ガンパレード・マーチ episode OVERS 作:両生金魚
正直に告白すれば、恋に恋をしていた所は凄くあったと思う。昔から恋愛小説が好きで、いつかはこんな恋をしてみたいと思ったのだ。と言っても、女子校のアンツィオでは出会う機会すら中々生まれなかったのだが。そして、戦争の足音がついに日本まで迫ってくると、いつの間にか自分たちも戦うことになってしまった。
故郷の愛知、そしてアンツィオの有る栃木から遠く離れた熊本は色々と勝手が違っていたが、現地改造された対空戦車を押し付けられて、何とか隊の皆を生き延びさせることが出来た。同年代の学兵も沢山居るのでひょっとしたら出会いもあるだろうか?なんて考えても居たのだが、どうにもいい相手は見つからず、それどころか自分も含めてうちの子達がジロジロといやらしい目で見られる始末。確かにこんな時代で戦争に放り込まれた以上男子も仕方ないのだろうが、やはり愚痴の一つもこぼしたくなってしまう。
そして何とか運良く生き延びられたものの、あの熊本城での決戦の日、とうとう自分たちの運も尽きてしまったのかと死を覚悟した。大量の押し寄せる幻獣、間に合わない包囲援軍。何とか頑張って一人でも多くを生かしたいと思って居たが、同時に無理だろうと言うことが分かってしまった。
小型幻獣に殺される時は、自分たちもバラバラにされてしまうのだろうか。そうなる前にいっそ……と、思わず車内に有ったハンドガンに目を向けてしまう。そして、一度でいいから素敵な恋がしてみたかったな……と心が悲しみで満たされた時、私はきっと運命に出会ったのだろう。
『どうも、こちら5121小隊4番機猫宮悠輝です、援軍に来ましたっ!』
戦場に似つかわしくない、明るい声。そして聞き覚えのある名前。猫宮悠輝。散々プロパガンダに使われた、学兵どころか全軍きってのエースの一人。ほんの短いやり取りの後、絶望的な数の幻獣に向かって迷わず突撃し、目の前の絶望も理不尽も何もかもをも叩き潰していくその姿に、確かに希望を見たのだ。
長い長い戦いの中、まるで一心同体になったような不思議な感覚が生まれた。自分の指揮と、彼の戦いがピッタリ噛み合うかのような。そして、その感覚を証明するかのように驚異的な速度で幻獣が消えていく。気がつけば、戦いが終わっていた。
最後には太刀一本で戦い抜いた彼が降りてくると、その笑顔にドキリとした。……我ながら単純だと思うのだけれども仕方がない。ここでお別れなのだろうかと考えて、寂しさやら不安やらが襲ってくる前に「そうだ、安斎さんの部隊も5121と一緒に行動しない?」と誘われたのは、凄く嬉しかった。
それからだろう、私の運命が一変したのは。私の部隊は5121とその仲間たちに引き合わされ、合同訓練を行い、交流も一気に増えた。特に、補給が潤沢になったのは特にありがたく、お腹いっぱい食べられる日が増えたのは皆とても喜んでいた。――そして何より。
「やっ、安斎さん足りない物とか無い?」
と、ちょくちょく心配してくれる彼との交流がとても増えたことだろうか。一番最初はただの吊り橋効果だったのかも知れない。けれど、共に過ごす内に。共に訓練をする内に。共に戦う内に。この胸の内の想いはどんどんと強くなっていったのだ。一時の気の迷いや勢いでないと、胸を張って言える程に。
最も、私と同じ立場のライバルが多いのが悩みのタネだったのだが。まあ、それはそうだろうとも思うし、何より同じ立場のライバルたちも攻め落とせてない難攻不落。そして鈍いのかとも思えば……そうでもない。気が付いていても、気が付かないふりをしているか、恋愛は駄目だと律しているか。
まあ、普通ではないのも分かる。色々と忙しいのも、特別な能力か何かを持っているのも。――ただまあ、こんな恋愛小説や少女漫画のような事を自分で思うなんて考えたこともなかったのだが――
恋する乙女にとって、関係ないのだそんな事は。相手が精霊だろうと、妖精さんだろうととっても凄い只の人だろうと。だって、恋をしてしまったのだから。
【IF:とある戦闘と戦闘の合間に】
善行戦隊はとても強力な部隊である。それ故に非常に便利使いされ、あちこちの戦場で引っ張りだこである。だが、人型戦車の部隊も増設されると、ようやく大きな単位でのローテーションが組めるようになってきて、それに合わせて部隊の休憩時間も十分に取れるようになってきた。疲労がとても溜まる前線のパイロットは機体から降りると大抵そのままどこかで寝てしまうのだが、その時間が十分取れることで長期的な戦闘力は向上したように思う。
これはそんな休憩中の一幕。12時間の大休止が言い渡され、パイロットも戦車兵達も後方で久々にウォードレスを脱ぐ。適当な服がなかったので体操服とブルマに着替えて髪を下ろし、頭から水を被り汗を流してスッキリすると聞き慣れた足音が近づいてくる。
「千代美さん、お疲れ様っ!」
「ああ、お疲れ様♪」
戦闘後だと言うのに、あはは~と柔らかく微笑んでる猫宮と、同じ顔をしている千代美。
「休憩所、こっちみたいだよ」
「ん、分かった」
そして、千代美の手を取ると迷い無く接収されたとある民家へと歩を進める。周りでは他の女の子たちが「いいな~」とか「羨ましいな~」なんて言っている。ちょっと罪悪感を覚える千代美だが、それでも幸福感には勝てなかった。遠くではまだ砲声の木霊する戦場での貴重なひと時。恋人と共に過ごす事への誘惑には勝てなかった。
靴を脱いで家の中へ。ドアを閉めて和室で二人きりになると猫宮がむぎゅっと抱きついてきた。
「ふぅ……今回も疲れたよ」
「よしよし、お互い頑張ったな」
頭を撫でると、ごろごろと猫のように甘えてくる。普段、猫宮が他の人には見せない姿を知っていると思うと、なんとも言えない嬉しさがこみ上げてくる。ギュッと抱きしめられる肌のぬくもりと身体の大きさと、よく鍛えた男の子の筋肉の程よく硬い感触。それらが、猫宮がとても男の子だと言うことを強く意識させてくるのだ。
「大休止だ。とりあえずどうする?」
「そうだね……とりあえず一眠りしたいかな……。それからはイチャイチャしながら考える」
「うぅ……ス、ストレートに……ま、まあわたしも異論は無いんだが……」
千代美がちょっと照れてゴニョゴニョしている間に部屋の隅に畳んで置いてあった布団をささっと敷いて、二人してぽふっと横になると休息に眠くなってくる。布団から香るお日様の香りと、横に大切な人がいる安心感からだろう。向き合って、手を繋いで目を閉じると相手の存在を感じつつ眠りの中へゆっくりと落ちていく。間近に感じる体温や呼吸の音や香り。それが、低く小さく響いてくる砲声を一時でも忘れさせてくれるのだ。
たっぷり3時間は寝た後、先に起きたのは猫宮だった。起き上がろうとすると、腕がぎゅっと掴まれていたので離れられない。
「仕方ないし、このまま眺めてるのもいいかな?」
可愛い寝顔を側で見れるのは彼氏の特権だよね~なんて思いつつ、手櫛で髪を漉いていく。普段は頑張ってお手入れをしているのだが、前線付近に長期で居るとどうしても荒れてくる髪に四苦八苦している様を知っていると、早く後方に戻してあげたくなる……
「って、考えが暗くなっちゃった。ダメダメ」
最悪を考え続けるペシミストとしての癖は、せめてこういう時くらいは抜いておかねば。というわけで、忘れるためにも愛でることにした猫宮。髪を漉いた後は、ほっぺをぷにぷにしたりつんつんしたり、ちょっとキスをしてみたりと寝ている千代美で癒やされる。寝ている女の子にいたずらするのは背徳感が有ってとても楽しい。
よし、もう1回と顔を近づけたら、千代美の腕が急に後ろへと回された。
「……全く、寝ている所に変なことするなんて悪い人だ」
むぅ~と不機嫌そうな顔をするけど、あくまでフリをしているだけ。声色は既にデレッデレである。
「だって離してくれなかったんだもん」
おでこをくっつけてクスクスと笑う。もう一回キスしようとしたら、今度は困惑した顔をされた。はてな?と首をかしげると、顔を赤くして恥ずかしそうに俯く千代美。
「い、いやな……戦闘詰めでちょっと身体とか汚れてるし、汗かいちゃったし、乙女としては色々と気になっちゃうのだ……」
「いや、むしろちょっと興奮しt「へ、変態!」わぷっ」
真っ赤になって枕をぶつけて、ごろごろと猫宮の下から脱出すると、髪をささっと整え始める。外からは、5121小隊特製カレーのいい香りが漂ってきた。身体が休まり、心の披露も回復すると急にお腹が減ってきた。
「とりあえず、次は何をするか食べてから考えようか」
「うむ、栄養補給だな」
猫宮も立ち上がり、うーんと思いきり身体を伸ばす。正義に燃える心と明日への希望と仲間たちに守るべき人々。そして隣に愛する人がいる限り、いくらでも頑張れそうだと思うのだ。
「しかし、カレーかぁ……」
二人で香りの方へと歩きつつ、ちょっと悩ましげな猫宮。
「なにか問題でも有るのか?」
カレーばかりで飽きたのだろうか?確かに炊き出しがしやすいからと定番になってしまったが……
「いやね、カレーを食べた後のキスは……」
駄目だよね?と目で訴えられる千代美。
「……念入りに歯は磨く。そっちもちゃんとする事。あと、レモンも頑張って齧る」
確かに今、素敵な恋をしているのだけれど。それでも恋愛小説みたいなロマンチックを演出するのも戦場では大変だと千代美はため息を付いたのだった。
【妄想オーケストラ的ゲーム的セリフ集】
「訓練は頑張っているか? 物資に不足はないか? 友達に死んでほしくはないからな。だから小姑みたいな小言だって頑張るぞ」(友情・中)
「戦友というものは良いな、特に命を預けられる間柄は。戦争は嫌な事ばかりだが、かけがえのない友達に出会えたことは数少ない良い所だ」(友情・大)
「何処かの誰かの未来のために戦うのが我々だが……わたしは、お前のために戦いたいな。命を懸けるならば、自分が納得できる理由が良い。……こら、照れるな照れるな」(友情・特大)
「ど、どんな料理が好きなんだ? イタリア料理なら一通り作れるぞ。洋食はそれなり、和食は少々……。パスタやピッツァなんかの材料は、代用品が多いが……が、頑張る」(愛情・中)
「むぅ……最近、うちの子たちの前で威厳を保つのが大変なんだ。お前の事を考えると、つい頬が緩んでしまう。困った困った……でも離れられないのはもっと困った。とりあえず愛情補給だ」(愛情・大)
「距離が近い? 当たり前だ。おまえは私のもので、私はおまえのものなんだからな。他の女が寄り付かないようにしてるんだ。……だっておまえモテるんだもん」(愛情・特大)
「最近、お前が戦場で考えてることが分かる気がしてきてな……戦いやすいだろう?」(信頼・中)
「お前と一緒に戦うと最近負ける気がしないんだ。ふふっ、この戦争、どうにか生き延びれそうだ」(信頼・大)
「お前は何処まで行くんだろうな……エースになり英雄になっていく姿が見えるようなんだ。その隣でも後ろでも良い。わたしも戦友として側に居させてくれ」(信頼・特大)
「~~♪ え? 機嫌が良さそう? お前が側にいるから当然だろう。夢も叶ったしな♪」(恋人)
「よしよし動くなよ……マーキング中なんだ。これ見ても引かない女は思いっきりひっぱたくから目立つ所に……あっ、こら!」(愛してる)
千代美は恋人繋ぎをして側にぴったりと寄り添っている。鼻唄も歌って期限がとても良さそうだ。(夢中状態)
「……バカッ!! こんな所まで恋愛小説のお約束をなぞる事も無いじゃないか……ぐすっ」(嫉妬)
「やだ……やだぁ……お願い、捨てないでくれ……何でもするから……」(別れてくれ・失敗)
「ふふっ、実は着痩せするタイプなんだ……好きにしても良いんだぞ……あっ……」
「ソックスが好きとかお前も大概……うぁ……これで……いいか?」
「あっ、こらぁ……そこに付けたらうちの子たちに見られちゃうだろ……はうぅぅ……」
(Hな雰囲気)
【嫉妬大爆発】
険悪な空気の下、安斎千代美が肩を怒らせて近づいてきた。目が怖い。
西住まほが近づいてきた。なぜか安斎千代美に顔を近づけた。
ニァ ぎこちなく挨拶する
ぎこちなく挨拶をする猫宮。だがこちらには見向きもしない。
「この人は私のものだ。近寄らないでもらおうか泥棒猫」
「寝言は寝てから言え。彼に近づくなこの雌猫め」
しばし睨み合う二人。そして、同時にこちらを見た。
「「どっち!?」」
ニァ あっちと言って逃げる
「あーっ!逃げた!」
「追え!」
猫宮は走って逃げた。
「……どうしてこんな事に……」
うなだれる猫宮。
『猫宮の士気が-100』『猫宮の発言力が-1000』
甘い描写するのがなかなか難しい……恋愛描写は好きだけど書くとなるとまたやっぱり勝手が違いますね。嫉妬大爆発の方はイベント再現だけじゃなくて、小説として書いたほうがまた面白いかな?それともセリフ集に先行後攻入れるだけでいいだろうか。
しかし、絢爛舞踏祭みたくエンディングを迎えて問答無用で消えたりしたら仲間たちは勿論好感度上げた子達や恋人がとんでもないことになりそうだ……