ガンパレード・マーチ episode OVERS   作:両生金魚

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致命的な誤字ががががが……あ、あれ、何でこんな自分でも訳の分からないミスを……
本当に申し訳ございません……orzお気に入りのキャラでやらかすとか悩みすぎて頭ぼーっとしすぎたか……普段アンチョビとかドゥーチェとしか呼んでないからか……orz


決戦――死ぬ運命だった者たちの為に

「そろそろか……」

 

 猫宮はもう何度目かも分からない襲撃を退けてタクティカルスクリーンを見た。抵抗ポイントが、少しずつ削れていって、今では最初の陣容は見る影もない。しかし原作と違い、自分たちの活躍で抵抗ポイントの消失は全滅ではなく撤退と言う形で消えた陣地が多かった。

 

 そして、抵抗のかいがあって、もうすぐ、包囲援軍が動く。ならば、意味もなく全滅させるより味方を逃がすべきだ。

 

 

「えー、熊本大ポイントの皆さん、もうすぐ包囲援軍が動きます。なので、この陣地から熊本城まで『転進』しましょう。援護しますから」

 

 

「『転進』……か?」

 

「ええ、『転進』です。小型相手なら、一箇所に集まっててもどうにかなります。それに、行くまで援護しますし。後、L型にも援護を頼みます」

 

「……了解した。感謝する」

 

 そう言うと、指揮官からの通信が切れた。生き残った兵が、ぞろぞろと陣地から這い出してくる。

 

「負傷兵の方は、L型の上に乗せて下さい!」

 

「タンクデサントも場合によりけり……だよね」猫宮が苦笑しつつ、周囲に目を光らせる。

 

 援護にやってきたみほが、拡声器で兵に語りかけた。無事な兵が、急いでL型の上に負傷者を載せると、何名かが支えるために更に乗る。そして、3輌のL型の機銃座にも、一人ずつ配置される。

 

「猫宮さん、準備できました!」

 

「了解、じゃあ、急いで行こう!」

 

 L型の周囲を随伴歩兵が護衛し、駆け抜ける。ウォードレスの補助もあり、時速30キロ程度で駆け抜け、時折周囲の小型を掃除する。

 そして、猫宮は陣地に残された小隊機銃と弾薬の幾らかを回収し、付近の小型を踏み潰して回った。

 

 

 

 

「ここも随分と人が増えたわね……」

 

 原は補給車付近から陣地を見渡して呟いた。周囲を守っていた陣地が次々と陥落していくが、兵士だけは何とかこの部隊が回収していた。お陰で、多種多様の学兵でごった返していた。

 戦闘に慣れない整備班達の変わりに、若宮や来須の指揮下の元、元気な兵は粘り強く戦っていた。

 そして、今また増えたようだ。

 

「どーも、只今戻りました。補給お願いします!」

 

「はいはい、また弾薬たっぷり使ってきたのね」

 

 4番機が持っていた荷物を下ろすと、それに兵が群がりに陣地に設置しに行く。負傷兵たちは、手の空いたものが協力して何とか拙い手当をしていた。野戦病院のような治療はできないが、それでも手当しないよりもはるかにマシなのは言うまでもない。

 整備テントに入り込んだ4番機に、整備班が群がる。猫宮はコックピットから出ると、スポーツドリンクの類を目一杯身体に流し込んでいた。

 

 兵が増えたおかげで、整備員達は殆どが本来の業務に専念できるし、直接戦闘には加わらなくても何とかなっている。最も、岩田や田代や遠坂は積極的に加わっているが。

 

「そろそろ脚部の疲労が拙いわね……中村君、右脚部の人工筋肉を!」

 

「了解ですたい!」

 

 整備をしながら、猫宮に尋ねる。

 

「……ねえ、猫宮くん、この陣地はどうなるかしら……?」

 

「人も多いですし、周囲にはL型も士魂号も居ますし大丈夫だと思います。包囲援軍も動き出しましたし」

 

「そう……良かった……」

 

 と、原は思わず安堵の息をついた。なんとしても生き延びようと思っていたが、それでもずっと不安だった。しかし、何とかなるのだろう。

 

「だ、弾薬積み込み終わりました!」

 

 そこに、田辺からの報告が入る。脚部パーツの交換も、もう終わる頃だ。

 

「それじゃ、また行ってきます」 

 

 首をコキコキ鳴らしながら、また猫宮はコックピットへ向かう。

 

「猫宮くん、皆を守るのもいいけどきみも無事で居てね!」

 

「勿論ですよ!」

 

「猫宮ぁ! ちゃんと戻ってくるたい!」

 

「猫宮さん、頑張ってください!」

 

「お前もちゃんと生き延びろよぉ!」

 

 数々の応援を背に受け、また4番機は出撃していった。

 

 

 

 タクティカルスクリーンを見た善行は、安心したかのように大きく息を吐いた。包囲援軍が動き出し、周囲の陣地からは兵が撤退済み。そして、熊本城の陣地は、自分たちの部隊により守れそうだ。中型が定期的に流れ込んでいるが、それも減ってきている。小型も、この人数と装備なら問題にならないだろう。

 

「各機各車両、引き続き陣地の守備を」

 

 通信を入れると、それぞれから『了解』との声が帰る。

 

 しかし、3・4番機は彼らの陣地から遠くへと居た。3番機は植木環状陣地の救援に、4番機は熊本農業公園陣地の救援に赴いていた。

 

「奴ら、随分と遠くへ行っていますね」

 

「ええ。私が皆を守ろうとしたように、彼らもまた守ろうとしているのでしょう」

 

 L型も既に何輌も傷つき、1番機と2番機もかなり疲弊をしている。故に、彼らは単機で動いたのだろう。

 

「……大丈夫ですかね、あいつら」

 

 思わず、そう呟いた瀬戸口。

 

「……だいじょう……ぶ……ブータが……まもってくれる……の……」

 

 そこに、石津が声を重ねた。

 

「ブータが?」

 

 首を傾げる善行。そう言えば、指揮車からも居なくなっていた。

 

「なるほど、ブータの加護か……」

 

 その言葉に、瀬戸口はなんとも言えない表情で頷いた。そして善行は、部隊章を見て、彼らの無事を祈った。

 

 

 まほは、6輌まで減った中隊を率いて、1・2番機と共に陣地の防衛任務をしていた。幻獣の襲撃はピークを過ぎていて、13時頃の規模の襲撃はない。だからこそ、この減った戦力で持ちこたえられてるとも言える。

 

「各車輌、引き続き戦闘の続行を。包囲援軍が動き出したとは言え、まだこちらへ来るまで時間がかかる。最後まで、死ぬことのないように」

 

『了解』

 

 まほの言葉に、返事を返す一同。3・4番機が気にかかるが、きっと更に過酷な戦場へ行っているのだろう。ならば、自分の役目はここを守ることだ。そう決意し、タクティカルスクリーンをまた確認した。

 

 

 

「隊長、包囲援軍が動き出したようです!」

 

「そうか……」

 

 本来は希望の見えるはずの報告を受けても、安斎千代美の表情は暗かった。この熊本農業公園陣地は、植木環状陣地と同じく高度に要塞化された陣地であった。しかしこの度重なる猛攻に戦力が払底し、残ったのも今乗っている車輌ともう1輌の対空戦車だけであった。これは、L型に破損した装甲車から流用した25mm機関砲を乗っけた急造兵器である。対地対空両方に使える機体では有ったが、重装甲の地上目標に対しては今一心もとない。それでも生き残れてきたのは、ひとえに彼女の指揮能力のおかげであった。

 

 しかしその能力を有する頭脳を持つが故に、彼女には見えてしまっていた。殆どの戦力を使い果たしたこの陣地が生き残るのは、もはや絶望的であると。残った歩兵は、何とか小型幻獣を阻止しているが、白兵戦が始まるのも時間の問題だろう。付近の陣地も殆どが陥落、もしくは寸前である。そして、今またミノタウロスを中核とした群れが迫っていた。

 

「隊長、来ます!」

 

「あ、ああ、そうだな」

 

 それでも、最後まで諦めたくはなかった。――どこかの誰かの未来のために―― 最後まで指揮を取ろうとして――希望の声が響いた。

 

「どうも、こちら5121小隊4番機猫宮悠輝です、援軍に来ましたっ!」

 

 タクティカルスクリーンを見ると、1機、援軍に現れていた。足元には歩兵も居る。

 

「5121の、ゴールドソードのエースっ!?」

 

「ええ、エースの実力、見せてあげますよ!」

 

 広域通信でそうパイロットは叫んだ。無線から流れたその声で、兵士たちの心にほんの僅かだが希望の火が灯る。

 

「助かる、我々は何をすればいい?」

 

「25mm砲か……よし、じゃあ装甲の薄い相手を重点的に! ミノタウロスはこっちが受け持ちます!」

 

「だ、大丈夫か!?」

 

「大丈夫、任せて下さい!」

 

 そう言うと、あの巨人は背中から巨大なライフルを取り出しつつ、移動した。川向う、橋を渡ろうとしてくるミノタウロスの群れに狙いを定めると、発砲し、即座に移動。武器を持ち替えつつ、陣地を分断しているナーガに、腕のガトリングをばら撒きあっという間に仕留めた。

 

 分断する幻獣が居なくなった陣地同士、数が少ないほうが多い方へ移動し、更に巨人の足元に居た歩兵も陣地へ合流する。持っていた小隊機銃を設置して、曳光弾混じりの火線が、一つ復活する。

 

「よし、それなら……」

 

 千代美は、復活した火線を援護するように2輌を脇に配置、それぞれナーガを狙い撃った。復活した火線付近の中型の脅威が去り、小型を削るべく、陣地から銃弾のシャワーが降り注ぐ。

 

「よし、その調子!」

 

 エースがそう言うと、突出してきたミノタウロスに突撃する。片手に巨大な刀を、片手に先程のライフルよりも小型の銃を構えて、遮蔽から遮蔽へ。見ていて思わず惚れ惚れするような動きでミノタウロスに近づき、立て続けに2体を両断し、更に1体に銃で腹に射撃を加える。そして、腹部のミサイルに誘爆して爆発。

 

「これが、エースの実力……」

 

 圧倒的な力に畏怖と頼もしさを覚えつつ、千代美は更に車輌を動かした。残った建物に突っ込み盾にし、遠くから来るきたかぜゾンビを迎え撃つ。

 

「よしっ、対空車輌が居ると、本当に助かります!」

 

 きたかぜゾンビの脅威を任せられると思ったのかあの巨人は、陥落してしまった他の陣地へと向かう。浸透した小型を踏み潰しつつ、無傷だった40mm高射機関砲を抱え上げると、無事な陣地へと運び込んだ。往復し、無事だった弾薬も持てるだけ持ってくると、更に火線が増えた。レーザーの光と、40mm弾が、遠くのミノタウロスに吸い込まれていき、倒れる。

 

「陣地が、復活した……」

 

 千代美は火線の薄い所から回り込もうとするナーガを、更に回り込んで撃破する。

 中型の脅威が薄くなり、周囲で隠れていた歩兵たちが、銃弾をばらまきつつ次々と無事な地点へと向かい、火線を増やす。

 

「た、隊長、それにえーと、猫宮さん! スキュラ5、来ます!」

 

「なっ!? ま、まずい!?」

 

 スキュラのレーザーの射程は2.4km。狙い打たれれば、折角復活した陣地がまた沈黙させられてしまう。幸いこの25mm砲の射程は3.5km程度は有るが、5体は相手に出来ない。

 

「えーと、そこの対空車輌さん、何体相手に出来ますか?」

 

「安斎だ、2体までなら何とかなる!」

 

「おおっ、2体も! じゃあ、お願いします!」

 

 たった2体しか相手に出来ないのにあのエースは嬉しそうにそう言うと、スキュラとミノタウロスを中核とした、幻獣の群れに突っ込んでいった。

 

「なっ!? そ、そんな、危険だ!?」

 

「大丈夫です、そのかわりに援護お願いしますっ!」

 

 巨人が、橋を渡り突っ込んだ。橋を渡ろうとするミノタウロスの群れに突っ込み、頭を切り飛ばした。更に、スキュラのレーザーを他のミノタウロスの胴体を盾にして防ぎ、遮蔽から遮蔽へ移動しながら、スキュラの真下へ移動し、跳躍。腹を斬り裂いた。

 

「な、何ですか、あれ……」

 

 思わず、部下からもそう呟いてしまう。現代の戦争ではない、はるか昔の英雄が居た時代の戦争を、思い起こしてしまう。

 

「スキュラが射程に入ったぞ、撃て!」

 

「りょ、了解です!」

 

 千代美もそう思ったが、スキュラが射程に入ると即射撃する。こちらに向かってくる敵を、任せられる分だけきちんとあのエースは間引いていた。

 

 2輌の対空車輌と陣地に置いた高射機関砲から、突出したスキュラに射線が集中する。硬い装甲だが、多数の砲弾がレーザーの射出口や腹部に命中すると、炎を吹き出しながら墜落し、そして爆発する。

 

「おおっ、流石!」

 

 猫宮から、嬉しそうな声が響いた。更に奥へ突撃し、陣地を射程内に入れる前にゴルゴーンを狩っている。あのエースは、戦域の全てを把握しているかのように、戦場を移動し、次々と敵を撃破していく。

 

 巨人を無視して陣地に2体のミノタウロスが突撃してきた。

 

「隊長! ミノタウロスが突撃してきます!」

 

「私達が右、3号車は左を狙え!」

 

 1輌に1体ずつ、25mm砲が火を噴く。両腕でガードするが、ミノタウロスの生体ミサイルの射程は短い。削られながら少しずつ突撃してくるが、更に近づいたところでレーザーライフルの光も陣地から飛んできた。そして、爆発する2体のミノタウロス。足元の小型幻獣が多数巻き込まれた。

 

「次、目標スキュラ! 来るぞ!」

 

 地上の後はすぐ空の敵へ。しかし、一度に押し寄せられるのでない限り、如何用にも対応できる。また、スキュラがこちらを射程に入れる前に、叩き落とす。

 

 ある程度間引いたのか、また陣地付近へと戻ってくる。そして、幻獣の主力が戻ってくるまでの間、孤立した歩兵を救助し、重い設置武器を運び入れる。たった1機の援軍の出現により、熊本農業公園陣地が、また敵を撃破していく。

 

「――これなら、生き残れる」

 

 敵の波が途切れたタイミングで補給をしつつ、千代美は、そう思った。包囲援軍が、もうすぐ訪れる。それに、植木環状陣地もまた敵を倒し始めた。先程は確実な死を弾き出したその頭脳は今、高確率の生存と言う計算結果を、出力した。

 

 

「安斎さん、次はきたかぜゾンビをお願い!」

 

「了解、1・3号車も前へ出るぞ!」

 

 守りの固くなった陣地を後ろに、前進する2輌の対空車輌。復活した陣地の前で、かつての4番機と第3小隊のように。まるで長年連れ添った戦友のように。息を合わせて戦い続けた。

 

 どこかの誰かの未来のためにではない。今ここに居る仲間のために、戦おう。そう、千代美は思った。

 

 

 

 死闘の果てに、瓦礫と静寂に満ちた世界が広がっていた。砲声も怒声も地響きも何もかもが消え、世界はただ静かだった。弾薬を全て使い果たし、最後には太刀1本で戦い抜いた4番機が、降りた猫宮の横で尚威容を誇っていた。

 

 

 陣地の方を振り返ると、生き延びた兵がみんなこちらを見ていた。ある者は生真面目に敬礼し、ある者は歓声を上げ、ある者は手にしたライフルを何度もこちらへと打ち振った。

 

「あなたのお陰で、みんなが助かった。本当にありがとう」

 

 いつの間にか、近くに対空車輌に乗っていた皆が居た。疲れきった身体で、しかしそれでも精一杯の明るい笑顔をこちらへと向けていた。

 

「どういたしまして」

 

 それに、猫宮も心からの笑顔を向けると、彼女たちと一緒にふらつく足取りで陣地へと歩いていった。

 

「そうだ、安斎さんの部隊も5121と一緒に行動しない?」

 

「ん? そんなことが出来るのか?」

 

「うん、なんとかなると思う。対空車輌有ると、また戦術の幅が広がるし」

 

 そんなことを話しつつ、ゆっくりと歩いて行く。

 

「そうだな……それも良さそうだ」

 

 陣地の片隅、とりあえず背もたれの有る所に座り、あれやこれやと話す二人。しかし、疲れていたかすぐにウトウトとし、寝息を立て始めた。

 

「よっぽど疲れてたんですね、隊長も、猫宮さんも……」

 

「ずっと指揮しっぱなしだったし、今は寝かせてあげましょ」

 

「と言うか、私達も眠い……」

 

「あ、じゃあ私隊長の隣!」

 

「ずるいっ!? じゃあ私は……あ、猫宮さんの隣が片方空いてる……」

 

「その手がっ!?」

 

 そんな様子を眺めていた乗員たちも、じゃれ合いの後近くで同じように眠り始めた。

 なお、猫宮と千代美が寄り添うように寝ていて、おまけに猫宮が女の子に囲まれているのを発見されて、また騒動になるのは後のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 




 とりあえず熊本城決戦は終了となります。ドゥーチェの小隊は改造品の対空戦車。撤退戦に向けてこれで車輌の強化は終了かな?しかし、数が多いと利も有るけど不利な面も増えてしまうのが問題。さて、どうなるか……

短編が出るとしたらどんな話が良い?

  • 女の子達とのラブコメが見たいんだ
  • 男連中とのバカ話が見たいんだ
  • 九州で出会った学兵たちの話
  • 大人の兵隊たちとのあれこれ
  • 5121含んだ善行戦隊の話

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