ガンパレード・マーチ episode OVERS   作:両生金魚

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 撤退戦までの街の様子のその一部。色々と話を作れますが、デートやら買い食いやらはかなり制限されそうな有様です。

※10/11 ソックスハンター編を削除。うーん、難しい……


決戦の後の街

 決戦から2日目。街の復興が始まりつつあり、小隊の仕事も今は忙しくない。しかし、今だからこそ猫宮はあちらこちらに精力的に動いていた。街には脱走兵が溢れかえり、幻獣共生派に転向するものも居て共生派そのものの浸透も深刻化する。更には疎開が進んだことにより食料調達も難しくなっていた。

 流石に5121とその仲間達の隊には潤沢に補給が送られていたが、末端だとそうも行かない。兎に角、やることの多さに猫宮はてんてこ舞いである。幸いなのは熊本城決戦のお陰でしばらくは出撃が無いと言う事だろうか。

 

 

 

「えーと、西の方から飛んできてと。瓦礫の山があって大きな柿の木があって、東の方に川が流れていて、北北東に橋があって……」

 

 憲兵の詰め所の一角では、異様な光景が広がっていた。猫宮を中心に動物や鳥が取り囲み、更に地図の周りには憲兵達が取り囲んでいた。

 猫宮が動物たちの言葉を翻訳し、それを元に憲兵たちが場所を絞り込む。中には地図で場所を示せる個体も居るが、それは中々に少数なのでこうして言われた条件を元に場所をすりあわせていた。

 

「えっと、こっちは近場だから案内できる? ん、じゃあお願い」

 

 遠くの情報はツバメやカラスが伝令役としてまとめて持ってきて、近場の情報は直接偵察した猫やらイタチやらが持ってくることもあった。その場合は案内を頼んだりもする。

 

「ふむ、やはり混乱に乗じてやってくる共生派が多いな……」

 

「絶好のチャンスですからね」

 

 憲兵の大尉が地図を見つつ唸る。人手が中々足りなく猫の手も借りたいと常々思っていたが、本当に借りれるとはと苦笑していた。

 

「それに脱走兵やはぐれた兵も本当に多い……こりゃまた回収しないと」

 

 猫宮も報告を見てふぅとため息をつく。家にも帰らず屯している集団をちょっと探してもらったがあちこちに居た。

 

「それじゃ、回収してくるので、報酬の支払いの方はお願いしときますね」

 

「ああ、分かった」

 

 と矢作曹長も頷いた。憲兵詰め所の裏は、ひっきりなしにやってくる動物たちの食堂と化していた。憲兵詰め所に近寄る物好きなど中々居ないとは言え、たまたま見られたら随分と奇異の目で見られるものである。

 なお、憲兵から熊本全域に動物虐待禁止令が厳重に下され、違反者にはなぜだか速攻で憲兵が飛んで来るので、熊本の動物たちに虐待をするものは殆ど皆無となった。

 

 

 

「味のれんも疎開しちまったか……」

 

 滝川は元味のれんの前で、ポツンと立ち尽くしていた。買い食いに行ける店も次々と減っていて、滝川は腹の中は寂しかった。幸いなことにじゃがいもだけは潤沢に補給されるが、やはり育ち盛りなので様々なものが食べたい。昔は貧乏に悩んだものだが階級が上がって年金も受け取れている今、逆に金があっても買うものがなかった。

 

「裏マーケット、行ってみるかな……」

 

 あの親父は一時期隠れたそうだが、戦闘が終わった今そろそろ商人たちも戻っているだろうか。そんなことを考えつつ、滝川は新市街へと足を運んだ。

 

 

「……やってないかな、こりゃ……」

 

 新市街へと歩く道すがら、多くの建物が瓦礫になっていた。そして、新市街も同じだった。商店街を覆っていたアーケードは所々崩れて廃墟と化し、あの地下街への道も、塞がれていた。そして同じように滝川と同じく立ち尽くす学兵も多く居て、そしてその学兵に手を差し伸べる者も居た。

 

 くんくんと匂いを嗅ぐと、味噌やら魚肉ハムの匂いが漂っている。そちらの方向へフラフラと向かうと、炊き出しが行われていた。よそっているのはなんと本田であった。

 

「ほ、本田先生!?」

 

「おお、滝川か! どうしたこんなところで?」

 

 魚肉やら野菜やらじゃがいもやらを適当にぶち込んで味噌で味を整えた貧乏汁を大盛りでよそいつつ、本田が尋ねる。

 

「あ~、味のれんも疎開しちゃって、それで何かここに食べ物無いかなって……」

 

「ははっ、お前もこいつらと同じように腹を空かせてきたか。ほら、食っていきな!」

 

 そう本田が笑い飛ばすと、滝川に大盛りでよそって椀をよこした。

 

「あ、どもっす」

 

 順番を飛ばしてもらったのでいいのかな~なんて疑問に思いつつ、それでも空腹には勝てなかった。ふーと冷まして、貧乏汁をかき込む。温かい料理が、腹に染み渡った。

 

「先生、またこの街に人戻ってくるかな?」

 

 滝川の素朴な疑問だった。まだたった1ヶ月半程度しか住んでいないが、思い出の多いこの街に滝川は愛着を持っていた。だからこそ、この廃墟と化した街の様子が悲しかった。

 

「ああ、幻獣もぶちのめしたし、自然休戦期も近い。そうして幻獣を押し返したらまた戻ってくるさ」

 

 本田はそう言うと笑って滝川におかわりをよそった。

 

「そうっすか! そりゃ良かった!」

 

 恩師にそう太鼓判を押されて滝川は無邪気に喜ぶと、また貧乏汁をたっぷりと味わうのだった。

 

 

 

短編が出るとしたらどんな話が良い?

  • 女の子達とのラブコメが見たいんだ
  • 男連中とのバカ話が見たいんだ
  • 九州で出会った学兵たちの話
  • 大人の兵隊たちとのあれこれ
  • 5121含んだ善行戦隊の話

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