ガンパレード・マーチ episode OVERS   作:両生金魚

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感想数100突破です、どうもありがとうございあmす。本当に励みになります。


風変わりな仲間たち

 田代香織は、いわゆるツッパリだとか不良とか呼ばれる少女である。喧嘩っ早くアウトローを気取り、整備よりも戦闘が好きなような少女だった。

 しかし、この小隊では整備の仕事をやらされ、しかも突っかかってくる奴もおらず、緊張感さえ足りない。

 

(なんか物足りねぇな……)

 

 草むらが鳴った。田代は慌てて板チョコを飲み込むと、音のした方を向く。

 

「あ、ごめん。邪魔しちゃったかな?」

 

「やっ、仕事は終わった?」

 

 速水と猫宮がそれぞれビニール袋をぶら下げてやってきた。

 

「ちっ、うざったい奴らが来た」

 

 田代はあぐらをかいたまま、顎をしゃくった。この二人は、ちょくちょく自分のところにも来ては、世間話をしていく。お前らはオカンか! と怒鳴りつけたくなることもしばしばだが、二人のおかげで小隊の様子も、その他の情報も入ってくる。

 

「クッキーを作ったんだよかったら」 「紅茶も淹れてきたよ~」

 

 速水がクッキーを、猫宮が紅茶を差し出す。

 

「お前らってホントに変なやつだな」

 

「「えっ、そう?」」

 

 声が重なり、ついでに首を傾げる動作まで重なる二人。思わず呆れ果てるたしろ。

 

「絶対変だよ。あんな、ぐっちゃぐちゃな戦いをした次の日に、こんな茶菓子持ってきてよお……」

 

「昨日の戦い? 市街戦は敵が分散してるからミサイルで一気にって訳には行かないけど、遮蔽物が豊富だから平地より楽かなぁ」

 

 あの戦いを楽と言ってのける速水に、少し背筋が寒くなる田代。

 

「荒波千翼長から言われたんだ。普段はバカをやれって。じゃないと神経が擦り切れるって」

 

「荒波……って、あのエースからか……」

 

 そして続く猫宮の言葉に、何やら少し思うところがあるのか、クッキーをかじりつつ表情を変える。エースからの薫陶とは言え、こうも日常と戦闘をはっきり切り替えられる奴らはそういない。

 

(伊達に、勲章は貰ってねえって事か……)

 

 既に猫宮は、2つの勲章が与えられている。速水ももうすぐだろう。こいつらの動きは本当に凄いと、後方で見ている田代でさえそう思うのだ。試しに猫宮に軽く喧嘩をふっかけてみたら、こっちを傷つけないように無傷で制圧され、随分と落ち込んだものだ。

 

「仕事、大変?」

 

「ん……指揮車はただのクルマだからな。士魂号と違って、オレ一人でも、ブレーキパッド……タイヤ、足回りに気をつけてりゃ問題ない」

 

 速水の問いに、田代が答える。

 

「滝川、最近、しょっちゅうハンガーに来てるでしょ?」

 

「ああ、あんまり俺とは話さないけどな」

 

 滝川は滝川で、何度も戦闘を経験して訓練もして、肝が座ってきている。ビビってくれる人間が少なくて本格的に寂しい田代である。

 

「森さんの様子はどう?」

 

「普通かな……っておい! 滝川と森、なにかあるのか?」

 

「心配なんだ。森さんに相手されてる?」 「滝川、上手く行ってくれるといいなぁ」

 

 滝川のことを心から心配する二人。

 

「……だいじょうぶ……あの二人は……とても……相性が良い……のよ……」

 

 と、そこへ石津がやってきた。

 

「相性って、そんなんわかるのかよ?」

 

 田代の問いに、こくりと頷く石津。

 

「占った……わ……私の……占いはよく……当たるの……」

 

 速水と猫宮からクッキーと紅茶をもらいつつ、石津はそう言う。

 

「へ~、それなら安心?」

 

 くすりと笑う猫宮。しかし、ふるふると石津は首を横にふる。

 

「んだよ? 相性良いんじゃなねーのか?」

 

 怪訝そうな田代。

 

「相性はいいけど……星の巡り合わせが悪いの……すれちがい……どうにかしないと……」

 

『星の巡り合わせ?』 首を傾げる一同

 

「……ふたりとも、運命を、受け入れるの……下手……」

 

 何となく納得する速水と猫宮。そして感心する田代。

 

「じゃあ、例えば田代さんはどんな感じ?」

 

 好奇心旺盛に聞いてみる猫宮。

 

「ば、バッキャロ! なんてこと聞きやがんだよ!?」

 

 実は凄い気になるが、ツッパリである手前止めようとする田代。そして、迷いつつおずおずと口を開く石津。

 

「……何人かいる、けど。これから、田代さんに……試練が来る……。困った、ら……仲間に、相談して……」

 

「試練……試練か……へへっ、どんと来いだぜ」

 

 少なくとも退屈はしなくて済みそうだ。そう、田代は思うのだった。

 

 

 

 そして、すぐに退屈どころではなかった事を思い知る。古い知り合いの、鉄夫が訪れてきたのだ。近くにいた猫に餌をやって追い払い、家の中に招き入れる。どうやら、熊本から逃亡をするつもりらしかった。鉄夫のあまりの変わりように、引き止めることが出来ない田代。結局、次の日に逃亡を手伝うことにした。

 しかし、最後の最後に、ためらいがちに引き止める。

 

「なあ……、今からでも遅くないぜ。実は……俺の隊に芝村がいるんだ。後、エース様も。俺が泣きつけば、なんとか命だけは助かるかもしれない」

 

「へへ、田代もイカレちまったな。芝村は俺達のことなんか虫けらとしか思っていねえ」

 

「まあ……い、いや、あいつは……違う……」

 

 田代は、芝村の顔を思い浮かべた。速水や猫宮と一緒に何度か話したが、そんな奴とは、思えなかった。

 

「そこで何をしている?」

 

 不意に顔を照らされた。田代が顔を背けると、鉄夫がすばやく田代の背後に回った。

 

「寄るんじゃねえ! 近寄ればこいつを殺す」 首筋に、ナイフを突きつける鉄夫。

 

「鉄夫……」

 

「じっとしていろ」

 

 二人はたちまち警備兵と鉄道小隊に囲まれる。

 

「該当者――無し。しかし、脱走兵だな」

 

 八方ふさがりな状況、どうすることも出来ない……と、そこへたくさんの足音が近づいてくる。全員の視線が、そちらへ向かう。学兵の集団が、息を切らしてやってきていた。先頭は……変装をした、猫宮!? そして、後ろには見たことのない学兵たち。

 

「なっ、ねこ――」

 

 猫宮と視線が合う田代。その目が、信じて――と言っている気がした。うなずき、鉄夫に話す。

 

「――おい、あいつに合わせろ。俺の――ダチだ」

 

 そう鉄夫に言うと、鉄夫は困惑した様子だった。そこへ、かけてくる一人のガタイのいい学兵。思わず身構えるが、その学兵はナイフを持った手を掴むと、

 

「バッカヤロウ!」 と鉄夫をぶん殴った。倒れる鉄夫、そして、その周りを警備兵より先に学兵が取り囲む。

 

「何やってんだよ馬鹿!」 「心配したんだぞ!」 「相談してくれよ……!」

 

 見ず知らずの学兵たちが、気遣うようなことを言う。と、田代へ猫宮が近づいてきて、こっそり囁く。「名前は?」「て、鉄夫……」

 

「鉄夫、ほら、頭を下げて、隊へ戻ろう!」

 

 そう叫ぶ猫宮。すると、周りの学兵も、それぞれに行動を起こす。

 

「そうだぜ、鉄夫、やり直そう!」 「お願いします、もう脱走させません。だから、どうか、許してください!」 

 

 次々と叫び、土下座までする学兵たち。あっけにとられた兵たちだが、毅然とした態度で言う。

 

「ダメだ、脱走、及び逃亡未遂は重罪、危険分子は排除せねばならん」

 

「危険分子……?」

 

 田代はつぶやいた。鉄夫の何処が危険分子なんだ? ただ、ヤバイめに遭って神経が参っただけだ。

 

「脱走、敵前逃亡は兵から兵へ伝染し、隊をむしばみ士気を崩壊させる。軍に対する最大の罪だ。危険分子として間違いあるまい」

 

「そんな、士気は下がってません!」

 

 猫宮はそう叫ぶ。「そうです!」 「ただ、ちょっとこいつは迷っただけです!」 「大丈夫ですよ!」

 

 そして、口々に叫ぶ学兵たち。

 

「問答無用だ――それと、貴様らも脱走を手助けした疑いがあるな――そこの女もだ」 

 

 そう言う隊長。冷酷な目に、頭に血が上る田代。思わず、殴りかかりたくなる――が、猫宮に止められる。

 

「ふん、貴様らも懲罰大隊に――」

 

「何処へ転属させる、というのだ?」

 

 と、聞き覚えのある声が響いた。田代の背後にサーチライトが向けられた。しかし声の主は瞬きもせず、話す。

 

「それと、そこの女は我が隊の者だ。即刻解放せよ」

 

「姓名、階級を承りたい」

 

「芝村舞。5121小隊百翼長だ」

 

「5121小隊……芝村……」

 

 隊長は呆然と呟いた。芝村の名は、誰もが知っている。

 

「集積所の視察に赴いた所、聞き覚えのある声が次第駆けつけた次第だ」

 

 舞は不敵に笑った。隊長は苦々しげに舞を睨みつけた。

 

「この連中には逃亡扶助の疑いがある」

 

いかに芝村といえども、軍規には逆らえない。そう思って、隊長は冷然と言った。しかし、芝村は笑みを浮かべたままきっぱりと言った。

 

「こやつらは私が連れ帰る。単に腹をすかせて迷い込んだだけだろう」

 

「な、何を!」

 

「芝村が決めたことだ。即刻包囲を解くがいい」

 

「くそっ、芝村が何だ! お前も同罪とみなすぞ!」

 

 隊長は気圧されるものを感じ、舞に怒鳴った。

 

「ほう、エースまでも拘束するつもりか?」

 

「な、何だと……?」

 

「猫宮、下手な芝居は止めるが良い」

 

「えー、結構気に入ってたんだけどなあ」

 

 立ち上がると、眼鏡とカツラを外す猫宮。周りから息を呑む気配がする。鉄夫も、驚いていた。金銀の勲章を持つ、エースだ。動揺する隊長。流石に、芝村とエースを敵に回して、ただの警備兵である自分が無事で済むとは思えなかった。

 

「どうした?」

 

 芝村は、隊長に声をかけた。気難しげな顔で考えている。

 

「こいつらを見逃せばいいんだな?」

 

 隊長は絞りだすように言った。怪訝な面持ちで頷く芝村。

 

「条件がある」

 

「ふむ?」

 

「後で、迷いこんだとして始末書を提出することだ」

 

 隊長は、兵が迷い込んだということで妥協したようだ。

 

 内心拍子抜けする芝村と、それを笑ってみている猫宮。

 包囲が解かれ、周りの学兵達も立ち上がり、ここを去っていく。呆然とする鉄夫と田代。

 

「ほら、行こう?」

 

 そんな二人の肩をポンっと叩き促す。

 

「……あ、ああ……」

 

 歩き出す二人。

 

「ふぅ、良かったな」 「もうこんな事するなよ」 「間一髪だったな」

 

 周りの学兵たちも、笑って口々に無事を祝う。

 

「な、なあ……こいつらどうしたんだ?」

 

 田代が、猫宮に聞いた。

 

「ん? 自分や芝村さんだけじゃ説得力が足りないからね。手伝ってもらったんだ」

 

 そう言って見ると、サムズアップする奴もいる。

 

「……お、俺ぁ……無理だ……あんなもん見ちまって……もう、戦えねえ……た、助けて貰って悪いんだがよ……」

 

 そう言うと、震える鉄夫。それを、優しく見る猫宮。光る手で、ポンと肩をたたいた。

 

 途端、鉄夫の意識に、懐かしい思い出が去来する。戦友たちと過ごし、馬鹿をやり、戦ったあの日々。そして、今の鉄夫も、軽口を叩きつつ笑顔で見守っていくれる――そんな意志が、伝わってきた。

 

「――こ、これは……」

 

「死者はね、仲間が生き残ってくれたことが嬉しいんだ」

 

 そう言って、微笑む猫宮。微かな青い光が見える。

 

「――今は、戦う意志をすぐに持たなくても良い。でも、生きるためにとりあえず隊に潜り込んでおいて」

 

 そう言うと、猫宮は他のガタイの良い学兵に頼み込む。

 

「おい、こっちだ、行くぞ」 「んじゃ、1名様ごあんない」 「これから宜しくな!」

 

 鉄夫を取り囲み、次々と励まそうとする学兵たち。近場でたこ焼きを買ってくる学兵もいた。それを、微笑んで見守る猫宮。芝村も、敬意を込めてそれを見送る。

 

 そして、5121の3人も、また尚敬校に向かって歩き出す。

 

「……な、なあ……どうして……助けてくれたんだ?」

 

 振り返る、芝村と猫宮。

 

「戦友を助けるのに理由が必要か?」

 

「誰かを助けるのに、理由がいる?」

 

 そう言われ、胸を衝かれたような衝撃が襲う、田代。

 

「……そ、そうか……へへっ」

 

 確かに、風変わりな奴らだ。だが、良い奴らだ。それに今更に気がついた田代は、自分がおかしくなった。

 

 唐突に、突撃行軍歌(ガンパレード・マーチ)を歌い出す田代。

 

「~~~♪」

 

 猫宮は、くすっと笑うと、それに続いた。芝村も、少し逡巡した後、また続く。

 

『~~~♪~~~~♪』

 

 3人の歌声が、優しく響き渡る。

 

 こんなのも悪くねぇな――そう、田代は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 いやはや、今見返すとこの鉄道小隊の隊長、学兵何ですよね……憲兵でもなく。
 一般人を看守と囚人に分ける実験では、お互い役だとわかっているのに看守はどんどんと傲慢になっていったそうですが、それと同じで役割が人格を形作るのでしょうか?

短編が出るとしたらどんな話が良い?

  • 女の子達とのラブコメが見たいんだ
  • 男連中とのバカ話が見たいんだ
  • 九州で出会った学兵たちの話
  • 大人の兵隊たちとのあれこれ
  • 5121含んだ善行戦隊の話
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