僕を守れないんだ」

 軽蔑する口調に対し、藁にも縋るような態度でセオドールは机を叩いた。

「だが、その護りは2度も、おまえを救っただろ! 頼む、その魔法を俺に教えてくれ!」

 叫んだ後、セオドールは興奮を抑える為、息荒く深呼吸を繰り返す。

 ただ事ではない彼の様子、クローディアは肩が触れられる距離まで歩み寄る。

「あんたらの間で何かあったさ? 仲間割れ?」

 落ち着いたセオドールは押さえつけるように髪を掻き上げる。

「ヤべえよ、正直。あれは本当にやり過ぎた。……あいつら、ファッジを殺っちまった。あの日和見のファッジはマルフォイの味方だったし、扱い易かった……。それなのに……。ビンセントとグレゴリーの親父が勝手に……」

 ガタガタと震えたセオドールを尻目にし、ビンセントとグレゴリーが誰か脳内検索する。一番に気づいたハーマイオニーは悲鳴を殺した。

「クラッブとゴイルの父親……!?」

 場の空気が凍りつく。

 知能がトロール並みと小馬鹿にされる2人の父親、まさかのファッジ殺害の犯人。全くの予想外に困惑してしまう。

「なんで? え? 嘘? どうやって?」

 思わず、ロンはハーマイオニーに問いかける。彼女は状況を推理しようと黙り込んだ。

「もしかして、ファッジを尾行していたさ? その先にハリーがいたさ?」

 ハリーは一瞬、否定しようとした。

 しかし、セオドールの前でダーズリー家には母と叔母の絆による護りがあるなど、口に出来なかった。

「そうだ。あのノロマどもは……。ファッジを監視する任に着いていた……。あの日も、ファッジを尾行していたら、途中で見失ったらしくて、なんかムカついて、マグルの建物をぶっ壊していたら……」

 ただの腹いせに、公園の遊具を破壊した。破片は近くを通りかかったハリー達へと降りかかった。ハリーとダドリーは『盾の呪文』で助かったが、ファッジは対応できなかった。

 事故だったのだ。

「なんだよ、それ……。そんな酷い話で、ハリーは裁判にかけられたんだぞ! というか、魔法省は本当に調べたのかよ! すぐにわかる事だろ!?」

「きっと、処理をした魔法省役員は『死喰い人』側か、マルフォイに買収された人よ。お得意でしょう?」

 激怒したロンと反対、ハーマイオニーは冷静に分析する。だが、手先と口調が怒りで震えていた。

 胸中に怒りを抱えつつも、クローディアは質問を纏める。

「スネイプ先生も、それを知っているさ?」

「知ってんのは俺とドラコ、ビンセントとグレゴリー、そんで親父達だ。誰にも、言うなって誓わされた」

 この告発、彼らへの裏切りとなる。それを覚悟で、セオドールはここにいる。その見返りにハリーの身を護り続けた魔法を求めている。

「あんたのお父さんは『死喰い人』を抜けたいさ? だから、家族全員で逃げ……」

 言い切る前に、セオドールの手で口を塞がれかけた。手が伸びた瞬間に、そっと避ける。そのせいで、彼は床に転びかけた。

「家族で逃げたいから、僕に魔法を教えて貰いたいってわけ? ヴォルデモートがそれを許すと思うか?」

 その名に、ロンとセオドールは怯えて肩を痙攣させた。

「逃げられねえのは、わかってんだ。カルカロフも捕まったしよ……」

 衝撃の報せに、緊張が走る。

「……報復されたのか?」

 強がりなロンの問いに、セオドールは否定した。

「わかんねえけど、まだ、殺されてねえよ。……けど、親父が言うには時間の問題だとよ。マジで、やべえ。なあ、逃げられんねえなら、何かひとつでも、護れる術が欲しいんだ。頼むよ」

 座り込んだセオドールは弱弱しく、頭を抱える。これがハリーを騙す演技かと疑う。しかし、最初から演技なら、ベッロは気づかないはずはない。

「スネイプ先生に相談したさ? あの人なら、私達の知らない護りの魔法を知っているはずさ」

「とっくに、相談したに決まってんだろ。けど、俺はまだ子供だから、授業の事だけ考えてろってよ。闇の帝王に信頼されてるから、余裕なんだぜ、ありゃあ……」

 悪態つくセオドールに、ハリーとロンはスネイプの非難に初めて同意を見せる。

 しかし、クローディアとハーマイオニーは確信した。スネイプに断られたセオドールは、本当に我が身を守りたいが為に、ハリーに教えを乞いに来たのだ。

 後はハリーの判断だ。全員の視線が、彼に集中し言葉を待つ。どんな結論も、クローディア達は受け入れる。

 沈黙した長考は、ハリーの開口で終わった。

「いいだろう。その代わり、僕たち4人がそれぞれ出す条件を飲むんだ。……まずは、僕だ。僕から教わった事をマルフォイ達、『死喰い人』に与する連中に絶対、教えない」

 昨晩、皆で纏めた条件。ハリーの視線に促され、ハーマイオニーは鞄から羊皮紙を取り出す。緊張したロンが強気で、セオドールを睨んだ。

「練習の場には必ず、複数の人間がいる事を了承しろ。つまり、おまえがハリーから教わっている姿を見られる事になる」

 ロンから視線を受け、クローディアは胸を張る。

「ノット、ダームストラングに転校するさ。あそこは闇の魔法使いを軽蔑している思考が強い。カルカロフが校長を務められたのも、改心したと認められたからさ。少なくとも、ここにいるよりは幾分か、安全さ」

 全く想定していなかった条件を突き出され、セオドールは反応も忘れてクローディアを見上げる。

「……『闇払い』どものせいで、『死喰い人』は国から出られねえって知ってて言ってんのか? それなのに、どうやって転校するってんだ?」

「それこそ、スネイプ先生に嘆願するさ。あの人は誰も見捨てない。本当に、ノットが逃げたいと思うなら、協力してくれるさ。それに転校が原因なら、あんた達、親子は堂々と国を出れるさ」

 正直、この条件をクローディア以外は反対した。セオドールが、より強力な闇の魔法を知る機会を与える事になる。彼が狡猾にして計算高くあるなら、寧ろ、闇の帝王への献身に利用されるだろう。

 

 ――だが、ここまでの彼の態度から、それはない。

 

 ハリーも認めたから、クローディアは宣言出来たのだ。

「全ての条件を飲めるなら、この羊皮紙に名前を書きなさい。私がかけた強力な魔法によって、契約されるわ。破れば、私たちから制裁を受けると思いなさい」

 ハーマイオニーの毅然とした態度で、締めくくられる。

「アンブリッジに知られれば、俺達もただじゃすまねえぞ? 優等生の監督生さん?」

 彼の皮肉をハーマイオニーは、余裕綽綽と受け止める。

「私、ちょっと反抗的な気分なの。それにね、ダート先生の授業だけじゃ、物足りないわ」

 今度は、セオドールが長考の末に条件を出した。

「その羊皮紙を絶対、なくすなよ」

 笑いのツボを押されたロンが思わず、噴き出す。

 一瞬の油断もなく、緊迫した空気の中、5人の名前は羊皮紙に書きこまれた。自分達の名を改めて見つめ、ここに契約が成されたと実感した。

「礼は言わないぞ、ハリー=ポッター」

「期待してない」

 それを最後に、ハリーは『透明マント』を被る。その動きに合わせ、クローディアも影へ変じる。ハーマイオニーも『目くらましの術』で姿を消した。

 ロンは細い眼鏡をかけ、机に放置していたファイア・ウィスキーを一飲みした。

 

 帰路に着いても、緊張は解けない。

「割とあっさり承諾したわね」

 ハーマイオニーの声は士気高揚に震え、クローディアにも感染して身震いする。

「多分、告発を条件にしなかったからさ。でも、得られた情報は有効に使うさ。ロン?」

「おう、ちゃんとパパに連絡して、事実確認しまっす!」

 呂律の回らないロンをハリーは支えて歩いた。

 

 城に到着した瞬間、ロンは倒れた。酒のせいだ。彼の行動を勇敢と讃えたフレッドとリーに抱えられ、彼は医務室に連れていかれた。

「もう少し、きつく叱っておかないと癖になるわね」

「いや、これに懲りたらやらないさ」

 呆れたハーマイオニーを宥め、クローディア、ハリー、ジニーでジョージを探す。彼に特訓の場を頼んでいた。無事に見つけられた事を祈る。

「マイケルにも、ジョージを探しに行かせたわ。彼にも、練習に参加しないかって誘ったら、来てくれるって……。場所の事だけど、私としては『秘密の部屋』でもいいと思うわ。だって、ハリーにしか入口は開けないもの。今なら【改訂版ホグワーツの歴史】に書いてあるから、いろんな子が女子トイレを見学に行くそうよ。1年生の子が言っていたわ」

 ジニーからの衝撃的な事実、クローディアとハーマイオニーは嫌な汗を掻く。

 ここ、最近2人は『嘆きのマートル』に睨まれていた。大切な住処が不特定多数の生徒に、興味本位でウロウロされては迷惑だろう。その原因が2人が出版した本なら、怒って当然だ。

「それはマートルが可哀想だから、最後の手段にしてあげよう」

 不憫に思ったハリーからの情け、クローディアとハーマイオニーは真っ青な顔色で同意した。

「クローディア! ちょっといいかな!?」

 元気溌剌のネビルに呼び止められ、クローディアは皆に視線で先に行くように促す。

「どうしたさ?」

「へへ~ん、僕達、いいところを見つけたんだ♪ 一緒に来て、絶対、喜ぶから♪」

 ここまで元気の良いネビルは久しぶりだ。無碍にせず、彼に着いていく。

 

 ホグワーツ城は広い。広いだけでなく、いくつもの魔法の仕掛けがある。もう5年生になっても、少々、頭や体を使う。四苦八苦するネビルと違い、クローディアは勝手に動く階段や壁を物ともせず、目的地に到着した。

 8階の突き当たりには壁がある。否、壁しかない。それなのにネビルは浮足立ち、壁の前へと立つ。

「見ててね」

 そう告げた瞬間、壁の模様が這いまわり、重厚な扉へと形成された。

「へえ、こんな仕掛けになっていたさ」

 新たな感動にクローディアの心は躍り、ネビルがさっさと扉の中へ招き入れた。

 そこはバスケ部の部室そのままだ。コートの周囲は観客席に包囲され、百人は余裕に入室できる。城の形と構造が合っていないなどという野暮なツッコミはしない。

 既に、モラグやクレメンス、デレクにシェーマスまでコートでボールと戯れていた。クローディアとネビルに笑顔で駆け寄ってきた。

「え!? 何、コレ!? どうしたさ?」

 クローディアの驚く反応、満足した5人は悪戯が成功した表情で笑い合う。

「すごいでしょう? ここね、『必要の部屋』って言うんだって、ウィンキーっていう妖精に教えて貰ったんだ」

「ほら、ハッフルパフ寮の傍には厨房があるだろ? 『屋敷しもべ妖精』なら、いいところ知ってんじゃないかなって、デレクが言い出してな?」

「はっはい! 僕達、泣き寝入りせずに、もうやれられるだけやろうって決めたんです!」

 ネビルから、クレメンス、デレクが説明して、シェーマスは威張る。

「そうそう、正面切って抵抗するより、隠れてコソコソすることも勇気のひとつなんだぜ?」

 ウィンキーの名に、心底、驚いた。そして、彼らが部活の為に、アンリッジに見つからぬ場所を探してくれた行動に、深く感銘を受ける。

「ありがとう、すっごい嬉しいさ。部活の皆にも教えるさ。先生にも」

「え? 先生に教えんの?」

 シェーマスが露骨に嫌そうな顔をする。

「いいんじゃないかな? せめて、バーベッジ先生にだけは教えてあげよう。先生だって、息抜きが必要だよ」

 優しく微笑むネビルに、シェーマスは渋々、頷く。

 これから再び、部活動が出来る。感動のあまり、全身に心地よい粟立ちを感じる。

「よし、部活を始める前に! まずは、ウィンキーにお礼を言いに行くさ! 彼女の協力なしに、この部屋は見つけられなかったさ!」

「え! あの妖精、女子なの!?」

 ネビルのツッコミは、さて置き、皆、大賛成してくれた。6人はこの上ない満足感と共に部屋を出た。

 

 外にはハリーがいた。ハーマイオニー、ジニー、ジョージ、セドリック、マイケル、そして、ドビーまでいた。

「使っておられたのです! 中で誰かが使っていた場合は、外から開けられないのでございます!」

 甲高い声を抑え気味にウィンキーは、ハリーに訴えかけた。

「皆、この部屋をいつから、知っていたの?」

 質問するジニーに対し、きょとんとしたデレクはドビーの背に合わせて身を屈める。

「この子、ウィンキーじゃないですね?」

「ええ、ドビーよ。ウィンキー!? 貴方達、ウィンキーに教えて貰ったの?」

 吃驚したハーマイオニーは、声を抑えて叫ぶ。大体の状況を察し、全員、部室と化した『必要の部屋』に招き入れる。ドビーは案内の役目を終えたらしく、ハリーに挨拶して瞬時に消えた。

「うわお! すっごい良い部屋だな!」

 感動したマイケルを尻目に、情報交換する。

 城に残っていたジョージは図書館、『叫びの屋敷』、空き教室と練習場所を考えていた。もしくは、今だに見つけていない隠し部屋を捜索していた。先に『ホグズミード村』から帰ってきていたセドリックに見つかり、遠巻きに相談した。

 セドリックは競技大会の折、『屋敷しもべ妖精』から卵の仕掛けについてのヒントを得た事があり、ジョージと共にドビーへ相談しに行った。

 ドビーはハリーの為ならと、『必要の部屋』を教えた。

 セオドールと特訓する場所として『必要の部屋』は最適だ。優先順位はわかっているが、部活もしたい。

 魔法の特訓に興味を持ったネビル達を見れば、部屋の譲り合いをしても文句は言わない。

「部活は週一予定さ。週末がいいさ?」

「うん、僕は勿論、いいよ! ねえ、ハリー、その特訓って僕も参加していい?」

 ネビルを皮切りに、クレメンスやデレクも参加を希望した。シェーマスはハリーに対し、バツの悪そうな顔をして唇を噛む。

「その集まりって名前とか、あんの?」

 予想外の質問に、ハリーは一旦、呻く。そして、ハーマイオニーへと視線を移す。

「名前はいいわね。皆との連帯感や一体感を生むし、次の会合で決めましょう。皆も案があったら、考えておいてね。……それじゃあ、まず、リーダーを決めましょう」

「ハリーだよ。リーダーはハリーだ。俺達の……」

 シェーマスは我先にと声を上げる。新学期初日から、ハリーを批判した挙句、同室でありながら無視していたと聞いていた。

「あんな婆を送ってくるなんて、魔法省はおかしい……。そう思ってよ……酷い事言って、ごめん」

 罪悪感を交えた謝罪はハリーの表情に喜びを与え、シェーマスの意見は通り、この場にいる全員、リーダーを決定した。

 ハーマイオニーの契約書に皆、名前を書いていく。

「モラグは参加しねえの?」

「これ以上、勉強の時間を作るのは勘弁して……。会合の事は黙っておくから」

 クレメンスに問われ、モラグは真っ青になって断った。

「誰でも参加出来るのですか?」

「ハリーを信じていて、秘密を守れる。そして、ハリーが承諾した人よ。ノットの事もあるし、あまり、大勢が集まるのは危険だわ」

 デレクの質問に、ハーマイオニーは丁寧に答える。

「先生に言っちゃ駄目だよね?」

「そのほうが賢明よ」

 残念そうなネビルの質問に、ジニーが念押しして告げた。

 次の会合を明日の午後に決め、解散した。すぐにクローディアとハーマイオニー、ハリーは厨房に向かう。

「なんだか、大所帯になりそうな気がするさ」

「今更だけど、僕がリーダーで良かったのかな?」

「そりゃあ、色々と忙しいのは、わかるわ。クィディッチに試験に補習とね。皆が貴方を必要としているってことよ」

 ハーマイオニーの励ましに、クローディアは疑問が浮かぶ。

「補習って何さ? 試験に向けて、猛特訓さ?」

「……厨房で話すよ」

 ハリーが緊張した声で答えた時、厨房に着いた。歓迎してくれたのは、ドビーを含めた他の妖精達だ。ウィンキーはまた、悲しみの涙を零す。

「ウィンキー、ありがとうさ。貴女のお陰でとっても助かったさ」

 感謝を述べても、ウィンキーは声を出さずに泣き続けた。哀愁漂う姿は、3人の胃を重くする。

「これでも、いくつか落ち着いたのでございます。ウィンキーは言葉や態度には出せませんが、よくなりつつあります」

 必死にドビーがウィンキーの様子を解説する姿さえ、3人に罪悪感を与えた。妖精達に、椅子とツマミ菓子を用意して貰い、有難く休憩する。

「僕、スネイプ先生から『閉心術』の授業を受けるんだ。来週から、週に一回ね」

 過密な日程に会合を少々後悔した。しかし、ハリーは平気だと返す。

「『閉心術』? 名前からして『服従の呪文』への対抗策みたいなもんさ? というか、なんでスネイプ先生さ?」

「校長先生が、あんまり知られていない魔法だって言ってたよ。スネイプ先生が相手なのは、僕の苦手な人だからって……。相手が苦手な程、効果を発揮するらしいよ」

 この上なく、納得した。

「まだ、お祖父ちゃんの夢を見るさ?」

「……いいや、見てないよ」

 返答までの間が、非常に気になる。

 これまでの付き合いから、ハーマイオニーは疑惑の視線をハリーに向ける。彼はお盆で防いだ。

「ねえ、ハリー。私、思うの。シリウスにクリーチャーと打ち解けるように説得すべきだわ。貴方がね」

 驚いたハリーは、お盆を下げる。

 クローディアには、十分、理解出来る提案だ。厨房の『屋敷しもべ妖精』を見渡す。ウィンキーは悲しみに顔を歪めながら、ドビーの傍で仕事に励んでいる。

「ブラックは、クリーチャーを嫌っているさ。それって、マルフォイがドビーにした事と同じさ。ドビーはマルフォイ家を見限ったさ。クラウチさんは、ウィンキーを捨てたさ。その結果が……息子から……。このままだと、ブラックは報いを受けるさ」

「シリウスがマルフォイやクラウチさんと同じだって?」

 不愉快と顔を歪めたハリーに、ハーマイオニーは警告を強める。

「お願いよ、ハリー。貴方しか、シリウスを説得できないわ。貴方だけがシリウスを助けられるのよ」

 彼女達の懇願は、真剣だ。

 2人を交互に見つめ、ハリーは躊躇いながら承諾した。

 

 ハーマイオニーに連れられ、クローディアは図書館で『閉心術』について調べた。勉強中のクララを発見し、『閲覧禁止の棚』まで案内して貰った。それでも、どの書物にも記載はなかった。

 スネイプに質問しても無視されるだけだ。仕方なく、コンラッド宛ての手紙をモリーへ出した。

 

 翌日、『必要の部屋』は変化していた。否、自分達の望み通りに物を与えてくれた。

 壁際の本棚には【通常の呪いとその逆呪い概論】、【闇の魔術の裏をかく】、【自己防衛呪文学】、【呪われた人の為の呪い】等、書物が並ぶ。椅子はなく、大きな絹のクッションが床に丁寧に置かれていた。そして、奥の棚には様々な道具が陳列していた。

 見事な品揃えに、感動している間。メンバーはぞろりぞろりと、集まった。

 会合は、本当に大所帯となった。

 レイブンクローから、7年生クララ。6年生ミム、チョウ。5年生クローディア、パドマ、リサ、セシル、アンソニー、マイケル、テリー。4年生ルーナ、シーサー。

 グリフィンドールから、7年生フレッド、ジョージ、リー、アンジェリーナ。6年生アリシア、ケイティ。5年生ハリー、ロン、ネビル、シェーマス、ディーン、ハーマイオニー、ラベンダー、ハーバティ。4年生ジニー、デメルサ、コリン。2年生デニス、ナイジェル。1年生ユーアン。

 ハッフルパフから、7年生セドリック。6年生クレメンス。5年生アーミー、ジャスティン、ハンナ、スーザン、エロイーズ。3年生デレク。

 スリザリンから、5年生セオドール、ブレーズ、ダフネ。

 計43人。2クラス分に近い人数も集まった。ハリーと面識があり、信頼を持てるという条件なので、グリフィンドール生に偏る。

「ちょっと、待て! ノット! なんで、他にもスリザリン生を連れて来てんだ!」

「こいつらは、『死喰い人』絡みじゃねえし、こんな人数に俺だけがスリザリン生って、拷問か!?」

 案の定、ロンとセオドールは揉め合う。それをハリーが仲裁した。

「2人は、バスケ部にも参加していた。…途中から、来なくなったけど、それはクローディアが『死喰い人』の関係者である事を恐れたからだ。それに、組分け帽子の警告もある。僕達は、寮を問わずに協力し合うんだ。勿論、裏切れば、絶対に許さないよ」

 難色を示す者もいたが、ハリーの宣言に皆、渋々納得した。

「ところで、どういう誘いを受けたの?」

「うるさいパンジーを出し抜かないかって言われたわ。成績だけなら、私のほうが上なのに……あいつ、ごちゃごちゃと……」

 セシルの問いに、ダフネは文句を述べながら、答える。

「ちなみに、おまえは?」

「一緒に来てくれたら、課題のレポート写さしてくれるって言うからだよ」

「やっすい! そんな理由で、ほいほい着いてくんなよ!」

 マイケルの質問に、ブレーズは素直に答えた。その内容に、ディーンは吃驚して叫んだ。

 会合の初日、議題は名だ。チョウが防衛協会(ディフェンス・アソシエーション)を提案し、略してDAとなった。ハーマイオニーの言い出したダンブルドア軍団とも略称は、合う。

 まずは防衛術の基本『武装解除の呪文』から、始まった。

 ハリーはセオドールを中心に、手解きを行う。セドリックやクララが下級生を見てくれた。

 『武装解除の呪文』を余裕だと言い張る上級生は、クローディアとハーマイオニーの指導の下、杖なし状態で呪文を繰り返す。杖がない状態では、ピクリとも発動しない者がほとんどだった。

「ロジャーは、来なくても……マリエッタは来ると思ったさ」

「私が誘わせなかった。マリエッタの母親は、ディゴリーさんに反ハリー派になるように勧誘されていてね。すっごい、板挟み状態!」

 やれやれと、ミムは肩を竦める。マリエッタの親友であるチョウは、悲しそうだが納得していた。その表情は、ロジャーを「酷い奴だ」と評したセドリックに似ていた。

「(ここだけの話、チョウは最近、セドリックと上手いってないんだ)」

 ミムの余計な情報に、チョウが益々、悲哀に満ちていた。

 

 『必要の部屋』は、非常に便利だ。出口を望めば、8階とは違う場所へと出してくれる。ただ、入口だけは動かなかった。

 万一に備え、クローディアは影を伸ばして扉に触れる事にした。誰かが向こう側の壁に近寄るか、触れれば、すぐに察知できる。

 しかし、会合の日取りが決まっても、セドリック達への伝言が難航した。クローディア達は腕輪の文字で日取りを簡単に知れる。セオドール達はベッロがこっそり報せる役目を追っていた。

 バスケ部の活動とかち合わないように、日程も調整せねばらなかった。部には、モラグしか帰って来なかった。部活の為だけに、危険を犯したがらない。ネビル、クレメンス、デレク、シーサー、ジニー、ルーナ、エロイーズ、ハンナ等のDAメンバーがかけ持ちして参加してくれた。

 アンブリッジもただ、学校で時間を過ごしていない。

【寮席は己を寮生としての自覚させる為に存在するのである。従って、他寮の席に座る事を違反とする】

 意味不明な告知で、ハーマイオニーはレイブンクロー席に座れなくなった。

「大広間で、こそこそされたくないんですわ。ええ、堂々と人が集まれるんですから」

 怒り狂ったリサは、談話室の告知を燃やす。しかし、次の瞬間には新しい告知用紙が貼られた。

 

 コンラッドからの返事は、一週間後に届いた。

 『閉心術』は『開心術』の反対呪文に該当する。『開心術』は、すなわち『読心術』より鮮明に深層心理や記憶を覗き込む。反対呪文の効果だけでなく、『服従の呪文』、『磔の呪文』など精神に関係する魔法の影響から心身を守りきれる。

 そんな説明文だけの手紙だった。

(ああ、私、スネイプ先生に『開心術』を使われたさ)

 3年生の折、口論になった末の出来事だ。つまり、ハリーは『閉心術』を会得するまで、スネイプに『開心術』で記憶を覗かれ続けるのだ。

「最悪な拷問さ」

 心底、ハリーを憐れんだ。

 『数占い』の授業で、ハーマイオニーに説明文を渡す。彼女はベクトルの目を盗んで必死に書き写した。

 

 4度目のDAにて、ハーマイオニーは名案を持ち込んだ。

 偽物のガリオン金貨だ。問題は、その鋳造番号をDAの日取りに変化させる魔法だ。

「日時が変更になると、金貨が熱くなるから、ポケットに入れておけば感じ取れます。1人、1枚ずつ、持っていて下さい。ハリーが次の日時を決めたら、ハリーの金貨の日付を変更します。私が『変幻自在』の呪文をかけたら、金貨は一斉にハリーの金貨と同じ番号に変化します」

 得意げなハーマイオニーに、クララを含めた数人(主にレイブンクロー生)は絶句した。

「貴女……『変幻自在』が使えるの? ……まだ5年生なのに?」

 予想以上に驚かれ、ハーマイオニーは恥ずかしそうに身を捩らせる。

「ハーマイオニーなら、お手の物さ」

 クローディアが我が事のように、褒める。レイブンクロー生7年生から、お墨付きを貰った偽金貨は全員に間違いなく、配られた。

「ねえ、その……『変幻自在』って難しいの?」

「そりゃあ、『N・E・W・T試験』に匹敵する魔法だ。ああいうのを天才って言うんだろうなあ。レイブンクローに来なかったなんて、信じられない」

 アンソニーに聞かされ、ハリーは腕時計を見た。そして、クローディアに耳打ちする。

「これも『変幻自在』だよね? 僕、時計に呪文をかけた覚えないけど」

「ハリーの……言葉をかけられたら、作動するようにしてるさ」

 腕時計を指差すハリーに、クローディアは簡単に説明した。時計と偽金貨を眺め、彼は目を丸くした。

「ああ、そうか、これって『闇の印』に似ているんだ。あいつらの入墨も触ると仲間に伝達していた……」

「ええ、私はそれを参考にさせて貰ったわ。もっとも、私は皮膚じゃくて、硬貨に刻んだの」

 指摘され、ハーマイオニーは少々、躊躇いながら解説した。

「絶対、2人のやり方がいいよ、本当に」

 ハリーの呟きは納得を意味していた。それを称賛と受け取ったハーマイオニーは嬉しそうだ。勿論、クローディアも褒められて心が躍った。

 

 ハロウィンの朝。【日刊予言者新聞】、【週刊魔女】、そして【ザ・クィブラー】の一面を飾ったのはビンセント=クラッブとグレゴリー=ゴイル、両名の父親がファッジ殺害の容疑で逮捕されたという記事だ。

 2人への誹謗中傷は視線や手紙となって降り注ぐ。精神的に堪え切れず、退学するかに見えた。しかし、嫌がらせを全く物ともしない図太い神経の持ち主であった。

 スネイプが己の寮生を庇い立てする事も残留の理由だろうと、しばらく城中はこの話題で持ち切りになった。

 




閲覧ありがとうございました。
スリザリン生は、勇敢だが、最終的には自分の身が大事。なので、セオドールはドラコにも内緒で、誰かに教えを請うても不思議はない。と勝手に思いました。
原作より、DAメンバーが多いので、マリエッタやザカリアスは省きました(ごめんね)
ファッジ殺害の犯人は、クラッブ、ゴイルの父親です。
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