魔法少女リリカルなのはvivid~四人目の王~   作:ビスマルク

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今日は更新しないと言っていったな!

ヴァカめ!あれは嘘だ!


第十六話

「元気いいなぁあいつら」

 

「お爺さんみたいだよレオン……」

 

ガリューさんと出会い別れた後俺たち学生組はロッジ裏の川に、元機動六課の皆さんはアスレチックの元に、兄貴含めフェイトを除いたテスタロッサ一家はそれぞれどっかに行った。

俺達は川に向かうに当たり着替えた。

なににって?もちろん水着だ。

アインハルトは最後まで渋っていたがヴィヴィオが連れて行ってしまい結局着替える羽目になってしまった。

そう言う俺も兄貴に言われ用意していた水着を着ることになっていた。

クインは普通のトランクスタイプ、俺はそれに加えて上半身に上着を着ていた。

アインハルトというと

 

「み、みないでください……」

 

黒いビキニだった。

おそらく俺の母さんが用意したものだろう。

でなければあのアインハルトがビキニタイプの水着なんて着るはずがない。

因みにとても似合っていたとだけ言っておこう。

 

「アインハルトさんも早く来てくださーいっ!」

 

アインハルトとはまた違うタイプのビキニタイプの水着を着ているヴィヴィオが川の中からアインハルトを呼ぶ。

どうでもいいがビキニって胸が無かったらずり落ちるんじゃなかったっけ?

もしかしたらそこまで魔法技術でなんとかしているのかもしれない。魔法ってまじやばす。

 

「ホレ、呼んでるぞ」

 

「ノーヴェさん、わたしが行ってもいいんでしょうか……」

 

「うるせぇ、後輩待たせんな。さっさと行くぞ」

 

「レ、レオンさん……!」

 

とりあえずここまで来て遊ぶことをしないというのも空気が読めないようで嫌だ。

それとそろそろこいつにも息抜きが必要だからな。

 

 

「おっ!レオンもなかなかやるじゃねぇか。アインハルトの奴真っ赤だぞ」

 

「多分意識してないと思いますけどね。あいつって色々フラグ立てるけど基本的に恋愛フラグだけは総スルーなんですよ」

 

「じゃあ、あれは天然か?」

 

「ええ、ほぼ間違いなく。それじゃボクも呼ばれてるんで行きますね」

 

「アインハルトも天然、レオンも天然。あいつ等の仲って進展するのか……?」

 

ノーヴェの独白は川のせせらぎの中に消えていった……。

 

 

川の中に入った俺はとりあえず今からでも遅くはないということで準備運動を行っていた。

これをやるのとやらないではかなり事故率に違いがあるからな。

 

「じゃあ、向こう際までの往復でみんなで競争ー!!」

 

クリーム色の髪でスクール水着を着たコロナが提案する。

そんな時競泳水着みたいなのを着た黒髪の少女リオが俺に対して喧嘩を売ってきた。

 

「先輩って強いんですよね?だったらあたしたちにも勝てますよねー?」

 

「お前はもう少し先輩を敬え。そして俺をなめるな。川だろうが空だろうが俺は負けねぇ」

 

「勉強机の上では完璧に負けてるけどね」

 

「うっせー!!」

 

いちいち余計なことを言い出すクインを一度沈めた後改めてリオに向かい合う。

 

「いいぜ。お前らのうち俺に勝った奴が居たら俺がそいつの言うこと聞いてやろうじゃねぇか」

 

「へー、例えば?」

 

「ケーキを奢ってやったって良いし格闘の練習に付き合ってやってもいい。とにかくなんでもだ」

 

それを聞いて口元に手を当て全員が考え出す。

そして全員が全員口元で笑う(アインハルト除く)。

 

「じゃあスタート!!」

 

「お前等ずるいぞ!!」

 

全員が目で合図した後すぐにスタートを切る。

そのせいで俺だけが出遅れてしまった。

しかし甘い!

 

「うおおおおおおおおおおおお!!」

 

「は、速い!?」

 

俺を甘く見たなッ!

俺を誰だと思ってやがる、俺はあの濁流の中からアインハルトを助け出したこともあるレオンだぞ!

無論、水の中での戦闘も予測して定期的に激しい川に入っている俺に、いつも静かなプールで練習してるお前らが勝てると思うなッ!

 

「お前等に足りないもの、それは!情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ!そして 何よりも――――」

 

「!!」

 

「―――速さが足りない!!」

 

どこかのスピードキングのような言葉を残して俺は単独トップでゴールした。

後に残った奴らは全員ぽかーんとした顔で俺を見ている。

そんな奴らに対して俺はドヤ顔したうえで言い放ってやった

 

「ホントに遅いですねぇ」

 

「「「「イラッ!!」」」」

 

その後アインハルトを除いた全員から川に沈められたことをここに明記しておく。

 

 

「死ぬかと思った……」

 

「自業自得だと思うけどね」

 

何とか脱出して川から出て体力を回復していた俺は川辺でクインと話していた。

 

「君は人の神経を逆撫でするような言葉をすぐに言う所がたまに傷なんだ」

 

「ぶっちゃけそう言うのって治しようがなくね?」

 

全く君は……、と言わんばかりにため息をついたクイン。

そんなクインの顔に大量の水しぶきがぶち当たった。

呆然とする俺たち。

そんな風に時が止まっていたのを開放したのは顔を真っ赤にしたヴィヴィオだった。

 

「す、すみません!!ちょっと頑張り過ぎちゃって!」

 

「いいよ、別に気にしてないから」

 

うそだ。

こういう時のクインは必ず気にしてる。

気にしてないと言ってても必ず気にしてる。

それが分かっているのかヴィヴィオが焦って取り繕っている。

見てるだけというのもなんだから助け船を出してやるか。

 

「ところでお前等なにやってんだ?今度はアインハルトが何かするようだけど」

 

「!!水斬りです!クインさん達もやってみますか?」

 

助かったとばかりに説明してくるヴィヴィオ。

それによるとお遊びと打撃の確認を行っているらしい。

 

「まぁ丁度いいからやってみるか」

 

「どっちかというとボクは砲撃でどこまで川を割れるかが気になるんだけどなぁ」

 

「やめろ。下手しなくてもお前なら対岸まで届かせるだろうが。自然を壊すようなことをすr」

 

先程のクインの様に今度は俺の顔に水が当たる。

見てみるとアインハルトが水切りに挑戦して七メートルほど水柱をあげたようだ。

どううやら俺が言っておいたことをしっかり守っているようだ。

ん?俺?気にしてないよ?

俺はクインと違うから全然気にしてないよ?

だからこれから水切りやるのもアインハルトに対する復讐とかそんなもんじゃないよ?

だから心が狭いとかいうな。

 

川の中で静かに体と心を落ち着ける。

打撃に必要なのは瞬発的な力だ。

それを出すよう為の訓練は繰り返し、手を変え品を変えでやってきた。

『夜王流』の神髄は回転。

『牙砲』も『牙天』も『牙散』も『獅脚』もそう。

『牙砲』は腰の回転を利用して全身の力を拳に集める、『牙天』と『牙散』は遠心力を利用して外に対する力を生み出している、『獅脚』は全身のひねりを利用して移動進路を変えたりしている。

それらすべてを加えれば

 

「ふんっ!」

 

十メートル以上の水柱を立てることも可能だ。

驚いてぽかーんとしている奴らに対してまたもやドヤ顔してやった。

 

 

また沈められました。

 

 

***

 

 

その後しばらく川で運動を続けているとルーテシアの母メガーヌとアリシアが昼食だと告げに来た。

 

「さー、お昼ですよー!」

 

「あれ?レオンちゃんは?」

 

「あそこに」

 

クインが指差した場所は川の中、明らかに誰もいない。

と思ったがよく見てみると僅かに気泡が出ていた。

つまりそこには呼吸をしている人間がいるということ……。

そしてそれが途絶えたということは……。

 

「わっ、わーーーー!レオンちゃーん!?」

 

急いでアリシアが救出した時レオンは気を失っていた。

 

 

二十分後

 

 

「お前ら俺じゃなかったらマジ死ぬから絶対やめろよ」

 

「というよりよく生きてたね」

 

レオンがいくら人間とは思えないスペックを持っていたとしてもその体は間違いなく人間。

つまり必ず呼吸をしなければ死ぬということだ。

レオンは沈められていた時絶えず口元に自分の魔力で作った気泡を用意して呼吸をしていた。

しかしそれらの制御をデバイスなしにするのはなかなかに大変だったらしく、もう限界という所まで来ていたようだ。

曰く、昼飯の準備が遅れていたら俺は死んでいた、らしい。

 

「ホレ、人を沈めて遊んでたやつにはおしおきだな」

 

「きゃーーーーー!!」

 

水切りで筋肉痛に襲われているヴィヴィオにここぞとばかりにつんつんとつつく。

そのたびに声を上げるたびヴィヴィオは後悔した。

なぜ、やりすぎてしまったのかと。

そもそも人を沈めたことに罪の意識を感じないのはレオンと関わったせいだろうか。

今日も無限書庫司書組は元気です。

 

「ううう……」

 

「お前、喰いにくいなら無理すんなよ」

 

「い、いえ、大丈夫です……あっ」

 

「おいおい、無理し過ぎでスプーン落としてんじゃねぇか。ホレ、こっち向け」

 

「え、え、え」

 

「ほら、アーン」

 

こんな人前でアーンをする羞恥心をどこかに落としてきたような男レオン、デリカシーゼロである。

しかしそこまで羞恥心を捨てきれていないアインハルトは顔を真っ赤にしながらもそれに抵抗することなく口にする。

どうせ抵抗したところで無駄なことを彼女は経験で知っているからだ。

それを微笑ましいものを見る目で見つめる大人組。

顔を真っ赤にしているアインハルトを珍しいものを見るものを見る目で見つめる子供組。

 

「あうあうあうあうあうあうあう……」

 

結局恥ずかしすぎてアインハルトは気絶してしまうのであった。

 

 

 

アインハルトが気絶から回復し何とか昼食を自力で食べ終わった後は自由時間となった。

筋肉痛のせいで食べるのが遅くなったヴィヴィオと一緒に片付けを行っていたアインハルトはずっと気になっていたことを話していた。

 

「ヴィヴィオさん達はいつもあんなふうにノーヴェさんからご教授を?」

 

「いつもってわけじゃないんですけど……」

 

それからヴィヴィオは自分がノーヴェから格闘技を教わりだした時のことを話し出した。

ヴィヴィオはもともと基礎だけをスバルに教わり後は独学で頑張っていた。

しかしそんな彼女の様子を見ていたノーヴェはいつの間にかヴィヴィオ達のコーチのようなものになっていたらしかった。

 

「なんだかんだでコロナとリオの事も見てくれることになって。優しいんですノーヴェって」

 

「―――分かります。わたしも似たようなものですから」

 

「え?」

 

「もともとわたしも独学でやっていたんです。でもある時からレオンさんが見てくれるようになって。自分の練習もあるけど丁度いいからって構ってくれて」

 

「やっぱり優しいんですねレオンさんって」

 

「やっぱり?」

 

「私も初めて会ったときはちょっと怖かったんですけど……、すぐにいい人だってわかりましたから!」

 

ヴィヴィオがレオンと初めて会ったのは無限書庫の中だった。

ユーノに会いに来ていたが広い無限書庫の中、いつの間にか迷子になっていた。

そしてもう少しで泣きそうになった時にレオンと出会った。

レオンの最初の言葉が「なんでここにガキが?」だった為始めはあまりいい印象を持っていなかった。

しかし、その後説明を聞いた後自分の仕事を片付ける前にユーノの事を一緒に探してくれたためその印象はすぐに消え良い人だと思った。

またユーノを見つけた後司書たちに追いかけられたところを見て面白い人だと思った。

ヴィヴィオが無限書庫の司書の資格を取ったのはユーノの影響で本が好きになったのと、あそこで出会ったレオンの影響が大きいだろう。

 

「そうですか……。レオンさんらしいですね」

 

「はい!きっといつもああいう風に周りをお世話してるんですよ。不器用で伝わりにくいかもしれないけど優しい人だってみんな知ってます!」

 

「そうですね」

 

アインハルトも同感だった。

特に不器用だという所が。

アインハルトが初めて会って助けられたときもそうだったし、クインと出会った時もそうだったと聞いた。

だけどいつも自分が思ったように動いているからこそ、みんなあの人のことを嫌うことはない。

自分の事のように誇らしい思いをアインハルトは抱いていた。

 

「そういえばアインハルトさん。『覇王』さんってどんなことしていたんですか?」

 

「私は彼の記憶全てを持っているわけではありませんけどそれでもいいなら」

 

「はい!」

 

 

 

アインハルトとヴィヴィオが古代ベルカ時代のことを話している頃、丁度ルーテシアたちも同じ話をしていた。

 

「ベルカの歴史に名を残した武勇の人にして初代の覇王。クラウス・G・S・イングヴァルト。彼の回顧録。もちろん現物じゃなくて後世の写本だけどね」

 

「ルーちゃんはアインハルトさんの事は……?」

 

「ノーヴェから大体聞いてるよ」

 

ルーテシアは静かに本を開く。

その中に書かれていたのは戦いの歴史。

彼が『覇王』として戦い抜いた血にまみれた過去。

そんな彼の話を彼女たちは読み解いていった。

 

 

 

アインハルトたちは庭で静かに話していた。

 

「確かに辛いこともありましたが、その分楽しい記憶、幸せな記憶もちゃんと受け継いでいます」

 

しかし内容は戦乱時代のこと。

そのせいで空気が悪くなっていたこと察知したアインハルトはすぐに話題を変える。

 

「例えばオリヴィエ聖王女殿下、レオン殿下との日々」

 

「へ~。オリヴィエってクラウス陛下と仲良しだったんですか?」

 

「仲良しというのはとは少し違う様な気もしますが……。わたしの印象としては友に笑い、共に武の道を歩む同志だったのは確かです。それ以上のことを知りたいならレオンさんに聞いた方が確実ですよ?」

 

「へ?なんでそこでレオンさんが出て来るんですか?あっ、それにさっきレオンさんと同じ名前の人がいたような……」

 

「ええ、そのレオンさんですよ?以前彼は「夜王」と呼ばれてましたから」

 

「え、ええええええええ!!?」

 

どうやらヴィヴィオはレオンが『夜王』だったということを知らなかったようだった。

 

 

 

再び図書館の中

 

「オリヴィエ・ゼーゲブレヒト、レオン・G・トエーラ。共に幼初期からの付き合いだった王様達。

オリヴィエは継承権が低かったから人質交換だったって言われてるけど、レオンの方が留学していた理由は記されてないわ。かなり腕の立つ護衛が居たってことだから人質って事はないだろうけど……」

 

「案外レオンさんみたいにいたずらっ子で大切なものを壊しちゃってその罰だったことじゃないの?」

 

「あははははは。さすがにそれは無いよリオ。いくら名前が同じって言っても『覇王』と真っ向から戦ったっていう人がそんなことするわけないよ」

 

「そうだよね!」

 

 

 

その頃レオンたちはというと午前中の疲れも感じさせないで組手を行っていた。

組手と言ってもお互いに話が出来るほどの軽いものだが。

 

「クシュン!」

 

「風邪かい?」

 

「誰かに図星さされたような気がする……」

 

「どうでもいいよ。それより話の続きだ」

 

彼らが話しているのも同じく古代ベルカ時代の事だ。

 

「それで?君は何でシュトゥラに留学することになったんだい?」

 

「ああ。先に言っておくとあれは事故だ。俺はやめろと言ったんだがヴォルケンリッターの中でも特に小さいヴィータってやつが居てな。俺が知らずにそいつの菓子喰っちまって説得のしたのに聞こうともしないでハンマーでぶん殴られ、とんだ先に国宝の壺があったんだ」

 

「それを割ってしまったわけだ」

 

「そのせいで国王である父が怒って、少しは大人しくなる様にって留学させられたわけだ」

 

「君は昔からトラブルを起こすんだね」

 

「聞いた感想がそれか」

 

それから彼等はお互いの武器を構え本気気味でぶつかりあった。

 

 

 

「レオンさんの事は後で聞くとして……、オリヴィエってどんな人だったんですか?」

 

「太陽のように明るく、花のように可憐な人で、何より魔導と武術が強い人でした。精神力だけならレオンさんが上の様でしたが彼でも勝ち越すことが難しいくらい人でした」

 

アインハルトはそこで顔を暗くする。

いくらレオンが言って多少は改善されたと言っても彼女の根幹はそこなのだから。

 

「戦乱の中レオンさんも彼女も救えませんでした。クラウスは彼女と、運命を止めようと戦い負け、皮肉にもそこから強くなっていきました」

 

そこにもしレオンが居たとしたら、彼は親友と呼んだ男に何と言ったのだろうか。

その道を止めていたのだろうか、それとも彼が選んだ道を応援したのだろうか。

それはレオンにしか分からないだろうとアインハルトは思う。

 

「レオンさんはオリヴィエ殿下がゆりかごに乗る前に亡くなっていました。国も、民も、家族も、全てを守ろうとして戦死したようです」

 

「よう?」

 

「わたしはその時にレオンさんとした約束の事しか覚えていません。彼がどう死んでいったのかを知っているのは、レオンさんだけです」

 

あるいは、それは自分以上に残酷なのではないかと考えた。

自分は記憶だけ。そこについてくる感情はいつも自分とクラウスの感情が混じったもの。

しかし彼は違う。

彼にはすべての記憶がある。

家族が死んだときの記憶も、国が滅んだ時の記憶も、自身が死んだときの記憶もだ。

 

「わたしが受け継いだのは彼の悲願と約束。

彼が作り開け、磨き続けた『覇王流』は弱くなんかないと証明すること。

『夜王流』と戦い、決着をつけるという約束を守ること。

わたしにあるのはそれだけなんです」

 

「そんなこと……」

 

「……ええ、そうですね。レオンさんにもそう言われました。自分の意思を持てと。それとずっと待ってるとも」

 

アインハルトはそう言うが空気は変わらない。

ヴィヴィオは落ち込んだままで、アインハルトはずっと後を追いかけたまま。

いつもならここでレオンが飛び出してくるなどして空気が壊されるが、さすがにこんな時まで期待するのは無理だろう。

 

(レオンさんは今クインさんと稽古を行っているはず。そう、いつまでもレオンさんに頼ってはいられない。何かヴィヴィオさんが喜ぶような話は……)

 

テクテク

 

(何か話は……)

 

テクテクテクテク

 

(話は………)

 

テクテクテクテクテクテクテクテク

 

(何も思いつかない……)

 

表情は変わらず、内心ものすごく冷や汗をかいているアインハルト。

思わず助けてくださいと祈っても何もかw

 

ドカーン

 

「「えっ?」」

 

二人が足を止め同じ方向を見る。

そこからは煙が上がっている。

そして声がこちらまで届いてくる。

 

「――――か!ば―――!お―――――――――!!」

 

声はだんだんとこちらに近づいてくる

それと同じように爆発音も近寄る。

二人が同時に構えたのと同時に何かが林の中から飛び出してきた。

その何かは泥だらけでそこらにすり傷だらけの知り合いだった。

 

「「レオンさん!?」」

 

アインハルトたちの声にも気付かず彼は林から目を離さない。

その林の中からエメラルドグリーンの光が飛んで破壊をもたらす。

しかしレオンはその攻撃をとっさに避けてやり過ごす。

そして林の中から砲撃した張本人であるクインがレオンと同じような格好で現れた。

そんなクインに対してレオンは思いっきり馬鹿にするような口調で言い放った。

 

「バーカ!バーカ!テメェの砲撃なんて当たらなきゃ意味ねぇんだよ!!」

 

「言ってくれたね……!!そこまでボクの砲撃を受けたいというなら遠慮せず近寄れよ!!」

 

「誰が痛い目にあうために近寄るか!!」

 

「君がいつもやってることじゃないか!!」

 

「誰が極度のマゾヒストだコラァ!!」

 

「そんなこと一言も言ってないだろ!耳の掃除をアインハルトさんにでも頼んできたらどうだ!!」

 

「お前こそヴィヴィオに水ぶっかけられて頭冷やせやこの頭でっかち!!」

 

「言ったな!!アインハルトさんに現在進行形で尻に敷かれてる鈍感野郎のくせに!!」

 

「…………」

 

「…………」

 

「「上等だっ!!!」」

 

そこからは本気も本気の大勝負。

 

アインハルトとヴィヴィオは思わず見なかったことにしてやり過ごすことにした。

それあと彼女たちはノーヴェに誘われ、大人組のやっている模擬戦を見に行きアインハルトは色々な意味で感謝した。

 

 

***

 

 

『ようやく魔力の貯蔵が完了しました』

 

「悪いな。せっかくの旅行なのに一言もしゃべらせずにいて」

 

夕食を済ませ女性陣は寝床に入り、男性陣は風呂に入っている今、俺は一人でシルフィと会話していた。

今まで何日か喋らせずに全機能を『魔力貯蔵』に費やしていた分の埋め合わせのようなものだ。

明日は大人子供を含めた模擬戦をやる事になっているためシルフィにへそを曲げられても困るのだ。

まぁ純粋な感謝の意味というのもあるが。

 

『というかマスター。わたしはずっと部屋にいたから知りませんけど今日は皆さんで水辺に行ったんですよね』

 

「おう」

 

『くっ!折角のシャッターチャンスが!!』

 

「何を撮る気だ、何を」

 

こいつに突っ込みを入れるのも久しぶりな気がする。

シルフィを作ってこんなに話さなかったのは初めてだからかもしれない。

 

『……マスターは大丈夫なんですか?』

 

「なにが?」

 

『なにがって、レアスキルの副作用ですよ。前世では大量の魔力があったため問題なかったようですが今の魔力量で行えばどうなるか分からないと言ったのはマスターじゃないですか』

 

「大丈夫だ」

 

『マスター』

 

余り恨めしいって気を込めながら呼ばないでほしい。

結構怖い。

 

『以前のマスターならアリシア様から抱きつかれたとしてもそこまで慌てなかったはずです。違いますか?』

 

「ホントお前って勘がいいよな。誰に似たんだろうな」

 

『マスター!』

 

「……左肩から左胸まで侵食されてる。戦闘は最大一時間続けられればいい方だ」

 

『そこまで、ですか……』

 

現在俺の左肩から左胸にかけて黒い痣のようなものが存在する。

普段はそうでもないが、激しい運動をしたり、魔力を使ったりすると痛みが走る。

俺が他の男性陣と風呂に入りにいかなかった理由はこの侵食の痕を見られないためというものもある。

 

「シルフィの『魔力貯蔵機能』が無かったらもっとひどいことになってただろうな」

 

『かなりの魔力を持ってかれましたけどね。数年少しづつ貯めてた魔力がすっからかんですもん。ホント以前のマスターの魔力量が知りたいです』

 

「まぁ一気に貯めれば数日間で貯まると分かっただけでも御の字だ」

 

『……マスター、誰にも、特にアインハルト様にはこの痕を見られないようにしてくださいね』

 

「誰がこんなもの見せるか」

 

『それならいいです。わたしはもう寝ます。お休みなさい』

 

「ずっと気になってたけどデバイスって寝るのか?」

 

『Zzzzzzzzzz』

 

寝るのはえぇ。

気を取り直して外を見る。

外に広がる自然。以前は毎日見てることが当たり前だった。

それを守るのが俺の仕事でやりたいことだった。

今は今でやりたいことというものが変わっている。

だけどこの自然を見てると、無性にみんなに会いたくなる。

 

 

国のみんな、宰相や騎士団長や料理長、オリヴィエやクラウス、そして

 

「会いてぇなぁ……」

 

家族だったヴォルケンリッターと。

 

そんな思いを抱きながら、夜を越えていく。

 

 




次回こそほんとにちょっと更新が遅くなると思います。
それでもがんばって早く更新したいとお物で楽しみにしておいてください。

それではまた次回!
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