一応、失踪はしないですよ?(震え声)
まあ、細かいことは置いておいて、どうぞ!
九校戦、新人戦二日目
三高の一年生選手達は昨日の反省および対策のために集まっていた
だが、やる気に満ち溢れているわけではなくその空気は重い
理由は二つ
「今回の一高には凄腕のエンジニアがついている。これは間違いない」
「それに加えて昨日のバトル・ボードの東風谷選手の実力、決して侮れるものじゃない」
女子スピード・シューティングの上位独占とふざけている行動をとりながらも圧倒的な実力差を見せつけて勝利した東風谷選手。その他にも雫やほのかといった実力者を保有している一高に対して彼らは戦慄を禁じえない
「救いがあるとすれば出場種目がかぶっているというところだけど…」
「それでもその競技の上位を独占される可能性が高いというのはキツいものがあるな…」
新人戦のポイントは本戦の半分であり少なくはないが大きくもない
それでも、一位~三位を独占した場合得られるポイントは50ポイント(モノリス・コードを除く)。これは本戦で優勝した時に得られるポイントと同じである。
少ない競技に絞って実力者で上位を独占することで確実に高得点を獲得する。ただでさえ本戦では三巨頭と呼ばれる強者がいて少しの差であれば逆転できる一校だからこそ取れる戦法
摩利がバトル・ボードで怪我を負い心配するのと同時に少しだけ安堵していたが新人戦で得点差をつけることは出来ておらずむしろその差は広がるばかり
コレが
そう言わんばかりの実力を見せつけられ顔が暗くなる
「なに、であればワシらも優勝を取ればいいのじゃろう?」
だが、そんな暗い空気を気にせず切り込む一声
「トモ」
「それに女子側が強かろうと男子側の成績は現状こちらの方が上じゃろうが。そこまで気にすることもないじゃろう」
鼻にかかった丸メガネをクイッと上げながらいつもの口調でいつもどおりに宣言するトモ
その様子は自信に満ち溢れていてどんな言葉よりも仲間を勇気づける。それが三高の実力者の中でも上位に食い込む、自分たちの中心人物の一人であれば尚更だろう
「…そう、よね。それに、こっちには一条君に吉祥寺君、二ツ岩さんもいるんだし!」
「いくらエンジニアに凄腕がいたってすべての競技を担当してるわけじゃない。必ず付け入る隙はある!」
「…そうだ!そもそも彼らの戦術は上位を独占できなければ意味がない。この戦法は諸刃の剣でもあるんだ!」
「その意気じゃよ。先までの雰囲気では勝てるものも勝てぬじゃろうがこれなら大丈夫じゃろう」
先程まで下を向き暗い雰囲気が漂っていたとは思えない熱がそこにあった
決意に燃える同級生を見ながら将輝と真紅郎はトモに声をかける
「士気が高くないと勝てるものも勝てない、か」
「確かに、その通りだね。さっきよりも調子が良さそうだ」
クスリと笑いながら話しかける二人。その表情に先程まで見られた険しさがなく憑き物が落ちたように見える
「…それにしても、トモには世話になりっぱなしだな」
「そうだね。僕らではあれ程の鼓舞ができたかと言われると難しいしね」
「ま、将輝は大切な仲間じゃからな!いくらでも力になってやるわい!」
「ああ、頼む」←いい笑顔
「………………………。」プシュー
「おいトモ!?大丈夫か!?真っ赤だぞ!?」
「ふなっ!ち、近い!顔が近いのじゃ!!」
「す、すまない。……だが、体調が悪かったら言ってくれ。トモは大事な仲間なんだから」
「(……なんで将輝ってここまで鈍いんだろう。)…ほら、トモ。試合があるんだからさっさと準備しないと。将輝も、トモは大丈夫だから」
「あ、ああ。…トモ、本当にだいじょうb「大丈夫じゃ!なんでもない!」――そうか。ならいいけど我慢はするなよ?辛かったら言ってくれ」
「う、うむ。わかっておる。(一番辛いのはこの気持ちに気づいてもらえない事なんじゃがのう。で、でも自分から言うのは恥ずかしいし……)」
二ツ岩 トモ。三高の実力者であり、見た目も麗しい大人びた美人だが中身はかなり乙女であった
「雫、今日の試合は見に行くので頑張ってくださいね!」
朝、朝食の場で早苗は雫に向かって宣言する。昨日の試合は試合の時間が重なり見れなかった分、今日のピラーズ・ブレイクを楽しみにしたようだ
「うん。今日は早苗は試合はないんだよね?」
「私とほのかは今日はオフですよー。今日は男子の予選なので」
「それで明日が準決勝と決勝だよ!」
「まあ、ほのかに負ける気はないですよ」
「こっちこそ、早苗には負けないよ!」
挑発する早苗と奮起するほのか。両者とも気合は十二分。周囲の空気に当てられたのかいつもよりも好戦的になっている親友二人に対して雫は落ち着かせながら今日のスケジュールを聞くと、
「雫のピラーズ・ブレイクは見に行くのは決まってたんだけど…」
「その後、どうするか決めていないんですよね。深雪さんの試合は午後で雫の試合が終わったあとは少し時間があるんですよ」
「……それなら、早苗は見に行ったほうがいいかもしれない人がいる」
雫の口から紡がれる言葉。その続く言葉は小さい声量に関わらず二人に大きな衝撃を与えた
「深雪と同じぐらいの実力者って言えばどのくらいかわかるよね?」
「…でも、深雪さんと肩を並べられる人なんて本当にいるんですかね?」
会場を歩きながら早苗はそう一人呟く。今は午後12時。件の選手の試合開始までは少し時間がある
早苗は雫の試合が終わるとすぐに雫から言われた選手の試合を見るために会場を移動した
いつもであれば試合に勝利した雫にお祝いの言葉を述べるためにほのかと待っているのだろうがそれをせずにすぐに会場を離れたのは深雪と肩を並べる実力が見たかったのか、はたまた何か予感めいたものがあったのか
「少し、いいかのう?」
会場で席に着き試合を待っていると後ろから声をかけられた
早苗は後ろを振り向くとそこにいたのは黄土色のノースリーブと臙脂色のスカートを身にまとった自分よりも少しだけ年上に見える女性。茶色い髪に赤縁メガネが似合っているけれど、なにか、こう―
(人、に見えるけど…なにか、違う……?…神奈子様や諏訪子様と似てる…)
人の形をしているが、本当に人なのか確証が持てない
いつも二柱と、人でないものと、暮らしていた早苗だからこそ感じる違和感
始めてのその感覚につい、早苗の口から言葉が溢れる
「あなたは……、
今日、早苗は始めて二柱以外の
マミゾウはトモの試合を見るために女子クラウド・ボールの試合会場で席を探していた
(さて、どこで見るかのう。…む?アレは……)
マミゾウの目線の先には一人の女子の姿。緑色の髪をして髪にはアクセントとしてカエルの髪飾りがついている
しかし、マミゾウが気になったのはそこではない
試合の見物の為に席に座っているだけだというのにその身から溢れ出てほとばしる
(霊子がどこかに向かっておる?昔ならばよく見かけた光景じゃが、こんな時代にこんな娘がおるとはな……)
過去に生んだ半妖の自らの子でもでもここまでの霊子を身に宿してはいなかった。むしろここまでのものは相手が名の知れた妖怪でないとお目にかかれなかった。そんな量の霊子をその身に宿している齢20に満たない少女
(…面白い……!)
こういう存在がいるから
「少し、いいかのう?」
マミゾウは、彼女に声をかけることにした。理由はただの興味、好奇心。
だから、
「あなたは……、
想像もしてなかったその言葉に思わず笑みが溢れたのは仕方の無いことだろう
「さて、もしも人じゃないと言ったらどうするんじゃ?」
まさか、人でないと見抜かれるとは思っても見なかった
目の前の少女は人外を友と呼ぶのか、はたまた敵と呼ぶのか
気になって投げた問いかけ。だからこそ、
「いえ、どうもしませんけど?」
この答えには少し落胆した
(…がっかりじゃのう。面白い答えを期待しすぎたか?)
「…そうか、じゃがなぜワシが人でないと思ったんじゃ?」
期待で少し興奮していた頭が冷めると気になった。自分の隠形は完璧。
「ウチの神様と同じ感じがしたんですよ」
「…!?お主の家には神仏が住んどるのか!?」
思っても見ない情報に声が大きくなる。だが、周囲の人々は
人が幻想を信じなくなり信仰が集められなくなって長い時間が経っているのに、未だに存在出来ている神様がいる
「(紫の奴が喜びそうな情報じゃのう)…ちなみに、その神の名は?」
「八坂神奈子様と洩矢諏訪子様です!あ、どうですか?あなたも守矢神社を信仰してみませんか?もしも人でなかったとしても信仰するのに関係なんてありません。むしろ人でなければお二人を見ることができるかもしれませんね…。どうです?あなたも――」
二柱のことを話し始めたとたん生き生きとし始めた早苗に最初は情報を得るためにちゃんと聞いていたマミゾウだが、その熱意が一向に引くことを見せずいつまでも話し続ける早苗に顔から汗がたれ始める
声をかけなければ良かったと若干後悔し始めた頃になりようやく雫が早苗に追いつき試合終わりの雫の手でようやく強制的にその口は閉じられた。その間行われた試合の様子を早苗が見ているはずもなく、今日がオフということで夜まで説教されるのはいつもどおりの流れである
「……、紫には守矢神社とやらのことだけ伝えておくか」
友人が失礼しました。と必死に謝りながらその
「……さすがの私でもあそこまで強烈なのは相手にしたくないのよね」
そんな彼女の言葉に返すものが一人
「…ならばヌシの式神にでも任せればよかろう」
「………そうね、藍に任せましょうか」
空中に開いたいくつもの目玉が見つめる空間から顔だけを覗かせた賢者は己の式神に丸投げすることに決めた。不思議なことにこの摩訶不思議な光景を認識出来ているものは、いなかった
「――さて、お説教はここまでにして後は早苗が、見に行ったのに、見逃した、二ツ岩選手の試合でも見ておこうか」
「…そ、その話は、やめに、しません…か?」
「アハハハハ…」
「まったく、自業自得でしょう?」
夜、A組の四人は雫とほのかの部屋に集まっていた。というのも
「でも雫の家の人が試合の様子を撮っててくれて助かりました」
「…私もまさか深雪に見せるために撮ってもらったビデオが必要になると思わなかった」
「ご、ごめんなさいぃ……」
午後一番に開始される深雪の試合と被ってしまった女子クラウド・ボールの準決勝と決勝。二ツ岩選手はそのどちらも1セットも落とすことなく圧倒的な実力を見せつけている
そんな力量を持ち、本戦のミラージ・バットで当たるかもしれないライバルの試合を見せるために雫が家の使用人に録画を頼んだビデオを見るためである
「でも雫、よくそんな選手がいるなんて情報掴んでましたね」
「そうね。私はともかくお兄様もそこまでの実力者だとは知らなかったようだし……どこで知ったの?」
「持つべきものは同好の士」
スッ、と雫の差し出した端末にはデカデカと「国立魔法大学附属高校 第36校」と書かれている。それは匿名で誰でも書き込める掲示板と呼ばれるもの。信憑性の高いものも低いものも存在する現代のパンドラの箱である
「……えっ?」
「どうでもいい雑談とかも多いけどほかの学校のことを知るのに中々役に立つ」
「え、いやですね…、」
「……雫、あなたもしかしてそれだけで判断したの?」
思っても見なかった情報収集の仕方に困惑する二人。そんな二人に首を横に振りながら雫は答える
「さすがに、そんなことはしない。ただ、十氏族の一条家と互角の実力って書いてあったから気になって調べたら思ってたよりも強かったから」
この先はビデオを見れば言いたいことがわかる。と言って雫は機械を操作する。そこに映し出された映像は早苗と深雪の想像を超えていた
――深夜、守矢神社――
「それで、式神がこんなとこまでなんのようだい?」
神と相対する狐
「こんな人外の力が減りきった時代に未だに力を持った妖怪を従える奴がいるとは思っても見なかったよ」
神の機嫌は決して良くはない。力が本当に衰えているのか疑わしい程の威圧感が狐に突き刺さる
「あなたがたに少しお話を持ってきただけですよ」
しかし、狐はその威圧感を受けても臆することなく口を開く
「我が主、八雲紫様の作られた郷に来る気はありませんか?」
雫さんがどうしてこうなったのか未だにわからない
さて、考えていたプロット(ガバガバ)から脱線し始めた気がするけどいつものことだから大丈夫でしょう。←オイ