やっぱりダンデライオンは兄弟をどう呼ぶかが難しいのと、どうしても登場の少ないキャラが出てしまいますね。私の作品では輝の姉上呼びが誰を指しているのかわかりづらいため、輝の出番が少ないのと、茜がなかなか少ないですね。あと男連中か。みんな平均的に出したいんだけどなぁ……
葵の能力はこれからどうするか決める予定です!
本当に趣味で書いております。かなり読みづらいと思いますし、設定や呼び方がかなり違ったりと色々あると思いますが、私と一緒で趣味で軽く読んでいただけるとありがたいです。
「………きて、帯。朝。」
栞ねぇの声で目を開ける。今日はあの生放送の翌日、休日だ。
「おはよ、栞ねぇ。」
ぐぎゅるぅぅぅ……
「腹減った。朝飯食いに行こう。」
「うん!」
リビングに入ると、もうみんな、席についていた。
「みんな、おはよう。」
母さんがこちらに近づいてくる。俺たちの前に膝をついてかがみ、抱きしめる。
「二人とも、おはよう。朝ご飯食べよ!」
俺たちを離して、席に誘導する。
「二人とも、おはよう。」
葵を筆頭に、みんなに挨拶され、朝食が始まる。いつもながら賑やかに進む朝食に奏が爆弾を落とす。
「あ、そうだ帯。今日ちょっと付き合ってよね。」
「あ?なんでだよ?」
「あんた、昨日言ったでしょ、なんでも言うこと聞くって。」
「あ、それ私も言われたよ!」
茜まで乗ってくる。
「それ、僕も言われたね。」
「あ、栞も言われた。」
「え、栞ねぇには言ってな……分身のやろうか。……」
合計で四人か……
「えぇ~茜ちゃん達だけずるいよぅ!」
「光は助けられただけだろ……」
「でも、私もたまには帯と遊びたいなぁ。」
葵の一言でみんなが俺の方を一斉に見る。
「………今日、どっか行くか?」
「やったー!!帯がでれたぁ!!」
「あぁもう!光うるさい!!いいから!行くんなら早く準備するぞ!!」
「帯!僕は遊園地に行きたい!」
輝が目をキラキラさせながら俺の方を見る。俺は小学生以下の輝と栞ねぇには弱い。
「なら遊園地に行くか。九時には出るぞ。みんなも早く準備しろよ。」
朝ご飯を食べ終わって、部屋に入ると、後ろから声がかかる、
「ねぇ、帯。」
「なんだよ、栞ねぇ。」
「ほんとに、よかったの?」
「なにが?」
「疲れてないの?」
「大丈夫だよ。みんなには迷惑かけたしね。」
「そ。」
栞ねぇが頭を撫でてくれる。
「ありがと、栞ねぇ。あ、能力貸してくれない?」
頷いてくれる栞ねぇに触れ、能力を借りる。
「おい、鏡。ちょっといいか。」
《あら、あなたから話しかけるなんて、珍しいわね。何かしら》
「服を見繕ってくれ。」
《いいわよ、棚の二段目の黒いパンツと三段目の白いカッターを合わせて、クローゼットのカーディガンを着なさい。それで少しは男らしく見えるわよ。そんな顔でもね。》
「そんな顔なんて言うなよ。これでも気にしてるんだからな。」
《姉に似てかわいい顔してるし、身長だって姉と一緒なのに男なんてもったいないわね。》
俺の顔は栞ねぇにそっくりだ。それはもう区別がつかないくらいに。違うのは髪型だけだ。
「やめてくれ。男として情けないんだから。」
「帯は栞と一緒は嫌?」
「そうじゃないけど。まぁ、今更気にしてないよ。」
「そっか、栞は嬉しいよ。」
「そっか。早く栞ねぇも準備しな。」
そう言い残して部屋を出る。
「帯。」
出るとすぐに奏に捕まった。
「なんだよ奏。」
「あんた、今日は私と寝なさい。」
「はぁ?なんでだよ。」
「いうこと聞くんでしょ。」
「いいけど、栞ねぇはどうするんだよ。」
「それは母さんにでも頼むわよ。まあ、聞かないと今回あんたが使ったお金請求するわよ。」
「う………わかったよ。」
しぶしぶ了承する。
「それじゃあ、後でね。」
奏が自分の部屋に向かう。俺はその後ろ姿から得体の知れないものを感じた。
「んじゃ、出発するか。」
「その前に、お姉ちゃん達に言うことがあるんじゃないかな?帯?」
「ん?あぁ、似合ってるよ岬。」
「心がこもってないなぁ…ほら遥はどう?」
「あ、あぁ、似合ってるよ。岬。」
「はい!似合ってますよ!姉上!」
「うむ、似合っているぞ。」
「いや、修ちゃんには聞いてないから。輝、遥、ありがと!」
「おい、俺には聞いてないってどういう事だ。」
「そのまんまの意味ですよーっだ!あれ?茜姉は?」
そういや茜の姿が見えないな…
「あぁ、茜ならそこだ。」
修が指さしたのは葵だった。
「え、どういう……あっ!」
岬が葵の後ろに回り込むと驚きの声を上げる。
「うぅ……なんで修ちゃんの能力使わないの……電車で移動なんて無理だよ……」
そこには泣いてる茜がいた。
「そういう能力の使い方は人間を駄目にするからだ。」
「そうだよ、茜。みんなで行ったら楽しいよ、ね?」
葵が頑張って説得しているようだが、茜がテコでも動かない。
「しゃーないな。輝、能力貸してくれよ。」
有無を言わさず輝に触れ、能力を借り、茜の体をお姫様抱っこした。
「ちょっと!帯!?離してよー」
「うるさいな、このまま街歩くのと自分で歩くのどっちがいいんだよ。」
「歩く!歩くから!降ろして!」
茜を下ろすと、今度は俺が茜に持ち上げられた。
「おい、茜!どういうつもりだ!」
「帯を持ちながら歩くの!そうすれば歩いてあげる!」
今、俺は輝の能力を持っているので簡単に引きはがせるがそうすれば少なからず茜を傷つけるので仕方なく従った。
「分かった。ならこのまま出るぞ。」
「え、いいんだ!」
光が驚きの声を上げた。
「まあ、仕方ないんじゃねぇの。」
「帯がまたでれた!折りたたみ傘持っていこ!」
「光ぃ!うるさい!!」
なんて言いながら俺達は家を出た。
ホームにつくと俺は茜の手から開放された。
「お疲れ様。帯、ありがとね。茜のために。」
お茶を差し出してくる葵。
「あぁ、葵ありがと。まあ、仕方ねぇよ。今は奏が盾してるし、しばらくはお役御免だろ。」
「うん、そうだね。」
「帯、帯、見てこれ!」
「なんだよ、栞ねぇ。ってそれ……」
「うん!そう!引っ張ると暖まるお弁当!修お兄様が買ってくれたの!」
「可愛い妹のためだ。」
「マジか!修!俺にも買ってくれ!!」
「ふふふ。」
「ん?なんだよ葵。」
「うんん、やっぱり帯はまだ子供だなぁって。」
「なんだよそれ。ってそれより修!早くいくぞ!電車来ちまう!」
「あ、おい!待てよ帯!」
「あ、兄上!僕もついていきます!」
「ちょっと!私も行く!はるくんもいこ!」
「光!引っ張らないで!!」
大所帯になってきたな。修の財布、大丈夫かな。
電車に乗り込み、席は四人席を二つ確保できた。この場合、誰かが俺と栞ねぇを膝に乗せることになる。
「帯、こっち座りなさいよ。」
奏が誘ってくれる。俺は素直にそれに従い、奏の膝に座る。栞は向こうの座席にいる修の膝に座ったみたいだ。
「奏、弁当食う?」
「ん?なんで湯気でてるの?」
「最新の弁当!」
「ならせっかくだし、一口もらうわね。」
箸を受け取り、自分の口に運ぶ。
「あ、美味しい。ん、ありがとね。」
箸を受け取り、自分も食べ始める。
「お、ほんとだ。うめぇ。修サンキュー。」
向こうの座席の修に礼を言う。
「ん?あぁ、気にすんな。それよりこぼすなよ。」
「わかってるよ。」
そこで、葵の手が俺の頬に伸ばされる。
「こぼさないのはいいけど、ついてるよ。」
「あぁ、葵ありがと。」
「ねぇ、帯。私にも一口頂戴?」
「ん、あーん。」
「え、あ、あーん。」
「どう?」
「うん!美味しいね。」
「だろー」
「あーー!あたしも!!」
「光は自分のあるじゃん。」
「そうだけどぉ!」
「しゃーない。おら、口開けろ。」
「はーい。んぐっ」
「奏姉さん、帯、重くない?変わろうか?」
「大丈夫よ、遥。こういうの、最近なかったしね。」
言いながら、俺を抱きしめてくる奏。
「奏、苦しい。」
「男の子なんだから我慢しなさい。」
「か、奏。ほどほどにね。」
「カナちゃんはほんと、帯好きだね。」
「す、好きじゃないわよ!」
「ねぇ、はるくん!あたしも帯みたいにできる?」
「うん?出来るだろうけど……」
「やった!お邪魔します!!」
光が遥の膝に座る。
「なんか、はるくんに甘えるのって新鮮だなぁ。普段は岬ちゃんがいるし。」
「光!どういう意味!?」
「そのまんまの意味だよ!」
「まあまあ。岬、光、落ち着いて。遥も困ってるから。」
「栞、岬を任せた。」
修が能力で岬の膝に乗せる。
「岬お姉様、ケンカしちゃだめ!」
「う……ケンカじゃなくてね……」
「だめ………」
「ごめんねー!しおりぃ!」
岬が存分に栞をもふる。
「なあ、奏。帯貸してくんない?」
いつの間にか隣に移動してた修が奏に耳打ちしている。
「なんでよ、嫌よ。」
「頼む。輝渡すから。」
「なんでよ……」
「茜が軽く死んでる。」
ちらりと三人で茜の方を見ると、確かに視線に耐えきれずに、灰になっていた。
「頼む!」
「はぁ、仕方ないわね……輝、こっち来なさい。」
「はい!姉上!」
「んじゃ帯、茜を頼んだ。」
修の能力で、先ほどの修の座っていた席。茜の横に移動する。
「茜~、大丈夫か?」
「………」
返事がないただの屍のようだ。
「仕方がない……栞ねぇ、いつものだ。」
「わかった。」
岬の膝から降り、茜の横に移動する。
「茜お姉様、元気の出るおまじない。」
栞ねぇが、茜の頬に軽くキスをする。そしてすぐに俺と場所を交代する。
「茜、元気出せ。」
俺も栞ねぇと同じようにキスをする。
「二人とも、ありがとう!」
俺と栞ねぇを同時に抱き、強く抱きしめる。
「茜、痛い。」
「茜姉、痛そうだよ、それと片方貸して。」
と言い、岬が俺を茜から強奪する。
「あぁーーー、帯ーーー!!」
「帯はいつも大変だね。せめて私の膝でくらいゆっくりしてね。」
「ん、大変なつもりはないけど……ありがとな、岬。」
「いえいえ、どういたしまして。」
そのまま、頭を撫でてくれる、岬の膝で俺は眠った。
「ついたよ、帯。」
「ん……遥?悪い、今降りる。」
「まだ入園までまだあるし、もう少し乗ってなよ。」
「え、でも、もやしっ子におぶらせるのは流石に悪い。」
「うるさいな!!これくらい、させてくれよ。なんなら、昨日の命令権使うからさ。」
「どうしたんだ?遥らしくもない。」
「……昨日、帯は僕たちを助けてくれたからね。そのお礼と。たまにはお兄ちゃんらしいとこ見せないと、岬に負けそうだからね。」
「ふーん、そっか。ならお言葉に甘えて。……そういえばみんなは?」
「違う列にいるよ。多分まだ後ろの方じゃないかな。」
「遥、能力使ったな……」
「ばれたか。ほんとは係員さんが僕たちだけ優遇して通してくれようとしたんだけどね。みんなで断ったよ。」
「はは、そらそうだ。あ、でも乗り物の優待券だけもらっとけばよかったな。あれないと、あんまり遊べないし。」
「あぁ、それは奏姉さんが人数分もらってたよ。」
「さすが、ちゃっかりしてるな。」
「ほんとにね。」
なんて言ってる間に俺たちはゲートをくぐった。
「遥、そこのベンチに座ろうぜ。」
「あぁ、ここでみんなを待っていようか。」
数分後、みんなが集合した。
「あ、帯起きたんだ。おはよう。」
「あぁ、岬。さっきはありがとな。」
「気にしないでいいよ。帯はもっと私たちに甘えなさーい。」
「そうだぞ、帯。輝がお兄ちゃん面したくてうずうずしてるからな。」
「あ、兄上!」
「あ、あたし!あたしにも甘えてよね!」
「光と輝はそんなに歳が離れてないしな、上って感じじゃないんだよ。」
目に見えてしょげる二人を見て、栞ねぇからじと目で見られる。
「ま、まあたまには、その、甘えるよ。」
目に見えて明るくなる二人。
「ふふ、ほんとに帯は大人っぽいなぁ。」
「葵、茜は?」
「茜はね、ちょっと厳しいかな、この人ごみだから……」
葵の視線の先を見ると奏に隠れてる茜の姿があった。
「ちょっと茜、くっつきすぎよ。」
「だってカナちゃん!人がいっぱいだよ!」
「ねぇ、帯。茜のこと、何とかできない?うっとうしくてたまらないんだけど。」
「奏、そんなこと頼まれてもな、出来ない……こともないか。」
「ほんと!?お願い帯!」
「んじゃ、奏、能力借りるな。」
奏の能力を借り、伊達メガネを生成する。
「茜、これはジャミンググラスって言ってな。掛けると周りから個人を特定されなくなる眼鏡だ。俺たち家族以外にはお前は別人に見える。」
「え!ほんと!?」
「あぁ、ほんとだ。なんなら眼鏡をかけてその辺にいる人に聞いてみろ。」
「う、うん。」
眼鏡をかけ周りに確かめに行く間に奏の能力でスケッチブックとペンを作って、カンペを用意し、茜が聞くたびに相手に見せる。
「ほんとだ!全然気づかれないよ!ありがとう、帯!」
「いや、俺もみんなで楽しめるからよかったよ。」
奏と修、岬、遥、光は笑いをこらえるのに必死でほかの三人はなんだか微妙な顔をしてた。
「みんな!なにから回るー?」
元気を取り戻した茜に連れられるようにして、俺たちは遊園地を回りだした。
「みんな、なに乗りたい?」
「はいはいはーい!あたしジェットコースター!」
「それじゃあ、輝と栞と帯が乗れないでしょう?身長的に。」
「ん?そうでもないけど?」
「え、無理だよね……」
「光の能力を俺が使えば行ける。」
「「却下。」」
葵と奏に反対された。
「えぇ~でもあたし乗りたいぃ~」
「はぁ、なら光、俺と行くか。」
「修ちゃんか~まあいいか。茜ちゃんもいこ!」
「うん、いいよ。」
「ねぇ遥!輝!向こうに楽しそうなやつがあるよ!いこうよ!」
「え、ちょっと待てよ岬!迷子になるよ!」
「姉上!待ってください!」
「それじゃあ、私たち四人はここで待っとくから。終わったら来てね!」
葵の一言に遥と修は頷くと、それぞれ場所に向かっていった。
「私たちはどうしようか。」
「うーん。そうね……」
「栞、あやとりしたい。」
「一緒にしよっか!奏、頼める?」
「はぁ、仕方ないわね……」
そう言って、奏は輪上の毛糸を生成し、栞ねぇに渡した。
「ありがとう、奏お姉様!」
そう言って、栞ねぇと葵はあやとりで遊びは始めた。
「ねぇ、私たちはどうする?」
「ん?とりあえず、膝からおろしてくれ。」
「嫌よ。」
「なんでだよ……」
「いいじゃない。たまには。」
「はいはい。」
あたりを見渡すと、ある一点に人だかりができていた。
「なぁ、奏。」
「なによ。」
「あれ、見てこようぜ。」
「あそこ?いいわよ。」
葵に声をかけてから、人だかりに向かうと、そこでは
『さあ!始まりました!!第七回フリーランニング大会!!!挑戦者はこちらの受付にどうぞ!!』
なるものがあった。
「奏、これ「駄目よ。」
言う前に断られた。
「なんでだよ!!」
「危ないからよ!!あんたまだ4歳なのよ!?」
「光の能力使う!!」
「服はどうするのよ!」
「奏に作ってもらう!!」
「嫌よ!!」
「お願い!!!」
「駄目!!」
「お願い!!!!」
「駄目!!!」
と、交渉が平行線へ向かっていたその時、救世主が現れた。
「いいんじゃないか?父さんも帯が走ってるとこ見たいぞ。」
父さんと母さんと修がそこにいた。
「父さん!?なんでいるんだよ!」
「あぁ、仕事の休憩時間に修を呼んで飛ばしてもらった。」
「ほんと、総ちゃんったら相当わがまま言ってここまで来たのよ?」
「まあまあ、五月さん。いいじゃないですか、面白いもの見れそうだし。」
「ねぇ、パパ。本気で言ってるの?私怒るわよ?」
「あぁ、本気だともさ。なぁ修、楽しそうだろ?」
「修ちゃん?」
「う……ま、まあ楽しそうではあるよな!帯もやりたそうだし。」
「もし、帯が怪我したら、二人とも三か月口きかないから。修ちゃんやるんなら早くみんなをここに連れて来て。」
「マジで!?やっていいの!?よっしゃ!」
「でも無理したら駄目よ。」
「わかってるよ母さん!!」
『さあ、間もなく開始時刻となります。選手の皆さん準備はいいですか?それではもう一度コースを説明します!スタート地点はここ入門ゲートから始まり、奥の方にある観覧車がゴールになります。なお、どのようなコースを通っていただいてもかまいません。しかし、普通に走るだけではゴールできないように障害物などが設置されているのでご注意下さい。』
「へー、よく考えられてるな。屋根を走るもよし、地面を走って障害物を避けていくもよし、か。」
とりあえず、家族がみんな見てるからな負けるわけにはいかねえ。
『それでは、カウントダウンを開始します、10、9、8,7,6,5、4,3,2、1 ……GO!!!』
スタートと共にランナー20人が一斉に走りだす。まずは普通に地面を走って、スピードに乗る。最初に見えた障害物はハードルだった。これを簡単に飛んでいく。ハードルを越えた先には下りの階段があった。これを三角飛びで飛び越えて受け身を取る。次は上りの階段が見えたので石畳の壁を利用して勢いで上りきる。そして、走り続けると急カーブがあった。確かここからはカーブが多く、地面を走っているとスピードが落ちていくと判断し、カーブを曲がらず勢いを利用して、壁を上り屋根の上に立つ。面倒なカーブを屋根と屋根を渡ることで省略し、突っ切る。そして屋根が途切れるところで、地面に飛び降りてしっかりと受け身を取って残りの直線を全力で走りきる。
『ゴーーーール!!19番櫻田帯選手、二位以下にかなりの差をつけ、圧倒的な勝利です!!!』
「帯ーーー!」
表彰が終わり、みんなのところに向かうと奏が飛びついてきた。
「ぐはっ!か、奏痛い。」
「怪我なかった!?大丈夫!?」
「ない!ないから離せー!」
奏から開放されても、他の兄弟が開放してくれなかった。
「おー、帯、お前ほんとにすごいな。」
「ほんとに、帯は凄いね。僕にもその才能分けて欲しいよ……」
「僕も帯に負けないように、がんばらなきゃ!」
「帯!なんでこんなことしたの!?一歩間違えたら怪我しちゃうんだよ!?」
「いいじゃん茜ちゃん!怪我なかったんだし!」
「そういう問題じゃないでしょ、光。帯はまだ5歳なんだよ?!」
「大丈夫だって!今は18歳くらいの身体なんだし!」
「でも!」
「ねぇ、洋服さん。帯、怪我ない?」
「栞ねぇ、服に確認しなくても大丈夫だから!」
「分身たん!帯の体を調べるわよ!」
「岬やめろ!おい!ベル!お前は怠惰だろ!こういう時だけ働くな!シャウラはへんなとこ触るな!」
「帯。」
うるさい喧騒の中、一際低い声で葵に呼ばれた。
「な、なんでしょうか。葵お姉さま……」
「なんで、こんなことしたの?」
「い、いや、その、なんとなく……」
「なんとなくで、怪我したらどうするの?」
「そ、それは……」
「もし、怪我なんてしたら、私、泣くからね……」
「怪我したらってかもう泣きそうじゃん。」
今にも泣きそうな顔の葵を抱きしめる。今は18歳の体なので葵より身長も高く。ちょうどいい感じだ。
「葵、ごめんな。」
「ねぇ帯。」
葵の声が耳元で聞こえる。
【全ての能力を解きなさい。】
その声を聞いた途端、俺の体は元に戻り、葵に抱かれる。
「帯のくせに、生意気だよ。」
「あ、葵……服、だぼだぼ……」
葵の本当の能力の存在を知っている俺以外は、何が起こったのか分かっていない顔だった。
「それじゃあみんな!ご飯食べよっか!帯の優勝景品もあるし!」
五月の声でみんなが我に返り、五月の手の中にある景品を見る。
「景品って……商品券だったのか。」
「今日はこれで食べ放題でも行きましょう!」
「あれ?パパは戻らなくて大丈夫なの?」
「あぁ、お昼を食べてから戻るよ。」
「とりあえず、帯は服着替えに行くぞー。」
「あ、おう!修よろしく!」
「先に向かってるから現地集合ね!」
「おう、了解!ほら帯、捕まれ。」
修に捕まった瞬間には更衣室に移動してた。
「やっぱ便利な能力だな。」
「おーまあな。早く着替えろよー。」
「はいはい!」
「そうだ。能力って言えば、葵姉さん、さっきのなんだ?」
修の直球の質問に少し驚きながらも慌てずに答える。
「さっきのってなんだ?」
「さっき、お前に何かを言った途端能力が解除されただろ。葵姉さんのいうこと聞くなんてお前らしくないからな。」
「いや、普通に解いただけだよ。怖い声だったからな。」
「そうか……そういや、お前って葵姉さんの能力だけはコピーしたことないよな。」
鋭いやつだな……
「そんなことないぞ?ただ、俺には必要なかっただけだよ。一時間しか使えないし、その間に覚えたことは持続されなかったし。俺は普通に修より勉強出来るしな。」
「それは間違いない。」
「いや、認めるなよ。兄貴なんだから……」
「事実は事実だからな!」
「開き直るな!……終わったぞ。」
「お、なら行くか!」
修に捕まると、また一瞬で店の前まで移動する。
「みんなは……っと、もう中みたいだ。」
「マジか、なら行こうぜ。」
中に入ると、岬の分身たんのブブが待っていてくれた。
「ブブ?珍しいな。どうした?」
「……食べ放題、と聞いて。」
「あぁ、暴食だったな、そういや。」
「……早く、お腹空いた。」
「はいはい。」
ブブについて行き、奥に進む。大人数の人が入れるよう作られたであろう座敷にみんないた。
「あ、帯。こっちなの。」
「わかった。」
栞ねぇと葵に挟まれる形で座る。修も座ったようで、みんなが静かに座る。
「うむ、みんな座ったな。それでは店員さんを呼ぼうか。」
父さんが手元のボタンを押し、店員さんを呼ぶ。
「ぜぇぜぇ、ご、ご、ご、ご注文はいかがなさいますか!!」
緊張し過ぎだろう。
「食べ放題を人数分、子供4人と大人9人。あと人数分のドリンクバーをお願いします。」
「か、か、か、かしこまりました!それではこ、こ、これから90分間の食べ放題です!お皿などはご自由にお、お使いください。」
「ありがとうございます。それと今日はお忍びなのでそんなに緊張しなくてもいいですよ。」
「は、はい!り、了解です!」
絶対分かってないな。
「あはは、それじゃあみんな。いただきます!」
それにみんなで復唱し、各々料理を取りに行く。
「栞ねぇ、俺達も行こうぜ!」
「うん!」
「帯、私も行っていい?」
「葵も?」
「だめ…かな?」
「いや、いいけど。」
「それじゃあ行こっか。」
葵に手をつながれ、歩き出す。もう一方の手には栞ねぇの手が握られていた。
「帯、帯、美味しそう!」
「そうだな!旨そう!何から食う!?」
「お腹いっぱいにしすぎちゃダメよ。このあとも回るんだから。」
「「はーい!」」
自由に見て回るが、色々ありすぎて栞ねぇと悩む。
「いっそブブみたいに全部食べれたらな……」
「帯、あれは無理。」
「そだよな……っそうだ!栞ねぇ!能力貸して!」
「?何に使うのか知らないけどいいよ。」
「サンキュ!」
栞ねぇに触れて能力を借り、トングに話しかける。
「なあなあ!どれが美味しい?」
《んー、そうねぇ。ここにあるのは全部美味しいけど……あなた達の歳の子はみんなあの、オムレツとチャーハンは取るわね。あと、ハンバーグとエビフライ。でも、ちゃんと野菜も食べなさい。ポテトサラダとかも美味しいわよ!》
「そっか!ありがと!だってさ、栞ねぇ!」
「うん!」
「二人とも、取れないのは取ってあげるから。いつでも言ってね。」
「葵お姉さま!あれとって!」
「あ!ブブ!ブブ!あれとってくれ!」
「……これ?」
「そう!って量多いよ!考えろ!!」
「……帯坊、難しい。というか、食べないと、大きくなれないよ。」
「いいんだよ!大きくなれなくて!」
「……そうなんだ。まぁ、残したらブブが食べるからいいや。」
「なら、近くに来てくれよ!」
「……うん、栞の横座っとく。」
「ってかそれ、一人で食べるのか?」
ブブの手にはてんこ盛りに盛られた皿が、何皿もある。
「……うん。あげないよ?」
「いらねぇよ。ほら、一皿持ってやるから渡せ。」
「……ありがと、帯坊。ほんとに今日は優しいね。」
「今日はってのはいらねぇよ。」
「……ふふ、そうだね。帯坊はみんなのこといつも考えてるもんね。」
「……うっせぇ。」
席に戻ると、すでに葵と栞ねぇは座っていた。
「……栞、隣いい?」
「ブブお姉様?うん、いいよ。」
「……栞、ありがと。」
「お姉ちゃん、飲み物烏龍茶でよかった?ってブブ!こんなとこにいた!」
「……見つかった。」
「もう!探したんだよ!?早く戻って!」
「……いや。」
「なんでよ!」
「岬、待ってくれ。ブブは俺にとって必要なんだ。」
「帯?どういう意味?」
「いや、俺が食えない分、食べてもらうんだよ。」
「あぁ、そういうこと!ならうちのブブ、好きなだけ使ってよ!」
「あぁ、ありがとな、岬。」
岬が遥のところに戻る。
「……帯坊、ありがと。」
「気にすんな。岬はこういうのは断れないからな。」
「……そう、それじゃあ、食べようか。」
「おう、って早!もう一皿終わりかよ。」
「はっ!美味しい!」
「久しぶりにそんなにはきはきしたブブ見たよ……」
俺も食べ始める。
「お、ほんとにうまいな。ってかブブ、口の周りベタベタだぞ。」
「……そんなの、気にしない。」
「……いや、気にしろよ。栞ねぇ、拭いてやってくれ。」
「わかった。ブブお姉様こっちむいて。」
「……ん。ありがとう、栞。」
ブブが栞ねぇの頭を撫でる。
「えへへ。」
そんな感じで食事は進んでいき、90分はあっという間に過ぎていった。
「それじゃあ、父さんと母さんは戻るな。修、頼んだ。」
「はいよ。すぐ戻ってくるから待っててくれ。」
「みんな七時までには帰るのよ。」
修がその場から消えた。と、思えばすぐに戻ってくる。
「修ちゃんの能力ってホント便利だよね。」
「でも、茜みたいに景色とかは楽しめないからな。結局帯が一番いいのかもな。」
「否定はしないでおこう。」
「次、どこ回ろうか。」
葵がパンフレットをみんなに見せる。
「あたしは何でもいいかな~」
「ねぇ、葵お姉様。お化け屋敷がいい。」
「え?栞どうして?」
「パンフレットさんのおすすめ。」
「なるほどな。なら栞ねぇの案で行きますか。」
「お、お化け屋敷ですか!!」
「あれ~?輝は怖いの?」
「こ、こ、怖くないですよ!!姉上こそ怖いのでは!?」
「あはは、もう14歳だよ?怖くないよー」
「いいから、早く歩きなよ、岬。置いてかれてるぞ。」
「はーい!遥待ってーー」
「お、置いてかないでください!!」
少し歩くとお化け屋敷前につく。
「け、結構雰囲気あるわね。」
「そ、そうだねカナちゃん……」
「ん~、さすがにこの人数は無理か……二人ペアで行くか。」
先ほど能力で作ったスケッチブックにあみだくじを書いていく。
「名前書いて好きなとこに一本線足していってくれ。」
全員に周りチーム分けが決まった。
「修くんとなんて珍しいね。」
「あー、そうだな。姉さんと二人きりなんて久しぶりだ。」
「もう、からかわないの。」
葵&修ペア
「は、遥とじゃない……」
「もう、拗ねないの、岬。」
「だってかな姉となんて……」
「失礼ね!!」
奏&岬ペア
「よろしくね、栞。」
「はい、遥お兄様。」
「……なんだか、二人ってなかなかないから緊張するね。」
「………うん。」
遥&栞ねぇペア
「ね、ねぇ輝は怖くない?手、つなごっか?」
「こ、怖くありません!!あ、姉上こそ手が必要なのでは?」
茜&輝ペア
「なんか、全体的に珍しい組み合わせになったな。」
「そうかなぁ?よろしくね、帯!!」
「おう、よろしくな、光。」
俺&光ペア
順番もこのまま入っていく。
みんな行き、俺と光の番になる。
「そろそろ行こっか。」
「そうだな、光は怖くないか?」
「え?なに?帯は怖いの?しょうがないなぁ~光お姉様が手を繋いであげよう!」
「いや、別に怖くな……あぁ、ありがとな。」
朝、甘えて欲しいって言ってたもんな。
お化け屋敷に入ると急激に気温が下がった気がした。
「へぇ~ここは和風なんだな。ほら、日本家屋とか井戸とか墓場とか!」
「そうだね。それより帯?も、もうちょっとそっちいっていいかな?」
「え?別にいいけど……」
答えるとすぐに光が肩のぶつかる位置まで近づいてくる。
「なぁ、光。近すぎないか?」
「え!?そんなことな「うらめしやーーー!」きゃぁぁぁ!!!」
光の言葉が途中で悲鳴に変わり、俺に抱き着いてくる。
「光、お前……怖いのか?」
「そ、そんなことないよ?ちょっと驚いただけで……」
「わーーーー!!!」
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
少し大声出すと、更に光は抱き着いてくる。
「やっぱり怖いんじゃねぇか。」
「うぅ……帯のバカぁ……」
光はすでに泣きそうだった。
(そうか、光は生意気だがまだ小学生なのか。なら少しは優しくしてやるか。)
「ごめんな、光。大丈夫か?捕まって休んどけ。」
「ん、ありがと。」
光は抱きしめる力を強める。
「ごめん……お姉ちゃんらしいこと出来てないね。」
「ん?別に。光は光だからな。」
「なぁにそれ?」
「いや、普段明るい光が俺にとっては一番安心できるし、姉貴っぽいんだよ。」
「帯、またでれたぁ!」
「……うっせぇ。もう大丈夫だろ、ほら行くぞ。」
「うん!」
そのまま、手を繋ぎながら歩き出す。ゴールはまだまだだ。
「ゴールだーーーー!!」
「光、耳元でうるさい!」
「だってゴールだよ!?」
「そうだな、もうみんな待ってるだろうしな。」
ゴールを出るとみんながベンチに座って待っていた。
「あ、帯!大丈夫だった?」
「おう、俺は大丈夫だ。」
「そっか。光は?」
「大丈夫だよ!葵ちゃん達こそ大丈夫?」
「私たちは……茜と輝以外大丈夫だよ!!」
「あぁ、だろうな。」
茜と輝が修にしがみついてる姿を見れば一目瞭然だった。
「そういや遥と栞ねぇは?」
「あの二人はジュース買いに行ってるよ。」
「へぇ、またまた珍しい。」
「あの二人、出てきてから入る時みたいなぎこちない感じがなくなっててね。」
「そっか。あの二人は特に絡まなかったからな。」
「そうだね。そう考えるとお化け屋敷はいい意見だったね。」
「うん!あたしと帯ももっと仲良くなったしね!」
光が後ろから抱きついてくる。
「……やめろよ光。重い。」
「いいじゃん帯ー!」
「ほんとに仲良くなったね。というか帯が丸くなったね。」
「……丸くなってない。」
「そうだね。」
くすくすと笑う葵を無視し、岬に話しかける。
「岬と奏はどうだった?」
「別になんにもなかったわよ。」
「嘘だー!奏姉怖がってたよ!ユニコまで使って両手つないで!」
「ちょっと岬!?嘘つかないでよ!」
「嘘じゃないもん!ユニコに聞けばわかるでしょ!」
「やめて!帯!嘘だから!」
「まあ別に怖がってもいいんじゃないか?俺も怖かったし……」
「え?帯も?じ、実は私も……」
「まあ嘘なんだけどな。」
「………帯。」
「か、奏?怒るなよ。」
「帯、許さない。」
奏が近づいてくる。
「帯、今夜覚悟しときなさい。」
奏が耳元で囁く。
「お、おう……」
「そろそろ最後だけど…何に乗る?」
「はいはい!観覧車!!遥と観覧車乗りたい!!」
「岬とってのは分からないけど……僕も賛成だよ。」
「そうだね。みんなもそれでいい?」
葵の言葉にみんなが頷く。
「ペアはどうする?」
「さっきみたいにあみだでいいんじゃないか?さっき楽しかったし。」
「うん、そうだね。帯、もう一回頼める?」
「んー、はいよ。」
先程と同じようにあみだを作り、もう一度みんなに書いてもらい、チームが決まる。
「ほう、こうなるか。」
「兄さんとなんて珍しいね。」
「まあ、男の友情を深めておくか。」
修&遥ペア
「よろしくね、輝。」
「はい!姉上!」
「二人きりは珍しいわね。」
奏&輝ペア
「茜ちゃんかぁ……なんだかいつも通りに感じるぅ……」
「まあ、部屋一緒だしねぇ。」
茜&光ペア
「また遥と離れたーー!」
「よしよし、岬お姉様。」
「栞ぃ!もっと撫でぇ!」
岬&栞ペア
「これはこれは葵お姉様。光栄です。」
「もう、からかわないの!」
「はいはい、ごめんごめん。」
「修ちゃんと似たようなことして……」
俺&葵ペア
観覧車に乗り込みお互いに向かい合って座り、外を見つめる。
「……高いな。」
「……高いね。」
「今日は楽しかったか?」
「うん、楽しかったよ。」
「なら、良かったよ。」
沈黙が少しの間流れる。
「見ろよ、前の岬。まだ栞ねぇに撫でてもらってるぜ。」
「ほんとだね。」
また沈黙に戻る。次に沈黙を破ったのは葵だった。
「ねぇ、帯。」
「なんだよ。」
「ごめんね。」
「なにがだよ。」
「私、帯に能力使ったよね。だから、ごめん。」
「なんだ。そんなの気にしてねぇよ。」
「でも!……やっぱりこんな能力ダメだよ。」
逆光で葵の顔は見えないが、その声はとてもか細く、泣きそうな声だった。
「
昔、俺が能力を試している時、葵の能力だけ何も起こらなかった。そのことを疑問に思い葵に問い詰めると、父さんと母さんに呼ばれ本当のことを教えてもらい、俺は葵の能力のコピーを禁止された。
「そう。私はきっと独裁者に向いてる。だから、私は……「葵。」……」
葵の言う事を遮る。
「俺に、使ってみろよ。」
「え………?」
「葵の能力に抵抗してやる。」
「む、無理だよ。だってさっきも!」
「いいから。」
「……わかった。」
葵は空気を吸い込み、言葉を発する。
【帯、跪きなさい。】
その声を頭が認識すると、体が勝手に動き出す。跪くために体を前に倒し始める。それに対し体に全力で力を入れ、体を止めるようにするが、全く、意味がなかった。
上目で葵の方を見るが、そこに俺の知る櫻田葵はいなかった。そこにいたのは、嘲笑うような目を俺に向け、頭に王冠のようなものを被り、下衆な笑みを浮かべている、葵の姿をした全くの別人。
「誰だよ、お前。」
怒りで声が荒ぶる。体にさらに力を入れ、動きを止めさせる。
「俺の知る櫻田葵は、真面目で、賢くて、他人のことを一番に考えてて、気を配れて、笑った顔が可愛くて、家族が大好きで、優しくて、俺の自慢で、大好きな姉ちゃんだ!!」
俺は力の限り叫ぶ、葵の姿をした、なにかに思いの丈を叫ぶ。足に力を入れ、立ち上がり、なにかに向かって歩く。
「お前は違う。お前は俺の姉ちゃんじゃねぇ。俺はそんなやつの言うことなんて聞かないし、お前を認めない!」
椅子に立ち、手を伸ばし、目を合わせるため顎を持ち上げ、額と額をぶつけ、睨みつける。
「上からしかものを言わない、無理矢理人を従わせる。お前の言葉で全員が従うと思うな!」
いつの間にか葵の顔から笑みが消えている。
「お前が何度命令しようが、俺が抗ってやる、だからもう……出てくんじゃねぇ!!」
次の瞬間、押さえつけられていた力が消え、葵はいつもの葵だった。顔を真っ赤にし、目が潤んでいる。
「……帯。」
「葵、終わったぞ。」
葵を抱きしめる。
「帯、ありがとう。ありがとう!」
葵の声は震えていた。
「帯ぃ、帯ぃ!」
頭を押しつけてくる。こうしている葵は初めて見る。外を見ると観覧車はちょうどてっぺんについていた。
「葵、外見てみろよ。」
「え?」
葵が外を見、声を失う。
夕日が街を照らし、キラキラと輝いている。
「綺麗だな。」
「うん、綺麗。」
二人してその一瞬ごとに変わりゆく景色をしばらく見る。
「ねぇ、帯。」
「ん?なん「ん……」だ……」
葵の方を向いた途端、葵の顔が目の前にあった。柔らかい感触が唇に一瞬当たったと思えばすぐに葵の顔とともに離れていく。葵の顔はほんのり赤く、少し微笑んでいる。
「大好きなお姉ちゃんから大好きな弟へのお礼。ほんとにありがとうね。」
「あ、葵……今、なにを……」
「ふふ、さぁ、なんでしょうか。」
「な、な、な、なん「はい、終了でーす。お疲れ様でしたー!」で……」
観覧車の扉が開き、従業員に外に促される。外ではもうみんなが待っていた。
「帯、座ろ。」
「わかったよ。栞ねぇ。」
帰りの電車でも、八人席が取れた。そこの一席に二人で座る少し手狭だったが、気になるほどでもなかった。
「栞ねぇは今日楽しかったか?」
「うん……楽しかったよ……」
「そっか……また行こうな。」
いつまで経っても返事が帰ってこない。
「栞ねぇ?」
栞ねぇが肩にもたれかかり眠っていた。
「きっと疲れたんだよ。ちょっとだけ寝かしといてあげて。」
「いいんだけど……ってか茜、それ。」
茜の横に座っていたはずの光が茜にもたれかかって寝ていた。向こうの座席を見ると修の膝に置かれている輝も眠っていた。
「みんな、疲れてたんだな。」
「そうだね。帯は大丈夫?眠くない?」
「あぁ、朝の電車で寝てたからな。」
「そうだったね。」
みんなが寝てるので出来るだけ会話をしないでおく。すぐにあと数駅で着くことになる。
「そろそろつくし、起こそうか。」
「いや、栞ねぇはいいよ。俺がおぶる。」
「え、でも……」
「いいんだよ。」
「そうか、なら俺は輝をおぶるよ。」
「それじゃあ僕は光だね。」
「そう、みんなお願いね。」
降りる駅に着き、栞をおぶる。
「あ、奏、切符だけお願いしていいか?」
「ん?あぁ、いいわよ。」
ポケットから切符を取り出してもらい、改札を通る。
「それじゃあ家に帰るか。」
家までの帰り道、奏に話しかけられる。
「ねぇ、帯。あんた大丈夫?重くない?」
「大丈夫だよ。ちょっと疲れただけ。」
「あ、輝の能力借りればいいんじゃない?」
奏が輝を指さし提案してくれる。
「いや、寝てるから確認が取れないしいいよ。」
「あんた、相変わらずそこはこだわってるんだ。」
「そりゃそうだ。もしも、それを破ったら俺はただのへい「こら!」いって……」
「変な事言わないの。」
「わかったよ。まぁ今回はそれだけが理由じゃなくて………栞ねぇだからなんだ。」
「へ?どういうこと?」
「栞ねぇだから人の力とか借りずに自分の力で背負いたいんだ。」
急に周りが静かになる。
「みんな、どうしたんだ?」
「どうしたっていうか……ね?」
「う、うん。」
「みんな、やっぱり帯は栞には優しいなって思ってるんだと思うよ。」
「ん?そうなのか?」
「ま、まあな。」
「まぁ、どうでもいいや。」
「そろそろつくし、みんな起こしといて。」
「あぁ。わかった。栞ねぇ。起きてくれ。」
軽く背中にいる、栞ねぇを軽く揺する。
「ん……ん……」
栞ねぇが起きたようだが、寝ぼけて俺の首に強く抱き着く。
「おーきーろー!」
「ん、起きる。下ろして。」
「わかった。」
栞ねぇを下ろし、手を繋いで歩く。輝と光も起きたようだ。
少しそのまま歩くと、家の玄関につく。時間は七時半、母さんの言っていた時間を三十分オーバーしたが、怒られるか微妙だ。葵が扉を開ける。
「ただいま。」
十人で一斉に言う。母さんがリビングから顔を出して出迎えてくれる。
「おかえりなさい。さ、手を洗ってきなさい。晩御飯食べるわよ。」
怒られないようだった。全員で手を洗いに行く。さすがに一気には洗えないのでみんなが一列に並び、順に並んでいき洗った人からリビングに向かっていく。みんながいつもの席に着き終えると、ご飯を食べ始める。
「みんな、今日は楽しかったか?」
父さんが俺たちみんなに聞く。みんなが一斉に頷き、みんなが言いたいことを一斉に話し出す。父さんたちは少し困った顔をしているがちゃんと一人一人の話を聞いている。俺はみんなの話を聞いて笑い、からかい、驚く。
「帯は、何かあったのか?」
父さんが急に俺に話を振ってくる。俺は驚いて目を見開く。
「帯からはまだ聞いてなかっただろ?」
気付かれてるなんて思わなかった。みんなの目がこちらを向く。ほんとに、この家族は……顔がにやけてしまう。
「あぁ、それが…………」
俺は今日あった面白かったことや驚いたことをみんなに話した。
晩御飯が終わり、お風呂に入り、寝る準備に入る。
「あれ?帯もう寝るの?」
「おう、今日は疲れたしな。おやすみ、岬。」
「そっか。そうだ帯、今日はブブがお世話になったね。ありがとう、ブブも喜んでたよ。」
「あぁ、俺も楽しかったって伝えといてくれ。」
「うん!それじゃあおやすみー」
岬と別れて、自分の部屋に戻る。
「ちょっと帯、どこ行くの?」
「え、部屋で寝るんだけど……ってそうか、そうだったな。わかった。今から向かうよ。」
「ん。ほら、行くわよ。」
奏について行き、奏の部屋に入る。
「奏の部屋って久しぶりに入った気がするな。」
「そう?いつぶりだったかしら。」
言いながら座布団を引っ張り出し俺を座るように促す。
「それで、なんでこんなことしたんだよ。」
「そうね。単刀直入に聞くわ。姉さんの本当の能力って何?」
本当に単刀直入に聞いてきた。
「なにいってんだ?
「そんなの信じるわけないでしょ。」
「なんでだよ。」
「だってあんなのただ頭がいいだけじゃない。」
この双子は本当に鋭いな。
「理由はそれだけか?」
「まだあるわよ?あんたが姉さんの能力を一回もコピーしてないってのもあるわね。」
「それはだな。俺はあの能力を使っても全く効果がなかったんだ。普通の状態で奏くらいには頭がいいからな。」
「そう、まぁいいわ。今度姉さんに直接聞くから。」
「そうかよ、もう寝てもいいか?もう眠い。」
「そうね、ベットに入りましょうか。」
奏が先に入りスペースを開けてくれる。そこに滑り込むように入る。
「それじゃあ、おやすみ。」
「はぁ?あんたなに言ってんの?そろそろあんたの能力の副作用でしょ?」
「は?なんっっっ!!」
そこで俺の意識が朦朧とする。
「まぁ、これが目的ってのもあるんだけどね。」
「ん……奏、奏……ねぇ。奏ねぇ……」
奏の顔を見ると無性に、甘えたくなってしまう。
「ん、いいわよ帯。好きに甘えてくれて。」
「ん、ありがと、奏ねぇ。」
奏の胸に潜り込み、頭をこすりつける。
「ん……ほんとにこんな風になるんだ。栞はこんなの毎日してるのか。これは帯の頭が上がらないわけね。」
「栞ねぇ?栞ねぇはぁ?」
「今日は栞じゃなくて私なの、ごめんね。」
奏が頭を撫でてくれる。
「ん、奏ねぇも好きだからいい。」
さらに顔を強く奏の胸に押し付ける。
「……思ったより破壊力あるわね。」
「うぅん……眠い。」
「そっかぁ、眠いかぁ。それじゃあこのまま寝よっか。」
「ん、おやすみぃ……」
「ん、おやすみ。」
奏の腕の中で俺は意識を手放した。
注意 帯は転生者ですが5歳です。
精神は20過ぎてますが……
これからは書けたらすぐに投稿ではなく、朝の七時半に投稿しようと思います。登校や通勤の電車の中などで暇つぶしがてら読んでくれたら幸いです。
それでは長文ありがとうございました!
それではまた次回!!