ガンパレード・マーチ episode OVERS 作:両生金魚
泰守が前線から離れての翌日、来栖と猫宮は昨日の尾根に行って調査したが、その結果はおそらく逃したであろうということである。銃と弾の性能が良すぎて、綺麗に体を貫通したのだろう。
そして、泰守が撤退した以上、この戦区最後の芝村となった士官がいる前線に二人は張り込んでいた。顔つきがまるで違うが、それでも準竜師と似たような雰囲気を持っていた。
3人で訪れると、にやにやと笑いながら「例の芝村殺しか」と言った。
「危険な時間帯だ。建物内に」
「それでいいのか?」
来栖の言葉を、芝村中佐は手を降って遮った。 この地区では、周囲に狙撃できそうなポイントがまるで無い。もし、このまま引っ込んでいたら諦めるであろうと。要するに、囮になろうというのだ。
「なに、俺が死んだって代わりの芝村が来るだけだ。気の毒に、奴らは誤解している」
石津が猫宮と来栖を交互に見た。
「わたし……探す」
「……大丈夫?石津さん?」
来須は目を剥き、猫宮が心配そうにする。そんな様子を芝村中佐は高笑いを響かせた。
狙撃兵狩りにしては、この3人は滑稽に見える。大男、そしてこのエースパイロットは間違いなくかなりの実力者であるが、少女の方はどこにでもいる子供だ。
「迷子にならんようにな」 「危なくなったら逃げてね」
石津はペコリと頭を下げると、あっという間に駆け去った。呆気にとられる来須に、苦笑する猫宮。
「間抜けな面をしているな」 中佐がそう言う。周りには、動物たちが屯っていた。
「あの少女は何の役に立つのだ?」
「常人やプロとは違う視点、視野がある。時々、そういう全く専門外や別の視点からのものが役に立つことがあるのさ」
来須が考えている間、猫宮が答えた。それを聞くと、また中佐はガハハと笑うのだ。
「じゃ、自分は別の所探してみる」
来須が中佐の側につくと、猫宮はそういった。訝しむ来須。
「何をだ?」
「狙撃手の行動自体は一人だろうけど、芝村の情報を教えている協力者は、どこかで見ている可能性が高い。だから、そっちを狩る」
それを聞くと、来須は頷いた。中佐も、「欲張りなことだ」と笑う。
向かうは、石津が探索する地点を、観察できる地点。大体の当たりをつけて、走りだす。肩に、燕が止まった。
(猫宮さん、付近の林に女性が武器を持って観察しています。そして、辺りに多数のあしきゆめも待機しています)
(ありがとう、ツバメの少佐、報酬は後でたっぷり渡すから!)
(光栄の至りです)
そうして、教えられた方向へと向かう。
この世界に介入して初めて、人を殺す覚悟をして。
「やあ、こんな所で一人、どうしたの?」
猫宮は、笑いながら目の前の女性に話しかけた。その女性も笑いつつ、こちらを油断なく伺っている。周りに、ゴブ共の気配がする。
「ちょっと迷い込んじゃって。あなたこそどうしてこんな所に?」
「悪い人を探しにさ」
周りの殺気が強くなる。幾ら、人間が抑えてもゴブ共では抑えが効かないだろう。
「へ~、悪い人がいるんだ……怖いなぁ」
そういう目の前の女性。そして、それほど遠くない場所で銃声が1発聞こえた。その音を皮切りに、一斉に群がってくるゴブリンたち。そして、銃を向ける女。猫宮は女の方へ手榴弾を投げ込むと、女は遮蔽物に隠れる。
実体化した斧が、四方から飛んで来る。それを、最小限の動きでゆらゆらと動き交わす猫宮。殺意の中に動揺が混じった。
猫宮はカトラスと、銃剣のついたサブマシンガンを最小限の動きで手に持つと、無造作に薙ぎ払った。女は隠れ場所から頭を引っ込めたが、ゴブリンが銃弾に薙ぎ払われる。くるりと回りつつ、至近距離のゴブリンを叩き切り、銃剣で斧を叩き落とす。四方八方全てが見えているかのように、危険度の高い順からただ淡々と処理をしていく猫宮。
殺意に、恐怖が混じりだした。3方向から、ゴブリンリーダーが突進してくる。1匹にカトラスを投げると、もう1匹の赤目に銃弾を叩き込み、至近距離によってきて、斧を振り上げた最後の1匹の懐に潜り込み、手甲から飛び出たブレードで急所を掻き切る。更に銃だけを出してこちらを撃とうとした女へ、1匹のゴブリンを蹴り飛ばす。持っていたハンドガンが、弾き飛ばされた。それを、目ざとく撃ち抜く猫宮。銃が、壊れる。
血を吹き出させ目潰しをし、流れるような動作でリロードを行い、足で投げたカトラスを拾う。数も殺意もあざ笑い、数十匹の幻獣を殺す猫宮。一方的な殺戮が、行わていた。旗色の悪さを感じ、こちらに催涙弾と閃光弾を投げてくる女。それを、O.A.T.Sのサポートにより、投げた直後に撃ち落とした。
「化物かしらっ!?」 旗色悪しと、こちらに銃弾をばら撒きながら撤退しようとする女。それを、猫宮は横っ飛びに移動しながら銃弾を叩き込む。ウォードレスさえ着てない女は、倒れる。
倒れた女には近寄らない。何を持っているかも分からない。倒れ伏した所に、30mは離れた木に隠れて、手榴弾を投げ込む猫宮。女の顔が、諦めに染まる。
爆発。そして、双眼鏡でずたずたになった死体を確認する。
来須と石津が、やってきた。来須は少し、負傷をしている。
「や、二人共。そっちはどうだった?」
「……逃げた……わ……」 石津の声に、来須が頷いた。
「そっか……」
「こちらはどうだ?」
「幻獣共生派を一人と小型数十匹ってところかな」
猫宮が、双眼鏡を渡して指をさす。その方向を見て、来須は頷いた。石津の視線は、塞ぐ。
「あの様子なら死んでいるだろうな」
頷く猫宮。そして、しゅんとする石津。この心優しい少女にとって、人の死は辛いのだろう。無言で、頭をポフポフと撫でる猫宮。石津は、目を伏せたが抵抗はしなかった。
今日、殺した幻獣共生派は木下朋子。来須に執着し、5121のメンバーを狙撃し、そして壬生屋に自爆特攻をし、そして事実上殺した女である。見逃す選択肢など、有りはしなかった。この為に、同行したのだ。
千崎は、石津の想いによって救われた。だが、猫宮は、木下は看過できないと、殺した。どちらも、エゴである。果たして、どちらが正しいのか。猫宮は、分からなかった。ただ、大事なもののために、守る命を選んだ。
死体を残し、黙って去る猫宮。そして、来須と石津。こうして、本来の任務は、失敗に終わるのだった。
「任務は部分的な成功ですか? 芝村を2名救えましたし。他の共生派も1名を撃破しましたし。しかし、肝心の狙撃手を包囲した挙句、まんまと逃げられるとは。あなたがいながら」
善行は眼鏡を押し上げ、しぶい表情で言った。
猫宮は苦笑し、来須はむっつりとした表情を崩さず、石津も何時も通り、そしてブータは寝そべっている。
「わたし……が……止めたの。殺さ……ないでって」
「石津君、相手は11人の将校を殺しているのですよ。その代償を払わせねば。猫宮君が遭遇した相手も、大物のテロリストでした。そちらは、しっかりと代償を支払いました。」
その通りだ。その通りだが、と来須は言葉を探した。
「石津が人質に取られた」
「なんですって?」 善行は目をしばたたいた。
「足手まといだった。この女を少しでも信用したのが間違いだった。俺は判断を誤った」
「ほう」 猫宮の方を見る善行。しかし、猫宮は肩をすくめた
「自分は、別の方向で共生派や幻獣と戦ってたんで見てないんですよね」 白々しい。
この3人の顔に、「失敗」の文字は刻まれていなかった。無表情な二人と、たいてい笑顔なため表情が読めない一人。だが、どこか清々しそうだ。
「ええと、石津君が人質にされたのでしたね。膠着状態が続く中、小隊規模の共生派に奇襲され、猫宮君は別方面で別働隊を食い止め……」
善行は、頭のなかで適当な報告文を作りながら、この3人から事情聴取をはじめたのだった。なお、その報告書は後から「つまらん小説だ」と準竜師にガハハと笑われながら読まれることになる。
「俺だ」
「他にも芝村の知り合いがいるので、せめて名前を言ってください」
突然の泰守の連絡に、猫宮は苦笑するしかない。
「考慮しよう。ところで、問題点は大体洗い出した。これからその検討を始める。いいか、場所は……」
と言いながら、一方的に予定を押し付けてくる泰守。流石芝村である。
「はあ……バイトが有ったんですけどねえ……」
「知らん。必要ならこちらも金を出す。とっとと来い」
それだけ言うと、通信を切る泰守。猫宮はため息一つついて、裏マーケットの親父に連絡を入れた後、言われた場所へ行くこととなる。
こうして、後に大勢を救う改革案の雛形が、少しずつ作られていくのだった。
とりあえずぶっ殺すリスト最上位に有った木下を一時退場させました。こいつほっとくと本当に誰か殺されかねませんし説得の糸口も見つからず……
短編が出るとしたらどんな話が良い?
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女の子達とのラブコメが見たいんだ
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男連中とのバカ話が見たいんだ
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九州で出会った学兵たちの話
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大人の兵隊たちとのあれこれ
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5121含んだ善行戦隊の話