魔法少女リリカルなのはvivid~四人目の王~   作:ビスマルク

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かなり遅れてしまい申し訳ありませんでした。
諸事情およびスランプで途中までは書けていたのに続きがかけずに苦しみました。
とりあえず最初に言わせてもらえるなら今回は今まで以上に超展開です。
それでもいいという方はどうぞお読みください。


第六話

現在俺はクインと一緒に下校中だ。

この頃アインハルトは付き合いが悪くなってきた。どうやら修行をしてるらしいが、過ぎた鍛錬は体を壊すということを知ってる俺からしてみればアイツの事をそろそろ止めなければならないと思う。体を壊してからでは遅いのだ。

 

「レオン、君は今何を考えているか当てて見せようか?」

 

「ん?出来るもんならやってみな」

 

「そうだな……。ずばりアインハルトさんについてだろう」

 

クインと友人になってからすぐにアインハルトに紹介した。

その時にどうやらお互い名前で呼ぶようになったようだ。

……なんかちょっとイラッとした。

 

「……なんで分かった?」

 

「隠してるつもりかい?だとしたら笑ってしまうよ。それくらい君は分かりやすいんだ」

 

「アインハルトからも言われたがそんなに俺ってわかりやすいか?」

 

「ああ、それはもう」

 

「…………」

 

こいつはいい奴なんだがもう少しこう、人を気遣う言い方というものを学んだ方がいいと思う。

冗談抜きでかなりイラッときた。

 

「……俺が分かりやすいかどうかはさて置いてだ。アインハルトがどこに居るのか知らないか?」

 

「知ってどうするんだい」

 

「無理してたら止める。無理してなかったら手伝う」

 

「……君はもう少し嘘をつくのを上手くなった方がいい。じゃないと将来結婚して浮気した時に困るぞ?」

 

「しねぇよ!!」

 

「それは結婚をしないという意味かい?それとも」

 

「浮気しない方だよ!分かって言ってんだろ!!」

 

「ばれてしまったか」

 

クククと笑うクイン。

かなりイラつくことこの上ない。

初めて会ったときは俺が手玉に取っていた筈なのに今じゃこいつの方に手玉に取られることの方が多い。まぁその方が対等な友人関係と言えるかもしれないが。

 

「そんなに俺をからかって楽しいか?」

 

「ああ、楽しいね」

 

真顔、それもこいつなに言ってんの?的な目で見られた。

この顔にはむかつくというより呆れの方が大きかった。

 

「おいおい」

 

流石に俺の視線の中の呆れの部分に気付いたのかクインが顔を歪める。

クイン的にもイラつかれるのはともかく呆れられるのは好きじゃないらしい。

まぁこいつも馬鹿じゃなからさすがに気付くとは思って――――

 

「そんな尊敬の目で見られたら照れるじゃないか」

 

「訂正、やっぱお前馬鹿だ!」

 

「馬鹿ではない!たとえ馬鹿だとしても馬鹿という名の天才だ!」

 

『この人もマスターに負けず劣らずどこかおかしいですねぇ』

 

「さすがにこいつと一緒にされたくはないんだが……」

 

俺も確かに奇人変人であるという自覚はあったがこいつは俺以上だ。

ありとあらゆる面で俺を上回っている。

まぁその分俺がこいつを上回ってるところもあるんだが。

 

「ところでレオン、ボクのデバイスの方はどうだ?」

 

「ああ、ちょうどフレームに使えそうな部品があったんでそれで強度を高めてる。色々と改良するところがあるから完成するのは早くても二カ月くらいかかる」

 

「それでいい、とにかく最高の出来に仕上げてくれ」

 

「金も貰ってるからな。仕事はしっかりさせてもらうさ」

 

今話題に出たのはクインのデバイスの事だ。

シルフィのことを紹介した際その出来の良さに感心したクインは自分の使うデバイスの製作を俺に依頼してきたのだ。

二つ返事で返した俺は現在『夜王流』の特訓をしながらもクインのデバイスを作るという結構つらい日常を送っている。

その時にどのように使うのかと聞いたがそれはまた今度の機会にしておこう。

 

「それにしてもアインハルトさんはよく君に物事を教えることが出来るね」

 

「どういう意味だよ?」

 

「いやそのままの意味だよ?だって君この前の魔法学のテスト赤点ギリギリだったじゃないか。あれほどアインハルトさんに教えられていたのにもかかわらず、だ」

 

「……このままじゃ不味いっていう自覚はある」

 

「ふむ。まぁそこを分かっているならいいんじゃないかな。世の中自分の欠点と向き合わない人間が多すぎるからね。そうやって反省できているのはいいことだと思うよ」

 

「……褒められてると考えていいんだよな?」

 

「人からの賛辞はちゃんと受け止めなさい」

 

「お前から言われると褒められてる気がしないんだよ」

 

やれやれと肩をすくめるクイン。

いちいちこういうところが様になっててむかつくんだよ。

前世じゃこういうタイプにはあまり会わなかったからなぁ。

 

「まぁとにかくアインハルトさんとだけじゃなくきちんと勉強するんだね。あまり彼女に心配をかけてはいけないよ」

 

「分かったよ」

 

「それでいい。ああ、そうだ。君の事だから今から特訓しに行くんだろうが、今日は川に近寄らない方がいい」

 

「なんで?」

 

「昨日の大雨で川の水量が増えているらしいんだ。万が一にも溺れてしまったら困るからね」

 

「ん、分かった。忠告あんがとな」

 

「構わないよ。ではボクはこっちだから失礼するよ」

 

「おう、また来週」

 

こうして俺の一週間の学校が終わった。

これからは鍛錬の時間だ。

 

 

***

 

 

鍛錬終了。

描写?そんなのないよ。

誰も男が汗かいてる姿なんて見たくないだろ?少なくても俺は見たくない。

 

「とにかく今日はもう帰るか」

 

『今日も怪我しちゃいましたね~』

 

「前世の今よりは全然マシだよ。この年の時は骨折なんてざらだったしな」

 

『それはそれは、壮絶な生活だったんですね~』

 

「まぁそれくらいしなけりゃあの頃は生き残れなかったしな……」

 

いや、いくら修行をして強くなっても俺の心に隙があったから俺は死んだ。

なんでか知らないが得た二度目の人生。

前世のようなことはないと思うがなにがあるか分からないこの人生、俺は全力で生きていく。

そしていつか最強と言えるだけの実力をつけて最高の『覇王流』と戦うというクラウスとの約束を守る。

それが現在の、そして数少ない目標の二つのうちの一つだ。

もう一つ?アインハルトの顔を満面の笑みに変えることだけどそれが何か?

 

『?』

 

「どうしたシルフィ?」

 

『いえ……あっちの川の方でなにか音がしたのですが、気のせいでしょうか?』

 

川だと?

クインの話だと昨日は大雨が降って川が増水してるらしい。もしも落ちて流されてたら最悪死ぬことになるぞ。

 

「……いや、多分気のせいじゃない。誰かが叫んでるような声がした」

 

そしてこの直感と聴覚が示しているのは残念ながら誰かが流されているという事実だ。

瞬間方向転換。急いで帰り道から川のある方角へ駆けていく。

整備されてない道を通っていくからそこら辺の枝に引っかかって出している肌に傷が出来る。

それだけならいいが服に枝が引っ掛かり動きが鈍くなる。

 

「くそっ!めんどくさい!」

 

『ちょっ!マスター!?』

 

今は時間をロスするわけにはいかない。

服に枝が引っ掛かるというならば服を脱げばいい。

そう思って俺は上半身裸になった。変態くさいとかいうな、俺もこんなときじゃなかったらやってない。

 

服をぬいだおかげで動きが鈍くなることはなくなったが代わりに体中に傷が出来る。

だけど、辿り着くのは間違いなく早くなっただろう。

 

「やっと出れた!シルフィ、急いで探索魔法発動しろ!」

 

『了解です!』

 

やっとの思いで森を抜けすぐさまシルフィに探索魔法を発動させる。

この魔法は俺から最大半径五十メートル以内にいる条件とあったものを探し出すものだ。

今回の条件は最大距離の中に存在する人間だ。

 

『見つけました!』

 

「どこだ!!」

 

『対岸の大木の根に引っかかっています!』

 

見れば確かに十メートル位向こうの対岸からはみでてる根の一部に何か布のようなものが見える。

しかし見えるのは布だけで水の中は濁っていて見えずそこに本当にいるのか分からない。

だけど俺は俺の相棒を信じてすぐさま行動に移る。

 

「おりゃあ!!」

 

掛け声をあげて流れてきた木に飛び乗る。

それを何回も繰り返し対岸に渡りきる。

 

『無茶しますねマスター。落ちたらこっちも一巻の終わりでしたよ』

 

「落ちなかったからいいんだよ!それよりもまだ生命反応はあるんだろうな?」

 

『大丈夫ですよ!でもかなり弱ってますから早く引き上げてあげましょう!』

 

それもそうだ、と頷き足を固定して木にぶら下がり大木に引っかかっている服の一部を掴みあげる。

しかし思ったよりも服が水を吸っていて重くなっていて引きずり上げるのに苦労する。

 

やっとの思いで引きずり上げたら上げたらでまた驚愕する。

川で流されかけてたのは俺の親友のアインハルト・ストラトスだったんだから。

 

「そういえばこいつもここら辺で特訓してたんだっけ」

 

『そういえばそうですね。よく考えてみたらこんなところに踏み入れるのはマスターを除けばアインハルト様だけでしたね』

 

とりあえず呼吸や体温の確認をしておく。

呼吸の方は問題なかったが、体温の方が結構低くなっていた。

 

『このままだと風邪をひいてしまいますね』

 

「とりあえずこの水で冷たくなった服を脱がすか?でもここにいるのって俺だけだし……」

 

『いいじゃないですか!これも役得ってものですよ!』

 

「使い方間違ってないか?ていうかお前をアインハルトに着けてそのままセットアップさせればいいんじゃね?」

 

『っち!』

 

「舌打ちなんて機能付けた覚えは無いんだがなぁ……」

 

どんどん俺の知らなかった機能が出て来る。

なぜこんなAIが出来たのか真面目に疑問に思う。それとも俺が知らないだけで他にもこうゆうデバイスが存在するのだろうか。

相棒の新たな機能?を確認しながらアインハルトにバリアジャケットを着せる。

とりあえずこれでこれ以上の体温低下は防げたな。

 

「さて、これからどうするか」

 

『とりあえず家に戻りましょう。アインハルト様の自宅の場所も連絡方法も分からない現状ではそれしかないと思います』

 

「確かにそうだよなぁ、しょうがない。シルフィ、バリアジャケット着せたままにしておけよ」

 

『了解しました。ところで』

 

「ん?」

 

『いつになったら上半身裸を辞めるんですか?』

 

……すっかり忘れていた。

 

 

***

 

 

とりあえずアインハルトを背負って家に帰ってきた。

着いた時には兄貴や母さんがうるさかったがとりあえず簡単に説明して母さんにアインハルトの着替えをさせて貰い俺のベッドにを寝かしておいた。

アインハルトが寝ている間俺の部屋のドアの目の前で俺は兄貴と話していた。

 

「アインハルトの家に連絡がつかない?」

 

「ああ、とりあえずこのまま運ぶのもなんだからこのまま寝かしておいた方がいいと思うぞ」

 

「ん~、まぁいいけど。もし後で連絡しても繋がらなかったら今日は泊まらせていい?」

 

「ああ、母さんと父さんには俺から言っておこう」

 

「任せた」

 

「任された」

 

こういう時だけは兄貴は頼りになる。

こういう時だけだけどな!

そんな風に天邪鬼?な感じで兄貴に感謝していたら部屋の中からうめき声が聞こえてきた。

覗いてみるとアインハルトが苦しそうに顔を歪めていた。

聞いちゃいけないと分かっていてもアインハルトの寝言が俺の耳元に届いてくる。

 

「『夜王』……」

 

「……!?」

 

聞こえてきたのは聞こえてくるはずの無いワード。

今でも俺を支え、同時に縛り付けているかつて呼ばれた俺の『名』。

それが言うはずのない人間から聞こえてきた。

 

「ん、んん……。こ、ここは……?」

 

「お、起きたか」

 

どうやら俺は自分が思っていたよりも動揺していたようだ。

思わず声が裏返っているのを自覚する。

 

「レオンさん……?」

 

「お、おう。ここは俺の部屋でお前が寝てるのは俺のベッドだ」

 

「レオンさんの……?」

 

どうやら今の働いてない頭では理解しきることが出来なかったようだ。

長い間かけて理解した瞬間アインハルトは今まで見たことの無い程のスピードで飛び上がりベッドから飛び降りた。

 

「ど、どうして!?どうしてわたしはここにいるんですか!?なんでレオンさんのベッドで寝てるんですか!?なんで着てた服が変わっているんですか!?」

 

「ちょっ、ちょっと落ち着けよ。とりあえず最後の質問から答えるとだな、着替えさせたからだ」

 

俺はこの時言葉を間違えた。

こんな言い方をすれば着替えさせたのが母さんじゃなくて俺だと勘違いしても仕方ない。

だから現在床に叩きつけられて気絶させられてもしても悪いのは俺なのだろう。

 

 

***

 

 

「す、すみません……」

 

「いや、俺も言い方が悪かった」

 

叩きつけられ気絶した俺と気絶してベッドに寝ていたアインハルトは現在家のリビングに居た。

俺が気絶していた間に誤解を解いてくれてたのか起きた時には申し訳そうな顔をしたアインハルトがいた。

 

「それで体の方は大丈夫なのか?」

 

「はい、一通り確認しましたけど特に問題はありませんでした」

 

「それならいいけど、もしダメそうだったらちゃんと言えよ」

 

「分かりました」

 

う~ん、申し訳ないって顔をしてるのは声からわかるけど俯いてるからそれ以外の感情が読めねぇな。

それにこの空気をいい加減にどうにかしたいんだが、誰か助けてくれないかな。

そんな風に考えていたら俺の感情を読み取ったのかアインハルトが声をかけてくれた。

 

「あの、レオンさん」

 

「な、なんだ」

 

「助けてもらったお礼をさせてほしいのですが……」

 

「いや、そういうの別にい「そういう訳にはいきません」そ、そうか」

 

といわれてもお礼、ねぇ。

何も思い浮かばない。

鍛錬に付き合ってくれって頼んでも今の状態じゃあれ以上のことは出来ないだろうし、いくらなんでも今の状態で組手とかやっても俺が絶対に勝つだろうし。

う~んと悩んでいると母さんが救いの発言をしてくれた。

 

「それならアインハルトさん。レオンと一緒に明後日出かけてくれないかしら。いわゆるデートというものね」

 

「デッ!?」

 

「母さん!?」

 

「ああ、それはいいかもしれないな」

 

訂正、救いの発言じゃなくて爆弾発言でした。

しかも母さんだけじゃなくて兄貴までそれに乗っかってきやがった。

ニヤニヤしてるのはおそらく、というか絶対に目の錯覚じゃないだろう。

それよりもとにかくこの状況をどうにかしなければいけないだろう。

 

「なんでお礼の話からそうなんだよ!」

 

「だってお前が休みの日に出かけるのって特訓とか修練とかそういう時だけじゃないか。それ以外の時は大体家で暇つぶしてるだけだし。たまには外に出かけてこいよ」

 

「クッ、兄貴のくせに正論を……!」

 

俺が兄貴の言葉に反論しようと言葉を投げかけようとしようとしたら母さんが途中に割り込んできた。

 

「レオン、アインハルトさんは別に構わないって言ってくれたわ。これ以上女の子に恥をかかせるものじゃないわ」

 

母さんはこういう時は確実に俺の敵だ。

そしてこう行った時俺が勝てる時はまず無い。

 

「……分かったよ」

 

つまりこの提案を呑むことは最初から決まっていたことだった。

今日も俺は母に負けました。

 

 

***

 

 

時は進んで今日は約束の日。

待ち合わせの場所で相手が来るのを待っている。

そもそも待ち合わせ時間より三十分以上前に来てるから来ることはほぼないのだが。

ちなみになぜ待ち合わせ時間より早く着てるのかといわれると昨日電話したクインにもらった助言からだ。

こういうことは前世の頃から一回もなかったから何か助かるような情報を求めてからの事からだったが為になることも教えてもらった。持つべきものは友人だと思った瞬間である。

ただ、情報を求めたのは良かったが今日のことを知られてしまい散々からかわれた。

 

「しかしこんな恰好をする必要まであるのか?」

 

今俺が着てるのはいつも特訓の時に使ってる動きやすいようなものではなく、全体的に黒い、だけど邪魔にならない感じに白いラインの入っているジャケットにハーフズボン。普段は全く着ることの無い服だ。

そんなものを着る必要性を感じない俺にシルフィは俺の苦言を言ってきた。

 

『当たり前です。一緒にいる男性がダサい恰好してるとか女の子に恥をかかすきですか?マスターはそういう所ずぼらだから困りますね』

 

「そこまで言うか……?」

 

『言います。せっかくイケメンといえるような顔をしてるんだからそれを生かさないのは罪ですよ?ほら頭かかないで、せっかく整えた髪型が崩れますよ』

 

いつもはバカみたいなことばっか言ってるくせしてなんでこういう時だけ常識的なことを言うんだ、こいつは。

そういう所があるからクインからは『もう一人の母親』とか言われるんだよ。

その後もシルフィと言い争いをしていると待ち合わせ時間である10時を五分ほど過ぎた時点でアインハルトが来た。

 

「す、すみません!待たせてしまいましたか?」

 

『(ここは今来たところだっていうべきですよ!)』

「(お、おう)いや、今来たところだから待ってないぞ」

 

「そうですか。……よかった」

 

まぁ真面目なこいつが五分だけとはいえ時間通りこなかったことには驚いたがたまにはいいだろう。

特に今日はいつも気を張ってるこいつをリラックスさせるという目的があるからな。

半面俺はリラックスできていない。

なぜって?今も頭の中で

 

『(マスターマスター!早くアインハルトさんの服を褒めてあげてください!こういう小さなことから相手の印象はガラッと変わるんですよ!)』

 

っていう相棒の声が響いてるからだよ。

とはいえこの言葉に反対したとしてもいいことは起こらないだろう。下手したらへそを曲げられるてこれからの助言がもらえないかもしれない。

 

一回息を吐いてアインハルトの服を観察してみる。

その服は彼女の印象に実にあっている白くて清楚な雰囲気の服だった。

 

「うん、まぁ似合ってるんじゃないか」

 

「あ、ありがとうございます」

 

アインハルトは顔を真っ赤にさせ俯く。

こういう風に褒められることに慣れてないんだろうな。

と、早く行かないと、時間は待ってくれないからな。

 

「とりあえず行くか。それで今日はどこに行くんだっけ?」

 

「えっと、ミーツさんから遊園地?のチケットをもらってますけど……」

 

「そんじゃそこに行くか」

 

「はい」

 

とりあえず目的地に向かって歩き出す俺たち。

普段話してるような他愛ない話をして歩く。

気のせいかもしれないがいつもより互いの距離が小さくなっていたような気がした。

 

 

***

 

 

そんな初々しい二人をかげから見つめてる二人がいた。

 

「いやいや、案外あの二人だけにしたのは正解だったかもしれないね」

 

「弟のデート現場を覗き見してる俺が言えることじゃないけどあいつも個性的な友達を持ってるな」

 

「いやいや、お兄さんには劣りますよ……おっとやっと動き始めましたね。こちらも移動しましょう」

 

陰から見てる二人、一人はレオンと同じ黒い髪を短髪にしている青年と金髪の将来有望な少年だった。

彼らの名前はレオンの兄であるトオル・G・トエーラと同じくレオンの友人であるクイン・フェン・ヴォテックスという。

今回の事が決まった時からレオンとアインハルトの様子を観察しようとこの二人は決めていたのだ。もちろん二人には内密にしてだ。

 

「あの二人の関係が少しでも進んだら面白いということでついてきたけど思ったより楽しめそうですね」

 

「まぁ弟にそういう関係の人が現れたならそれはいいことなんだが……なんかむかつくな」

 

「いやいや、お兄さんにも恋人さんが居るらしいじゃないですか。最近は喧嘩中らしいですけど」

 

「あいつはそんなことまで言ってたのか……」

 

二人にばれないように二人の後をついていく怪しい人影。

ここだけ見れば通報ものだが幸い誰にも見つかってないようだ。

もしレオンに見つかったら考えられる限り最悪なことになるだろうが。

 

「おお、どうやらあの遊園地に入るみたいですね」

 

「母さんがアインハルトさんにチケット渡してたからな。まぁ無難な選択だろう」

 

「確かに。レオンが自分でデート先を考えてるかと問われれば否と答えるしかありませんしね」

 

「あいつ自身素材はいいのにおしゃれとか服とかは全くと言えるほど無関心だからな。そんなあいつがそこまで気を回してるわけがない。それを考えていた母さんのファインプレーといえるだろう」

 

「ちなみにあの恰好を考えたのは誰なんですか?」

 

「俺と母さんとレオンのデバイスのシルフィだな。いつもふざけてるシルフィも今回の事はかなり気合入れてるぞ」

 

「それはそれは、心強い味方ですね。おっと、もう遊園地の中に入っていったのでボクたちも行きましょう」

 

「おう」

 

こうして青年と少年は二人のデート現場を覗く。

その結果何が起こるのかもしれないで。

 

 

***

 

 

突然だが俺の前世の話をしよう。

俺の前世は古代ベルカ時代といわれる、今と比べると圧倒的に技術量に差がある時代だった。

そんな時代に遊園地など存在しなかった。

そして今世では遊びに費やす時間など無く、ほとんどの時間は特訓に励んでいた。

アインハルトもほぼ俺と同じような生活を送っている。

つまり遊園地といわれるこの場所は俺達にとって完全に未知の場所と言えるだろう。

そんな場所にいきなり行かされた俺は混乱するばかりだった。

 

「なあ、たくさんの人が乗って悲鳴をあげてるあれは楽しいのか?どう見ても顔色が悪い奴が二・三人いるだが」

 

「おそらくあれは訓練の一つじゃないでしょうか。きっと空戦の適性をあげる効果とかあるんですよ」

 

「それもそうか。もし違うって言うならあんなのに乗ろうってやつの気がしれないな」

 

とりあえずあのぐるぐるしてるやつには乗らないようにしよう。

高いところは嫌いじゃないがあんなのに乗ってこの後の行動に影響をきたすわけには行けないからな。乗るとしても最後だ最後。

 

「んじゃとりあえず軽そうなもの。あの馬がぐるぐる回ってるやつから乗るか」

 

「はい」

 

乗馬は得意だったからな。どんな暴れ馬でも乗りこなしてやるぜ!

 

 

***

 

 

「失敗した。事前にあの二人に遊園地の正しい情報を仕込んでおくんだった」

 

「こういう所に全く興味を持ってないことは知っていたけど、まさかここまでだったとは……。ボク達の認識の甘さを痛感させられましたね」

 

天然、というより戦闘馬鹿二人を遠くから見るトオルとクインは自らの浅慮を恥じていた。

そもそもあの二人、特にレオンに常識を求めること自体が間違いだったのだ。

でなければ普段はふざけているシルフィが真面目になったりはしないだろう。

その頼みの綱だったシルフィも現在は念話がうるさいという理由でレオンに機能停止させられていた。

 

「どうします?このまま見てるだけにしますか?」

 

「さりげなく教えようにもレオンには普通にばれそうだしなぁ。変装したとしてもあいつなら俺たち自身でも知らないような癖を見抜いて来そうだ」

 

「そこまで人間離れしてる訳では……いやあるかもしれない」

 

クインが思い出したのは以前隠れて彼をつけた時の記憶。

完璧だと思っていたのにもかかわらず見つけれられた。

後に聞いたところでは「音とかは聞こえなかったけど気配がだだ漏れだったし、後は……勘?」というふざけら答えを聞かされた。

彼が大人になった時には人間であることも疑いそうになりそうだ、と思ったこともあるのだ。

正直なところ彼の勘というものは恐ろしいほどまでに鋭いのだ。それこそ百発百中と言えるほど。

そんなレオンの前にのこのこと出て行ったら、変装してるとか関係なく問答無用に正体を当ててくるだろう。

つまり二人にはどれだけ助言したくてもここで彼らを見守るという選択しか選ぶことができないのだ。

 

「とにかく、あいつらも今のところは問題なく動いてる。無理して俺たちが出っ張る必要もないだろ。どうしても、って時以外にはな」

 

「ボクはもうここに見に来たことを後悔し始めてますよ。正直なところこのままじゃじれったくって見てられない」

 

「俺もだ。だが兄として弟の行動は知っておく必要がある!特にこういったことはやるのも見るのも好きだしな」

 

それにしても、とレトオルは言葉を濁す。

その後に続く言葉をクインは簡単に予想できた。その気持ちは自分ももっているから。

 

「「レオンって本当に興味ないことには無関心なんだなぁ……」」

 

彼らの呟きは誰にも届かずに風に流れていった。

 

 

***

 

 

「あの馬の上下運動は甘すぎる。もう少し暴れ馬っぽい奴はなかったのか?」

 

「そんなもの用意してたらきっとケガ人が続出すると思いますけど……」

 

「それもそうか。とりあえず腹も減ったしそこらへんで何か買おうぜ」

 

「そうですね。なににします?」

 

「適当にハンバーガーでいいだろ。んじゃそこで待っててくれ、さっさと買ってくるから」

 

「え?そ、それじゃあお願いします……」

 

昼食を外で買う場合は男が買いに行けと事前にシルフィに言われていたからな。

こういうことは俺よりシルフィの方がなぜか詳しい。

多分だが兄貴に何か教え込まれているんじゃないかと思う。最近ではクインも怪しい。まぁこういう時には助かるからいいけど。

 

「とりあえずハンバーガ二つ」

 

「お?なんだ坊主デートか?」

 

「そんなところ」

 

「そうかい。それならこいつはおまけだ」

 

「お!サンキュー!」

 

「かまわねぇよ。がんばって彼女を楽しませてやんな」

 

「おう」

 

いやぁ気のいいオヤジだったな。

ああいう人は好きだ。なんか人間の温かみを知れるというか。

アインハルトのところに戻って今経験したことを話すと僅かながら緊張した雰囲気が取れた。

はからずしもオヤジのおかげでオヤジの言葉が達成できたな。

 

「それで?次はなに乗る?」

 

昼食を食い終わった後にアインハルトとこの後の事について話し合う。

とりあえず観覧者には最後に乗れとシルフィに言われたので最後にする。

 

「それではあのコーヒーカップというものに乗ってみましょう」

 

「ん?あのぐるぐる回るやつか?というかここはぐるぐるする奴しかないのか?」

 

「多分違うと思いますけど……、でも多いですよね。不思議です」

 

「人間って回るのが好きなのか?」

 

自分たちでも気付いてない人間の不思議な部分の話を続けながら遊園地を回る。

それはいたって普通な、でも楽しい時間だった。

 

 

***

 

 

「結構楽しかったな」

 

「はい。特に最後の観覧車がとても高く昇っていい景色でした」

 

「ああ、あれはあまり見ない光景だったから俺も興奮した。空戦適性のあるやつ以外は見れない光景。そう考えるとこの場所はとても貴重なものだと言えるだろうな」

 

とりあえず見るものから片っ端から乗っていき最後はシルフィの言った通りに観覧車に乗った。

あの上から見下ろす感覚はしばらくは忘れられそうにない。

適当に話しながら歩き続ける。

やがてアインハルトの家が見るところまで来ていた。

 

「それじゃあここまででいいか?」

 

「はい、わざわざ送ってもらってありがとうございました」

 

「ちゃんと送って来いって言われたからな。それに夜はいろいろ危ないからな」

 

「……あの」

 

「なんだ?」

 

「今日は楽しんでもらえましたか?」

 

その言葉には少しの恐れが混じっていたように感じる。

だからって気遣えるほど俺は嘘が上手くないし、今回に関しては嘘を言う必要もないだろう。

だから今回は今俺が感じてる想いを伝えることにする。

 

「楽しかったよ。今までの生活を反省するくらいに」

 

母さんの思いつきから来たこの場所だったがなかなかいい思い出になったと思う。

少なくても今までのように修行だけに時間を使うということはなくなるだろうな。

余り詰め込みすぎてもいいことないだろうし。

もし今俺が考えていることを予測していたというならば母さんは普段は天然なのにこういったことに関しては天才的だという俺の予想を裏付ける要因になるだろう。

 

「よかった……」

 

その呟きは聞こえなかったふりをする方がいいだろう。

とりあえずアインハルトが安心したならそれでいい。

 

「まぁ反省したといったところで強引に変えるつもりはないけどな」

 

「無理してもダメですからね」

 

「俺達みたいなやつにも休みが必要ってことは今回の事で学んだからな」

 

「そうですね」

 

「俺もこれからは時々休んで外に遊びに行くことにする」

 

「?」

 

「その時は……一緒に遊んでくれるか?」

 

「……はい」

 

少し驚いて目を開いたアインハルトだったがすぐに顔に微笑をうかべて答えてくれた。

それを純粋に嬉しいと思った。

その後アインハルトと別れ家に帰っていつも通りに過ごしいつも通りに寝た。

だけどその心は何かが変わったように思えた。

 

 

 

 

今日の事で少しは変わろうと考えた俺。

俺が少しは変わろうって思うということは現在目の前にいる少女にも言えることで。

俺が変わろうと思ったその理由の中にアインハルトが関係してると知られたら彼女は何を思うのだろうか?俺には分からなかった。

だけどもし彼女が変わろうとする理由に俺の存在があれば、それは嬉しいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここまでの話は全部プロローグだ。

本当の話が始まるのはこれから五年後の事。

『聖王』と『覇王』、そして『夜王』。

三人の王が出会う所から始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにトオルとクインは途中から人ごみに巻き込まれ監視を中断することになり閉館まで遊園地内部をさまよっていた。

 

 

 




この作者に甘い展開なんてかけるはずがなかったんだ……。
特にこの主人公にそんなものを求めたことが問題だったんだ。

それにしてもこの主人公が強いという設定はいつになったら使えるのだろうか?
なんか今まで第一話以外で適当に書いた戦闘シーンしかないんだが、こいつはいつになったら戦うのだろうか。

まぁこれ以上原作の主人公を登場させないわけにはいかなと思うのでそろそろvivid本編に突っ込もうと思います。


以上早くバトル展開を書きたい作者でした。

それではまた次回。
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