仕事もあるのに!!
とある休日、奏がみんなを集めた。
「休日に悪いんだけど、せっかく皆揃っているからこの機会に各々所信表明してもらおうと思って。」
そう、俺たち王族の兄妹は近い将来誰かが王様にならなければいけない。それは選挙で選ばれるのだが、もちろん拒否権もあるのだろう。奏はそれをある程度把握しておきたいのだろう。
「暇だからいいよぉ~」
光もそれに同意し、兄妹みんながいつも食事しているテーブルに移動する。
「おい、奏さんや。なんで俺はあなたの膝なのでしょうか。」
「なんでって、あんたが邪魔しそうだからよ。」
「邪魔ってなんだよ……その代わりに能力貸して。」
「いいけど何創るのよって、っあ!もう創ってるし!!」
「おう、ハンドスピナーだぜ。」
「あ、いいな~帯、私にも創ってよ。」
「いいぜ、奏の金出しっいて……なんでぶつんだよぉ!」
「あんたが調子に乗るからよ。」
「それより、早くしようよ。兄さんはどうなの?」
遥が会話を止めて、話を修に振った。……ん?なんだか珍しいな。
「ん?俺か?まぁ、俺はやる気ないかな……あっても勝てないだろう。」
修がそう言った途端、遥の様子が変わった。なんだかおかしいな、なんだなんだ。
「私も、王様とか無理……恥ずかしいし。」
「私はやるよ!!だって王様になりたいもん!!」
茜、光が発言をしてから、遥の様子がまた変わった。どこか、安心したような表情を浮かべている。
「もう、みんなやる気ないわねぇ、どうせ葵姉さんも、やる気ないんでしょう?」
「あはは、まぁ……」
「なら、私もやる気ない方で。」
その一言で、遥の余裕が消えさった。なんだそういうことか。
「急にどうしたの?昨日までああんなに真剣だったのに……」
「だって有力候補がみんなやる気ないから全然張り合いがないじゃない。勝てる勝負したってしょうがないでしょう?」
そういうことか、遥はやる気ない方が多いのに賭けたのか。奏はやる気が多い方に賭けた。だから奏はやる気ない方に来た。奏がやる気がないなら、おそらく修は……
「んじゃ、俺はやる気ある方に行くわ。なんか、勝てそうな気がするし。」
ほらな、俺はどっちに行こうかな……遥につくか、奏につくかってこの体勢!
「帯はやる気あるわよね?そんな強力な個性なんだし。それにあの番組であんな啖呵切ったんだし、せ・き・に・ん、取るわよね?」
こういうことかぁ……奏からの締め付けが強くなってくる。それを見た遥が、軽く絶望の表情を浮かべている。だが、奏よ、この私を舐めるでない!!
「俺は栞ねぇと同じ方で。ほら、俺=栞ねぇ。つまり一心同体。おけ?」
それを聞いた途端、遥の表情に光が灯り横にいる栞を膝に乗せる。
「栞はどうするの?やる気なんてないよね?ね?」
栞ねぇは少し困ったところを見せて、遥の胸に頭を預けて、顔を持ち上げる。やべぇ、なんだそのかわいい仕草。遥、羨ましい。
「あのね、遥お兄さま。栞はやる気がないけど、それに帯を巻き込みたくないの。帯には帯のやりたいことをしてほしい。」
周りの空気が変わった。
「そうよね、帯っていつも私たちのことを考えてくれるものね……」
葵がそういうと本格的に俺を除いた兄妹での会議が始まる。
「そういえば、そうよね。あいつのわがままって、あんまり聞かないかも……」
「そうだよね、風邪の時もずっと私と寝てくれてたし。」
「あ、お化け屋敷の時も……迷子だった時もだ!!」
「そうだよな……そうだった。」
「そうですよね、帯はいつも正義を貫いています。」
「分身たんも、特にブブが大好きだし。」
そんな感じで話が進んでいく。なんだ、何なんだ、この空気は。
「ねぇ、帯。代表して言わせてね。」
葵が奏の代わりに俺を膝に乗せる。
「帯は、王様になりたいの?」
さぁ、困った。このパターンはどうしよう。
「俺は、別にどっちでもいいっていうのが、本音だ。」
「どっちつかずねぇ……」
「しょうがないだろ、考えたとないんだから。」
「まぁ、いいわ。どうせ私の勝っごほん……」
「あ、葵。奏と遥がなんだか賭けてるみたいなんだ。こんなに俺達をひっかきまわした理由が賭けってひどくないか?」
「奏ぇ?」
葵の表情が変わる。
「姉さん?これは遥から言い出したことなの!!」
「あなたが焚きつけたんでしょう?遥が自分からこんなこと言い出すはずがないじゃない。」
葵が奏を軽くひっぱたいた。
「もう、こんな馬鹿馬鹿しいこと終わり!解散、解散!!」
葵がみんなに解散を促す。そして、俺に向けて
「あ、帯には宿題を課します。今夜は私と寝ること。大事な話があります。」
こう言った。葵お姉様の命令は基本的に絶対なので。
「うっす。」
と答えた。
「いらっしゃい、そこに正座!」
「いきなりかよ、なんなんだよ……」
葵と向き合うような位置に正座する。
「帯は、王様になりたい?なりたくない?」
「またその話かよ。どっちか、まだ決められないんだって。」
「やっぱり、そうなんだね。わかった。今日はもう寝よっか。」
「お、おう、なんなんだよ……」
二人して、葵の布団に入る。最近能力の副作用が早くなっている気がするが、気のせいだろうか。もうすでに、意識が朦朧としてきた。
「帯、私に甘えるのに遠慮なんかいらないからね。」
「わかってる、というか、これは俺にも止められないし、意識朦朧としてるから何してるのかわかんないし、遠慮も何もないんだって……」
「そうだったね、それじゃあ、おやすみ。」
「ん。」
その途端、意識が途切れた。