ガンパレード・マーチ episode OVERS 作:両生金魚
4月24日12時30分、小康状態を保っていた戦線に動きがあった。北の植木方面の砲撃が勢いを増し、熊本大学ポイントの陣地が火を吹きはじめた。
今度の諸兵科連合の役割は、陣地の全面、少なくとも1Km圏内で敵を迎え撃つことだ。前進防御をした時の陣地への帰還の難しさに、善行は更に石橋を叩くことにしたのだ。何しろ、陣地までの500mを進むのに5分はかかった。
それに、他の陣地とはそこそこの連携でも、この集団の戦力ならば問題ないとの判断も有る。
砲撃音を合図とするかのように、陣地に待機していた5121、黒森峰、聖グロリアーナの搭乗員達は各々のビークルを起動させる。
「全機全車両、出撃します」
善行の命令一下、1番機から順に整備テントを後にした。
整備班陣地の出入り口付近では、各整備班の面々が、並んで見送ってくれた。また、整備テントを警備することになった歩兵たちも、一緒に並んでいる。
「壬生屋ぁ! 無茶すんなよ!」
「滝川! 何時も通りやってこい!」
「速水くん、芝村さん、ファイトです。がんばってくださいね」
「さっさと敵ばやっつけて、祝勝会をやるばい」
「猫宮君、頑張ってや! けど、無理しちゃあかんよ!」
「西住隊長! ご無事で!」
「田尻隊長! 皆で待ってますからね~!」
今朝出撃したときとは、雰囲気が違うなと、速水は思った。皆、自分の言葉で、声を限りに声援を送ってくれている。どこか、たくましくなったようだ。
「ははっ、みんな苦労したみたいだね」
「うん」
猫宮の言葉に、速水は頷いた。皆の声援が、心地よく響く。よせばいいのに、下手な敬礼を送ってくるものも居た。
そんな光景を見て、速水は芝村とともに改めて戦闘への決意を固くする。速水の過去も何も関係なく、芝村は今の速水を受け入れていた。
猫宮にとっても、ここまで変わりきっている状況で先の予測はできない。共生派だけは何とか防いでいるが、他は各々が全力を尽くすしか無い。
そんなことを考えていると、瀬戸口から通信が入る。
「さて、さっそくだがお客さんがやってきた。敵の戦力はミノタウロス15、ゴブリンリーダーをはじめ小型幻獣が300ってところだ。北側陣地より1Km圏内で迎え撃つ。何時も通り中型を最優先に――」
「いや、士魂号は腕のサブウェポンで小型の集団を見つけたらガンガン狩っていきましょう。陣地が近いから、弾薬の補充も楽ですし」
「……やはりL型には辛いですか?」
「ええ、少しでも数を減らしておかないと辛いです」
「了解、ではそのようにお願いします」
中型最優先の指示に、猫宮が異を唱えた。装輪戦車にとって、小型の浸透は脅威であった。
「ありがとうございます。こちらも助かります」と、まほからも通信が入った。
「と、そんなわけだ。じゃあみんなそれなりに宜しく」
「ええ、参ります!」
瀬戸口の声に、壬生屋が続いた。そして、1番機の突撃。先頭のミノタウロスに突進し一刀のもとに斬り捨てた。返す刃で更に1体、その間僅か5,6秒の事である。
「それじゃ、続くよっ!」
猫宮がそう言うと、ビルの合間からビルの合間へ走り、そしてビルを踏み台にして跳躍。1番機を見ていたミノタウロスの後ろに着地し胴を貫き、更に片手のジャイアントアサルトを生体ミサイルを発射寸前のミノタウロスの腹に叩き込んだ。瞬く間に4体のミノタウロスが撃破される。
「各車両、自由射撃」
そこへ、まほからの命令が下る。慣れたように半包囲からの連続した射撃。次々とミノタウロスが撃破されていく。
「ふむ、ミサイルの出番は無いな」
「そうだね」
芝村は器用にジャイアントアサルトと40mmグレネードをそれぞれの目標にロックし、中型と小型を撃ち分けていた。横では2番機が動き回り、小型の集団にサブウェポンをばらまいてL型を守っていた。
「て、敵が撤退をはじめました!」
ある程度撃破したところで、武部からの通信が入る。
「へへっ、もう逃げ出しやがったか」
「この状況で逃げる? ……まあ罠だよね」
「げっ、マジかよ」
調子に乗ろうとした滝川に、猫宮が釘を刺す。
「ふむ、そのまま橋を渡っていたらそなた、囲まれていたぞ」
「うっへ~……危なかった……」
「じゃあ、ミサイルまだ使ってないし、逆にその罠食い破ってやろうよ舞」
「ふむ、それも手だな」
そして、そんな罠があると分かれば逆手にも取れる。ミサイルを使えば、かなりの戦果が上げられる場面だ。
「あ、それ良いですね!」
壬生屋もそれに賛同した。
「それじゃ、1、4、3番機の順で突撃、そしてミサイルだね。他の皆さん援護宜しく!」
『了解』
猫宮の言葉を合図に、一斉に移動する。
「では、まずは私達からですわね」
凛の命令で、待ち伏せ地点に砲撃が降り注いだ。それにより追い立てられるように、影から姿を見せる幻獣たち。
「参ります!」
そこへ、橋を渡った1番機がすかさず突っ込み、ミノタウロスを斬り裂いた。
「まだまだいくよ~!」
更に4番機が続き、キメラの目玉をジャイアントアサルトで撃ち抜いた。幻獣たちの視線が、1、4番機へと集中する。
「ははっ、罠にかかったのはそっちだ!」
そこへ、3番機が突入。家を飛び越え幻獣の中央へ躍り出て、芝村が凄まじい速さで次々とロック、ジャベリンミサイルを発射した。ミノタウロス、ゴルゴーン、キメラ、ナーガなどの中型に、寸分違わず突き刺さるミサイル群。幻獣の包囲は、あっという間に消滅した。残った少数は、川向うのL型からの集中砲火で倒れ伏す。
「ご苦労様。とりあえず第一波は片付いたようだ。補給はこまめにやっとこう」
瀬戸口の声が、コックピットに響き渡った。
12時30分から出撃してから、もう3度程補給のための帰還を繰り返していた。1度1度の出撃で士魂号が弾薬を使いまくるので、L型への負担は明らかに少なくなっていた。更に、帰還する毎に陣地付近の小型も掃除できていたので、陣地の負担も少なくなっていた。
熊本城付近は、今のところ順調である。しかし、外郭の方に有る陣地は確実に敵を減らしつつも、ゆっくりと防衛戦力が削られ続けていった。
幾つかの陣地は更に後ろに交代しながら粘っているところもあるが、沈黙する陣地も増えてきた。
「まずいな、熊本大ポイントにスキュラ4、ミノタウロス10、ゴルゴーン7が接近中」
「くっ、こんな時にか!」芝村が歯噛みする。
熊本城陣地前で戦闘中に、焦り気味の声の瀬戸口からの通信が割り込んできた。
空中要塞のスキュラを囲む、ミノタウロスの群れ。このフォーメーションは幻獣側の黄金パターンとも言える陣形で、人類側は散々に苦戦し続けてきた。戦車随伴歩兵では歯が立たず、装輪式戦車でもアウトレンジから叩かれる。これを撃破するには待ち伏せか、犠牲を顧みずの肉薄しか無い。
「回せる戦力は……」
善行がしばし迷う。熊本大ポイントが落ちると、東からの敵も戦力そのままに殺到してくることになるが、万が一ここが抜かれると補給そのものが出来なくなる。
「はいはい、自分が行きます!」
迷う善行に、猫宮からの通信が入る。
「……大丈夫ですか?」
「大丈夫も何も、行かないと相当まずいですよね!」
「……その通りです、お願いします」
送れるのは士魂号1機だが、猫宮の戦術はその戦域そのものの戦力を活性化させる戦い方だ。それに、この地点は3機の士魂号と9輛のL型ならどうとでも出来る。
「じゃ、ちょっと救援に行ってくる! 凛さん、砲撃援護宜しく!」
「ええ、お任せを」
猫宮はそう言いながら、東へと駆け抜けていった。
熊本大ポイントに、スキュラを中核とした幻獣の群れが迫っていた。この数のスキュラが相手だと、40mm機関砲も1機1機狙撃されて沈黙させられてしまう。
「ったく、零式早く配備されて欲しいよ……こちら5121小隊4番機! スモークを使った後敵を引っ掻き回します! スキュラはこっちでやるから皆さんは地上のを!」
通信を入れると、程なくして『了解』と返信が来る。それを確認すると猫宮は92mmライフルに煙幕弾を装填、陣地とスキュラの間にスモークを撒き散らす。発射後即ジャイアントアサルトと超硬度大太刀に切り替え、突撃する猫宮。
「砲撃要請、 0670 0350 12秒後、2412 8834 」
突撃しながら、音声認識により自走砲小隊へと砲撃要請を支援する。
スモークと幻獣の真っ只中をすり抜けながら突撃し、1体のスキュラの下へ潜り込み、ビルを足場にジャンプ、柔らかい腹を縦に切り裂きながら着地した。そして即、その直ぐ側に居たもう1体のスキュラの腹にジャイアントアサルトを斉射した。そして、爆発。
スモークが炎と発砲音で彩られる中、ミノタウロスが突撃してくる。
「弾着まで5、4、3……今です」
そこに、自走砲小隊からの砲撃がミノタウロスを囲むように着弾した。重症を負い、周囲の小型が消し飛ぶ。そこへ、4番機がトドメの1斉射。強酸性の体液を撒き散らしながら、爆発した。
スモークから抜け出した1体のミノタウロスは、陣地からの砲弾とレーザーの集中砲火であっという間に倒れ伏す。
地上で射撃している4番機に、スキュラが狙いを定めるが、すぐに移動する上、レーザーが屈折するので当たらない。そして、そのレーザー光の発射元にまた20mm弾が吸い込まれた。炎上し墜落するスキュラに、真下に居たキメラや小型幻獣が巻き込まれる。
「砲撃要請、5742 2036」
「弾着まで5、4、3……今!」
猫宮と最後のスキュラの間に、砲撃が降り注いだ。ナーガやゴルゴーンが、その砲撃に巻き込まれて生命活動を止める。
そして、その幻獣の死骸で出来た道を4番機が駆け抜けて、スキュラの下に潜り込みジャイアントアサルトを腹に叩き込んだ。
「砲撃要請、1840 9924」
炎上するスキュラに目もくれずに4番機は踵を返し、ゴルゴーンの砲列に突撃する。向かう途中に居たキメラやナーガには40mmグレネードを直撃させつつ、1体のゴルゴーンを斬り裂き、更に1体の背中の生体ミサイルに、ジャイアントアサルトを当てて誘爆させる。
「弾着まで5、4、3……着弾!」
現時点の猫宮から最も遠い位置に居たゴルゴーン2体が、砲撃に巻き込まれ、倒れる。
猫宮が奥の方へ突撃したことにより、スモークの中に、陣地からの砲撃が激しく降り注いだ。次々と傷ついていく中の中型達。そして、猫宮はスモークの外からサーマルセンサーを使い、適度に間引きをしていく。間引きから残った幻獣は、スモークから顔を出した端から直接照準の砲撃の餌食になっていった。
「弾着まで5、4、3……弾着です」
間引きをしている横、砲撃を行おうとしたゴルゴーン付近に着弾、内1発が直撃し撃破。
スモークが晴れることには、幻獣は殆ど残っていなかった。
「救援感謝する。流石はトップエースだな。見ていて胸が熱くなったよ」
残敵を掃討した猫宮に熊本大ポイントの指揮官から通信が入った。
「どういたしまして。また危なくなったらできるだけはやく来ますから!」
「ああ、感謝する。そちらも幸運を」
こうして、猫宮はまた本隊の元へと戻っていった。
「熊本大ポイント安定……とりあえず一息つけますね」
「ええ」
瀬戸口の言葉に、善行が頷く。スキュラは幻獣側の死神とでも言うべき個体だ。それを今までの兵器で倒すのには相応の犠牲を覚悟する必要があるが、3・4番機はそのスキュラをほぼ単独で狙って狩れる。おまけに、地形の影響が少なく、瓦礫の街だろうと突き進める。指揮官としては本当に使い勝手の良いユニットであった。
「……しかし、それだけに陣地から遠くに展開できないのが悩ましい」
植木陣地までは直線距離だけでも9キロは有る。そこまで遠くで被弾してしまうと、リカバーが非常に難しい。それに3・4番機の2機を遠くにやると今度は囮が1番機だけになり小型の殲滅効率も落ちるので、本隊のリスクが高まる。
善行がそう思案していると、4番機が熊本大ポイントをすり抜けていた細かいのを掃除しつつ戻ってきた。
「ただいま戻りましたっ!」
「ご苦労様です、弾薬を消耗したでしょうしまた補給へ戻って下さい」
「了解です、じゃ、みんなすぐ戻ってくるから!」
4番機を補給へ戻す善行。と、そこへまた瀬戸口からの報告が重なる。
「北側よりスキュラ6、ミノタウロス12、ゴルゴーン10を中心とした部隊、そして東からスキュラ5、ミノタウロス9、ゴルゴーン5の部隊が接近中……くそっ」
思わず、悪態をつく瀬戸口。
「……猫宮君、もう一度お願いできますか?」
「ええ、何度でも!」
補給中の4番機の中から、返事が聞こえた。それに頷きつつ、善行はまたタクティカルスクリーンに目をやった。包囲が完了するまで生き延びれば人類の勝ちだが……どこまで粘ればいいかまだ、見当がつかなかった。
戦艦大和、きちんとデータとして存在しています。更に近代化改修もされていて、46cm砲を筆頭に200発以上の対空ミサイルに大小様々な機銃に副砲ともうとんでもない性能です。更にアメリカから提供された随伴艦もあります。……い、いつか使いたい……!
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