魔法科高校の風祝   作:こそ泥

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面倒くさい事は言いません

ただ一言、

待 た せ た な !


神罰

九校戦、新人戦三日目

 

今日は男女バトル・ボードの決勝と準決勝。それとピラーズ・ブレイクの決勝、準決勝が行われる。いつも仲良く過ごしているA組のメンバーが互いに競い合う可能性が高く、その緊張感は朝食の席で既に現れていた

 

「…………………………。」

「…………………………。」

 

ほのかと雫。いつもであれば周りの会話に耳を傾け穏やかな食事をとっているところだが今はそんな様子は微塵もない。不安と緊張でガチガチになっているほのかといつもであればその様子を見て落ち着かせている雫。だが、今はそんなほのかの様子に気がつかずに雫はどこか上の空で食事を続けていた

 

(……やれることはやった。奥の手もあるし深雪に負ける気なんてない。だけど……本当に勝てるの?)

 

「ていっ!」

 

「ウグッ!?……何するの、早苗?」

 

思考の海から強制的に抜け出させた張本人は背後でチョップの構えを取りながらこちらを見つめている。その様子は心配というより呆れているようであり……

 

「…もうお皿に料理残ってないですよ」

 

「あっ」

 

「ハア、雫でも緊張でうっかりとかするんですね。……少し、安心しました」

 

「………なんで?」

 

「いや、ほのかとかあの状態でずっとブツブツ言ってる状態ですし、雫だけでも戻って良かったな。って」

 

チラ、と横のほのかを見てみると手に持ったフォークが宙で固定されたまま動いておらず少しうつむいた顔の目からハイライトが消え小声でずっと何か呟き続けていた。有り体に行って重傷である

 

「!!?ほ、ほのか!?大丈夫!?」

 

「あぁ、はい、だいじょうぶですよ、だいじょうぶ、だい、じょう、ぶ……」

 

「……どう見ても大丈夫じゃないですよね?」

 

「………早苗、マスタードとってきて」

 

「?」

 

早苗がマスタードを取って戻ってくると雫はそれをほのかの皿に残っていたパンにこれでもかと塗りたくる。そのパンを口元に運ぶと無意識に口に入れてしまい……

 

「――だいじょうぶ、だいじょ……!!??ん、んぐっ!?げほっ、か、辛っ!?お、お水!」

 

「はい」

 

「ング、ングッ……ぷはぁ、な、何があったの!?えっ?えっ?」

 

「…早苗がほのかのパンにマスタードを塗った」

 

「ちょ!?雫さん!?」

 

雫でもあんなイタズラをするんだー。と傍観していたところにまさかの責任転嫁に大慌てで雫に詰め寄る早苗。その様子はまるでイタズラをバラしたことに対する抗議のようで……

 

「さ、早苗ーー!」

 

「誤解ですってばー!」

 

先程までお通夜状態とは打って変わってわずか数十秒で騒がしい喧騒の中心となり「ああ、またか」と注目されていることにほのかが気づきおとなしくなる頃には食事の時間も終わりに近づいていた

 

 

 

「もう、雫ったらなんであんなことするの」

 

「ごめん。…でも、ああすればほのかも落ち着くかと思って」

 

「どこが!?あれのせいで恥ずかしい思いまでしたんだよ?達也さんの優しそうな目なんてこんな理由で見たくなかったよ!」

 

「ああ、でも確かにさっきの状態よりはよっぽどいいですね」

 

「……さっきまでの私そんなにまずかった?」

 

「早苗が心配するぐらいだよ?」

 

「…あ~、確かにダメそうだね」

 

「………最近、親友が冷たいんですけどどうすればいいんでしょう」

 

「早苗!」

 

最近冷たくあしらわれるのに慣れ始めた早苗が皿に残った料理を食べ始めるとほのかが突然呼びかけてくる

 

「決勝で会おうね!」

 

「--、決勝に進んでから言ってください」

 

プイと顔を背けるとさっさと行ってしまう早苗。だが、ほのかには耳まで真っ赤にした早苗の横顔が見えた

 

「雫も深雪との試合頑張ってね」

 

「そっちこそ、早苗は強いよ」

 

「わかってる」

 

胸に覚悟の火を灯し少女たちは各々の戦いの場へと歩を進める

 

少女たちの戦いの幕がついに上がる!

 

 

 

 

 

女子バトル・ボード準決勝。既に1試合終了して2試合目。既にほのかが光波振動魔法の応用で水路に明暗を作りコースを狭く錯覚させるという手法を使って決勝まで駒を進めている

 

「さて、私も負けてられませんね」

 

既にレースの準備は整い後はスタートの合図を待つばかり。他の参加者の実力は試合を見て把握している。力量差のみで言えば油断しなければどちらにも勝つことは可能。逆に言えば一手間違えれば手痛いミスになるような相手。そんな相手を前に早苗は……

 

「(……楽しくなってきましたッ!!)」

 

笑みを浮かべていた

 

その様子に恐れも緊張もなくあるのは獣のように獰猛な笑み。勝ちたい、相手を打倒したいという純粋な渇望。……決して神職が浮かべるような表情でないことだけは確かである

 

「「っ!!」」

 

他の、主に早苗の様子を観察していた対戦相手たちはそんな早苗を見て負けてられないとばかりに気合を入れ直す

 

白熱したバトルの始まりを告げる合図が鳴り渡る

 

 

 

「早苗さんは勝てるのでしょうか?」

 

応援席で美月が呟く。一緒に見に来ていた他のメンバーも思い思いに反応する

 

「まあ、勝てるんじゃない?早苗ってなんだかんだで成績良かったよね?」

 

「俺たちよりもよっぽど、な」

 

「それより僕は東風谷さんが負けるということが想像できないよ」

 

「「「「確かに」」」」

 

「ただ、何かやらかしそうではあるよね。思っても見ないというか、何してるのかわからないというか」

 

「「「「うんうん」」」」

 

…もし本人が聞いていればその扱いに傷ついた《かも》しれないが自業自得なのでしょうがないだろう

 

「あっ、そろそろ始まりますよ」

 

美月の声に全員が水路の方に目を移すと開始を告げるランプが色を変え始める

 

ランプの変化に早苗が腰を落として出走の合図を待つ

 

ピッ、ピッ、ピーーー!!ドオオォォォォンンーー!

 

「なっ!?」

 

スタートの合図が鳴り響いた直後、一拍遅れて早苗のすぐ近くで水面が大きく爆発した

 

「なっ!!?」

 

「そんな!?」

 

スタートライン近くで起こった大きな爆発。爆発により噴き上がる水しぶきに覆われたスタートライン付近を呆然としながら観客が見守る中を二つの影が飛び出てくる。その姿に慌て始めた審判や待機していた救助員が胸をなで下ろす

 

しかし、直ぐに顔から安堵が消え険しい顔つきで未だ蒸気で見えないスタートラインを見つめる

 

スタート地点にいた選手は三人、内二人は既に無事なのは確認出来ている。では---あと一人は?

 

爆発を起こした張本人、東風谷早苗はどうなったのか?

 

「早苗・・・・・・」

 

「無事、だといいけど・・・」

 

会場中が固唾を呑んで見守る中、水しぶきが収まり中が見える。そこには・・・・・・

 

 

 

 

 

「上手くいきましたな」

 

「ええ。件の選手は本戦のミラージに出場する上にチームのムードメーカーらしい。そんな選手の棄権は随分とチームにも影響を及ぼすでしょうな」

 

ここは会場近くのホテルの一室。そこに集まった男たちは唖然とした会場のライブ映像を見ながらほくそ笑んでいた。それは自分たちの運の良さによるものではなく()()()()()()()()()()()()()()()()()。未だ白い煙が晴れず中は見れないがあの規模の爆発が近くで起これば無傷ではすまないだろう

 

「まさか渡辺選手の妨害のための仕込みがこんなところでも使えるとは思いませんでしたよ」

 

「やはり天は我々に味方しているのかもしれませんな」

 

本戦バトル・ボードで起きた悲劇。渡辺選手のCADに蟲を仕込むための協力者が今回担当したのは丁度早苗のCAD。早苗のCADにインストールしてある術式の中にあった水面を爆破する術式の規模を弄れたからこそ起きた今回の出来事。天に味方されないと起こらないであろう奇跡に彼らは笑っていた

 

 

だからこそ―――それを見た神の怒りを買った

 

 

 

「そんなことは断じてないよ」

 

「「「!!??」」」

 

突然に聞こえた女性の声。辺りを見回す彼らだがその視線は一箇所に留まることはなく声の出処を探し続ける

 

「人の()になんてことをしようとしてくれるのかねぇ。温厚な私でもここまで怒らせるんだ。諏訪子がこっちに来てたらあんたらもう生きてないよ」

 

「誰だ!どこにいる!?」

 

相変わらず響く女性の声。だが探せどもその姿は無く声だけが響いていく

 

「おっと、――こうすればいいんだっけ?」

 

―――フッ、となんの前触れもなく彼女は虚空に姿を現した

紫の髪に赤い半袖と臙脂色のスカート。注連縄を背に備え胸元には鏡が首から下げられ一目見ただけで忘れられないような美貌を備えている。

 

「はじめまして、うちの()が世話になったね」

 

「貴様ッ、捕えろ14号!!」

 

――ダッ、ゴキリ

 

「ご挨拶だねぇ、会話をする気はないのかい?」

 

「なっ………」

 

脳手術と薬により人間を超える力、速度を兼ね備えた兵器は一瞬で彼女の背後に回り込み―――その右手に首を折られていた

 

「やれやれ、いきなり襲いかからせるなんて物騒な世の中だね」

 

ポイ、とその手に持った兵器を捨てると指示を出した男――リチャードを睨みつける

 

怯えた様子で他の幹部が他のジェネレーターにも襲わせるが物言わぬ兵器が全て死体に変貌した。彼らの手元に武器はなく抵抗する術は、ない

 

「襲いかかるにしても自分たちではしないなんて根性がないねぇ」

 

「ば、化け物め…っ!」

 

化け物でなくて神様なんだけどねぇ、と軽く笑いながら一歩前に進むとそれだけで包囲するように立っていた幹部の輪が大きくなる

 

「やれやれ、この程度が出来る人間なんてザラにいるだろう。この程度で怯えられても困るんだけどねぇ」

 

決してそんな人間がホイホイいるような世界ではないことは明記しておく

 

「……何が目的だ」

 

「なに、ただのお礼参りさ。人の娘に手を出してくれた、ね」

 

「・・・・・・我々はもうこの大会には手を出さない。これ以上貴様らに関わるつもりもない」

 

「そんな理由で許すとでも思っているのかい?」

 

神奈子が一歩踏み出すと男たちは一歩引く。蛇に睨まれた蛙のように萎縮した男たち

 

「先に手を出しておきながら謝って許されるはずがないだろう?」

 

「・・・・・・助けてくれ」

 

男たちの背に何かがぶつかる。彼らはすでに壁際まで追い詰められており下がることはできない

 

「なに、命までは取らないようにしてやるさ」

 

その言葉が聞こえると同時にバタバタ、と音を立てて倒れる男たち。かろうじて息はあるようだが動き出す気配はない。神奈子はそんな男たちに目もくれずに電源の入っているテレビを見つめている

 

「やれやれ、諏訪子に任せるわけには行かなかったとは言え私だって観戦したかったんだけどねぇ」

 

神奈子の見つめるテレビ画面には未だ慌ただしい会場が映っている。ただ、神奈子の顔には早苗への心配はまるでなく会場で見ることが出来なかった事への不満以外表れていなかった

 

 

 

 

 

 

時刻は少し遡り、バトル・ボード準決勝第2試合開始直前

 

客席の一角に金髪の親子が座っていた

 

「・・・・・・たしかに、イジられた跡があるね。途中までスムーズな式だったのが途中からメチャクチャだ。・・・でもここまで綺麗な式なんて書けるやつがこの時代にもいたんだね。昔でさえここまでのものは見た記憶がないよ」

 

「あら、ずっと山の中にいたから見てないだけで最近はこのぐらいできる人も多いのですよ?」

 

「時代は移り変わるってやつか~」

 

・・・・・・親子にしては年季の入った会話だがそれも仕方ない。片方はスキマを操り何百年も生き、隠れ里を作った妖怪。もう一人は同じく何千年と生きここ数百年間、山の中の神社に引きこもっていた神仏。両者の会話の年代が数百年あるいは千年単位で昔のものであるのは仕方がないことだった

 

「そう、時代は移り変わるものですわ。だからこそ、いかがでしょう?」

 

「確かに、移り住むのにはちょうどいい時期なのかもね」

 

昨夜、式を名乗る妖狐から申し出された案件

 

 

 

幻想郷に移り住んではみませんか?

 

 

 

昨夜二柱の元を訪れたのは目の前にいる八雲紫、彼女の式で話の内容を要約すると彼女の作った隠れ里に移り住まないか?という話だった

 

『勿論、神社の移転はコチラで行うし必要なものがあれば揃える。その場ではそれなりの地位も用意するし力を取り戻すのは簡単だろう。どうか考えてはもらえないだろうか?』

 

そう切り出した式の八雲藍だったが神奈子が何か言う前に威圧感が藍に襲いかかる

 

「話にならないね。勧誘に来るのであれば式を遣わすのではなく本人が来るべきだろう」

 

そう言い切って追い返したものだから翌日の早朝に式の主がやってくるとは思わなかった

 

 

 

「あなた方の愛しい子に危機が迫っていますわ」

 

 

そう言いながら現れたものだから戦争間際にまで発展したのはコチラのせいではないだろう、と諏訪子は考える

 

まあ、「あ゛あ゛!?」と信仰している人間には聞かせられないような声を上げながら戦争をふっかけたのは諏訪子なのだが

 

それはともかく、自分たちは神社からあまり動くことはできず妖怪、八雲紫の言う幻想郷への移住はできないと言ったところ見せられたのがこの『境界を操る程度の力』。その力のおかげで今こうして諏訪子は試合会場にいる

 

ただ、

 

「でも、今は早苗の応援に専念させてもらうよ!ガ~ンバレ~~!早苗~~~!!」

 

「ちょ、あまり大きな声を出されると結界が・・・」

 

会場に着いたとわかるやはしゃぎ始めた諏訪子にちゃんと今日中に話が終わるのかと心配になった

 

「へーきへーき、大丈夫だって。それよりビデオカメラとかないの?せっかくだし映像を撮っておきたいんだけど」

 

「だ、大丈夫ですわ。うちの式に撮らせていますもの(この神様を誘ったのは失敗だったかしら)」

 

「でもほら、いろいろなアングルから撮っておきたいじゃん?だから、カメラ貸して~」

 

「ちょ、そんなとこ入ってませんわ!ちょ、わかりました!わかりましたから!・・・はい、これでいいでしょう?」

 

ありがと~、と無邪気な声を出しながら諏訪子はカメラを構える。先ほどまでの様子とは打って変わり真剣な面持ちで一点を見つめる姿からはふざけた様子が見えない。・・・・・・カメラを持ってなければ完璧だっただろう

 

「(この神様じゃなくてもう一人の大人の方に話をすれば良かったかしら・・・。でも、あっちはあっちでいざというときに頼りなさそうだったし・・・)・・・それにしても、いいのですか?」

 

いい加減にコチラから話を振らないと絶対に返答が来ないと考えた紫は諏訪子に質問をぶつける。主語のない言葉ではあるがこの程度なら通じるだろう。そう考えた紫の質問への答えは

 

「・・・・・・・・・・・・。」

 

無言。顔を紫に向けることすらなくカメラを覗き込んでいる。まるで聞こえていないかのような反応にムッとした紫は更に問う

 

「あなたが大事に思っているあの子もあの規模の爆発に巻き込まれれば無事ではすみませんよ?」

 

「・・・・・・・・・・・・、」

 

ピクリ、と諏訪子がカメラに添えている指が動いた。それを確認した紫は更に踏み込む

 

「あの規模の術式では他の選手も傷つくでしょうし当の本人の力量もあってかなりの被害が出るでしょう。巻き込まれれば良くて重傷。当たり所が悪ければ死亡ということも「八雲の、少し勘違いしてるよ」・・・・・・勘違い?」

 

カメラを覗き込むのをやめ紫の方を見た諏訪子は紫を正面から見つめる。純粋に真っ直ぐ見つめる諏訪子の眼に押され紫が会場の方に目を背けると諏訪子も目を向けながら話し始める

 

「早苗はアレでもかなり力を押さえてる。無意識だろうけど、あまり本気を出しすぎたら(ことわり)がおかしくなるってどこかでは思ってるんだろうね」

 

「・・・・・・彼女の想子量は一般的な魔法師よりも多いぐらいです。・・・それでも力を押さえていると?」

 

一般の魔法師と比べれば早苗の想子量は多い。それこそ十氏族の人間と比べられるぐらいには多い。ただ、目の前の神はソレですら抑えていると言う

 

「そうだよ。多少想子量が多い程度で神仏の姿を認識できるって言うのなら今ほど信仰が薄くなる理由がない。あのぐらいの力で神仏の認識ができたらこの会場には少なくとも私たちを認識できる人間が100はいるだろう?」

 

「・・・では彼女は彼らの想子量を遙かに上回る量の想子をその身に宿していると?」

 

「う~ん、少し違うかな?確かに多くの想子を宿してはいるけどそれよりも大切なのが霊子だよ」

 

「・・・・・・そのような話は聞いたことがありませんわ」

 

「そりゃそうさ。人間だけでは霊子の本当の使い方もその力もわからない。こんな話が出回らなくて当然だよ」

 

「それでは、霊子というのは・・・」

 

「そうだねぇ、私たちもまだ推測の段階だけど話をしようか・・・」

 

レース開始のランプが点灯を始める中、諏訪子の口から紡がれる内容は妖怪の賢者ですら目を見開かせるものだった

 

 

 

 





何やらしばらくぶり(半年以上)の投稿になってしまいました。まずはその事への謝罪を

実は最近ネタが浮かばずどうしようかとか次の展開とか考えてると話が浮かばず既に3、4回程最初から書き直した方がいいんじゃないか?いや、それをしたら投稿しなくなりそうだしどうしよう。とか考えてたら全く書けずに気が付いたら今年も終わりですよ。

何人もの方に感想で生きてるか聞かれてその度に書かないと!とは思ったのですがどうにも気が乗り切らなかったんですね。

ちょっと来年になって投稿状況ご改善されるかと聞かれると不安しか浮かばず次の投稿も未定となっている作品ですが気長に待って頂けると幸いです。

それでは皆様良いお年を!

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