魔法少女リリカルなのはvivid~四人目の王~   作:ビスマルク

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第二十二話

 遂にこの日が来た。

 何週にも渡って調整してきたのもこの日のため。

 その集大成が今日から発揮される。

 

「はぁはぁ……」

 

「ほらほらー、もっとがんばってー!」

 

「うっせー!さっきから話しかけまくるんじゃねぇ!」

 

「君たちは朝から元気だね」

 

 集合場所に向かう際、そのまま歩いていくのもつまらないという理由で朝の運動をしていると途中で会ったミイカがユーノさんのところに行くのなら自分も行くと言い出し一緒に来る。

 集合場所にはユーノさんとリニス、クインが待って居た。

 ちなみにここにアインハルトが居ないのは丁度地区選考会に行っているからだ。

 男子の部と女子の部は人数だか何だかの都合で日程がずれている。

 俺としてはあいつらの試合が見れるからいいんだけどな。

 

「というか君は朝からなにをしているんだ?」

 

「何って、準備運動だけど?」

 

「君は準備運動で逆立ちしてくるのか……」

 

『すみませんね。このマスターは少し頭がアレなのでそこら辺はできるだけ気にしないでください』

 

「アレってなんだ、アレって」

 

 たくっ、こいつはいつからこんな性格になったんだか……。

 いや、最初からか。

 こいつのコアをもう一度ちゃんと調べてみたいがそんな暇はない。

 

「これで全員集まったね」

 

「そうですね。さて、今から貴方達二人が参加するブロックを発表しますよ」

 

 全員が黙り静かな空気が流れる。

 こういった緊張感のある空気は俺も嫌いじゃないためわざわざ潰すようなことはしない。

 

「クインは予選4組。レオンは予選1組です」

 

「クインの参加する4組には都市本戦第2位の人が出場するみたいだ。この人以外にも強い人はもちろんいるから注意することだよ」

 

「油断はしません。すべてまとめて吹き飛ばします」

 

「(なんだかなのはを見てるようだよ)そうかい。それでレオンの方だけど……」

 

 途中で言うのを辞めたユーノさんの額には少しの汗が流れている。

 そこまで言ってユーノさんの言葉の続きをリニスが言い始める。

 

「はっきり言って激戦区ですね。私達も知っているレオンのライバル、アッシュ・ドラグラー。欠場以外では敗北したことの無い都市本戦第6位ブラウ・デュークライ。そして……」

 

「出場してから今まで優勝以外したことの無い、絶対王者ルーデル・アルストア」

 

「その他にも強いと思われる人間が集まった化物の巣窟。それがレオンの出場する1組です」

 

 なるほど。

 俺は運が良いようだ。

 

「まさか俺が狙っていた席を持った奴がすぐ近くに居るなんてなぁ……」

 

 アッシュだけじゃなくてチャンピオン様まで居てくれるなんてなぁ。

 今すぐ腹抱えて笑いたい気分だ。

 間違いなく俺の口は今弧を描いているだろう。

 その様子を見たリニスが顔を近づけて言ってきた。

 

「いいですかレオン。貴方がいくら強いと言ってもそれは実戦でのこと。これは試合なのですからくれぐれも殺すような攻撃はしないこと」

 

「今の俺に殺すような攻撃は出せねぇよ……」

 

 条件が揃わなければ、な。

 俺の言葉に裏を感じたのか顔を顰めているが渋々納得した様子のリニス。

 そんな風に難しいことばっかり考えてるから小皺が増えるんだよ。

 

 ゴンッ!

 

「ナニカイイマシタか?」

 

「な、何も言ってません……」

 

 こ、怖い。

 なんで女ってそこまで病的なまでにそんなこと気にすんだよ。

 

「いい、レオン君?男の子はエッチなことで獣になるけど女の子っていうのは美に対して獣になるもんのなんだよ?」

 

「女の子って年じゃないだろ」

 

 ゴンッ!!

 

『マスターって、ほんと馬鹿……』

 

「アイちゃんって苦労してきたんだろうね……」

 

 ん?

 しかし待ってほしい。

 アインハルトは見た目通りの美少女だがそこまで美というものに執着している様子はなかったぞ。

 

『いやいやマスター。アインハルト様だって女の子ですからね?その証拠に私服はいつでも違うでしょう?』

 

「いやアレ、母さんが「せっかく可愛いんだからいつもジャージなんてダメよ!」って言って違う服着させられてただけだから」

 

『(この男は本物の馬鹿か!?いつだってあなたに服を褒められると嬉しそうにしてたでしょうが!)……分かりました。貴方がそう思っているのならそうなんでしょうね貴方の中ではね』

 

「ま、ミイカもあいつも大体なに着ても似合うから目の保養にはいいし、少しでも普通ってものを学べるんならいいだろ」

 

「(こういったことを言うからミイカさんもアインハルトさんも惹かれているんだろうか?ま、なんにせよ血が出ない結末を望むだけだけど)それじゃ早速選考会の方を見に行きましょうよ。今ならヴィヴィオさん達も試合を始めるであろう時間ですし」

 

「そうだね。レオンもミイカも話してないで行こう」 

 

 クインとユーノさんがいつの間にかこれからの予定を決めていた。

 異論はないがせめて俺たちの意見も聞いてくれると嬉しいんだけどなぁ……。

 まぁ無限書庫の司書長としていつも司書の暴走を抑える人材であるユーノさんと教室でいつも俺達男子の暴走を抑えつけている二人、その二人に反論するなんて俺には無理か。

 それじゃあ早速アインハルト達の様子を見に行くか。

 

 

***

 

 

「レオンか」

 

 アインハルト達の様子を見に会場まで来てみるとそこにはアッシュが居た。

 なぜか片手に風呂敷を持って。

 

「ん?なんでお前がこんな所にいるんだ?」

 

「妹弟子が丁度参加しているので師と共に様子を見に来ただけだ。そういうお前達はどうした?」

 

「ボク達の方も大体同じ理由だよ」

 

「アインハルトと後輩3名が参加してるからな」

 

 因みにユーノさんとリニス、ミイカはザフィーラとノーヴェさんに会いに行っている。

 リニスは俺のことを知っているため誘ってくれたが断っておいた。

 今はまだあいつらに合わせる顔が無いし、覚悟が……。

 

 ちょっと待てよ。

 こいつはさっきなんて言っていた?

 「師と共に様子を見に来た」だ?

 つまりアイツが……。

 

「アッシュ、何をしている」

 

「いえ、友人達と会話を」

 

「達?達と言ってもそこには一人しかいないが?」

 

 あ、あぶねぇ。

 少しでも《獅脚》で移動するのが遅れてたらばれてたな。

 昔と同じ名前で容姿も子供の時とほとんど、というか全く変わっていない。

 そんな人間が居れば誰でも疑う。疑わない奴はかなりの馬鹿か天然だ。

 そしてシグナムはそこまで甘い奴ではない。

 

『つまりアインハルト様は天然と言う事でいいですか?』

 

「逆に聞くがお前はあいつが天然じゃないと思ったことがあるのか?」

 

『……確かに愚問でしたね』

 

「まぁいいさ。とにかく俺を探してあっちこっちを見渡してるアッシュはクインに任せておいてさっさとアインハルト達のところに向かうぞ」

 

『そーですね。フォローの達人クイン様ならなんとでもなりますか』

 

 という訳でその場をクインに任せすぐにその場を移動し始める。

 大丈夫、あいつなら俺のことをシグナムに気付かせることなく話を終わらせることが出来る。

 俺は信じてる。

 

 と、逃げに逃げてようやく試合場に着くことが出来た。

 とりあえず見つかりにくそうな一番後ろで立ち見でもさせて貰おう。

 というかアインハルトの奴、顔には出してないけど緊張してないか?

 

「あれじゃヴィヴィオ達に笑われるぞ」

 

『いや、あの状態を見破れるのごく一部の人だけですから。具体的に言うと昔から一緒に居た人たちだけですから』

 

「誰が見ても明らかなんだがなぁ……」

 

『マスターの常識は人類の常識ではないと言う事を自覚してくださいね?』

 

 そんなふうにシルフィと会話して待っていると選考会が始まった。

 まぁ強い奴はシードで出場するから大丈夫だとは思うが一応心の中で応援しておく。

 というか見てて思ったんだがあの337番どこかで見たことがあるんだが。

 いや、そいつ自身というよりそいつの戦い方だが……。

 あの自分の距離になったら決して離れず潰そうとしてくる戦術……、試合前は緊張してたのにいざ本番になると緊張を失くして飛び込む思いっきりの良さ……。

 ま、どこかで見たことがある気がしただけだ。きっとあいつ等とは無関係だな。

 おっとそれよりアインハルトの試合が始まるみたいだな。

 相手は槍使いか。使いこなせば強いだろうけど。

 

『一撃で決めましたか』

 

「まぁあの程度なら当然だろうな。つーかなんでむやみに突こうとするかね。最速行動とはいえ躱されたら隙もでかいのに」

 

『アインハルト様の方に感想は無いんですか?』

 

「いやぁ、俺も訓練に付き合ってみたがあれくらいは出来てないとおかしいレベルだったからな。大して新しい感想は無いな」

 

『(アインハルト様が不憫ですね)』

 

 あえて言うとしたらよく《断空》を使わなかったという点だけだろうか。

 アイツ試合の時って基本《断空》で決めようとしてたからな。

 そこのところきちんと直してきたなら俺から言うことはなさそうだ。

 後は基本能力がこの特訓期間でどれだけ上がっているかだな。技はともかくとして基本能力は大人モードでも強化してた俺に負けてたからな。

 逆に言うと基本能力が高ければ技が無くても勝てるという訳だ。

 

『いやそれは極論じゃないですかね?』

 

「じゃあアリとドラゴンが戦ってアリが勝てるか?基本能力っていうのはそれだけ大切なんだよ」

 

『じゃあ基本能力さえ高めれば技なんていらないんじゃないんですか?』

 

「確かにそう思われるだろうな。だけどそう思って鍛えても人間には限界という壁がある。その限界というものは才能次第で無理矢理越えられるかもしれないものだが、逆に言えば才能がなくては越えられないのだ。身近なもので言えば魔力というものが分かりやすいだろ。あんなにわかりやすくて区別しやすいものを俺は知らないぞ」

 

『はぁ……。確かにマスターとクイン様の間には魔力という壁がありましたね』

 

「俺はCランクでアイツはAAAランクだ。この差は絶対に覆らないだろ?だからこそ技がある。技っていうのは鍛えれば鍛えるほど答えてくれるものだ」

 

 世の中には努力は裏切らないなんて嘘だ!という奴が居るが、それは違う。

 努力は裏切らない。ただその結果が裏切るだけなのだ。

 どれだけ努力しても届かないものがこの世にはある。

 それでも、どうしても届かせたい夢が、希望があるからこそ努力というものはあるのだと思う。

 少なくても俺はそう思ってやってきた。

 

「前言撤回するようだがやりようによってはアリでもドラゴンを倒せると俺は思うぞ」

 

『嫌な予感がしますが……どうやってですか?』

 

「鼻から侵入してとことんいやがらせしてやればいい」

 

『予想はしてましたがとことん最低な案でしたね』

 

 シルフィが呆れたような声を出す。

 とはいえそれしかアリが勝てる方法が思いつかないのだから仕方ない。

 

「ところで何の話だっけ」

 

『基本能力がどうとか才能がどうとかって話です』

 

「そうだったな。結論から言わせてもらえば才能っていうものは一種の武器なんだよ」

 

『武器、ですか?』

 

「銃や剣と同じだ。魔力なんてまんま武器だろ」

 

 昔から思っていたがもう少し有効活用は出来ないのかと言ってやりたい。

 それとももうすでに農業用の魔法とか存在しているのだろうか。気になるので今度無限書庫に行って調べよう。

 

「そんな武器と戦うために努力っていうものはあるんだろうと俺は考える。というかそうじゃなきゃ俺がクラウス達に勝ち越すなんてこと無理だ」

 

「へぇ……」

 

『そうなんですか?』

 

「言っちゃなんだが俺の戦闘の才能ってクラウス達よりも低いぞ。オリヴィエとかとは比べようのないほどにな」

 

『そんなんでどうして勝ち越すことが出来たんですか……?』

 

「そりゃお前。俺がヴォルケンリッターと初めて会ったのが二歳の頃。それから“シュトュゥラ”に留学するまで何年間鍛えられてると思う。あの頃はまさに地獄と言っても過言ではなかったぞ」

 

「地獄……?」

 

「ああ、まさにあの頃は地獄だった。どれくらいかと言われると無限書庫でのドキドキ勉強会並みだな」

 

「ふぅん」

 

「幼馴染だった騎士団長なんて何度ヴィータにぶっとばされてたことか。あの合法ロリは手加減ってものを知らないから困る。あの永遠の子供に何度たんこぶを作られたことか!分かるかこの屈辱!」

 

『あの、マスター……?』

 

「あんの小娘はいつもいつも俺のおやつを横取りするし……ジャイ〇ンかテメェは!いやジ〇イアンの方がまだましだ!あれは映画版だと綺麗になるからな!なのにあいつはいつになっても綺麗にならない!チーム戦の時はむやみに突っ込んでシグナムに堕とされる!なんであいつは実戦での動きが出来ないんだよ!もう少し冷静になれよ!アイツのせいで罰ゲームのシャマルの料理を何回口にしたことか!いい加減にしろよマジで!!」

 

『マスター?』

 

「挙句の果てに逆切れ起こして俺を国宝に叩きつける!?馬鹿か!いや馬鹿でもやんねぇよそんな事!団長があんなに顔青くしたの先にも後にもあの時だけだぞ!余りの怒りに父上だって顔引き攣ってたし!あんな顔見たくなかったよ!その後も何かあるたびに俺に濡れ衣着せたり魔女と一緒に俺の顔に落書きするし!エレミアの奴を俺を落とし穴に落とす為だけに協力させるとか馬鹿なことするし!アイツの頭ん中一度見てみてぇよ!多分何にもないだろうけどなぁ!!」

 

『マスター』

 

「なんだよシルフィ!こういう時位少しくらい不満言わせてくれたっていいだろうが!」

 

『いやね、私は良いんですよ私は。ただマスターの後ろの人が言いたいことがありそうなんで』

 

 後ろ?というかさっきの会話聞かれてたらやばいな。

 クラウスとかオリヴィエとか話題にしてたし。もしかしたら聖王教会にの人間が聞いていて何か言いたくなったのかもしれん。

 まぁなんにせよ誤魔化すしかないんだが………………。

 

「よぉ、久しぶりだな……」

 

「イツカラソコニイタノデスカ」

 

「努力は武器だとか言ってたところから」

 

「ヌスミギキハイケマセンヨ」

 

「ちょっと気になる単語があったからついな。まぁ悪いとは思ってる」

 

「ソウデスカ。ソレデハオレハコレデ」

 

「待てよ。アタシはまだお前と話したいことがいっぱいあるんだぜ?なんで今まで会いに来なかったんだとか、いままでどうしてたんだとか、どうしてここに居るんだとか」

 

「…………話すから手を離してくれるません?」

 

「あとは、アタシのことどう見てたんだ、とかなぁ!」

 

「嫌だぁ!離せぇ!俺を自由にしろ!!」

 

「どうせ今まで散々好き勝手してきたんだろうが!たまにはアタシらに時間を合わせろ!」

 

 ふざけんな!お前等に時間を合わせたらロクな目に合わんから必死に回避してたんだろうが!

 そう思いながらも俺は“鉄槌の騎士”ことヴィータに引きずられていったのだった。

 

 

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