ガンパレード・マーチ episode OVERS 作:両生金魚
さて、原作よりも被害が少なかったということはその分お説教に小言に整備班からのいたずらが少なくなったということでも有り、代わりに様々な交流が増えたということでも有る。これらは、そんな日常の1コマ集。
『ファーストコンタクト?』
3月下旬、夕刻。校舎裏。猫宮が歩いていた。ふと、岩田と目が合ってしまった。ふふふふと不気味な笑みを浮かべ、迫ってくる岩田。
「ふふふふふ、グッドイブニイイイイイング!私は、このSSのヒロインでああああるううううっ!」
めごしゃああっ!
「はっ!?」 思わずシャイニングウィザードを華麗に決めた猫宮。と言うか何のためにクロスさせたと思ってるんだよボケ!お前がヒロインな訳ねーだろうが!
「フハハハ!やはり、わたしの目に狂いはなかった!ナイスツッコミです!さあさあさあ、私と共に世界を目指すのでs具覇亜っ!?」
びしいっ!と指差すモーションの途中に裏に回りこんでバックドロップを決める猫宮。言語中枢が狂ったようだが気にしない。
「腐腐腐歩々……逃しませんよっ!」
ねこみやは にげだした! しかし、おいかけてくる!
この後2時間程二人で走り回りました。
終われ。続くな
『第二次合同射撃訓練』
5121小隊は半数以上が非戦闘員の整備員たちで構成されている。彼らは戦闘の矢面に立つことこそ無いものの、原作では度々幻獣に襲われている――が、やはり、練度も装備もお粗末であった。というわけで、またまた猫宮の出番である。ハンドガン程度は常備してあったので、70式をかき集めてまた合同訓練だ。なお、実施にあたって整備班長以下殆どの整備員からブーイングが上がったが、やはり黙殺されたのは特筆にも値しないだろう。
「……すげーなー……整備とか、もう教える事無いな……」
「うん……」
さて、まずは分解整備であるが、これはもう整備員たちの得意分野である。張り切って教えようとした1組の面々では有ったが、一を聞いて十を知る勢いで覚えていく整備員組に全く口出しできず、逆に教わったりする始末である。この点では、2組の面々は鼻高々だ。体力や戦闘の面では大抵が1組に負けていたこともあり、勝てる分野が出て嬉しいのだろう。特に新井木などは露骨に滝川に自慢などをしている。
――とまあ、整備員たちが鼻高々だったのはここまでである。整備は整備員として得意であるとして……実際の射撃の方だ。
筋力が足りないのか安定が悪いのか、ウォードレス無しで連射をしようとするとひっくり返りそうになるわと非常に危なっかしいのである。もう、教える側が慌てて避難しかけるレベルである。
「全く、皆だらしがないわねぇ」 とは原の言である。
「整備班長、貴女もですよ?」
「私はいいの」
「いえ、やってもらいます」
「私は……分かったわ、やるわよ……」
原は何時もの如く逃れようとしたが、そうは猫宮が許さなかった。時々猫宮が見せる本気の表情に、思わず原も押し黙って同じく実弾で訓練させられる。
……なお、結果は森やら田辺やらと同レベルであった。このため、数日間は機嫌が悪かったようで、整備員たちは要らぬ心労が祟ったようであった(合掌)
「全く、みんなだらしがねぇな」
「まあ、皆さん慣れてないのでしょう」
と、ほとんどが落第点をとっている中、余裕でクリアする者たちも居る。田代や遠坂だ。他にも、岩田もそこそこな点を取っている。
「んんんんん~~~!エクセレエエエエエエントッ!いい反動ですっ!」 ノリノリの岩田、これで点がいいのだから始末に終えない。
そんなこんなで大不評のうちに終わった射撃訓練であったが、この結果を重く見た善行以下戦闘班の判断により、これからも度々開催されるのであった。
『誕生!5121小隊名物和風カレー!』
5121小隊は総勢20名以上もの人間が同じ場所で働いているが、そのタイムスケジュールはまちまちである。忙しい時も有れば暇なときもあるし、また何もない時はそれぞれが自習をしたり訓練をしたり、他の部署を手伝ったりしている。そんな訳で、食事の時間も量もバラバラになりがちである。
こりゃ問題だということで、石津萌具申の元、出撃の後の大仕事の後は、炊き出しが不定期で行われることになった。メニューは、豊富なじゃがいもをマッシュポテトにし、和風出汁から作ったカレーを掛けて食べるマッシュポテトカレーである。
本日はその1回目、5121小隊の家事技能を持った連中を中心に、野菜の下ごしらえから始めていた。
「しかし、こげん肉、よく手に入れたばいね……」
「ははっ、色々と伝手があるんだよね」
「お肉、貴重デス。たくさん食べてもらえれば皆精が付くデスね」
中村、猫宮、ヨーコがじゃがいもの皮を向きながら話していた。皆、なれた手つきで次々と薄い皮と沢山の剥かれたじゃがいもを量産していく。
「出撃の後……は……徹夜の人も多い……わ……。だから……沢山食べて貰うの……」
「ええ、ちゃんと食べないとお肌も荒れちゃうしね」
「うう、でも沢山食べるとやっぱり太っちゃうかも……」
石津、原、森は大鍋で玉ねぎを炒めていた。飴色になるまでちゃんと炒めるのがコツである。
その回りでは、滝川や新井木や若宮や来栖などの雑用係が、テーブルや椅子を出したり皿を取り出したり、雑用にこき使われていた。基本的に、技能がない奴らのヒエラルキーは果てしなく低いのだ。
「しっかし、お前も生き生きしてるよな……」
「えっ、そう?」
田代と速水は野菜を刻む。しかし、速水はなんとフリフリのエプロンを付けて調理をしていた。どう見てもノリノリである。
「あはは、まあ、キャンプみたいで何だか楽しいやん?ね、なっちゃん?」
「ふんっ」
横では加藤と狩谷も手伝っていた。狩谷も何だかんだで満更でもなさそうである。
「次に水を2500cc……こら、あかね!貴様、3cc少ないぞ!」
「べ、別にそれくらい誤差じゃ無いか!」
そして何やら分量を量っている天才二人組。少しずれているのはご愛嬌だろうか。
「ああ、こんなに灰汁が出て……勿体無いです……」
「いやいや田辺さん、ちゃんとたくさんありますから」
そして田辺と遠坂が灰汁を取り除いていく。田辺はその性分からか、本当に灰汁だけを取り除いていた。
「あのね、いいんちょう、ののみ、とってもたのしいの!」
「ええ、本当に。――本当に、素敵な光景です」
善行も、東原と一緒に細々とした作業を手伝っていた。とても、眩しそうに。
さて、じゃがいもは一部はカレーに、殆どはマッシュポテトと化して、切られた材料はコトコトと煮こまれて、その他飲み物や何やらが用意されて、いよいよ完成である。雑用係が盛りつけして、肉もたっぷり入ったカレーがそれぞれに配られていく。そして、挨拶は善行だ。
「では、皆さん、日頃いろいろとありましたが、今日これを頂いて、しっかり体力をつけて下さい。では、頂きます」
『頂きます!』
ちゃっかり顔を出してきた教師も含めて5121小隊全員の声が唱和する。辺りであちこちに話しの花が咲き、皆中村特製の秘伝出汁カレーを存分に味わっていた。
そんな様子を、少し離れたところから猫宮が眺めていた。とても楽しそうに、でも、少し寂しそうに。そんな様子に気がついたのか、速水、滝川、茜が寄って来た。
「こら、猫宮! せっかく肉あるのに何で一人なんだよ!」
と、滝川だ。ほかほかのポテトにたっぷりの肉でご満悦である。
「ふ、何時もなら君は真っ先に騒ぐはずだろう?」
しかしそんな中、頑なに肉なしにするのが茜だ。
「あはは、ほら、明るく行こうよ」
と、速水が続く。――こんな、こんな体験が、猫宮は、本当に嬉しかった。だから「うんっ!」と、満面の笑顔で応えるのだった。
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