ガンパレード・マーチ episode OVERS   作:両生金魚

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結局、整備員を含め白の章のフルメンバーを出してしましました。
顔は……Pixiv辞典などで調べてもらえればなんとか……?
なお、戦闘員は完全に趣味で選んでおります。


猫宮、教導ス

 講演会場では、殆どの士官候補生達や教官が、ワクワクしながらこちらを見ていた。特に士官候補生達は、同年代の学兵が活躍する様子を知りたかったのだろう。高揚させながらも、とても真剣味を感じられる。そして茜は、目立てることが嬉しいのか張り切って猫宮の用意した資料に目を通していた。

 

「それでは、講演を始めたいと思います」

 

 まず、話して一番最初に驚かれたのは訓練期間の短さである。訓練期間3週間弱、実機での訓練が数回。それでもう実戦行きと言うと、皆ポカーンとしていた。

 

 だが、それからはハラハラとドキドキの連続である。初陣から小学生たちの救助、黒森峰との出会い、銀剣突撃勲章の授与……荒波中尉との出会い。所々茜の解説が入り――そして、熊本城攻防戦に九州撤退戦。勿論ドラグンバスターの辺りは多少ぼかしているものの、その活躍の量に皆目を輝かせていた。

 

「えー、質問などは有りますか?」

 

 途端に上がる、手、手、手。とりあえず適当に指名をする。

 

「人型兵器は海軍にも配備される予定はありますか?」

 

「善行さんも元海兵ですからね。人型戦車は地形の走破能力が高いから海兵隊のために用意しても不思議ではないかも?」

 

 その言葉に、おおおと声が上がる。強力な兵器の配備は軍人ならば候補生だろうとワクワクしてしまうものだろう。

 

「人型兵器を操縦する上での一番の苦労はなんですか?」

 

「自分のテンションと判断力とのギャップを埋めることだね。心は好調だと思っていても、実際は判断力が落ちることが有る。そのギャップをどうにかしないと……死に直結します」

 

 最後の言葉に、少ししんと静まる場内。そして、パイロットの戦いをずっと分析してきた茜はうんうんと頷いている。

 

「猫宮さんの本命は誰ですか?」「ぶっ!?」

 

 次の質問を受けた途端に吹き出す猫宮。横の乙女3人もなんだかドキドキしつつこっちを見ている気がするが……

 

「の、ノーコメントでっ!?」

 

 顔を赤くしてお茶を濁す猫宮だった。途端にえーとかちぇーとかそんな声がする。ちなみにその質問をした生徒は山川がポカリとやってくれていた。

 

 猫宮の番が終わると、まほ、凛、千代美と順々に番が回る。このあたりの話は、他の自衛軍の戦車兵の話と変わらない部分もあるが、やはり興味深いのは人型戦車との連携の部分であった。

 

 L型は、人型戦車が囮になっての連携、L2型……自走砲は人型戦車が高所などに陣取っての観測役としての砲撃、対空戦車は人型戦車と連携しての防空網などなど、このあたりは茜が教本化している真っ最中の理論である。新しい戦法に、このあたりはむしろ教官らが食いついてきた。それらの疑問点や要点を茜が理路整然と語るのだから、普段叱っている教官達は苦虫を噛み潰したような顔をして茜を見たりして、それが茜を更に愉快にさせているようだった。なお、あまり調子に乗りすぎないようにポカリと猫宮はやっていたのだったが。

 

 

 

 そんなこんなで講演会が終わり、猫宮は他3人と別れることになった。行き先は――人型戦車のパイロットの養成学校である。勿論、芝村の息がかかっている場所だ。

 学校から送迎用の車が送られ、揺られ揺られて、熊本のプレハブ校舎とは比べ物にならないほど立派な校舎へ送られる。

 

「……予算の差に涙が出そうになるね……」

 

 見上げて思わずホロリと言葉を零す。そんな様子に運転手さんは物凄い複雑な顔をしつつ、教室前に案内される。

 

「こんにちは~!」

 

 溜めも何もなくいきなり教室をガラリと明けると、そこには一方的に見知った顔。

 

 石田咲良、横山亜美、小島航、佐藤尚也、工藤百華。どうやら、この5人がパイロット候補らしい。

 

 猫宮のまさかのいきなりの登場に、慌てて立ち上がって敬礼する5人。その様子に猫宮も敬礼をし返す。

 

「さて、全員知ってると思うけど一応言っとくね。自分は猫宮悠輝、5121小隊4番機パイロット兼今は教官かな。宜しくっ!」

 

『宜しくお願いします!』

 

 まだまだ表情が硬いパイロット候補生一同。ついでにもうちょっと表情が悪い横山。

 

「さて、皆訓練はどれくらい進んでる?」

 

「はっ。シミュレーターを2週間ほどです」

 

 生真面目に敬礼しながら石田が答える。

 

「うん、十分十分。じゃ、実機動かしに行こうか」

 

『は、はっ?』

 

 その言葉に、困惑する5人。

 

「大丈夫大丈夫、自分なんてシミュレーター数回やったら実機動かしに行ったから」

 

『はぁっ!?』

 

 更にびっくりされる猫宮。

 

「シミュレーター数日、実機数回で実戦行き、それに比べたら十分十分。じゃ、行こうか! あ、実機の場所に案内して?」

 

「はっ、はいっ!」

 

 と、石田がてててっと走って先頭へ。緊張にギクシャクしながら格納庫へと歩いていく。廊下も立派なのが更に猫宮の嫉妬心を微妙にくすぐる。

 

 テントより遥かに立派な格納庫に着くと、他の白の章メンバーが整備員として点検をしていた。機体は、旧型の士魂号が合計4機である。

 

「こんにちは~!」

 

 格納庫に着くなり、またいきなり挨拶をする猫宮。

 

『しゅ、集合!』

 

 猫宮の登場に、慌てて登場する整備員一同。敬礼から挨拶まで先ほどと同じ流れで、やはり皆緊張していた。

 

「えーと、複座型含めて4機か……動かせる?」

 

「はっ動かせます!」

 

 見ると、先任士官だったであろう谷口が敬礼してこちらを見ていた。その言葉に、うんと頷く猫宮。

 

「よし、じゃあ早速全員分動かしてみよう!」

 

「い、いきなりでありますか!?」

 

「最初はいつか訪れるものだよ? 十翼長」

 

「はっ、その通りであります」

 

「大丈夫、心配しなくてもシミュレーター歴は皆5121のメンバーより長いから」

 

「はっ、余計な心配でありました」

 

「いやいや、その慎重さは必要だからこれからも宜しくね?」

 

「了解であります!」

 

 そう言うと、各機にそれぞれ乗せていく猫宮。

 

 1番機は石田・小島。2番機に横山、3番機に佐藤、4番機に工藤である。

 

 

 石田は非常に緊張していた。実際に動かすのは小島とは言え、失敗したら自分も責任に問われるだろう。そう思うと、どうしても体が固くなる。

 

「石田、準備はいいか?」

 

「も、勿論っ」

 

 グリフから復活したのだろう。小島の言葉に声を上ずらせながらも返す。

 

「よし、じゃあ動かすぞ」

 

 そう言うと、スムーズにすっくと立ち上がる1番機。そして、そのまま歩き出す。あまりのスムーズさに、パイロットも整備員たちも拍子抜けしていた。

 

「はい、そのまま歩いて歩いて、グラウンドまで!」

 

 その誘導に従い、グラウンドまで歩かされる1番機。

 

「はーい、じゃあ続いて2番機行ってみよう!」

 

 その後、2、3、4番機と次々に問題なく歩いて行く士魂号達。整備員たちからも歓声が上がる。

 

「よーし、じゃあ次はサッカーのゴールポスト借りて、それで4機体でキャッチボールだね。頑張って!」

 

『了解!』

 

 初めての実機の訓練に気を良くしたか、5人共元気に返事をする。そして、他の人員が十分に離れると、ゴールポストでキャッチボールを始めたのである。

 

 その動きを見て、満足そうに頷いている猫宮。その様子を見て、谷口もホッとしていた。

 

「如何でありますか?」

 

「うん、十分シミュレーターで訓練を受けているだけ有って、自分たちの最初より動きが良いね。ちゃんと整備もされているみたいだし、皆ご苦労様」

 

 うんうんと頷く猫宮に、安堵の笑顔が広がる整備員組。直立不動の谷口も何処か誇らしげである。

 

「ところで十翼長、演習場は何時使える?」

 

「はっ。今日中に申請すれば明日にでも使えると思います」

 

「じゃあお願い。明日は早速実弾訓練に入ろう」

 

「了解いたしました」

 

 キビキビと、小気味よく返事をする谷口。うん、こういった関係もいいなと思いつつ猫宮は、支持を出しながら訓練を見守るのだった。

 

 

 

「ひゃあああっ!?」 「う、うわわわわっ!?」 「おっ、落ち着いてっ!?」

 

 翌日、4機の士魂号は演習場への道を、おっかなびっくり歩いていた。昨日実機で動かしたとは言え、まだ2日めである。転んだら大惨事であるので、動かしている4人+1人は、転ばないように慎重であった。

 

「うんうん、慎重に確実に、ゆっくりでいいから歩いていこう。あ、そこのトラックさん失礼しま~す」

 

 ちなみに先頭は猫宮である。芝村から送られてきた栄光号の運用試験も兼ねて、先導しながら歩いていた。なお、初めて見る人型戦車に人々は驚き、写真も思い思いに撮られていた。

 

「士魂号より反応がいいねこの機体。流石は後期型」

 

 動きに満足しつつ、猫宮達はゆっくりゆっくり歩いて行く。そして人型戦車の後ろでは、整備班達が恐々と見守っていた。

 

 

「はい。じゃあ早速実弾演習やってみようか! まずは伏射から!」

 

 演習場に着くと、まずは実弾演習――それも伏射からの訓練である。猫宮はジャイアントアサルトを無造作に取ると、伏せて的へ向けて1連射。弾がごく狭い範囲にまとまり、的がボロボロになる。

 

「まずは習うより慣れろ。弾はいっぱいあるから、思う存分練習してね!」

 

『はいっ!』

 

 彼らも、シミュレーターでさんざん射撃訓練は行ってきた。だが、それでもやはり初めて実弾を撃つ訓練と言う物は、とても興奮するものだ。皆それぞれが、シミュレーターでの事をなんとか思い出しながら、的へ向かって射撃をしていた。

 

 実弾での振動が、それぞれの機体を揺らし、その威力に酔いしれる。伏せてロックして撃つだけなので、命中率も上々だ。続いて92mmライフルもまた同じ。両手の12.7mm機銃とグレネードランチャーも、既にそのデータがシミュレーターに入っていたか立射でもそこそこの命中率であった。

 

「……ん~、シミュレーターで万全だと訓練で教えることがないね……」

 

 次の移動射撃の訓練を見ながら、そう呟く猫宮。基本、シミュレーターで数日動かしただけの自分たちがやっていた訓練である。それよりも長い時間、間借りでなく専用のシミュレーターで動かせた彼らの動きが良いのもある意味当然であった。実機の重力に慣れれば、後は5121のメンバーより動きが良かったのである。

 

 なので、まほに連絡を入れる猫宮。

 

「あっ、まほさん、今大丈夫?」

 

「ええ、平気ですがどうしました?」

 

「そっちで、どれくらい教えました?」

 

「まだ触りの所程度を……ただ、やはり人型戦車が無いと教えにくいですね」

 

「よし、じゃあ明日合同でシミュレーター訓練しましょう!」

 

 その言葉に、少し考え込むまほ。

 

「……たしかに、ずっと見えない相手を想定するよりもマシですね……了解です」

 

「うん、じゃあそっちの調整はお願いします」

 

 そう言うと、通信を切る猫宮。そして、隊の全員に通信を送る。

 

「えー、皆さんの動きがとてもいいので、明日は第2師団の戦車隊と合同訓練を行いたいと思います」

 

「えっ!?」「ええっ!?」「本気ですかっ!?」「もうっ!?」「もうですかっ!?」

 

 5人から、びっくりした声が上がる。

 

「うん、正直に言うと……皆自分たちが初陣に出た頃より操縦が上手い位だし……」

 

 その言葉に、更にびっくりする5人。と言うよりも、こんな状態で初陣に出たのか……。

 

「というわけで、明日訓練します。アドバイスはするので、気楽に、ね」

 

 そんな訳で、日も傾きかけた頃、訓練は終了したのであった。

 

 

 

 次の日。第2師団の駐屯地にお邪魔した訓練生達は、自衛軍の基地なので肩身の狭い思いをしつつシミュレータールームに案内された。と、そこで待っていたのはまほ達と久場少佐、それに第2師団のメンバーである。

 

 敬礼と挨拶もそこそこに、本題に入る猫宮。

 

「じゃ、早速シミュレーター動かしてみましょうか。戦場調整は久場少佐、お願いします。」

 

「了解した。組み合わせはどうする?」

 

「1小隊と士魂号1機、くじ引きで決めましょう」

 

 そう言うと、それぞれの代表がくじを引いていく。訓練生達はおっかなびっくりであった。

 

 最初は、佐藤と第1小隊である。

 

「戦場は市街地、敵はミノタウロス5、キメラ3、ゴルゴーン2」

 

「そ、そんなにですかっ!?」

 

 思わず、声が上ずる佐藤。第1小隊としても、4台の戦車相手では数が多いと思っている。

 

「大丈夫、まずは遮蔽から遮蔽へ動いてみて」

 

 猫宮がそう言うと、それに従い遮蔽から遮蔽へ動く佐藤機。すると、幻獣が釣られて、第1小隊に幾らか横っ腹を晒す。

 

「砲撃開始!」

 

 そして、第2師団の練度は流石である。晒した横合いに、即座に砲撃を入れる3台。

 

「ほら、佐藤、横向いたよ!」

 

「は、はいっ!」

 

 横を向いた隙に、タンクキラーと呼ばれるキメラへ20mmを撃ち込む佐藤機。幻獣が、右往左往したが、やがて数が多い第1小隊へと向かう。

 

「次っ、目の前、全速力で通って!」

 

「はいっ!」

 

 佐藤機に興味を失った幻獣の目前を、最高速度で走り抜ける。すると、また1体が横を向き、体を晒す。すかさず砲撃。

 

 右へ左へと、翻弄され続ける幻獣たち。気がつけば、損害0で敵を倒せていた。

 

「敵全滅、おめでとう、佐藤訓練兵」

 

「えっ……は、はいっ!」

 

 久場の祝福に、我に返る佐藤。コックピットを出ると、全員が拍手で迎えてくれた。

 

 ただの訓練兵が、10体の中型を相手に被害0で乗り切る。それは、とてつもない記録である。

 

 こうして、各員が確かな手応えを感じる中、合同訓練は始まった。

 

 

短編が出るとしたらどんな話が良い?

  • 女の子達とのラブコメが見たいんだ
  • 男連中とのバカ話が見たいんだ
  • 九州で出会った学兵たちの話
  • 大人の兵隊たちとのあれこれ
  • 5121含んだ善行戦隊の話

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