ガンパレード・マーチ episode OVERS 作:両生金魚
「信じられません……これは……奇跡です……」
「せ、先生、それじゃあなっちゃんは!?」
「は、はい、これなら少しずつリハビリをしていけば、また歩けるだけでなく、バスケットボールも出来るようになるでしょう」
「ほ、本当ですか……」 呆然として、呟く狩谷。
「なっちゃん、良かったね、本当に、良かったね……!」 そして、泣きながら抱きつく加藤。
医師は、そんな様子を微笑んでみている。思えば、ずっと献身的に狩谷に付き合っていた子だ。本当に嬉しいのだろう。
そして、狩谷から少しずつ、そして静かに嗚咽が漏れてきた。感情が溢れた。そして、ずっと献身的に尽くしてくれた加藤への思いも。そして、そんな泣き続ける狩谷を優しく抱きしめている加藤。
しばらくして、落ち着いてきた所で医師がまた話し始める。
「というわけで、リハビリのスケジュールを決めたいのですが……」
そう言われ、顔が曇る狩谷。彼は、優秀な整備員としてとても忙しいのだ。そして、それを知っているがゆえに医師も選択肢を提示する。
「ひとつは、病院に定期的に通っていただくこと。出来れば多いほうが良いのですが……もし忙しいのならば、誰かに手伝って貰って行うのも良いでしょう」
そう言われれば、やはり選択は手伝ってもらう選択だ。そして、それが出来るのは……
「やります! うち、何でもやります! だから、方法、教えてください!」
何かを言う前に、加藤が志願した。
「な、なあ、加藤……その、無理をしなくても……」
「無理なんかやない! うちは、うちがしたいからなっちゃんを助けるんや!」
そう言われ、思わず下を向く狩谷。僕は、こんな献身的な女性に今まで何をやってきたんだ……
「大丈夫や、なっちゃん」
ぎゅっと、抱きつく加藤。女性特有の柔らかさと、いい香りがした。
「新井木さんも、壬生屋さんも滝川くんも芝村さんもみんな少しずつ変わって行けてる。だから、なっちゃんもきっとまた、明るい元のなっちゃんに戻れると思うんよ」
無条件の愛と信頼が、そこにはあった。また、涙を流す狩谷。
「……その、本当にありがとう、そしてごめん、加藤……」
そう言うと、殴ってしまった場所に触れる。労るように、謝るように。
そして医師は、そんな様子を優しい目で見守るのだった。
そして、医者から戻り原に説明すると、事情を考慮して少し仕事量を減らそうとしてくれた。しかし、やはり忙しい時期だ。狩谷はそれを断った。そう言うと、原は「そう……」とまた、優しく微笑むのだ。
そして翌日、仕事が終わった後、狩谷は食堂に連れられた。何やら今日1日、他の連中がよそよそしかったので、一体何が有ったのかと少し怯えも有ったかもしれない。自分は、本当に回りに悪意を振りまいてきたのだから。そして、加藤にドアを開けられ食堂へ入ると――
パパパパパパンッ!
『おめでと~~~~っ!』
狩谷が中に入ると、一斉に破裂音がして紙テープが飛んできた。突然の状況に困惑する狩谷。中では、小隊メンバーが笑いながらこちらを見ていた。
「み、みんな……これは、一体……」状況がよく飲み込めず、思わず問いかける狩谷。
「足、動くようになったんでしょ? だから、皆でお祝い。狩谷君、何時も遅くまで整備してくれてるし」
笑いながら猫宮がそう言うと、皆も頷く。
「おめでとうっ!」 「おめでとうございます!」 「リハビリ頑張ってね!」 「困ったことが有れば手伝うから」 「ふふふふふ、めでたい、実におめでたいいいいいいっ!」
などなど、皆からの祝福の言葉が飛んで来る。そして、テーブルにはお菓子やらジュースやら、手作りケーキやらが並べられていた。
「……ありがとう、ありがとう、ありがとう……」
僕は、こんな連中にいつも皮肉ばかり言っていたのか……。そう思うと、また涙が溢れた。
「あはは、なっちゃん、泣きすぎ。ほらほら、お祝いなんだし、皆で一緒にケーキ食べよ! 猫宮君とヨーコさんと中村君の合作やで!」
「あ、ああ……」 そう言われて、真ん中に引っ張っていかれ、ケーキが切り分けられジュースが注がれる。
モノクロームの世界はどこかに消えていた。今の狩谷の目に、世界は極彩色に輝く。
「陰険眼鏡、もう卒業ね。えーと、じゃあ、眼鏡くん……?」
とぼけたことを言う新井木。それも何だかおかしくて、思わず笑ってしまった。
「狩谷で良いよ、新井木」
「うん、ちゃんとした顔で笑えるじゃない。じゃ、狩谷って呼ぶわ!」
その様子を、微笑んで見守る加藤。
「よし、じゃ、かんぱーい!」
『乾杯っ!』
猫宮の合図で、皆が食べだす。狩谷を祝いつつ、そして口実にみんなでワイワイと。こうして、5121の夜は過ぎ去っていったのだ。
数日後、また阿蘇戦区へと参戦する5121小隊。この平野は、どちらの勢力も意地になり、戦力を次々と投入している泥沼になっている状況だ。
「随分とごちゃごちゃした戦場だね」
「ふむ、もはや理屈ではないか……」
「うん。支払った血が多すぎて、もう撤退も何も出来ないんだよね」
「そなた、前にもそんなことを話していたな」
猫宮の呟きに芝村も言葉を重ねる。やはり、理屈だけでは動かぬことが多々あるようだ。と、そこへ瀬戸口から通信が入る。
「友軍から要請があった。正面の戦線から中型幻獣を駆逐して欲しい、とな。ただし、深入りはするなよ」
瀬戸口の声がコックピットに響いた
「了解した」 「了解」 「了解っす」 「了解です!」 「了解」
返事とともに、4機の士魂号が前進を開始する。その中で92mmを構える2,4番機、ジャイアントアサルトで歩き出す3番機。そして、2刀流で突撃する1番機。
「参ります!」
目の前に、ミノタウロスが見えた。そう、わたくしは破邪の剣。わたくしは皆を護る者――私はみんなの導き手…導き手?
ほんの一瞬、心に何かがよぎった。しかし、心は戦いに燃えている。目の前のミノタウロスが、巨腕を振り上げた。
――遅い。振り上げた方と反対側に回り込み、右で横薙ぎに一閃、ミノタウロスの胴と頭が別れた。そして頭が落ちる間に、その横のゴルゴーンに反対側の太刀を振り下ろし、両断する。近くに居たナーガは、更に右手のガトリングで薙ぎ払った。
ほんのわずかな間に、3体の中型を屠った壬生屋。あまりにも強烈すぎる、壬生屋流剣術のデビューであった。
「す、すげぇ……」 「凄い……」 「なんと……」 「壬生屋さん、一皮むけたね。凄いよ」
それぞれが、あっけにとられたパイロットたち。猫宮にとっても、想像以上の成長であった。
「2時方向、L型が退却中だ。そちらに2機程、そして10時方向に塹壕陣地。そっちには1機程頼む」
「ふむ、L型の支援には3番機と2番機が行こう。猫宮、塹壕の方は頼めるか?」
「了解!」
「では、滝川、ついてこい」
「あいよ、了解!」
壬生屋が大立ち回りをしている間、他の機は別れて味方を援護する。
「さて、と……」
走りだす4番機。猫宮の視界には、多数の幻獣に取り憑かれている陣地が映った。塹壕陣地は、キチンと作って有れば小型幻獣だけではまず陥落はさせられない。陥落するパターンは、目の前のように中型が幾らか混じっているパターンである。例えば、12.7mmでは10秒以上射撃しなければミノタウロスに有効打を与えられない。そちらに射撃を向ければ、あっという間に小型が陣地に群がり白兵戦、そして虐殺である。だ
だから、まずは狙うは中型だ。陣地に向けて走りつつ、ジャイアントアサルトをキメラに、グレネードランチャーを小型にばらまく。
半径15メートルの榴弾を、上から必要な位置に効率よく10発程度ばら撒くと、塹壕陣地に殺到していた小型幻獣があっという間に蹴散らされた。
「そこの塹壕陣地、こっちが囮になります。横を向いた隙に中型に火力を叩き込んで下さい!周波数は……!」
程なくすると、「了解、助かった!」との通信が入る。
それを聞くと猫宮はジャイアントアサルトを持つ手を持ち替え、20mmと12.7mmの弾をやたらめったらばらまいた。9mの巨人から放たれる弾幕に、中型が思わず横を向く。
そこへ、小型が消え暇ができた機銃と、設置式火砲の火力が叩き込まれ続け、どんどんと陣地の周囲から幻獣がすり減る。
「ふぅ、とりあえず一段落と。とりあえず、これからも陣地の前で中型を引っ掻き回すんで、横からお願いします! 動く方向は予め言っておくんで! 誤射に注意で!」
「了解! こんな楽な戦闘は初めてだ! 援護は任せろ!」
そう陣地からも通信が入る。一つの陣地が派手に敵を消滅させると、そこへ敵の意識が向く。集まってくる幻獣を、次々に血祭りにあげていく陣地と猫宮。そして、他の戦場が楽になる。向久原でも起きた、あの現象だ。横の戦場からの、支援砲撃もだんだんと増え始める。またここでも、すさまじい戦果が叩きだされていた。
一方、2,3番機は右手の戦場で戦っていた。2番機が狙撃をし、開いた穴に3号機が入り込み、ジャイアントアサルトで倒していく。狙撃をした2番機は、すぐにまた他の遮蔽物へ移動する。そして、その援護が有って、3番機は非常に楽に戦っていた。
「2番機、ナーガ撃破! ようちゃん、ちょうしいいね!」
「おう!」
ヘヘッと笑う滝川。
「うん、すごい楽だよ滝川、とっても動きやすい」
「そろそろあやつも類人猿は卒業か」すこし寂しそうな芝村。
戦場から戦場を横切り、荒波機のように囮として移動する3番機。引っ掻き回され横を向いた幻獣は、すかさずL型の餌食となった。
「おー、すっげー、やっぱりL型強いよなー」
移動しつつ、滝川が感心する。自分も92mmライフルを使っているが、やはり2,3発撃ち込まねばならない時もある。
「うん、そうだね。あの戦術、本当に戦いやすい」
黒森峰とのシミュレーション訓練で、L型との連携は想定できていた。そして、互いに訓練してない部隊でも、そこそこの戦果が上げられる。
「こちら第21装輪小隊だ。助かった」
「なんの。こちらも助けられた。下がって再編するとよい」
「ああ、感謝する。君たちにも武運を」
感謝の通信も送られてきた。それに気を良くする滝川と速水。と、ふと気配がしたので横を向く2号機。そこには真紅の士魂号が居た。
「あ、荒波司令だ!」
「何?」「あ、ホントだ」
「はっはっは、活躍しとるようだな5121の諸君。高所にも陣取って結構結構。だが、気がつくのが少し遅かったぞ。俺が敵ならまあ一発は被弾していたな」
「は、はい」
頷く滝川。高所に陣取る以上、広い視野は必要だと思った。そして、真紅の士魂号を見ると、なんと両手にはガトリングとグレネードランチャーが装備されていた。
「む、それは……」
「おお、これか。この間の君たちの戦闘を見てな。善行さんに火器管制やらをねだってな。そして使ってみたらびっくりだ。おい、こういうものは独占するもんじゃないぞ」
軽いながらも、真剣な響きが交じる。荒波も使って、あまりの有用性に驚いたのだ。
「す、すいません……」 「ふむ、と言われてもこれは4番機の隊員が装備を独自に取り付けたテスト武装でな」
「だから俺には届かなかったと……まったく。まあ良い、これで俺は更にパーフェクトになったぞ。……と、新しい命令だ。陣地の死守命令が出た。そこを抜かれたら、国道まで一直線、1個師団が干上がる。ここで踏ん張らないと、負けるぞ」
真剣な荒波の言葉に、飲まれる3名。
「よし、では我らもついていこう。全機、移動するぞ」
「ああ、頼む。君らはかなり出来そうだ」 同意する荒波。彼から見ても、今の5121は非常に頼もしかったのだ。
「了解です!」 「了解!」 「ネガティブ! 弾薬が殆ど空、ちょっと補給させて!」
「む、了解だ。猫宮、なるべく急ぐように」
「うん、了解、すぐに行く!」
猫宮からだけはネガティブがかえってくる。だが、3機に荒波小隊の3機だ。行けるだろう。そう思うと、一斉に移動するのだった。
「各種チェック表!急いで!」 「右脚、問題無し、オールグリーン!」 「12.7mmも40mmも20mmも92mmも……ああ、全部持って来い!」
一人補給に戻る猫宮。トレーラーの横へ行くと、一斉に整備員が群がる。
「猫宮君、異常は無い?」 原の通信が入る。
「はい、特に不具合もないです!いけます!」
そうして猫宮も内部で少し経口液を飲み、呼吸を整える。と、善行から通信が入った。
「悪い知らせです猫宮君、陣地西よりスキュラが3体確認されました……これを止めなければ、甚大な被害が出るでしょう」
「そして、他の機体は即応できず、高射砲も足りず……ですか」
次々と戦場の舞台を見て把握する猫宮。戦力が足りない。
「……お願いします」
「任せてください!」
「補給完了、猫宮君、行けるわ!」 原の声も響いた。
立ち上がる4番機。整備員が一斉に敬礼する。それに軽く手を上げると、猫宮はかけ出した。
凄まじいスピードで戦場を駆け抜ける4番機。見ると、スキュラが3体、今にもL型を襲おうとした。
「瀬戸口さん、前方のL型に通信を! スモークを使います!」
「わかった、頼む!」
そう言うと、ジャイアントアサルトに予め装填していたスモーク弾をスキュラとL型の間に撃ちこむ。白煙を上げながら飛んで行く弾丸。その煙の中に、猫宮も突入する。
視界をサーモグラフィーに切り替え、柔らかい腹に92mmを叩き込んだ。爆発と同時に炎が上がり、墜落するスキュラ。
そして、その銃口の光めがけてレーザーが飛んで来る前に移動、逆にレーザーの撃ち終わりに銃口に更に92mmを叩き込み、また1体が大爆発。恐怖したのか、爆撃しながら闇雲に近づいてくるスキュラ。また移動して、冷静に腹に銃弾を叩き込む。爆発。
「4番機、スキュラ3体撃破!……ゆうちゃん、すごい……」
「ああ、なんてやつだ……」 瀬戸口も絶句する。
まともに戦えばどれほど損害が出るかもわからないスキュラを、あっという間に3体も葬った。近場のL型からも歓声が上がる。
「それじゃ、後は陣地の遠くから狙撃しています! 何か有れば即応できるように!」
「ええ、了解です。猫宮君、お願いします」
そう言うと、猫宮は高台の上、狙撃ポジションに付いた。
それからはほぼ、原作通りではあるが、1,2,4番機もいたために幻獣は更に早い時間で数を減らし、荒波も援護の甲斐があって比較的軽症で済んだ。この分なら、1ヶ月も有れば完治するだろう。
こうして、阿蘇戦区の戦いは人類側の勝利で終わったのだ。
数日後、パイロット一同は荒波が入院している病院へと見舞いに来ていた。見ると、病室では4人の女子戦車兵が、荒波を甘やかしていた。
「おお、大所帯だな。速水に芝村、壬生屋に滝川に猫宮と。実際顔を合わせるのは初めてと言うのは妙なもんだ」
「あ、あのっ! だ、大丈夫ですか!?」 憧れのパイロットに直接出会えて、思わず声が上ずる滝川。
「はっはっは、まあ見ての通りだ。とりあえず命に別条はない」
「そ、そうですか! 良かったぁ~……」 ほっとする滝川。そして、パイロットに安堵の空気が広がる。
「ああ。そなたの働きのおかげで人類側は阿蘇戦区では優位に立てたようだ。もっとも、約10日間は、と言う断り書きが付いているが」
「ははは、そんなものさ。1パイロットの仕事にしちゃ上出来だ……とも言いたいが、5121の働きも大きかった」
何やら神妙に頷く荒波。実際に、戦闘で相当に助かっていた。その言葉に、嬉しそうにする滝川や壬生屋や速水。
「ええと……それで、荒波小隊はこれからどうなるのでしょうか……?」
「ああ、それなら俺が上層部に具申して解散することに決めた。動けるようになったら、俺は戦車学校の教官としてリハビリの傍ら、教える側に回る。この下僕どもは……」
言いかけて、ふぅと溜息をつく。
「引き続き面倒を見ることにしたよ。教官補佐という名目だがな。もうあんなことは懲り懲りだから、ちょっとは戦えるようにしてやるつもりだ」
それに強く頷く猫宮。
「あ、あの、本当にごめんなさい……」田中がしゅんとするのを、慰める荒波。何はともあれ、全員生き残れたのだ。
「ははは、それにしてもほんとうに驚いた。聞くと君たちはわずか数回の出撃だそうでないか。まったく、俺よりも才能があるやつが多いな、羨ましい」
そう言うと、荒波はそれぞれのパイロットとがっちり握手を交わす。
「あ、あの、俺、俺……師匠って呼んでもいいですか!?」
感極まって、思わず叫ぶ滝川。それに回りは笑い出す。
「おお、良いぞ! まあ、君の才能は確かに他4人に劣るかもしれん……だが」
「え、えっと?」
「だが、君が昨日見せたあの動きは、確かに他4人を助けられる。この俺が保証してやろう、君は別方面に才能がある!」
「ほ、本当ですか!」
「おお、本当だとも!」
喜ぶ滝川。それを微笑んで見守るパイロットたち。
「じゃあ、早速機体をレッドに!」
「おっと、それはやめておけ。俺様と比べられてしまうから」 朗らかに笑う荒波、肩を落とす滝川。
そして、パイロットたちそれぞれの心に真紅の軽装甲が消えることの寂しさを感じた。
「ふむ、では我らも受け継ごう。生き残ること。何が有っても生き残り、我らを必要とするたちを守っていこう。厚志と壬生屋と滝川と猫宮と。これだけいれば、達成できそうな気がするのだ」
その言葉に、他4人も深く頷く。
「僕は、舞と、そして君たちと出会えて本当に良かった……」
「自分もだよ!」 「あっ、俺も!」 「わたくしもです!」
思えばあの日、不思議な少年と、不思議な少女にであった。その日から、僕の日常は大きく変わった。あの、幽霊のような自分はもういない。これから、この大好きな仲間たちと、僕達を必要とする人たちを守っていくだろう。速水の、そして皆の顔に笑顔が広がった。
3月の冷たい風が吹き抜ける。出撃準備をする小隊の傍らに、本田と坂上がやってくる。皆、真剣な、そして、だからこそ少年少女のあどけなさが残る表情をしていた。
彼らは、自分たちの教えを超え、立派な戦車兵となった。それ故に、これからもどんどん激戦区へ送られていくだろう……。二人は、この学校で最後となる見送りを、5121が見えなくなるまでし続けた。
不意に、生徒たちの歓声が上がる。芳野春香がスーツ姿のまま舗道を並走して、手を降っていた。通行人は何事かと振り返るが、芳野は気にせず、こわばった、そして精一杯の笑顔で送り続けた。
「頑張ってね。先生、ずっとずっと君たちを見守ってるから――!」
そう叫ぶと芳野は息を切らせて立ち止まった。それでも必死に声を張り上げる芳野に、善行は、そして4機の士魂号は心からの敬礼を送った。
活動報告に一つ報告を入れました。もしよろしければ、目を通して回答していただければ幸いです。
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