ガンパレード・マーチ episode OVERS   作:両生金魚

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下関撤退戦:序

 8月5日 ○五○○ 善行戦隊駐屯所

 

「やっと着いたな……」

 

「長旅でしたわね」

 

「ここも久しぶりだな」

 

 学校を間借りしている善行戦隊の駐屯所には、ようやくたどり着いた千代美、凛、まほの3人が居た。動かせる車輌が有るので、猫宮達より先にやってきたのだ。それを、笑顔で出迎える瀬戸口司令代理。未だ寝静まっているので、出迎えは彼だけだ。

 

「やっ、お嬢様方お早いお帰りで。と、早速仕事になりそうなんだが大丈夫かい?」

 

 瀬戸口がそう聞くと、3人共力強く頷いた。仮眠等はキチンと取っていた。

 

 すると、海岸方面から砲声、銃声がこだまし始め、市民や善行戦隊の面々は跳ね起きた。それから数分遅れて、市内に警戒警報が響き渡る。

 

「壇ノ浦町及び彦島方面に敵が上陸しました。市民の皆様は速やかに各種交通期間を使用して避難をして下さい! 繰り返します、市民の皆さんは支給された避難用パスにしたがってすみやかに避難して下さい!」

 

 アナウンスする女性の慌てた声と、背後からは男性の声が聞こえる。どうやらそちらが判断したのだろう。

 

「ああ、早速だな。更には悪い予感大的中と言う奴だ。さ、お嬢様方、できれば作戦を考えたいのですがこちらへ」

 

「ああ、了解した」

 

 まほがそう言い、速やかに通信室へと入る4人。そこでは、来須と若宮が戦況を聞いていた。更には、エリカとみほも既にそこに居た。

 

「あっ、お姉ちゃん、それに凛さん、千代美さん」

 

「隊長、お久しぶりです」

 

 再開を喜ぶ5人。そして、それを尻目に、若宮が淡々と数字を読み上げる。

 

「敵はスキュラ30、中型250。3、4番機抜きだと辛い数字だな」

 

 中に入ってきた4人に、現状を説明する若宮。プロジェクターで、地図を映し出す。

 

「さて、これからどうする? 瀬戸口司令?」

 

「正確には司令代理だ」

 

 若宮の強い視線を、瀬戸口が笑って切り返す。

 

「この戦力では水際で全部押し返すのは不可能だろう。機動防御を行いつつ、山口へ撤退する」

 

 瀬戸口の言葉に頷く5人。

 

「そこで、他の方々とも合流できるはずです」

 

 異論はないようで、そこにまほが補足する。

 

「……それもいいだろう」

 

 来須にも異論はないようだ。

 

「あっ、あの、一つ気になることが……」

 

「なんだい、みほ隊長?」

 

 おずおずと手を挙げるみほに、優しげに聞く瀬戸口。

 

「ええと、市民の皆さんのことなんですけど……」

 

 それなりに過ごした街だ、愛着も湧いたのだろう。瀬戸口も、笑みを消した。

 

「全てをカバーするのは無理だ。なら大動脈の鉄道……山陽本線を守りつつ引こう」

 

「下関駅が落ちるまでだな?」

 

 千代美の疑問に、瀬戸口が頷いた。

 

「よし、それでは行動開始だ。これからは一分一秒の勝負になる。じゃ、お嬢様方、幸運を」

 

 瀬戸口が敬礼すると、隊長達5人も一斉に敬礼して、一目散に隊の方へ駆けていった。

 

 

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 同上 ○五三○ 下関・彦島地区

 

「よし、機銃手、準備ができたところから撃て!」

 

 なんてこったと心のなかで罵声を飛ばしつつ、玉島は軍曹として小隊の指揮を取っていた。

 

 津田と同じく、自衛軍に入った玉島は、その経歴を買われいきなり軍曹として、実戦経験の無い自衛軍の部隊へと配属されたのだ。これは人事課が形振り構わず、経験者を軍に入れていることに起因する。最初の最初は元学兵ということで視線が怪しかったりもしたが、ありったけの装備をかき集めたことを皮切りに、その技量や戦訓を披露すると、玉島を侮るものは隊に一人も居なくなった。

 

 だが、この軍曹としての初めての戦闘は、流石にヘビーだろと内心愚痴を言う。この混乱は、九州撤退戦の終盤にも匹敵しているだろう。だから、今は兎に角時間を稼ぐことだと、上陸地点からやってくる小型幻獣へ向けて、機銃を撃ち始めた。

 

 時間を稼げ――。それが兵たちの共通の認識である。市内と結ばれる3本の橋を渡られれば、1キロ先にはもう下関駅だ。だが、圧倒的物量の幻獣は、撃って撃ってもじわじわと間を詰めてくる。

 

「ちっくしょう……!」

 

 玉島や兵らの心に、焦りや恐怖が生まれ始める。だが、運命は彼らを見捨てては居なかった。

 

「参りますっ!」

 

 突然、スピーカーから女性の声が聞こえたかと思うと、大きな足音と地響きと共に、巨人が敵陣へ突っ込んで、手近なミノタウロスを血祭りにあげ始める――士魂号だ!

 

「へへっ、ありゃー壬生屋さんじゃねえか。おい、お前ら、5121が来てくれた、助かるぞ!」

 

 そう言うと、「士魂号だ」「5121だ」と、兵たちからも明るい声が漏れる。今や善行戦隊は、戦場の伝説として玉島が彼らに伝えていたのだ。

 

 

 

「壬生屋、あまり無理をするなよ」

 

「分かっています! しかし、無茶をせねばならない状況です!」

 

 そう言われると、瀬戸口も辛かった。橋から下関駅まで僅か1キロメートル。ここを止めねば、兵も民間人も皆列車を使えなくなる。なら、無茶をしなければならない。滝川は滝川で、軽装甲の足を活かして壬生屋が危ない時、時々全速力で走り囮の代わりを引き受けている。そして、15輌の車輌はそれぞれが、撃てば必ず当てられる様な有様だった。

 

「ったく、仕方ない。だが、危ないと思ったらすぐに引け。九州撤退戦と同じく、俺達が要だ」

 

「分かりました!」

 

 そう、元気よく壬生屋は返事をすると、また幻獣溜まりへと突撃していった。

 

「今日の壬生屋さん、冴えていらっしゃいますわね」

 

「ああ。長らくの休養も問題にはならなかったようだ」

 

 遠くから見ていた、凛とまほがそう評しつつ、次々と弾を当てていく。支援にも問題なしとなると、後はペース配分を上手くやるだけだ。そう思いつつ、凛はタクティカルスクリーンにまた目を通した。

 

 

 同 ○七五○ 下関・彦島地区

 

「ミノタウロス2、下にいる」

 

「よし、何時も通りお前さんが先だ」

 

「了解した」

 

 そう言うと来須は、レーザーライフルでミノタウロスの頭を貫いた。倒れ伏し、爆発する。するともう一方が攻撃地点を探ろうと体をキョロキョロさせ、後ろを向いた所に4丁の12.7mm機銃が撃ち込まれる。あっという間に、ミノタウロス2体は消滅した。

 

 善行戦隊が中型を止めている頃、若宮・来須コンビは市内を回っていた。時折中型幻獣が抜けてくることが有るし、また混乱の中、指揮を受けていない学兵の回収など、やることは山ほどあった。しかし、たった2名でこの戦場を巡れるとはある意味で呆れた二人でも有る。

 

 移動のため、とあるビルのドアを開けると、「ひっ!?」と言う声と共に複数の銃口を向けられた。

 

「落ち着け、味方だ」

 

「あ、ああ、すみません。ゴブだと思って、つい……」

 

 顔を見るとあどけない。学兵達のようだ。薄汚れ、疲れた表情をしている。そして、ビルの片隅に、数名の民間人がうずくまっていた。

 

「お前ら、一体この人達はどうしたんだ?」

 

「え、ええと、あっちこっち移動しながら戦っていたら逃げ遅れた人を見つけて……でも、守りながら移動するとか俺たちには出来ないからせめてここで守ろうと……」

 

「無線はどうした?」

 

「移動するときにゴブに壊されて……」

 

 そう言われ、思わずため息をつく若宮。全く、学兵なのに運のない連中だ。だが、民間人を守ろうとしたことは評価してやろう。

 

「お前たち、転属だ。駅まで送ってやるから、そこで付近に展開している整備員達を守れ」

 

「りょ、了解です!」

 

 そう言うと、守っていた人達を立たせ、一緒にビルを出て行く。戦場の爆音に、民間人達は怯えながらも、なんとか歩き出した。

 

「こちら若宮。市内で逃げ遅れた民間人を保護」

 

「またか。まあいい、急いで連れてきてくれ。滝川、行けるか?」

 

「行けるっす!」

 

「よし、よろしく頼む。いざとなったら民間人だけでも運んでくれ」

 

「了解っす!」

 

 そう言うと、駆け出す2番機。民間人あっての軍――その建前を守るために、誰も彼もが必死に戦っていた。

 

 

 同上 ○八三○ 善行戦隊駐屯所

 

 善行戦隊駐屯所では、回収された学兵たちが、礼のごとく整備員達を守っていた。と、そこへヘリコプターが降り立つ。中から出てきたのは、猫宮、速水、芝村だ。猫宮が岩国から移動するためにわざわざヘリが使われ、速水と芝村は途中で回収されたのだ。

 

「はいはい、3人共おかえり~! 機体の準備、バッチリ出来てるよ!」

 

 そうぴょんぴょんはねながら近寄ってきたのは新井木だ。

 

「よくやった、すぐに出るぞ、厚志、猫宮!」

 

「了解、舞」 「うん、勿論!」

 

 そう言うと、すぐさま機体に駆け込む3人。

 

「3番機、4番機出撃する。すぐにそちらへ行くぞ!」

 

「よう、遅刻だぞ3人共。まあ良い、なんとか戦線は維持している。だが疲労も時間の問題だ。すぐに来てくれ」

 

「勿論、さ、行くよ!」

 

 と、2機は全速力で下関駅へ向かうのだった。

 

 

 同上 ○九○五 下関駅周辺

 

 

「騎兵隊の到着だ~っと!」

 

 そう言いつつ、敵陣ど真ん中へと突っ込んでいく4番機。満を持しての到着であった。

 

「お待ちしておりましたわ!」 「おう、おせーぞ3人共、先に勲章もらっといたぞ!」

 

「ははっ、いろいろあってさ、ごめんごめん。さ、3番機も続いて!」

 

 猫宮が突撃してこじ開けた穴を、1番機と2番機、そして戦車群が更に広げる。

 

「ははっ、大通りだね、行くよ、舞!」「分かってる!」

 

 そして空いた大穴に、3番機が突撃してミサイルを撃つ、いつもの黄金パターンの完成である。

 

「さて、皆疲れてるよね? しばらく3,4番機で食い止めるから小休止してきて」

 

「了解しましたわ。まほさん、順次多めに交代して休ませましょう」

 

「分かった。第2、第3小隊はひとまず後ろへ行って補給と小休止を。壬生屋さんもお先にお願いします」

 

 と、テキパキと休む人員を入れ替えていく。ようやく揃った善行戦隊により、戦況はまた好転することとなる。

 

 

 




今回も特に大きな動きはない感じかな?
ヒロインたちとの交流も早く書きたいものです。

短編が出るとしたらどんな話が良い?

  • 女の子達とのラブコメが見たいんだ
  • 男連中とのバカ話が見たいんだ
  • 九州で出会った学兵たちの話
  • 大人の兵隊たちとのあれこれ
  • 5121含んだ善行戦隊の話
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