ガンパレード・マーチ episode OVERS 作:両生金魚
続いては滝川+大人たちのネタであります。一時期砲火が途絶えても、それは次の戦いまでの準備期間。休んでいる暇は無いのです。
呼吸を整え、目標をロックし、発射。もう幾度も繰り返した動作で、淀みは無い。だが、何度も何度も繰り返してきた動作だけに、ほんの僅かな違和感が拭えない。
『標的へ命中』
「うっし」
撃ったらすぐに移動。軽装甲では少しの被弾が致命傷になりかねない。それを自覚したが故にこの戦法を編み出した。稜線の影、建物の後ろ、土手の後ろ。複数の候補から瞬時に選び出し、歩を進めるが、少しもたついて転びかけた。
「……た、滝川くん大丈夫かな……?」
「やはり少しレスポンスが遅れている様だね。パイロットは安全だろうが機体はどうなるか」
それを、大人の技術者と一緒に見るのは森と狩屋の二人だ。光輝号の開発を補助するために、滝川がテストパイロットとして、そして森と狩屋は整備士として四菱に送り込まれていた。おまけとして、加藤もくっついてきているがそちらは金や物資の流れを精査していた。
「おわわっ!?」
今度は走って山を踏破している最中、足が急に動かなくなりすっ転んだ試作型の光輝号。その光景を見て、二人はそろってため息を付いた。
事の始まりは、猫宮が光輝号の視察に訪れた時の事。会津閥の人間が意気揚々と猫宮を案内した所、当然の如く機体に乗り込みテストをしてみて、徹底的なダメ出しを喰らったのである。
何しろこの光輝号、費用が栄光号の1/3で済むのはいいが、その分性能はお察しという有様である。特に、足回りの弱さは頂けない。
「うん、この機体出してパイロットが死んだらね、死んだ人の関係者はあなた方を殺しにきますよ?」
真顔で言い切る猫宮に恐怖する技術者達。まあ、コストをケチって役に立たない物を政治のゴリ押しで出したら間違いなくそうなるので実際に死ぬ前に警告してくれるだけ優しいのだが。
だが、猫宮は全否定したわけでもなかった。砲戦型に搭載された40mm肩グレネードに太鼓判を押し、これを更に長持ちするように改良させれば、栄光号で乗せる武装に正式採用しても良いと交渉を持ちかける。
これに喜んだのは四菱と樺山の担当者達で、すぐに改良する事を申し入れた。そして、肝心の機体の方であるが
「じゃあ、5121のパイロットの一人をテストパイロットとして出向させますので。良いですか、彼がOKを出す機体じゃないと絶対に採用させませんからね」
と念を押した。本来なら、そんな権限も無い様な一パイロットであるはずなのに、その威圧感と胸にぶら下げられた大量の勲章が、有無を言わさぬ説得力を放っていた。という訳で、広島の軍基地に飛ばされてきたのが滝川達であった。なお、森や狩屋は臨時の整備学校の教官も兼任している。
――が、結果はご覧の通り、中々難儀していた。兵器の調達コストを下げたいのは軍の性では有るが、コストを下げすぎると性能が付いてこない。あまり企業にしわ寄せをすると今度は企業自体の技術力の低下を招く。少しでも安く、それでいて性能は高くと。それを目指し今日も技術者達は研究所に缶詰になっていた。
「あ~、くっそ! あんなに簡単に足が壊れるんじゃ怖くて戦場に出れねえぞ!」
「お疲れ様、滝川くん。はい、タオル」
「おっ、サンキュー」
ぶっ倒れた機体から助け出され這い出してきた滝川はタオルを受け取ると、汗を拭いて一息をつく。旧式の士魂号と比べても思うように動かない機体に悪戦苦闘しているようだ。自分の思う動きと、実際の動きにズレが有るので、消耗も激しいようだ。
「あの調子だと、調整にまだまだ時間がかかるな」
「マジかよ……とほほ、俺の軽装甲が恋しいぜ」
狩屋の言葉に、がっくりと肩を落とす滝川。猫宮に頼られたし、思う存分機体を動かせると思ったらこれである。動かしている最中のやり取りが有るので報告書を出したりしなくて良いのは助かるが、この気持ち悪い疲労感は如何ともし難い。
「それじゃあ、また整備してくるわね」
「それまではゆっくり休んでおくといい」
「ああ、任せた」
そして、テストが終わった後は森と狩屋が中心になって機体を整備するのだ。ハンガー内では、既に二人の教え子たちが待機しており、マニュアルと光輝号を見比べていた。整備も職人の世界だけあり、これもまた熟練するのに時間がかかる様だ。
だが、見た目はキリッとした美人の森と、足が治ったことで気性も穏やかになり陰険メガネからインテリイケメンメガネにクラスチェンジした狩屋の人気は生徒たちから高い。特に狩屋のモテっぷりは凄く、一緒に付いてきた加藤がしばしば腕に抱きついたりと恋人アピールで周囲に威嚇していた。
そんな取り留めもないことを思いながらぽけーっと整備している所を眺めていると、見知った顔が近づいてきた。この度目出度く昇進した久場少佐であった。慌てて立ち上がって敬礼をしようとするが、笑ってそのままで良いと抑えられた。
「お疲れ様、滝川大尉。調子はどうだい?」
「ぼちぼち……っても言い難いッスね……っとと。正直、あの機体じゃ戦えないと思います」
口調も直し、頑張って真面目モードにして久場に向き直る。久場も苦笑してから一転して渋い顔になる。
「そうか……」
久場はほぼ会津閥の人型戦車部隊の指揮官に内定しているのだが、その部隊に配備されるかもしれない機体の評価が落第点なのは控えめに言って不安である。
「あっ……で、でも、二人からは整備学校の教材に困らないのは助かるって言ってます!」
何とか良い点を見つけようとする滝川。
「それは、不幸中の幸いと言った所か」
ますます苦笑が止まらなくなる。しかし整備の難易度が高く手間もかかるのが人型戦車だ。少なくとも、整備員の確保は何とかなりそうというのは朗報だろう。武装の方は、栄光号と共通規格にする事が定められ、幾つかの武装はこちらの系列の企業も食い込めたのが大きい。特に、40mmグレネードの口利きをしてくれたのはとても助かった。
「ふむ、それでは肩のグレネードはどんな調子だろうか?」
「えっと、そっちは文句無いです! めっちゃ使いやすい感じで!」
逆に、軒並み高評価なのがこの肩に設置する40mmグレネードだ。猫宮や滝川、そして栄光号に取り付けた所芝村や壬生屋からも評価が高かった。
「なるほど……休憩中にありがとう。是非、これからも頑張ってくれ」
「了解です」
と、ぎこちないながらも敬礼する滝川。こちらは相変わらずの様だと、表情に出さないで内心でだけ笑ってしまった。だがまあ、それで良いのだろう。まだまだ彼らは子供なのだから。
テストパイロットとして機体を動かすのは終わったが、滝川の仕事はそれだけではなかった。滝川のもう一つの役割――それは、滝川の編み出した戦法をマニュアル化し、他の凡人のパイロットにも適用できる様に方法論を確立することであった。
軽装甲の使い手は他にも荒波中佐が居たが、彼もまた天才である。単機で敵陣に突撃して引っ掻き回して釣り野伏を仕掛けるのはどう考えてもマニュアル化に向かないのだ。
と言う訳で、白羽の矢が立ったのが滝川なのだが、本人としては普通と評価されているようでかなり複雑な気持ちであった。だが、あくまで滝川の戦術は凡人の延長線上に有るというだけで、本人の練度はまたとても高いのだが。周りが100点だの95点だの98点だの叩き出している中、一人少し違う分野で80点というのは十分高い数字である。だからこそ、光輝号に乗る予定のテストパイロット達もシミュレーターで四苦八苦してしまっている。
マニュアルの制作に当たっては、パイロットの滝川を中心に久場少佐に、それとレンジャー部隊から、優秀なスナイパーの《しょうだかずふみ》庄田一文曹長が招集されていた。滝川は地形を読み、そこで隠れたり地形を盾にしながらの狙撃を多用する。むしろスナイパーの様だと史実でも評されていた。よって、本職の目線からもアドバイスも受けての検討が度々行われていたのだ。
撃つ。隠れる。移動する。機動力と言うより、レスポンスが微妙に悪い光輝号では特にこれを徹底しなければならないというのが、3人の出した結論だった。
「とにかく、あの機体で敵の中に突っ込むのは怖くて無理です。……多分猫宮や速水でも相当きついと思います」
「だろうな……幻獣に近づいての戦いをさせたければそれなりのパイロットと栄光号を使うしか無いか」
「はい。しかし、あの地形の踏破性能は特筆すべきものがありますのでそれで宜しいかと」
難しい顔をする二人に対して、庄田曹長は光輝号の戦術的価値を肯定的に捉えていた。確かにコストは掛かるが、日本はただでさえ山岳が多い地形であり、また島国なので海に面している地域も多く、そして数少ない平野は建物が密集していることが多い。恐らく大陸ではまた評価も変わるだろうが、この日本という地理条件で動かす兵器として見た場合、光輝号は決して悪い兵器とは思えなかった。
そして恐らく、ただ戦うだけでなく自分たちレンジャーの補給・回収要員として見ても中々なのでは無いだろうか? 航空機での輸送は素早いが、隠密性が低くまた装甲も薄い。だが、人型戦車は通常の装甲が薄い代わりに地形という装甲を幾らでも活用できる兵器だ。自分たちの様な特殊部隊が敵地深くまで専攻した後、山岳を走り抜ければ幻獣を引き離して撤退もしやすいだろう。最も――
「でも、それならやっぱり足回りはどうにかしないと……」
「うむ……」
「そうですな……」
人型戦車の命綱はやはり足、である。二本足で有る故に走破性が高く、また二本足で有るが故に片方でも故障するとそれが命取りだ。もう、多少コストが高くなってもそこは絶対に手を抜いてはならない。技術人には念押しする事を決意しつつ、今日も検討会は日が暮れるまで続くのであった。
えーと、色々と悩んでいたのですが本編の方の最新話のラスト、ちょっと変えようかと思います。
幻獣の王の暗殺を目論むのではなく、まず目の役割の幻獣を潰して情報をなるべく行かないようにするみたいな感じにしようかと。
……しかし、緑の章のキャラも増えちゃうけど大丈夫かな……い、一部だけなら何とかでしょうか?
(追記)ちょっとアンケートの表示名変更……と思ったら人数がリセットされてしまった……どうもすみませんorz
消える前の投票数は上から7.8.8.3.10と生っておりました
もしも見てみたいとしたら……
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ダージリン
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アンチョビ