魔法少女リリカルなのはvivid~四人目の王~   作:ビスマルク

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第五話

ザンクト・ヒルデ魔法学院に入学してからもうすでに一年が過ぎた。

かといって俺の生活が劇的に変わるかといえば決してそんなことはない。

変わったことといえば時々あった弁当の日に作ってもらっていた弁当を自分で作り始めたことくらいか。

母さんに作ってもらった時なぜか知らないがタワシが入っていた。

ウニと間違えたのかと思ったが弁当にウニを入れること自体がおかしいと途中で気付いた。

最初から気づかなかったのは俺にも確かにあの母の血が流れているということだろうか?だったらその地は目覚めないでほしい、永遠に。

そんなふうにいつもと変わらない日常を過ごしてる俺は今現在授業をサボタージュしている最中だ。

ここにいるのは俺と俺の作った相棒『シルフィ』だけだ。

ちなみにシルフィにはもうすでに俺が『夜王』の生まれ変わりということは教えてある。

相棒に隠し事をするなんて言うのは俺の望むところじゃないからな。

しかし今の俺は考えていることがある。

 

「はぁ……」

 

時々思う。

今の俺を見たら、昔の俺を知っている奴はどんなことを思うのだろうか。

全然変わっていないと思うだろうか?それとも昔とは全然違うと思うだろうか?

このことは生まれ変わってからずっと考え続けていた。

結局答えは見つからない。

 

「俺は何がしたいんだろうな……」

 

思わず呟くがやはりいい考えは思い浮かばない。

俺は死ぬとき確かに生きたいと願ったがこんな形になるとは思わなかった。ただ家族と、親友と共に居たかっただけだった。

そんな俺に与えられたのは新しい家族と全く違う人生。

これで戸惑うなという方が無理だろう。

女々しいかもしれないがそれが俺の偽らない本当の気持ちだ。

はぁ、いろいろ考えていたせいか頭が疲れていたらしい。これは早急に休ませる必要があるだろう。

 

「とりあえず寝るか」

 

「だめです」

 

一人で呟いたはずの言葉に思わぬ返答をされたことに驚き、敵襲かとすぐさま横になっていた体を起こして構える。

が、そこにいたのは我が級友のアインハルト一人だった。

つまりさっきの言葉を言ったのは目の前の友人だということだ。

問題は今俺がいる場所が学校が作られてから今までずっと使われてなかった空き教室を改造した俺しか知らないはずの場所ということだ。

 

「どうしてここが分かったんだ?ここは俺しか知らないはずなんだが」

 

「さっきシルフィさんから連絡があったんです」

 

「……おいシルフィ、どういうことだ?」

 

『声が怖いですよマスター』

 

「いいから答えろ、納得できる答えじゃなかったらフレーム掃除は無しだ」

 

『ご無体な!デバイスのちょっとのお茶目を許すくらいの器量もないんですか?そんなんじゃアインハルト様からも見捨てられますよ?』

 

「そうか、そんなに掃除されたくないというなら仕方ないな」

 

『いやいやちょっと待ってくださいよマスター!冗談ですよ、冗談!』

 

俺の言葉に必死になって弁解してくるデバイス『シルフィ』。

まさかこんなに感情豊かになるなんて作った本人である俺自身思わなかった。

 

『この頃マスターの魔法学の成績がまずいことになって来てるじゃないですか!だからちゃんと授業は受けないといけないという従者心からアインハルト様を呼ばせてもらいました!』

 

「そうか。で、本音は?」

 

『アインハルト様に引っ張られていくマスターというのは面白そうなので呼びました』

 

「正直に言ったことは評価するがやったことは評価できないな。よって罰として一週間はフレーム掃除はなしだ!」

 

『そんなー!』

 

「はぁ、遊んでいないで早く行きますよ」

 

「ちょっ!まっ!?いてっ!痛い痛い痛いっ!頼むから耳を引っ張るのはやめてくれ!!」

 

『ああ~、やっぱりこうなりましたか。でもこの二人を見てるととても癒されますね~』

 

その後俺はアインハルトに耳を引っ張らないように頼み続けたがその頼みが聞かれたのは教室に着いてからだった。

そしてこの日から同い年の親子としてからかわれることになるのは余談である。

 

 

***

 

 

全ての授業が終わった放課後俺は一人でとぼとぼ歩いていた。

アインハルトは今日俺がいた教室のことを担任のゴリラ(今年も担任がゴリラとか…なにこの罰ゲーム)に話に行った。

残念ながらあの教室にたどり着くにはいろいろと障害があるからそんなに簡単には辿り着けない。アインハルトにはまた悪いことをしたということで埋め合わせして来いという母の命令でまた何かおごらなきゃいけなくなりそうだが、まぁあのサボり部屋が見つかるよりはマシだろう。

 

「それにしても災難だったなぁ……」

 

『本当に災難だったのはマスターを助けた結果が幼い親という評価を受けたアインハルト様だと思いますけどねぇ~』

 

「いやいや、一番はこれからあの教室で授業をさぼろうとすると絶対にアインハルトが来るという状況になった俺だと思うぞ」

 

『いや、それは自業自得じゃないんですかね?』

 

「俺の辞書に自業自得という言葉は載っていない」

 

『そんな最低のことを自信満々に言わなくても…』

 

「そんな感想は聞こえない。ところでお前は誰だ?」

 

学校からずっとつかれていたがいい加減鬱陶しかったので振り返る。

俺の後ろにいたのはどこか見たことがあるような少年だった。

誰だ?全く思い出せん。

 

『マスターマスター、彼はマスター達のクラスメイトですよ』

 

「そうだったか?やっぱり全然思い出せん」

 

「ふぅ、やはり君はボクの顔を覚えていなかったか…。しょうがない、自己紹介しよう」

 

「いえ結構です。正直さっさと帰りたい」

 

『そういうときは聞いてるふりだけしてればいいだけなのに、やっぱりマスターは馬鹿ですねぇ』

 

小馬鹿にするように俺に声をかけて来るシルフィ。

だが俺も一つ言いたい。

 

「そういうお前も念話で話せばいいだろ。そういう所に気付かないお前も十分馬鹿だ」

 

「そうやって話してる本人の前で言ってはいけない事を言ってる時点で君たちは馬鹿なんだと思うが……」

 

『「そんな馬鹿な!?」』

 

「気づいてなかったのか!?」

 

驚いて声を出す目の前の少年の存在も忘れ俺はそれ以上の驚きに包まれていた。

馬鹿な!この俺がこのバカデバイスシルフィと同じ程度の知力しかないだと…!

そんなの認めてたまるか!

 

「訂正しろ。シルフィのことを馬鹿にするのは許すが俺を馬鹿にするのは許さん!」

 

「ちょっとセリフを間違えてないかい!?」

 

『そうですよ!もう一回やり直してください!』

 

俺のセリフに少年はまたもや驚きシルフィまでもが俺のセリフに文句をつけてくる。

全然間違ってる気がしないんだが……。

 

「セリフの順番が逆なんだ。そうすれば君の相棒が望む言葉になるだろう」

 

「ふむ、それならやりなおしてみよう」

 

首にかけてある相棒と目の前にいる(シルフィが言うにはクラスメイトの)少年が俺の言葉に何度も頷くので仕方ないからやり直す。

 

「それでは、俺のことを馬鹿にするのは許さんがシルフィを馬鹿にするのは許す!」

 

『「違うだろ(います)!!」』

 

「な、なんでだ!?俺はちゃんと自分の言いたいことを言ったぞ!」

 

そう言うと俺のセリフにずっと興奮してた少年はやっと冷静になれたのか俺の方をちゃんと見てきた。

しかし俺の相棒は何が不満なのかいまだに怒っている様子だった。

 

「君は相棒を馬鹿にされたことではなく君自身がバカにされたことを怒ったのか!?ちが「そうだ!!」……少し君のデバイスに同情してしまいそうだよ……」

 

やべぇ、こいつ面白れぇ!!

からかうとその分だけ俺が望んでるリアクションをとってくれるなんて最高じゃないか!

この頃アインハルトは俺のボケにほとんど反応しなくなってきたからちょうど良かった。

 

「俺は、お前のようなやつを待っていた…!」

 

「な、なんだい急に…」

 

急に俺の言葉の方向性が変わったせいか少し戸惑う少年。

しかしその本質は突っ込み属性持ち、ぼけ続ければいずれ突っ込むはずだ……。

 

しかしそうやって今を楽しもうとするとさっき考えていることを思い出す。

俺は何のために今を生きているのだろう。

ずっと考えてきて答えが出ないままの疑問が頭の中を駆け巡る。

 

そんな授業中サボってた時に考えてきたことを思い出したらなんか何もやる気しなくなってきた。

さっさと用件を聞いて帰ろう。

 

「なぁ、用があるなら早く行ってくれないか?もう帰りたいんだが」

 

「きゅ、急に態度が変わったね…。まぁいい。ボクの要件はただ一つだけ、ストラトスさんにかかわらない方がいい、それだけだよ」

 

「……なんで?」

 

要件を適当に聞いて帰りたかった俺だったがこれにはさすがに聞き返す。

なぜ俺がアインハルトに近づかない方がいいんだ?

アイツの性格のことは俺の方が目の前のこいつより知ってる自信がある。だからあいつの性格が悪いからだ、なんていう場合はそんな戯言は聞く必要はない。

それにこいつの言い方は高圧的なものではなく、そういうなれば心配して忠告してくる感じだ。

それにこいつ自信アインハルトに対する嫌悪感は微塵も感じられない。

つまりいやがらせ目的では無いということだ。

考えれば考えるほど訳が分からなくなる。なんでこいつはこんなことを言ってきたんだ?

そんな疑問を抱いたのを俺の表情を見て察したのか説明しようとしてくれた。

 

「君に罪はないよ。君とストラトスさんはとても仲が良く互いに信頼しているみたいだからね。でもそれが気に食わないという人間もいるんだよ」

 

「で?」

 

こいつは何が言いたいのかは大体分かった。

何年もやってないとはいえこの身にはあらゆる貴族や王族と話した記憶がある。

これまでの話の流れからなにが言いたいのかは分かったがこいつに何か得になることがあるのだろうか、という疑問の答えを引き出すために話を引き延ばす。

 

「つまりだ。君が彼女とこれ以上一緒に居れば君に彼等からの被害が来る可能性があるんだよ」

 

「だから?」

 

「ストラトスさんから距離を取らないか?しばらくすれば奴らも飽きるだろうから」

 

おいおい、口調が崩れてきてるぞ?

最初は彼等だったのに今の言葉では奴らになっていた。

それが無意識に飛び出してきたということはそいつらに対していい感情は持っていないという事か。

 

「ご忠告ありがとう。でも俺はアインハルトとの接し方を変える気は全くないね」

 

「全くかい?」

 

「ああ、全くだ。まぁ忠告はありがたく受け取っておくよ。だが」

 

「だが?」

 

「あいつの意思を無視してでも何かしようってやつがいたなら俺が叩き潰すだけだ」

 

「相手は管理局の重鎮の息子らしいぞ」

 

その言葉に俺は鼻で笑う。

わかってねぇなぁ。

 

「そいつは重鎮の息子であってそいつ自身が重鎮じゃないんだろ?だったら問題ないね。それに子供がいちいち相手の立場考えて話せてたまるか」

 

「……君はその例外になりそうな人間だがね」

 

「そういうお前こそ、俺の言葉が理解できてる時点で普通じゃねぇよ」

 

「ボクは親の仕事の関係上こういった話をよくするんだよ。さすがに同い年とは初めてだけどね」

 

「俺も初めてだよ。アインハルト以外は子供っぽい奴が多すぎて困る。それにアインハルトも時々子供っぽい時があるからな」

 

「ふむ。そんな様子はボク達の前では見せない、つまり君は彼女にそれほどまでに信頼されているということだ。そんな彼女の信頼を裏切らないように頼むよ」

 

「当たり前だ。俺がアイツを裏切るなんてことがあってたまるか」

 

アイツが居なかったら俺の学校生活は驚異の友達数ゼロを記録することになる。

さすがの俺もそれはさすがに寂しい。というか友達の多い兄貴にバカにされる、絶対に。兄貴はそういうやつだ。

 

「……その言葉にはとても強い気持ちを感じるがだからこそ不思議だ。彼女のなにが君をそこまでさせるんだい?よかったら聞かせてほしい」

 

「ああー……、そうだなぁ…」

 

よく考えてみたら俺は何であいつを大切にしているのか分からなくなる。

最初はあの目がクラウスのものと一緒だったからだな。

だけど違った。あいつの目の色はクラウスと一緒じゃない。俺と一緒なんだ。

失われた過去に対するどうしようもない気持ちを持った人間にしか宿せない寂しそうな瞳。

 

ああ、分かった。

 

俺は――――

 

「――――俺はあいつを笑わせたいんだよ」

 

「笑わせる?」

 

呆気にとられたような少年に笑いをうかべた顔を向ける。

さっきまでどこか感じていた疎外感――――この世界の人間である少年に対しての――――はどこにもなかった。

 

「そう、笑わせる。あいつが笑った姿を俺は見たことがない。微笑をしたり笑ってそうな雰囲気を出したりしていたところは見たことはあるが、満面の笑みってものを見たことがない。だから見たいんだよ、あいつがどんな顔で笑うのかを」

 

今の俺が満面の笑みを浮かべることが出来ていないように、あいつの満面の笑い顔というものをうかべたところを知らない。

俺はいいがアイツが笑わないのはむかつく。

つまりはただの意地だ。

 

だけど、この意地が俺がここにいるという証明になるだろう。

『夜王』としてのレオン・G・トエーラじゃなくて、唯の、この世界に生きるレオン・G・トエーラがここにいるという証明に。

それに冷静に考えたらこの世界にヴォルケンリッターという、俺の最期を看取ってくれた、色々な約束をした家族がまだ生きているのかもしれない。

そう思えば俺がここにいる理由もまた増える。

 

「ふ、ふ、ふ、ふふふふふはははははははははははッッッ!!!」

 

「なんだよ、俺は真面目に言ったんだぜ」

 

「ははははははは!!だ、だからだよ!管理局の重鎮の子供を相手にしても引かない理由が彼女を笑わせたいからだって!?これで笑わない方がおかしいだろ!!」

 

「そんなものなのか?」

 

『さぁ?私はマスターが作ったデバイスですからマスターと同じく自分が気になったものとマスターに必要そうなことの情報しかとらないようにしているので管理局だとかそんなものには全く興味ないので最低限の元しか知りません』

 

「作った張本人である俺が言えることじゃないけどお前って本当に変わってるよな」

 

『そんなデバイスがどこかにあってもいいと思いますけど』

 

「ああ、俺も堅苦しい奴に比べれば随分楽だ」

 

やはりシルフィは俺の作ったデバイスだ。俺とあった性格をしてるから日常生活でもずいぶん楽だ。これで堅苦しい奴が相棒だったら俺は今よりさらにストレスを抱え込んでいることになるだろう。

そんな俺たちのやりとりの間に息を整えたのか少年は俺の方を向いてる。

 

「安心したよ。ストラトスさんの近くにいるのが君のような人間で」

 

「どういう意味だよ」

 

「そのままの意味さ。もし君が一人でいた彼女に対する同情心などで一緒にいるなど言っていたらボクは君を許さなかったよ」

 

「そうかい。俺は別に恨まれても別に構わないけどな」

 

「本当に君は珍しい奴だね」

 

「お前もな」

 

会話が途切れると同時に少年は俺に近づいてきて手を差し出してきた。

 

「なんだこれは?」

 

「握手だよ。君とここで関係を持っておいた方がいいとボクの勘が言ってるからね」

 

「ふぅん?まぁ普通の奴よりお前みたいなやつの方が楽しそうだからな。俺的にも嬉しいぜ。これでようやっとこの頃順調に友達の増えてるアインハルトに追いつけるってもんだ」

 

そう言いながら差し出された手を握る。

 

「……本当に君は面白い奴だね。ボクの名前はクイン・フェン・ヴォテックスだ。気軽にクインと呼んでくれ」

 

「知ってるかもしれんが俺の名前はレオン・G・トエーラだ。俺の方もレオンって呼んでくれていいぜ」

 

「ああ、これから面倒事に巻き込むかもしれないが頼むよ。レオン」

 

「おう、こっちも多分色々迷惑かけると思うが頼りにしてるぜ。クイン」

 

この日は俺にとって忘れることの出来ない日になるだろう。

俺がここにいる理由を確認し、そして俺に二人目の友人が出来た日なのだから。

 

まだ俺が悩んでいたころの春の事だった。

 

 

 




新キャラ登場!
ボクっ娘だと思った?残念!普通の男の子でした!
正直オリキャラは男以外で出すつもりはないですよ。

キャラがうまくつかめないもん。
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