SAO Takt   作:赤チョコボ

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4 第一層ボス攻略会議

茅場晶彦からの洗礼の後、無我夢中でプレイヤー達の前で演説をした日から1ヵ月が経った。

プレイヤー数は大きく数を減らし、千人の命が失われた。

一万分の千、プレイヤー数は一割も減っていた。

無我夢中で行った演説もプレイヤー達に希望は与えたが、それでも閉鎖されたこの環境は日毎にプレイヤーの心を抉っていった。

千人の犠牲者の内、半数は街中での自殺である。

日が経つにつれ、無理な攻略するものも増え、プレイヤーは確実に数を減らしていった。

一層突破は一ヵ月と予定はされていた、しかし犠牲はあまりにも多い。

 

イルファング・ザ・コボルド・ロード。

それが第一層のボスの名前だ。

討伐の為の攻略会議はディアベルにより招集されたトッププレイヤー達は指定された小さな闘技場に集まっていた。

全員が集まったことを確認すると控えていたディアベルは中心へ歩み出て話し始める。

 

「今日は俺の呼びかけに応じてくれてありがとう。知ってる人もいると思うが改めて自己紹介しとくな。俺はディアベル、職業は気持ち的にナイトやってます!」

 

前にも言っていたがこれは彼の持ちネタなのだろうか。

だがそのおかげか討伐の為緊張していたプレイヤー達は肩の力を抜くことができたようだ。

拍手と囃し立てるような声が闘技場内に響き、ディアベルは言葉を重ねる。

 

「みんなに集まってもらった理由は言うまでもなくボス討伐の為だ。始まりの街では俺達に希望を託して、みんなが自分にできることをしてくれている。その期待に俺達は応えないといけない」

 

ディアベルの言葉にプレイヤー達の目に火が灯る。

ディアベルは言葉を続けようとしたが、一人の男が立ち上がり大声で割り込む。

 

「ちょーと待ってんかい」

 

そのまま闘技場の観覧席からジャンプで階段を下り、ディアベルの前に立つ。

 

「ワイの名はキバオウ。こん中に今まで死んでいった人達に詫びなきゃいかん奴がおるはずや」

「詫びなきゃいけない奴ですか?」

「とぼけんな。ベータテスター達の事や。ベータテスターが率先して情報をプレイヤーに流せば犠牲はもっと少なかったはずや。あいつらは今までそれをしなかった分、ここにいるプレイヤーに装備やコルを支払って今までの清算をするべきや」

 

無茶苦茶な話だ、今からボスを倒すのにベータテスターから装備を取り上げる?

犠牲になった人達は確かに攻略の遅さに蝕まれ、命を落としたのかもしれない。

だが初層突破に一ヵ月かかることは情報屋を通し全プレイヤーに広まっている。

これ以上の速さでボスに挑むことは自殺行為。

その為ギリギリの安全マージンを取って一ヵ月、そう伝えられたはずだ。

 

「発言いいか?」

 

存在感のある声とともに大男が立ち上がり手を挙げている。

筋肉質な体にスキンヘッド、さらに髭面の物々しい見た目の男が眼光も鋭くキバオウを見据えている。

 

「俺はエギル、ここに集まったプレイヤーはこのガイドブックを知っているか‽」

 

エギルの手にはプレイヤーメイドの分厚い本。

集まったプレイヤー達もウィンドウを開きオブジェクト化をしてガイドブックを出現させる。

 

「知っているけどそれがどうかしたんか」

「このガイドブックは始まりの街のどんなショップにでも置いてある。俺は作った人物が気になって情報屋からその人物の情報を買っている」

「その情報屋の名前は?いい加減なやつじゃないんやろな」

「鼠のアルゴだ」

 

鼠のアルゴ。

それは数いる情報屋の中でもこの一ヵ月、一番精度の高い情報を売っていた人物だ。

トッププレイヤー達は情報集めを怠らない、ここにいるプレイヤーなら一度は利用したことがあるだろう。

それゆえに信頼できる。

そう集まったプレイヤー達は判断した。

 

「なるほど、それでガイドブック作ったプレイヤーがベータテスターだって言うんか?馬鹿馬鹿しい、あいつらはゲーム始まってすぐに自分の保身のために先へ進んだんや。そんな奴らがわざわざそんな本作るわけないやろが」

「確かに制作を主導したプレイヤー自体はベータテスターではないらしい。これは鼠のアルゴ本人から聞いた情報だ。この本は情報提供者から全プレイヤーに公開するように言われた情報を集めた本らしい。情報提供者の名前は巻末に記載されている、中でも多くの情報を提供しているのがこの会議の主催者ディアベル、キリト、そしてタクトというプレイヤーだとアルゴは言っていた。この情報は別料金をとられたがな」

 

キリトとタクトのプレイヤーネームはこの場所では知っているプレイヤーのほうが少ない。

必然的にディアベルに視線が集まる。

 

「確かに俺も情報提供者の一人だ。けどこれは俺が始めたことじゃない。名前の挙がっているタクトさんに協力を呼びかけられて、それに応じただけだ。キリトも同じ。ちなみに俺はベータテスターだ。」

 

弾圧しようとしたベータテスターに目の前のディアベルが含まれることを知り、キバオウが一瞬たじろぐ。

それに構わずディアベルは続ける。

 

「タクトさんはあの日チュートリアルの後演説を行った人物だ。この中にも演説を聞いたプレイヤーもいるんじゃないか?」

 

その言葉に何人かのプレイヤーが頷く。

 

「ベータテスターの中にも情報提供者がいるんはわかった。けどまだワイは信用ならん。ベータテスターが初心者ほっぽり出して自分の保身に走ったのは事実や。ディアベルはん、あんたが指揮を執るならワイは抜けさせてもらうで」

「確かにベータテスターの中にはそんな人間もいるだろう、同じ括りのベータテスターを信用できない、というのは暴論だけどわからなくはない。だから俺はベータテスターじゃない、タクトさんに指揮をお願いしたい。タクトさん、答えを聞かせてください」

 

ディアベルがタクトに視線を向けるとプレイヤー達も視線を追う。

その先のタクトに見覚えがあったのだろう何人かのプレイヤーが確かにあの日演説してた人だと呟く。

タクトもこの日の為に覚悟をしてきた。

その場で立ち上がりディアベルに応える。

 

「初めまして、私がタクトです。まずはキバオウさん、それに皆さんに謝罪させてください。申し訳ありませんでした」

 

突然謝られるとは思わなかったのかキバオウが面食らった表情を浮かべる。

 

「なんやいきなり、謝るってことはあんさんもベータテスターか」

「いいえ、私が謝罪をしたのは情報が広く行き渡らず、千名もの犠牲者が出てしまった件についてです。私はベータテスターではありませんが、彼らに協力を頂いてなお、犠牲者を減らすことができなかった。その点は私の力不足です」

「はっ、信用ならんな。口ではなんとでも言える」

「そうですね、ですがその前にボスの攻略についてお話させていただきます。ボスの名前は皆さんご存知かと思いますがインファング・ザ・コボルト・ロード、取り巻きとしてルイン・コボルト・センチネルが存在すると思われます。ですがこれはベータテスト内での情報です、今回もそうとは限らない」

「私とディアベル、キリトが今まで集めた情報の中ではベータテストに登場したモンスターとボスフロアまでのモンスターは特に違いはないそうです。ですが攻撃パターンに差異が確認されています。これはディアベルに確認を取りました、確かな情報です」

 

その言葉にプレイヤー達の表情が緊迫した物へ変わる。

 

「ちょーと待ってんかい。それはつまりこの攻略会議が意味のないものに変わるかもしれない、そう言っとるんか」

 

プレイヤーを代表してキバオウが問う。

 

「ボス自体の変更がありうるかもしれない、という意味ならそうです。しかしこの会議が無意味な訳ではありません。ボス自体の変更、あるいはパターンの変更があるかもしれないという事をこの場の全員が理解する。その意味でこの会議は無駄にはなりません」

「どういうことや」

「今はベータテストではなく、本サービスだという事です。既存のモンスターに攻撃パターンの差異がある以上、登場するボスはすでに変更されている可能性をこの場の全員で理解する事で不測の事態を避けます。これから先、攻略が進むにつれてベータサービスにはなかった変更点、新階層も出てきます。その心構えを全員でしておくべきなんです」

 

考えてみれば未確認情報が出てくることは当たり前のことだ。

ベータサービスで踏破した階層は百層には程遠いはず。

 

「加えて言うならすでに情報のある分慢心の生まれやすい低階層ではそのようなことがある、という意識の有無で犠牲者は減らせると私は考えています。第一層のボスはインファング・ザ・コボルト・ロード、取り巻きにルイン・コボルト・センチネルがいると仮定します」

「ベータテストの情報では残りのヒットポイントゲージが一本になるとタルワールを装備し強力な攻撃を行ってくるとの事です。取り巻きのほうは大ボスほどの脅威はないそうですがこちらも油断はしないでください。ベータテストとは違う行動をとる可能性もあります」

「今回は集まった人数を考え六人パーティをA、B、C、D、E、のパーティに分け、残りの4人をF隊とします。ABC隊はボスの足止めを、DEF隊で取り巻きを排除しボスへ加勢する方針で攻略を進めます。見る限り今回はパーティでの参加が五つはあるようですので人員を振り分け編成します。申し訳ありませんが個人単位での参加者はパーティバランスを考えて各パーティに参加してください」

 

それぞれプレイヤー達はパーティを組み始める。

六人パーティができたのは四つ、四人パーティーが一つだ。

面識があるプレイヤーとやはり組みやすいのだろう何人かが残る。

残ったのはエギル、ディアベル、キリト、タクト、両手剣を持った大柄なプレイヤーとフードを被った比較的小柄なプレイヤーだ。

 

「ディアベルと剣で防御のできる両手剣さんはあちらの四人パーティに合流してください。それからディアベルは防御可能なプレイヤーの多い二隊と連携してABC隊を率いてください。私とキリト、エギルさんとフードの方はF隊です。ダメージディーラーの多いDE隊と連携して取り巻きを速攻で撃破しABC隊に合流します」

「また各隊の中で三名づつを前衛、後衛ととしてリーダーは後衛に入るようにしてください。仮定と異なる状況に陥った時はパーティリーダーの指示に従ってください。前衛後衛でポーションの使用時間を交代で稼ぎ、不測の事態に陥った場合にはパーティリーダーの指示に必ず従ってください」

「最後にボスへの最後の攻撃を行ったプレイヤーにLAボーナスという形で強力なドロップアイテムが付与される可能性がありますが、第一層の攻略においては獲得者にすべての権利があるとみなします。以上を基本方針として攻略を進めますが何か質問があれば挙手をお願いします」

 

流石はトッププレイヤーといったところで挙手は見当たらない。

次へ移ろうとしたところでキバオウが挙手をする。

 

「最後の最後になってあんたら以外攻撃するな。なんてことはあらへんやろな?」

「ありません。他に質問はありませんか?ないようでしたらこれから三十分のパーティミーティングの時間を取ります。その後パーティリーダーは私に誰かリーダーになったか連絡をお願いします。リーダーの確認が終わり次第ボス討伐を開始します。各自それまでに心の準備をお願いします」

 

説明が終わり各自パーティミーティングを開始する。

それぞれがトッププレイヤーだけあり皆真剣に打ち合わせをしている。

ボス討伐まであと三十分。

俺もパーティメンバーとボスの攻略のため打ち合わせを始めた。

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