ガンパレード・マーチ episode OVERS   作:両生金魚

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09/02 最後の挨拶を修正しました。芝村の反応と言い速水の呼び方と言いダメダメでした……


合同訓練

「インストール……パラメータは……後調整を……」 

 

 猫宮は、女性陣から逃げ出すように黒森峰のシミュレータールームを訪れて、人型戦車のソフトをインストールしていた。勿論、Yagami達謹製の方のソフトである。

 

「とりあえず、みんながそれぞれ微調整した設定も入れて……と」

 

 これから何度も訪れるであろう場所なので、最初の設定は念入りに。

 と、そんな調整をしていると音を必死で殺しているであろう足音が3つ聞こえてきた。ふと振り返ると、そこには西住姉妹と逸見エリカがこちらを覗き込んでいた。気が付かれると思ってなかったのか、ちょっとあたふたする3名。可愛い。

 

「あ、あの、お邪魔してしまいましたか……?」

 

「ううん、殆ど終わったから大丈夫」

 

 申し訳無さそうなまほの言葉に、猫宮が端末を弄りながら答える。エンターキーを押して、体ごと後ろに振り向いた。それを見て、近づいてくる3人。

 

「先日は、第3小隊を。それに……みほを助けていただき、本当にありがとうございました」

 

 深々と礼をするまほ。そして、みほとエリカもそれに続く。

 

「うん、どういたしまして。でも、勝てたのは戦場に居たみんなのおかげでも有り……みほさんの指揮のおかげでも有ります」

 

 穏やかな表情で、猫宮はそれに応える。

 

「ええ、それも分かっています。しかし、あの戦場を変えたのは、確かに貴方です」

 

 頭を上げつつ、まほそう話す。

 

「あはは、まあ、確かにそうかな」

 

 とても穏やかな人物のようだ。戦場に立つ時とはまるで違う。しかし……あの時と同じように。

 

「それで……あの。貴方は、あの時何をしていたのですか?」

 

 少し迷ったが、意を決したようにまほが問う。エリカもみほも、まっすぐこちらを見ていた。

 少しの間逡巡、猫宮は鷹の目を発動する。この3人以外には、人は居ないようだった。盗聴器の類も無いだろう。

 

「……これは、かつて世界に大切にされた者達の光」 

 

 あの時の光が、猫宮の回りを漂う。そしてそれに驚く3人。エリカがそっと手を伸ばすと、彼女の回りをふわふわと漂う。それを見て、まほとみほも手を伸ばした。

 

「世界を守ろうと、死して尚も輝き続ける」

 

「あなたは……」

 

「目に見えるものだけが真実じゃない。音に聞こえるものだけが真実じゃない。自分は、それを知っているんだ」

 

 そう言って微笑むと、光が猫宮のもとに集まり消える。

 

「あ、でもこれは他の人に言わないでね。どうか内密に」

 

 くすっと笑って人差し指を口の前へ。思いもよらなかった真実というやつに、3人は「は、はい……」とだけしか答えられない。

 しばらく、不思議な空気が流れる、が……

 

「おやおや、やはり猫宮くんは隊長3人が気になりますか?」

 

 不意に入り口から声が掛かる。見ると、蝶野中尉やら瀬戸口がニヤニヤとこっちを見ていて善行やら芝村は呆れ顔、壬生屋は何やら激高しかけてて、速水や滝川はびみょ~な表情でこっちを見ている。そして何やらひそひそ話し合ってる黒森峰戦車中隊の皆さん。

 

「あっ、いやこれはそのっ!?」

 

「ふ、ふ、ふ、不潔ですっ!」 何時も通りな壬生屋

 

「……猫宮君……」 呆れ顔の善行

 

「と、とりあえず全部インストールはしておきましたので!」

 

 そうして、猫宮はシミュレーターに逃げ込むのであった。

 

 

「1号機から6号機まで単横陣2列で対応、圧力を掛けろ。第3小隊、左翼へ回り込め」

 

『了解!』

 

「5121各機、右翼へ展開、そのまま包囲して!」

 

 戦車9輌と4機の計13機。この数を活かし、幻獣を広く包囲する陣形を取る中隊と小隊。各機の自由射撃が、次々に敵を削っていく。ある程度までの数ならこれで十分対応できる――が。

 

「3号車、4号車被弾!」「みほっ! 1台回せっ! エリカ、陣形を組み替えるぞっ!」 「はいっ!」  「1番機、走行不能!」 「そ、そんなっ!?」

 

「ちっくしょう! 敵の数が多すぎるぞ!」 撃っても撃っても中々減らない敵に、思わず叫ぶ滝川。

 

 やはり敵の数が多くなってくると何処かしらか破綻が始まる。こうして、各戦線が破綻したことで撤退、8割の損害を受け何とか撤退――と言った結果に初回の訓練は終わる。

 

 さて、紆余曲折はあったがいよいよ合同訓練の開始である。と言っても、まだ初回なのでまずはそれぞれの隊毎に動かしてみたが、それでは今までとあまり変わることがない。……とは言うものの、黒森峰の練度が高く、またそれに人型戦車が合わさったので、それだけで驚くほどの戦果が上がったのであるが、やはり数がそこそこ出てくると破綻が始まる。

 

 とりあえず基本的なすり合わせのような訓練が終わると、いよいよ試行錯誤に移る。具体的には、2つの隊を合わせて完全に一つの隊として扱うようにである。

 

 基本は士魂号が常に移動し続け、時には地形に隠れて囮、そして囮に引きつけられたところをL型の射撃で大打撃を与える、L型が狙われたら士魂号で注意を向ける、航空ユニットは真っ先に排除する――この3つである。その結果は、劇的に現れた。

 

「す、凄い……どんどん敵が減っていく!」

 

「ああ、予想以上だ……速水、どんどんと引きつけるぞ!」

 

「了解!」

 

「各車、3番機を半包囲、ミサイルの使用を援護する!」

 

 第1小隊と3番機でも

 

 

「2番機、このルートで横切ってくれ、援護は任せろ」

 

「了解っす! はははっ、追いつけるもんなら追いついてみろっ!」

 

 軽装甲の脚力を活かし、不安定な地形を一気に横切り、敵の視界を引き付ける2号機

 

「凄まじい踏破能力……撃て、釣瓶撃ちよ、外さないように」

 

 第2小隊と2番機でも。

 

 

「参りますっ!」

 

 突撃すると豪剣一閃、ゴルゴーンが切り伏せられる。敵陣の奥で暴れる1番機。

 

「8号車はこの位置、9号車はこのルートから回りこんでください。」

 

 そして、1番機を狙う敵を危険な順から排除していく第3小隊。

 

 

 昨日と同じく、1小隊と1機ずつで組ませてみたのであるが、それぞれが昨日には及ばないにしろ、大きな戦果をどの隊も上げる。

 

「これは……凄いわね……」 「ええ、改めて見ても、凄い……」

 

 上官二人も、オペレーター二人も戦慄していた。殲滅のペースが、とにかく早い。

 

「これは、組み合わせ次第で戦術がかなり変えられそうですね……」 

 

「ええ。それぞれの隊長とパイロットの組み合わせを試してみましょう」

 

 善行と蝶野が様々にメモを取りながら話す。これは、明らかに今後の戦局を変えうる新戦術であるからだ。

 と、次は猫宮をみほ以外の隊長で試そうとした所で時間が訪れてしまった。

 

「何、もう終わりか? まだまだ出来るぞ!」

 

「こちらも、同じくです!」

 

 芝村とまほがそう言った。他のメンバーも、まだまだやる気に満ちていた。

 

「……我々も伸ばしたいのは山々ですが、既に他校の皆さんの時間が近付いて来ましたので……」

 

 苦笑して目を向けると、外では他校の女子生徒が待機していた。

 

「まあ、仕方ないよ舞。インストールしてあるから、また出来るだろうし」

 

「そうだな……。よし、では終了する」 

 

 

 そう言うと、芝村は5121のメンバーに号令をかけた。まほも同じく、である。

 

「では、本日はありがとうございました」 

 

 まほが芝村に向けて敬礼し、手を伸ばした。

 

「む、芝村に挨拶は無い」 

 

「む、む……?」

 

 そんな反応を返されて、流石に戸惑うまほ。5121小隊のメンバーは思わず苦笑している。

 

「あはは、ごめんね、芝村さんってちょっと変わってるけど悪い人じゃないから」 

 

 そこにフォローを入れる猫宮。

 

「……了解した」

 

「では、本日はお疲れ様でした!」 

 

 代わりに敬礼する猫宮。そして、それを見て一斉に芝村を除いた5121メンバーも続く。そして、更には黒森峰中隊の全員も。敬礼してないのはたった一人である。

 

「ぐ、ぐぬぬぬぬぬ……」

 

 苦虫を10匹ほど噛み潰したような表情でそれを見る芝村。そんな様子に、あちこちから思わず笑い声が漏れるのだった。

 

 

 

――以下どうでもいいおまけ()――

 

「……一体どうすりゃいいんだろうなぁ……」

 

 さて、キョロキョロと黒森峰で挙動不審なのはこの男、ソックスロボである。少々トイレに行こうと思ったが、女子校なので男子トイレは少なく、遠くまで走る羽目になった。そして、一人になったのでソックスハントの手がかり足がかりをどうするか考えているのであるが……これがまったく思いつかない。

 

「……は、話しかけるのも難しいよな……」

 

 男一人、回りからちょっとヒソヒソ話されたりで、非常に居辛い。顔を赤くしてそそくさとシミュレータールームに戻ろうとした所、ふと前に中隊メンバーの女の子人がしゃがんでいた。ヘアバンドをした長い黒髪の女の子である。

 

「え、えーっと、戦車中隊の人だよな……どうしたんだ?」

 

「……靴が中々合わない」

 

 見てみると、しゃがんで靴に指を入れ、なんとか履こうとしていた。しかし、中々ぴったり合わない。

 

「え、えーっと、靴下が厚くて合わないんじゃないか?」

 

 綺麗な足とソックスにドギマギしながら言うロボ。

 

「……そうだな。じゃあ、脱ぐか」

 

 そう言われると、素直に靴下を脱ぎだした。そのシーンに思わず生唾を飲み込むロボ。そして、その靴下を持って考えこむ女の子。

 

「……しまった、かばんが無い……」

 

 入れ物がないのか、ちょっと困った様子でキョロキョロ見渡す女の子。

 

「あー、じゃあ、後で捨てとくか?」

 

 と、自分のサイドポーチを指してロボが言う。本当に、それとなくのつもりだった。

 

「ん、じゃあ頼む。」 

 

 と、迷いなく滝川に靴下1足押し付ける女の子。そして、そのままてくてくとシミュレータールームへと歩いて行った。

 

「……え?」

 

 図らずも、ソックスハントに成功してしまったソックスロボ。純白の靴下から漂うほのかな女の子の香り。そして、くるぶしが少しほころんでいた。

 それを持って立ち尽くす、彼の明日はどっちだ!?

 

 

 終われ

 

 

 

 

 

 

 




何故ソックスを書く時ノリノリになってしまうのだろう……?

短編が出るとしたらどんな話が良い?

  • 女の子達とのラブコメが見たいんだ
  • 男連中とのバカ話が見たいんだ
  • 九州で出会った学兵たちの話
  • 大人の兵隊たちとのあれこれ
  • 5121含んだ善行戦隊の話

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