魔法少女リリカルなのはvivid~四人目の王~   作:ビスマルク

23 / 25
第二十三話

 どうしてこんな状況になっているのか?それを考え出すと止まらなくなるがもう一度考えることにしよう。

 俺はつい一時間ほど前にアインハルト達の試合を見ると言う事でクインやユーノさん達とここに来た。そこまでは良い。

 そこで先日会ったばっかりのアッシュ・ドラグラーと再会した。しかしそこにアッシュの師であるシグナムが来るという事態になったため急いでその場を離れた。ここまでも良い。

 逃げ出した俺はこのまま帰るのもなんだと思いアインハルトの試合を見ようと会場まで足を運んでシルフィとも駄弁っていた。

 ――――何だ、俺の行動に問題なんて何もないじゃないか。

 

「ぶげっ!」

 

「おら、何黙ってやがる。さっさとしゃべること喋れや」

 

 そう俺が思ったのは、多分現実逃避なんだろう。

 ヴィータに捕まった後、誰も知らないようなところにある資料室に入れられバインドでぐるぐる巻きにされ、さらに縄で身動きが取れないように縛られ床に捨てられている。

 幸いなことにヴィータが他のヴォルケンリッターに連絡している様子はなかったので他の奴が来ることはないようだからそこは安心してもよさそうだ。

 

「ごふっ!」

 

「おい、考え事する前にアタシの質問に答える方が先なんじゃないか?」

 

「お、お前……こんな状態で話せって、無理あるに決まってるだろうが……」

 

「そうか?昔はアタシと一緒にこんな恰好で床に転がってだろ」

 

「ふざけんなっ!あれはお前のせいで、しかもあの時は縄だけだっただろうが!なんでバインドまでかけられなきゃいけねぇんだよ!」

 

「やっぱお前レオンか」

 

「あっ」

 

 し、しまったあああああああああああああ!!

 こいつ俺の事ほぼレオンだと断定してたけど俺自身まだ名乗ってなかったからレオンだって確証はなかったんだ!だからこいつは他のヴォルケンリッターに連絡してなかったのか!

 

「おいテメェ卑怯だぞ!」

 

「何年もアタシらの前に顔出さなかったお前に言われたくねぇ!」

 

「だってお前等に会ったらなにされるか分からんかったし!それにお前らがこの時代に生きてるって知ったのついこの間なんだもん!」

 

「つい、この間?誰から聞いたんだよ」

 

「あっ」

 

 あああああああああああああ!!なんで今日の俺こんな凡ミスばっかなの!?

 俺が言わなかったらリインフォースから聞いたなんて話しなくて済んだしこいつ等が生きてたのを知らなかったって言い訳がたったのに!

 

《シルフィシルフィ!助けて!このままだと墓穴掘りまくりそうで怖いんだけど!》

 

《……無理です。今現在ヴィータさんの視線が私を捉えて「余計なことを言ったら……分かってるな?」って言ってますし》

 

《壊れても直してやるからさっさと助言しろ!俺は死にたくないしこれからの生活誰かに助けてもらわないと過ごせないような体にはなりたくないんだよ!》

 

《私だって死にたくありませんよ!大丈夫です、マスターの世話ならアインハルト様が悦んでしてくれますから安心して死んで来てください!》

 

《ふざけん「おい、いつまで念話で遊んでるんだよ」すみませんでしたぁ!」

 

 なにこいつ!?なんで俺が念話してることまで分かるの!?

 どんだけ俺の思考読みまくってんだよ!

 

 

「とりあえずシグナム達に連絡するのはやめておいてやる。ここでそれをしようとすればお前死ぬ気で暴れまわりそうだし」

 

「当たり前だ!俺はまだ死にたくない!」

 

「だろうな。まぁそこは納得しておいてやる。とりあえず初めにアタシの質問に答えるところから始めてもらおうか」

 

 こいつの事だ。なにを聞いてくるか分かったもんじゃない。

 もしかしたら今までヴィータのおやつを何回つまみ食いしたかとか女湯と男湯の壁を壊したのは俺かとか過去の罪を聞いてくるかもしれない。

 言葉をしっかり選ばないデッドルート直行だぞ……!

 

「なんで……」

 

「ん?」

 

「なんで最後の戦いの時アタシらを呼ばなかったんだよ……!そのせいでお前死んじまったじゃないか!」

 

 聞かれたのは想定していたどれでもなく、しかし聞かれるだろうとは思っていた内容。

 恐らくはこいつらが最も聞きたいであろう内容。

 リインフォースは『夜天の書』の中から見ていたから知っているだろうが、それが出来ないこいつらからは絶対に知れない内容。

 俺が言いたくない内容。

 ずっとされると思っていた。

 だからこそ答えは決まっている。

 

「言わない」

 

「……」

 

「絶対に言わないし絶対に言えない」

 

「……なんでだよ」

 

「それすらも言いたくない。絶対にだ」

 

 この気持ちは俺だけのものだ。

 誰にも理解されないだろうし、理解されたいとも思わない。

 知ってほしいとは思わないし、知って欲しいとも思わない。

 

 しばらく黙ったままだったヴィータは俺の様子を見てそれはそれは深ーいため息をついた。

 かなりの諦めを含んだ溜め息だ。

 こんな見た目幼女にそんなことをさせたのは誰だ!

 

「お前だよ!」

 

 だからなんで俺の考えてることが分かるわけ?なに?お前って読心術でも使えるわけ?

 俺の疑問を無視してヴィータは話を続ける。

 

「まぁお前がそう言う奴だっていうのは知ってるからいいよ。もう諦めた」

 

「諦めるのは良くないな。どうしてそこで諦めるんだ!」

 

「お前のせいだろうがっ!」

 

ドゴッ

 

 ヴィータさん……、お願いですからアイゼンで腹を殴るのはやめてください……。中身が出てしまいます……。

 

「はぁ、お前と話してると疲れてくる……。人待たせてるからアタシはもう行くからな」

 

「お、俺も人待たせてるんからこの縄とバインド解いてってくれると嬉しいんですが……」

 

「は?」

 

 俺の言葉にヴィータは実に愉快そうな、それでいて哀れな虫を見捨てるような壮絶な笑みを浮かべて俺を見る。

 その笑みにいやな予感を覚えた俺はすぐに何をするつもりだと投げかけた。

 その答えが

 

「アタシらに散々心配かけたり、迷惑かけたりしてきたんだ。これくらいは当然だろ?」

 

 と言いながらドアの向こう側に歩いて行くという事。

 俺の罵倒も何もかもを笑い顔で受け流したあいつは、本当に変わってないと少し安心した、が。そのまま俺のことを心配して探しに来たアインハルトに見つかるまで(約2時間)俺はずっとその場で転がっていた。

 今度会った時は必ず復讐すると心に誓った。

 

 

***

 

 

 あの幼女の罠から抜け出す事が出来た次の日に選考会は始まった。

 俺の都合に合わせるとかそんなことが無理なのは分かっているが縛られて放置された次の日に試合があるというのは正直泣きたくなってくる。

 ま、どんな状況でも俺がやる事は変わらない。

 

『Dリング、ゼッケン935VSゼッケン945』

 

「せっかくの試合だ。楽しんできなよ?」

 

 ユーノさんの言葉に片手をあげて答える。

 なるほど、初めての相手、初めての場所。こんな所で戦うとは中々いいものだ。

 ユーノさんも言っていた通り楽しませてもらおうか。

 俺が歩いて行ったリングで待っていたのは筋肉質な青年だった。

 

「おいおい、なんだって俺の相手がこんなガキなんだよ」

 

「それが負ける前に言う言葉でいいのか?もう少し気のきいた言葉でも言ってみたらどうだ」

 

「このクソガキがぁ……!」

 

 俺の相手はリングに上がった俺を見て残念そうに言ってくるが、残念なのは俺も同じだ。

 何だって俺の相手がこんな見せ掛けだけの筋肉なんだよ。

 もう少し楽しそうな奴はいないのか?

 楽しみにしてたのにもう面倒になってきた。さっさと終わらせようと思う。

 

「おらぁ!」

 

 試合が始まると同時に殴り掛かってくるがまるで形になっていない。

 とりあえず手を掴んで背負い投げで地面に叩きつける。その後速やかに関節技に入ってライフを削って勝利した。

 このまま去るのもなんだから適当に助言でもしてからリングを下りる。

 ユーノさんは半笑いで待っていた。

 

「お、お疲れさま」

 

「疲れてませんよ。十数秒関節技掛けただけですから」

 

「ははは……。とりあえずクイン君の試合でも見に行こうか」

 

「了解っす」

 

 あっちはどうなって「ドガーン」るのかなぁって、今すごい音聞こえたんだけど……。

 音をした方を見るとそこは煙に包まれていて何も見えなかった。

 その煙がだんだんと晴れていくと、そこに見えたのは

 

「ボクの事を二度と女扱いするな」

 

 砲撃を放った格好で立っているクインとボロボロになった対戦者が居た。

 ……俺もあいつの砲撃受けたらああなるのだろうか?

 

「ん?なんだレオンじゃないか。試合はもう終わったのかい?」

 

 こいつは普段冷静な奴なんだが自分の女顔を気にしてかそれを指摘した人間にひどく攻撃的になるという厄介な属性を持っている。

 一度俺も逃げ回ること以外させて貰えなかったからな。ヴィータの奴が暴れることと同じくらいに経験したくないことの一つだ。

 とにかく砲撃ぶっ放した後にその笑顔はやめてほしい。見てて怖くなる。

 

「とにかくお前も試合終わったんなら帰ろうぜ」

 

「うん、そうだね。そうえいばアインハルトさん今日来てるって聞いてたんだけどなぁ」

 

「そうなのか?俺は何にも聞いてないけど」

 

「言ってたらレオンが緊張するとか思ったんじゃない?昨日のアインハルトさんみたいに」

 

 俺は昨日ヴィータに捕まって倉庫に二時間も閉じ込められていた。その為アインハルトの試合を見ることが出来なかったのが、クインが言うには「ものすごい緊張してた。少なくても付き合いが深い人間には分かる程度には」と言ってたため緊張感はあったのだろう。

 

「んー、なんであいつはそこまで緊張したんだか。確かにでかい舞台だから多少の緊張、例えば柱にぶつかったりしたりはしそうだけど」

 

「(君に特訓の成果を見せようとしたからじゃないかな。見せれなかったけど)とにかく君に緊張させたくなかったってことでいいかな」

 

「緊張感も適度ならいいんだけどな。しかしそこまで緊張させちまったのは悪かったな」

 

 うーん、これは今度侘びとして何かしてやる必要があるな。

 また一緒に服を選びに行くか?いやあいつだっていろいろ持ってるから服はもういいだろ。

 仕方ないから今度アリシアにでも聞いておくか。なぜかこういうことにあいつって協力的だし。

 そんなこんなでクインやユーノさんと喋りながら歩いていくと丁度こちらに気付いたヴィヴィオが居た。

 俺達を見つけたヴィヴィオはものすごい勢いで走って来てクインに飛びついた。

 いきなりの事で体勢を崩しそうになったが後ろから支えてやることで何とか体勢を保つことが出来た。

 

「はぁはぁ……、クイン、さんに、レ、オンさん……。アインハルトさんがなんか、はぁはぁ……」

 

「落ち着いてヴィヴィオさん。ゆっくり息を吸って吐くんだ」

 

 ヴィヴィオは急いでいたせいか息を荒くしていたが、クインの言うとおりにしていると荒くして息も通常のものに戻っていった。

 

「レオンさん!アインハルトさんのところに変な人が来て!なんか手を掴んできたんです!」

 

「あ”?」

 

 この前のミイカの時もそうだったがこの頃そういった馬鹿が多く湧きすぎだろ。

 つい最近気になって街の裏通りとか歩いてたらそういった奴らが十人単位で出てきたし。もちろん全員叩き潰した上に教育しなおしておいたがな。

 とにかくまたそういった奴らの馬鹿な行動だと思っていたんだが。

 

「なんであの野郎がここに居るんだ?」

 

「今はやりのストーカーという奴なんじゃないかな?どっちにしろ迷惑この上ないけどね」

 

 急いでいったらそこに居たのは以前意味不明なことを言っていたクソゲーだった。

 いい加減にしろよお前は。

 あの程度でやめておいた俺の優しさを忘れるなっての。

 とりあえず相も変わらずアインハルトの手を掴もうとしていたので逆にその手を掴んでやった。

 

「レ、レオンさん……」

 

「よおアインハルト。こんな所でどうしたんだよ」

 

「い、いえ。今日は皆さんと一緒にレオンさんとクインさんの試合を見に来てたんです」

 

「ふーん、それでお前らも来てたのかコロ&リオ」

 

「コロナです!」

 

「アタシは別に間違えられてないからいいや」

 

 全くコロは心が小さいな。もう少し相方を見習え。

 そんなんじゃ今の世の中キャラが生かせられないぜ?

 

「おい!」

 

「ん?」

 

「いつまで僕の高貴な手を掴んでいるんだ!早く離せ!」

 

「なんか気色悪い感触があると思ったらお前の手かよ。言われなくてもすぐに離すよ、気持ち悪い」

 

「き、貴様ぁ……!」

 

「それで、高貴な高貴なクソゲー様はこんな所に何の用ですか?さっさと消えてくれると大変うれしいからさっさと消えろや」

 

 本当にうざい。途中で本音が出てしまうほどに。

 こういった奴は本当に俺とはあわない。

 何だって今も昔も権力欲とかを持つ奴はこういう奴等ばっかなんだよ。もう少しましな奴はいないのか?

 とりあえず手を離してハンカチで掌をふく。

 この行為が面白いほどに相手を激情させられる行為であることを俺は知っている。だって昔やられたから。

 エレミアめぇ……!何だっていつも俺を怒らせるようなことばかりぃ……!

 まぁいい。今は奴にやられたことを思い出しながらこの目の前のクソゲーを排除することに集中しよう。

 

「で?高貴(笑)なクソゲー様がなんでこんなところに居るんですかね」

 

「なんで?決まっているだろう。僕は今回友人のセコンドとしてこの大会に関係しているんだよ」

 

「友人?」

 

「そう。彼さ」

 

 こんな奴に友人なんかいるのかと疑っていたが、その友人を見るとその疑問もどこかに飛んで行ってしまった。

 身長はおそらくは2メートル近くあるのだろう。

 その顔は厳つく、なんというか個性的なものだ。

 その顔は見たことがある。ユーノさんについこの前見せてもらったばかりだ。

 

「ブラウ・デュークライ……」

 

 そこに居たのは都市本戦6位という順位を残した人間だった。

 それにして迫力があるな。

 コロ&リオなんか怯えちまってるぞ。

 まぁ顔は怖いかもしれないが目を見る限りそこまで悪い奴には見えんなぁ。

 というか俺はブラウよりもなんでこのクソゲーがこの男と一緒に居たのかが気になる。

 

「というか友達が来たんだからさっさと帰れよ。お前の顔なんか見たくないんだよ」

 

「それは僕のセリフだ。お前のような下賤な人間と触れ合っていたらボクの品性まで疑われる」

 

「なら俺の気持ちとお前の気持ちは一緒なんだ。さっさと消えてくれ」

 

「ふん、そのつもりだ。…………良いことを思いついた」

 

「あ?」

 

「レオン・G・トエーラ、賭けをしないか?」

 

 去ろうとしたりその後変なこと言いだしたり忙し良い奴だな。

 しかも立ち止まった理由が賭け?学生の身分でそんなことしていい訳ないだろうが。

 とはいえこいつの言ってることを無視したとしても簡単に帰してくれるとは思えないし。さっさと話しを終わらせよう。

 

「賭けってなんだよ」

 

「(乗ってきた!)いや、ボクがセコンドをしているブラウと君が戦って勝った方が負けた方に命令できるっていう簡単なものだよ」

 

「リスク高すぎだしやる意味もない。レオン、こんな戯言聞く必要はないぞ」

 

「逃げるのか?」

 

 クインの言うとおり。こいつの言う賭けに乗ったとしても俺にはこいつに臨むような願いはない。

 だけど、逃げるのは嫌だ。

 

「その賭け乗った」

 

「レオン!」

 

「君ならそう言うと思ったよ(馬鹿な君ならね)」

 

「話はそれだけか?それなら俺達はもう帰らせてもらう」 

 

 誰が何と言おうと逃げるのは嫌だ。

 それが戦略的撤退などの、最終的に勝つための手段ならいいがそれ以外で逃げるは、いやだ。

 クインには悪いがこれは俺の意地だ。

 それに俺は元から誰にも負けるつもりはない。

 

 

 

 それから何日か経った後に行ったスーパーノービスも問題なく叩きのめしエリート戦に出場することになった。

 そしてエリート戦の第一回戦は何の因果かブラウ・デュークライと戦う事になった。

 今はその準備をしているところだ。今日からはバリアジャケットをつけての戦闘になるからシルフィを万全の状態にしておかないとな。

 そんな風に準備した後試合会場に歩いて向かってる途中にクインからの念話が届いてきた。

 そして送られてきた言葉に絶句することになる。

 

《なんの用だよクイン。俺は今から試合なんだが……》

 

《アインハルトさんとヴィヴィオさんが誘拐された!》

 

 は?こいつは今なんて言った?

 とにかく落ち着け。クインはイタズラもするがこんなたちの悪い冗談を言う奴じゃない。

 と言う事は誘拐されたということは事実なのだろう。とにかく状況把握から始めるべきだ。

 

《……大人には知らせたのか?》

 

《いや、大人に知らせたらどんなことになるか分からないと脅されて知らせることが出来なかった》

 

 何だと……?

 大人に連絡するな?つまりこれは身代金目当てじゃないと言う事か。

 恐らくクインは大人に連絡するなという言葉から俺に連絡したのだろう。これならルール違反じゃないと判断して。

 

《とにかくお前は今どこに居てなんでそれを知ったんだ?》

 

《ボクは試合を終わらせた後控室で片付けをしてその場を後にしようとしたんだ。そしたらそこに置いておいたボクのカバンの中に見覚えのない紙が入っていて》

 

《それが脅迫状だったってわけか。他には何か入ってなかったのか?》

 

《アインハルトさんとヴィヴィオさんの写真が入っていた》

 

《クイン様、アインハルト様とヴィヴィオ様を開放する条件については?》

 

《そのうち分かるとしか……》

 

 大人に知らせるな、そのうち分かる解放条件……。

 まず身代金の可能性は無い。それなら大人に知らせるなという条件は無いはず。さらにこの条件からあまり大事にしたくないという考えも見える。

 そのうち分かるという条件からは態度を変えずに生活しろという要求する点も見える。

 だけどそいつらの狙いはなんだ?クインに何をやらせたいんだ?

 

 俺の思考はそこで止まってなにも分からない。

 そのままの状態で試合会場に出た瞬間にすべての答えが分かった。

 

「あの屑野郎……!ここまでやりやがるか……!」

 

『どうしましたかマスター?』

 

《なにか分かったのかい!?》

 

 シルフィとクインの言葉に応えずただ手を握る。

 なるほどな。この前の“賭け”はこの時のためのものか。

 ブラウ・デュークライの近くに立っているイヤー・オブ・クザソゲー。その手に持っているのは。

 

《ロストロギア、“絶対遵守の誓約書(ギアススクロール)”……!》

 

《なんですか?それは》

 

《奴の持っているのは“絶対遵守の誓約書”って言ってな。簡単に言えば賭けに負けた相手を操れるものなんだよ》

 

《な、なんでそんなものが!》

 

 そんなことは俺の方が知りたい。

 だがそのおかげで分かったことがある。

 あの二人を誘拐した奴を仕掛けたのはこのクソゲーだ。

 そしてこいつの狙いはただ一つ。

 

「俺を負けさせてその発動を完璧にするためってことか」

 

『とりあえず……どうしますか?』

 

 とにかく、これはピンチでありながら同時にチャンスでもある。

 目の前の屑のことを俺は見張っていられるという点では今の状況はそう悲観したものではない。

 それにこいつの思考からしてクインの事をそもそも覚えてる可能性の方が少ない。

 でなければクインに伝えさせるなんて不確定な方法より俺に直に教えた方が危険度は高いが間違いない。

 そしてもう一つのこいつの誤算。

 見た目子供でありながらものすごい使い手がこの場に居ると言う事。

 

《クイン!今すぐ俺の言う所に居る人間に今の状況を伝えろ!俺の頼みだっていえば助けてくれるはずだ!》

 

《……分かった。ボクが戻ってくる前に負けるなよ》

 

《分かってる。俺だってこんな罠にはまって負けたくはねぇ》

 

《彼女たちはボクに任せろ》

 

《任せた!》

 

 最後の誤算は単純なことだ。

 俺の親友をなめるなよ?

 

『皆様お待たせいました。予選一組、エリートクラス一回戦選手入場です。レッドコーナーからは初参戦のルーキー『夜王流』レオン・G・トエーラ!一方のブルーコーナーはインターミドル三回出場、そして最高戦績6位入賞、『巨体戦士』ブラウ・デュークライ!』

 

 リングに上ればこんな人数に見られてるのかと変なことを考える。

 見渡す限りの人人人人だ。

 とにかく今からの試合で気を付けることはあの屑に俺の狙いを悟られないこと。その上で時間稼ぎをすることだ。

 『奴に気付かれないよう』に『時間稼ぎをする』。二つ同時にやらないといけないところがきついところだが……。

 

「シルフィ、準備は良いか?俺は出来てる」

 

『もちのろんです。わたしはマスターの作ったデバイス、いつでもどこでも戦闘準備は出来てます!』

 

 さぁ、はじめるか。

 

『さぁこれより試合を開始されます。どのような試合展開が待っているのでしょうか?そして今、ゴングが鳴りましたぁ!』

 

 クソゲー野郎、テメェのくだらない遊びはさっさと終わらせてもらう。

 アイツ等に手ぇ出したんだ。それ相応の覚悟はしてもらうぞ!!

 




という訳でクソゲー君再登場。
まさかここまでのことをやるとはだれも思わなかったでしょう。
さて、これからどうなるかは次回以降に持ち越しです。

という訳でまた次回!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。