魔法少女リリカルなのはvivid~四人目の王~   作:ビスマルク

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更新が遅れたことを詫びる前に言わせください。

前回後書きで言ったことをぜひ撤回させてほしいのです
こんなに拳VS拳の対戦が書きにくいとは思わなかった…。
次の戦闘からは剣とか出したいと心から思いました……。


直すべき箇所があったら言ってください。ちゃんと参考にさせて貰うので。

それでは楽しんでいってください。



第八話

いきなり姿を現したことからノーヴェさんと女は驚きを隠せないようだった。

バイザーを外した女はどこかで見たことがあるような気がするが今はどうでもいい。

確かにその眼と髪の色はクラウスと一種だろう。だからと言って『覇王』を名乗って言い訳じゃない。

『覇王』とはあいつが悩み苦しんだ末に見つけた一つの答えなのだから。

それをあいつ以外が名乗ることを俺は認めることは出来ない。

認めたくは無いが俺はどうやら自分が思っていたよりもあいつの事が好きだったらしい。

ノーヴェさんの前に出て女を睨む。

 

「おい、女」

 

「…なんですか」

 

「テメェの相手は俺がする」

 

「なっ…」

 

後ろでノーヴェさんが驚く声がする。

すぐに止めようとしたのだろう。

しかしその動きは俺が、というよりもシルフィが仕掛けておいたバインドがその行動を邪魔する。

 

「クッ…!おい、レオン!!」

 

「悪いけどこいつの相手は俺がさせて貰う。説教なら後で存分に聞いてやる。説明だってしてやる。だから今は黙ってろ」

 

首だけ動かしてノーヴェさんを鋭い眼で睨みつける。

さぁ、ここからは『ザンクト・ヒルデ魔法学院中等部一年』レオン・G・トエーラとしてではなく、

『ガルヴァ』の王、『夜王』レオン・G・トエーラとして戦わせてもらう。

 

「おい、女!お前も文句はないだろう?」

 

「…あなたと戦って強さを確かめられるというのならば」

 

「上等だ、お前の弱さをその体に叩き込んでやる」

 

「……」

 

俺の言葉が気に入らなかったのか視線を鋭くして睨んでくる。

でもその程度じゃあ『今』の俺はともかく『夜王』の俺を納得させるなんて無理だぜ?

だがこれで奴は俺と勝負するしかなくなる。

後ろにいるノーヴェさんもすでに邪魔する気がないのかバインドを破壊しても邪魔する様子はない。これで準備は整った。

 

「カイザーアーツ正統。ハイディ・E・S・イングヴァルト。『覇王』を名乗らせていただいてます」

 

「『覇王』か……。その『名』はお前が乗っていいもんじゃねぇ。それを証明する」

 

「あなたが何と言おうと私は『覇王』を名乗らせてもらいます」

 

「なら無理やりにでもその名を剥ぎ取ってやる」

 

そう言って構える俺。

『夜王流』はスピードが命だ。

そのためスピードの邪魔にならないコンパクトな構えになる。

 

「お前が『覇王』を名乗るのなら俺もそれ相応の名を名乗らせてもらう。古代ベルカ『ガルヴァ』の王、『夜王』レオン・G・トエーラ、我が親友の為にもその『名』を名乗るお前を叩き潰させてもらう!!」

 

瞬間シルフィにセットアップの命令を出すのと同時に加速して女の視界から姿を消す。

 

 

***

 

 

『覇王』を名乗った女性はレオンの数少ない友人の一人、アインハルト・ストラトスだった。

とある理由から『聖王』のクローンと『冥王』の行方を捜していた時に目を付けたのがノーヴェだった。

しかしその思惑は目の前の友人、レオンによって妨害された。

それだけならともかくレオンは探していた王の一人『夜王』を名乗って自分に戦いを挑んできた。

そのせいで動揺した彼女は一瞬だけだが動揺してしまった。

そしてその一瞬だけでレオンにとっては十分だった。

アインハルトはすぐにあたりを見渡すが消えたレオンの姿を捉えることは出来なかった。

全く動かない状態からの急加速、それを目にするのは一部のもの以外を除けば不可能だ。

 

 

『獅脚』 それが今使った『夜王流』の移動術。魔力によって一瞬だけ強化して一気にMaxスピードに入る技。現在はバリアジャケット、右腕と左腕、右足と左足、合八つの噴出機構により一瞬ならばMaxスピードを超えることが出来る。

 

 

レオンはアインハルトの側面に移動するとすぐさま拳を突き出す。それを脇を締めることで防ぐアインハルト。しかし勢いまで殺せるわけではなく後ろに後ずさりする。

 

「オラァ!!」

 

「くっ」

 

後ずさったアインハルトに追撃するためにすぐさま加速して懐に入り拳を構えるレオン。

しかしそれを突き出す前にアインハルトは握った拳をこちらの顔目掛けて突き出してきた。レオンはそれを軽く首を傾けることで避けてアインハルトの腕を両手で掴み肘に関節技をかける。

アインハルトは痛みに顔をしかめるがすぐに逆の腕で殴りつけてきた。レオンはすばやく腕から両手を離しすぐに後ろに下がることで相手の突きから逃げる。

当然アインハルトもそれを予測しておりすぐに『覇王流』独特の歩法で距離を詰めて来る。このままでは追い付かれると考えたレオンは足で地面を砕いてその一部をアインハルトに向けて蹴り飛ばす。

当然それによる攻撃を通すほどアインハルトは甘くはない。欠片をすべて弾くとすぐに前を見据えた。

 

「なっ…!?」

 

しかしそこにいるはずのレオンはどこかに消えていた。

すぐさま『獅脚』での移動を疑ったアインハルトはすぐにあたりを見渡す。

だがどこにもレオンの姿は見えない。

 

(どこに…まさか!?)

 

直感に従い視線を上に向けるとはたしてそこにはレオンが居た。

欠片を蹴り飛ばした後すぐにレオンはアインハルトの上をとる為に跳んでいた。

空中からの踵落とし、さらに回転が加わったその威力は高い。

このタイミングでは避けられないと悟ったアインハルトはすぐさま腕をクロスさせて防御する。

しかしこの攻撃の威力は先ほどの打撃と比べてかなり重い。

 

 

『牙天・滝』 『夜王流』の基本技の一つである『牙天』の発展系。ただの踵落としと違い噴出機構により空中で回転して威力をあげる技。回転数によって威力が変わる。

 

 

思わずアインハルトは膝をつくがその隙をレオンは見逃さない。

バリアジャケットに取り付けられたいる噴出機構に大量の魔力を込め今度は横に回転し始める。

そして十分な加速がついたところで放たれる蹴りの三連撃はアインハルトの膝、脇、顎を捉える。

 

 

『牙天三脚』 『夜王流』の基本技の一つである『牙天』を連続して放つ技。同じ箇所を蹴る場合もあれば全く違う場所を蹴る場合もある。こちらも回転数によって攻撃力が変わる。

 

 

顎を蹴り抜かれたアインハルトは倒れる。

その様子から戦いが終わったと判断したレオンはノーヴェの元に向かおうと背中を向ける。

しかしアインハルトはこの状態であることを恥じた。

いくら動揺して流れを掴まれたとしてもただの一撃も加えることも出来なかったのでは彼の悲願に手が届くはずもない。

それにこの戦いが終わってしまえば自分の姿は普段の姿に戻るだろう。

そしたらレオンに失望されてしまうのでは、その恐怖が体に力を戻す。

 

「レオン!まだ終わってないぞ!」

 

「あの状態から……!?」

 

彼の悲願を無駄にしたくない。

そして目の前の少年に失望されたくない。

その想いだけでアインハルトは立った。

しかし想いだけで勝てるほど戦いは甘くない。

アインハルトが立ち上がるのを見て今度こそ止めを刺そうとするレオン。

真っ直ぐ歩いてアインハルトに向かう。

そしてあと一歩までという所に来た瞬間アインハルトの仕掛けが発動される。

 

「なっ…!設置型バインドだと!?」

 

「これで…終わりです」

 

レオンはすぐさまバインドを解こうとするがそれを行動に移すよりアインハルトの方が速かった。

アインハルトは拳を高く振り上げ、そして振り下ろした。

 

「『覇王断空拳』」

 

その威力は先ほどレオンが撃ち込んだ「牙天・滝」を越えていた。

頭部に打ち込まれた衝撃に防御することも出来なかったレオンはアインハルトに寄り掛かることでようやく立っていられる状態だった。

 

「私の、勝ちです」

 

「……いや、やっぱりおれの勝ちだ」

 

口から出た勝利宣言に帰ってくるはずの無い声が聞こえアインハルトは驚く。

しかしこのままではまずいと瞬時に判断してすぐさま後ろに跳ぼうとした。が、レオンに服を掴まれ移動することが出来ない。

 

「しまっ!?」

 

「気づいても遅い!」

 

アインハルトの脇腹にそえた拳に力と魔力を込める。

次の瞬間アインハルトの体に衝撃が走る。

 

 

『牙砲・零』 魔力によって一瞬だけ強化した拳で攻撃する『夜王流・牙砲』の発展。本来相手とある程度の距離を保って放つ打撃技だが零距離から放てるように改良してある。ただ本来のものと違い主に体の内部にダメージを加えるというものに改変されてる。

 

 

ある程度手加減したとはいえ前世では自らの国を滅ぼした将軍を殺したものだ。

その威力に思わず体をくの字に曲げ、アインハルトは倒れた。

先程の様に立ち上がられても困るとはんだしたレオンは意識があるかどうか確かめる。

戦い始めた理由は『覇王』を名乗った彼女への怒りだったが今ではすっかりそれも冷めてる。

少なくても最後に喰らった『覇王断空拳』は間違いなく本物だった。それだけ分かれば十分だった。

まぁ本物と言ってもクラウスのものと比べれば天と地の差があるのだが。

そう思いながらレオンは口元の血を拭い去る。

 

次にやることはこの女の素性を調べることだろうが、それは自分の仕事ではないとレオンは今度こそノーヴェの元に歩いてく。

だが次の瞬間後ろで何かが光ったことを認識して後ろを見たレオンは絶句した。

そこに居たのはレオンの親友ともいえる少女だったのだから。

流石のレオンも驚いて口を大きく開いて硬直する。

そして冷静になった頭で現在の状況を確かめはじめる。

 

バインドで縛ってるノーヴェ

 

気絶させたアインハルト

 

地面を砕いて攻撃に利用した

 

その他にも色々と不味いような気がする。

周りを見渡せばこの戦闘、主にレオンによって破壊されたものが多い。

それに倒れてるのは自分の親友であるアインハルト、気付いていなかったとはいえ思いっきり殴ってしまった。

やばい、やばいやばいやばいやばい!

これって問題になるよなぁ!?

社会的にも、そして人道的にも問題になる。

その現実を認識したレオンは思わず呟いた。

 

「これって……絶対にまずいよなぁ……」

 

この原因は彼の性格が災いした結果だと言えるが、幸いにも彼がそのことに気付くことはなかった。

 

 

***

 

 

あの後、とにかく今日はもう遅いからという理由で家に帰らされた。

なぜ遅くなったのかと家族に言われたが俺が『夜王』であるなどの大切なこと以外はそのまま伝えた。

その後は久しぶりにやり合ったもんだからベッドに入ったらすぐに眠ってしまった。

そして次の日起きたらなぜか警防所に居た。

キングクリムゾンってわけじゃなくて普通に兄貴が運んできたようだ。なんでも昨日の事で聞きたいことがあるそうで。

まぁここがどこなのかは正直どうでもいい。問題なのは……。

 

「アインハルトになんて言うか、だよなぁ……」

 

『正直に言ってしまえばいいんじゃないですか~。毒を食わらば皿までって言うじゃないですか』

 

「お前は当事者じゃないからそんな事言えるだろうけどな、実は俺って昔の王様の生まれ変わりなんだぜ!『覇王』とはその時の親友なんだ!とかいきなり言われたら困るだろ。とういうか俺なら確実に引くね、間違いなく」

 

『確かに、どこの中二病患者だ!ってツッコミが来そうですよねぇ』

 

「それどころか誰かからこの話が流れた場合は確実に俺の交友関係は崩れるだろうな」

 

『ただでさえ少ないのに、これ以上いったら確実にボッチ確定ですね~』

 

「嫌だぞ!実習で「誰かと組んで二人組になれ」というセリフの後で余るのは!」

 

『そういった可能性もあるから笑えないですよねぇ。というかそっちの方が可能性としては高いというのが何とも……』

 

「世界はいつだってこんなはずじゃなかったことばかりだ、かぁ。確かにその通りだよなぁ」

 

しかもあの後ノーヴェさんから拳骨とかもらった。

アインハルトからの一撃が当たったところをピンポイントで。

地面を転がるくらい痛かった、とだけ言っておこう。あの人人間じゃねぇよ。

 

そんな風にどうでもいいことを考えながら歩き続けていくと目の前に問題の少女が居た。

…今思えばあの女を見た時のどこかで見た感じがしたのはアインハルトがそのまま成長したような感じだったからだな。

 

「ほれ、さっさと言って謝ってこい。こういう時はさっさと終わらせてしまうのに限るぞ」

 

「あんたは気楽でいいよな……。俺の話が終わればすぐに帰れるんだから!」

 

「なに言ってるんだ?俺はお前をここまで運んできただけだぞ。帰りは歩いてこい」

 

「より最低じゃねぇか!!」

 

「悪いが今日は休日でね。これからデートなんだよ」

 

「致命的なミスを犯して嫌われろ……!」

 

「呪いみたいな声で言うな!本当にそうなったらどうするんだ!」

 

「パーティ開いてやる」

 

「お前に兄貴を敬うって思いはないのか!?」

 

「俺が敬ってるのはただ一人、第97管理外世界の作家!西尾維〇だけだ!」

 

あの人はすごい。

無限書庫であの人の本を立ち読みした時は体に電流が走った。

特に『人〇シリーズ』とかマジ最高。

俺にとってあの人は西尾維〇ではなく西尾維神だ。

 

「はぁ、もういいからさっさと行って来い。こんなところで男と話してるよりかはそっちの方がいいだろ。緊張も解してやったんだし」

 

「……礼は言わねぇからな」

 

兄貴には本当のところ感謝してる。

こんな状況は今までなかったためどうしても緊張してしまう。

多分精神が体に引っ張られてるんだと思う。

 

「うしっ!行くか!」

 

頬を両手でたたいてアインハルトに歩いていく。

近くにノーヴェさんはいない。おそらく手続きだか何だかやってるんだろう。ちょうどいい。

そして手をあげアインハルトに挨拶をした。

 

「ヨオアインハルト。コンナトコロデキグウダナ。ショクシツハオワッタノカ?」

 

「レオンさん!?」

 

『マスター、緊張してるのは分かりましたから早く治ってくださいよ。アインハルト様がすっごい驚いちゃってるじゃないですか』

 

一度深呼吸してやり直す。

こんな状況で何も言ってこないアインハルトは本当にいい奴だと思う。

 

「よおアインハルト。こんなところで奇遇だな。職質は終わったのか?」

 

「はい…、レオンさんはどうしてここに?」

 

「あ~、ノーヴェさんから聞きたいことがあるってことで呼び出された。まぁ質問の内容はもうわかってんだけどな」

 

「そう、ですか」

 

それっきり俺らの間に言葉はなかった。

気まずい沈黙が続く。

 

《な、なぁシルフィ。ここからどうすればいいんだ》

 

《そんなこと聞くためにわざわざ苦手な念話してきたんですか?本当に家にマスターは力の使いどころが間違ってるというか…》

 

《それよりも助言を「レオンさん」ひゃい!」

 

念話で話してる途中で話しかけられたためなんか変な声が出た。

その声を聞いてアインハルトは少し噴き出しそうになったが顔を背けその強靭な表情筋で耐えていた。こういったところは分かるようになってきたんだよなぁ。

アインハルトは必死に笑うのを我慢したあと一回だけ咳払いしてこちらを向いた。

 

「レオンさん」

 

「なんだ?」

 

「『夜王』という王を知っていますか?」

 

「……ああ、知ってる。誰よりも」

 

いきなり確信か。

でもな、アインハルト。それなら俺にだって聞きたいことがあるんだぜ?

 

「じゃあお前はクラウス、『覇王』を知ってるのか?」

 

「はい」

 

「じゃあなんで『覇王』を名乗ったんだ?いくら『覇王流』を使うからと言ってあんな大層な名前は女が名乗るようなもんじゃないだろ?それにはっきり言っちまえば『覇王流』なんて古臭いものを使ってるところからしてわかんねぇ」

 

「『覇王流(カイザーアーツ)』は私の全てなんです。二度と古臭いと言わないでください」

 

「じゃあなんでお前が『覇王流』にこだわってるのか教えてくれ」

 

「……分かりました。その代りレオンさんは」

 

「なんで『夜王』を名乗って『夜王流』を使ったのかか?お前が俺の質問に答えてくれるなら教えてもいいぞ」

 

そこでアインハルトは少し躊躇いがちにおずおずと頷いた。

顔がブスッとしてるのはきっと不満なところがあるからだろうな。

 

「レオンさんは『覇王』クラウスについてどれくらい知ってますか?」

 

「俺が知ってることは。…そうだな、あいつにはまず二人の王の友人が居た。『聖王』と『夜王』。そのうちの一人『夜王』は戦乱時代に不意打ちで死んじまって『聖王』は『聖王のゆりかご』に乗ったんだっけ」

 

「そうです。かつて『覇王イングヴァルト』は『聖王オリヴィエ』に勝利することが出来なかった。『夜王』との約束を破ってしまった」

 

「……それでその無念をお前が晴らしたいって言うのか?なにも知らないお前が?」

 

「……覇王の血は歴史の中で薄れていますが、時折その血が色濃く蘇ることがあります」

 

なるほどな。

つまりアインハルトはクラウスの子孫だったってことか。

髪の色とか瞳の色とかよく考えてみたら普通じゃないよな…。

 

「碧銀の髪やこの色彩の虹彩異色。覇王の身体資質と『覇王流(カイザーアーツ)』。それらと一緒に少しの記憶もこの体は受け継いでます」

 

本当にクラウスは厄介なもんを残していきやがって……。

 

「私の中にいる「彼」の悲願なんです。天地に覇を持って和を成せる、そんな『王』であること」

 

「…………」

 

「弱かったせいで、強くなかったせいで、彼は親友を救えなかった……守れなかったから」

 

「…………」

 

「そんな数百年分の後悔が……私の中にあるんです」

 

アインハルトは涙を流しながら語る。

 

「だけど、この世界にはぶつける相手がもういない。救うべき相手も、守るべき国も世界も……!」

 

お前はいつだってそうだったよな、クラウス。

背負わなくていいことも背負って。

言っただろうが、俺の死をお前が背負う必要はないって。

約束だって、俺が勝手に死んだんだからお前のせいじゃあるまいし。

オリヴィエのことだって、あいつが一度でも決めたことを俺達が止められたことがあったか?

あいつが決めたことを曲げるなんて無かったんだからそこまで気にすんな。

 

だけど、そうだな。

お前がそういう風にしか生きられなかったから俺はお前の友達になったんだっけ。

いつも尻拭いとかさせちまったから、今度は俺の番だよな?

 

椅子から立ち上がってアインハルトの目の前に移動してその頭に手を乗せる。

彼女はその涙で濡れた目で俺を見る。

こいつがこうなった原因は俺にもあるし、何より友達だからな。

 

「ぶつける相手なら、ここにいるだろ?」

 

「え……?」

 

「俺は『夜王』の生まれ変わりだ。お前以上にアイツの、クラウスの事を知ってると思ってる。今の話を聞けばあいつがどんなふうに生きて死んでったのかは大体分かった」

 

「レ、オン、さん……?」

 

「我が友ながら何年も何年もそんな思いを残すとは思わなかった。クラウスの馬鹿には俺の死は気にすんなとか言っておいたはずなんだがな。まぁそれでも気にするところがアイツらしいが」

 

「……」

 

「俺は約束は守る男だぞ?かなり遅くなっちまったが絶対に約束は守る」

 

「……」

 

「死んだときの約束、「いつか決着をつける」。その約束を守るために俺は今生きてるんだろうな」

 

「それ、じゃあ……」

 

「それだけじゃあ不安ならお前とも約束してやる。お前がもっと強くなった時、決着をつけるためにお前と戦ってやる。絶対にクラウスの、お前の無念を払ってやるよ」

 

こんな無責任なことを言っていいのかはわからない。

多分いけないことなんだろう。

だけど今、親友を、目の前の少女の涙を止められるなら構わない。

俺はアインハルトを抱きしめる。

 

「きっとあいつだって、自分の記憶で誰かが悲しむのを見たいと思ってない。あいつの無念を晴らしたいって想いは持ったままでいい。だけど、お前はクラウスじゃなくアインハルトだろ?ザンクト・ヒルデ魔法学院中等部一年で、クインの友人で、俺の親友の」

 

「レオン、さん……!」

 

「お前はお前にしかなれない。だからもう『覇王流』が自分の全てとかいうな。次に言ったら許さねぇからな」

 

「はい……」

 

「それじゃあ今だけは泣いてろ。泣きやむまでずっとそばに居てやるから」

 

「あり、がとう、ございます……!」

 

それからアインハルトが泣き止むまでずっとそのままだった。

でも、その時の涙は最初流してたものよりずっと綺麗だ思った。

 

 




原作以上にアインハルトさんをFU☆RU☆BO☆KKOな回でした
正直書いてる途中でもどっちが主人公が分からなってきました…。
顎を蹴り抜かれて倒れこむが頑張って立つ少女とそれを見て今度こそ止めを刺そうとする少年…。

このお話がこうなった原因はきっと前に読んだ「修〇の門」のせいなんだ!
あの熱い物語を読んだせいなんだ!
だからボクは悪くない!


すみませんでした。言ってみたかっただけです。
とにかく!このお話の主人公がレオン君だという事を忘れないでください!
いくら彼が変装してるとはいえ友人をぶん殴ったり蹴ったりしてるのも、大人の女性相手にバインドかけたりしてるのも!彼の信じてるものの為なんです!
決して、決して彼の性格が悪いとかそういう理由じゃありませんから!!
それではまた次回(ダッシュして逃げる)!
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