※
2015〜2017年当時の射命丸文と、現時点で智霊奇伝と酔蝶華を経た射命丸文の間にはあまりにも大きな情報量の差があるため、ギャップを埋めるためにおそらくこの烏天狗の出番はかなり多くなると思います。
なんか思ってたより数倍ソリッドなキャラになりましたね。フランドールはまあ読むに耐える感じの人格で書けてたんですが、文はちょっと頭を抱えるレベルで薄い描写しかできてなかったのでこうなりました。
ぬえちょんとかあばれブン屋とかそんな興味ねぇなって方はこいしちゃんでも探しながら読み飛ばしてください。ジョジョ要素どこだよって思ってる方は次の次くらいまで耐えてください。すみません。
不運があったとすれば、まず第一に
第二に、インタビューの最初の標的となったのが偶然にも鵺と傘の二人連れという「正答の片割れ」であったこと。
そして
結果として、霧雨魔理沙一行と接触するタイミングを理性的に図っていた鵺は、射命丸の不用意な接近に発作的防衛本能を発露してしまい逃走。
逃げられれば追い、そして必ず追いつくのが射命丸文という飛翔物の性質。
かくして事態は急転直下になだれ込み、ほんのささやかなカタストロフへと向かって転がり出した。
「わざとじゃないんだけどねぇ。──仲良くしよう、伝えに行こう♪ ──」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
平安の大妖怪の疾駆は、幾度となく古都を脅かした暗黒の業風。しかし此度のそれは逃走の一心にて。
火の見櫓を飛び越えるほどに高度を上げようと、地に裾が擦れるまで下げようと、幾度路地に入ろうと、その声は鵺の
「失礼、ブンブンマルシンブンという者ですがー」
剥がせない。
「おーっとお見事な飛行テク。インメルマンターンというやつですね。さておき、少々お時間よろしいですかー」
此方は全速力に近い。知っている限りの見通しの悪い場所は全て使って撒かんとした。
「この、なんか飛んできた……なんでしょうねこれ。ゴニョゴニョは当記者への暴力行為とみてよろしいでしょうかー。お話伺いたいだけなんですけどもー。あ、お鍋と物干し竿かこれ」
不明の力も断続的にばらまき続けている。通行人にはその想像力の限界、すなわち黒っぽい猛禽の類に見えているはずだ。
「──ふぅ、ここまで一所懸命に逃げられるということは後ろめたいことがある、って感じね。誰だか分かんないけども、そろそろ報道の自由を振りかざさせていただこうかしら」
「
吐き捨て、さらに狭い路地へと滑り込む。民家の垣根を掠め、井戸小屋を潜り、縁側の柱を掴んで方向を変え、飛び越え、米屋の塀にぶつかる直前で上空へと舞い上がる。
背後に迫っていた声は、気づけば止んでいた。
(撒いたか……? いや、この程度では)
里の大半を鳥瞰するに十分な高度まで達した鵺は、その一点に留まって地上を見下ろした。
白昼といえどもヒトケのない炎天の大路。里の真ん中を貫く往来のど真ん中にただ一人、それは立って此方を見上げていた。
里贔屓の下賤な天狗、射命丸文。
無論、邂逅自体は初めてではなかった。だが、これほど不本意な形での遭遇は一度もない。菓子屋で此奴がおもむろに立ち上がり、まっすぐに此方へ向かって歩いてきた時、咄嗟に店を飛び出したのは今となっては失策であった。なぜあんな真似をしたのか自分でも判然としない。
それにしても、追いかけてきている時の口ぶりから察するに、この女は未だに標的が何であるかを把握していない。当てずっぽうの一発目に引いた当たり籤を、純粋な出歯亀根性で追ってきているのだ。
鵺は一つ唾を吐いた。自分を悔いても相手を蔑んでも仕方がない。兎にも角にも、アレに尾けられている限りはどこにも逃げ場などない。
今一度周囲を見渡す。ここは里と外部を隔てる境界にほど近い。射命丸が立っているのは大路の出口、鵺が浮かぶはそこから
「やれんことはないか。聖、毎度ながらすまんね」
これもまた独り言だ。
鵺はジリジリと里から離れるように浮遊しつつ、手にした得物を軽くひょうと振った。それを合図に、大気の呼吸が捻じ曲げられる。見る間にも陽は翳り、天上から渦を巻いて降りてきた雲の欠片たちが再度寄り集まることで、彼女の姿を覆い隠すための暗雲塊を成した。
里に落ちた影の中を、烏天狗が余裕たっぷりにヘラヘラとニヤけながら緩慢に飛来する。
「止まれ。私が上だ」
残り半町を切り、お互いの声が無理なく届く程度の距離に接した折に鵺はそう呼ばわった。
相手は、首から提げた写真機を軽く掲げた後に会釈する。
慇懃無礼。
「これほどまでに鵺的なお方に逢う機会はさほど多くありません。当方しがない物書きにございます。ぜひ少々お話と、近影をば」
「ならん。欲しくば克ってみせなさい」
「お伝えしたいこともある。と申さば、いかがでしょうか」
笑止、と鵺は一蹴する。暗雲はますます暗く影を落とし、烏天狗の装束を細霧でしとどに濡らした。
「我が正体を断じて口に出せぬような下郎と交わす言葉はこれ以上ないね。正直かなり気になるが」
「ふーむ、交渉成立ですね」
「決裂だろうよ」
今や暗雲は
自らにまつろわぬ強風に囲まれて、しかしぴくりとも揺るがぬ烏天狗はいま一度──深く会釈をする。右手に羽扇を、左手に写真機を構え。
「射命丸文。
「舐められたもんだ。ま、
鵺もまた口角を吊り上げて応え、掌中の得物を──
「……ん?」
得物が、
菓子屋を飛び出して以後、ずっと握りっぱなしだったそれの感触は──彼女が好んで使う叉槍ではなかった。より太く、平べったく、そして生暖かい。
ぬえは自らが握っていたモノを顔の前まで引き上げる。
「は?」
愕然とした。
ナマモノであった。
空色の頭髪、いじらしくもそれと同色の衣服。手首を引っ掴まれて散々里を曳き廻された結果、すっかり目を回している少女型。
「きゅ、きゅ〜……」
非常にあざとい鳴き声。
哀れにも半分以上気絶した多々良小傘が、ぬえの眼前でブランブランと揺れていた。
「???」
その折、停滞していたはずの台風の目の中にあって、一塊の大気が
射命丸文にとって、目の前の存在は未だに「謎」であり、おおよその正体は勘付いていたとはいえ、未だに蹴散らすべき暗雲以上のものは見えていない。
そう、あまりの惨事に凝固している封獣のことなど、知る由もない。
「では、まずはひと
「ちょっ、ちょっと待って」
「潔く受けられよ!」
ぬえが発した声にならない諦念と怒りの叫びは、自らが即興で編んだ光と闇の織りなす奔流に押し流されて、誰にも届くことはなかった。
後のことは、この神楽の幕間や終幕後に早口で、もしくは密やかに語られれば良いのだろう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
昼休みはとうに終わっているのにも関わらず、半数以上の学童たちが着席していない事態に痺れを切らした上白沢慧音が寺子屋を飛び出し、街路を騒がしい方へと辿り、その発生源へと辿り着いた頃にはすでに、現場はちょっとしたお祭り騒ぎに成り果てていた。
人、人、人。里の外縁、米屋と半年前新築の長屋くらいしかめぼしいモノもない場所、しかも炎天の最中にしてはあまりにも多い人出があった。
人混みに紛れている教え子どもを一匹一匹捕まえて鬼の形相で寺子屋の方角へと追い返しながら、里のハクタクは人垣の最前列へとたどり着き、ようやく上空への視界を得た。
駆けている最中にもう何が起こっているのか把握してはいたが、改めて目の前の事態に軽い憤りと大きな呆れを覚えるしかない。
「里の眼前で弾遊びなど……!」
何処のどいつであろうか。
とりあえずハクタクが小さく吐き捨てただけで周囲の男衆が身をすくめている。
今、群衆と慧音が見上げているのは見越すほどの暗雲であった。地平線に見える積乱雲と見かけ上の高さが一致する程度には高く、どす黒く、いずれ見る者すべてを飲み込まんとするかの如き威容を誇示しながらゆっくりと渦を巻いている。
それが里から二町もない距離で稲光を孕んでいるのだ。いかに里が加護のもとにあろうとも、これを見て不安や恐怖を覚えないヒトは少ないであろう。
少なくとも魔法の森の悪童や赤緑二色の各種巫女の仕業には見えない意匠の戦場。となれば上空で決闘をしているのはどこぞの馬の骨ともしれぬ狼藉者と括ってしまってよかろう。
慧音は目を閉じて意識を空へと散りばめるように委ねた。里の外縁に人知れず張られた不可視の結界、その「履歴」へ思惟を伸ばす。旧くは八雲を
スキマの業か、ずいぶん融通が利く力であり、近づいた妖怪怨霊の類が蒸発するようなことはない。しかし大事な大事な人間の里に大規模破壊をもたらそうとするような力の通過は決して許さないような、そんな結界だ。
その
つい先程まで無風であった里に、木の葉を大きく揺らす程度の風と人々のざわめきが満ちていく。その高まりをつんざいて、一つのよく通る声が慧音の耳に届く。
「先生!」
声の方を返り見上げれば、黒白の箒星──もとい、狼藉者を狩る狼藉者が群衆の上空を旋回していた。
霧雨魔理沙。当代随一の異変解決屋の姿に、群衆から控えめながらもはっきりとした歓声が上がる。その音声に負けじと半教師のハクタクは声を張り上げた。
「何者の仕業なんだ!」
「片方は知り合いだ! もう片方は判らんということしか判んない! だがその判らなさ加減に覚えはある!」
「万が一があれば始末は頼めるか!?」
「やってみる!」
怒鳴り合いに近い会話もそこそこに、魔法使いはわざわざ箒の尾に虹色の軌跡を曳いて矢のように飛び去った。群衆は今や不安を忘れて軽い喜色の興奮に色めき立ち、乱雲に挑む少女を見守る物見客と化している。
「相変わらずだな……」
慧音としては呆れて見守るばかりである。霧雨魔理沙の妖怪退治はいつだって虚勢とコケオドシの延長線上にある。本来の気質である水の上から光と炎を飾るゆえ、彼女は虹色を纏う。
実用よりも華を取る阿呆は、それでも神や化生と同じ舞台を踏む資格を持つ数少ないヒト科だ。
(そのまま──)
人気も出ようというものである。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「さて、と……」
最高速度どころか巡航速度の六割といった微温い速度で黒雲の周りを螺旋状に旋回しながら、当の霧雨魔理沙は渋い顔でとりあえず昼間でもウケそうな
(うーむ、横槍も無粋。タンカ切っといて見てるだけなのも無様。この汚い
やるしかない状況、というほどでもないのだった。文脈からいってこの雲の中で行われているのは射命丸文の「取材」である。かの天狗がシリアスに他者を害することなど考えられず、地上の慧音が案じていたような「万が一」に発展する事態は考えづらい。
そして、文の相手が魔理沙の想像通りなら──こちらもまた大妖怪と言っていい器量の持ち主。むやみに里をぶち壊すような真似はしない。
こうなると、この雲のなかに飛び込むこと自体が骨折り損でしかないのではなかろうか。命名決闘に横槍を入れる、すなわち両者の面子を潰して得られるのは……
(まあ、藪蛇ってやつよなー)
内心気は進まないが、パパラッチやよくわからんケモノの面子よりも断然自分の面子の方が大事なので魔理沙は藪へ突っ込むことにした。
「小鈴、あー、あとジョースターもいたな。私が振るえば横槍も粋、ってとこを見せてあげよう」
指先で宙に魔方陣を描き出す。
「名残惜しいが送風機としてはもうオフだ。さ、今日も頼むよー」
懐から恭しく取り出したる神器、ひんやり緋緋色金製の万能魔力火器ことミニ八卦炉の火を以てその陣を貫けば──
「えーと、なんだっけ。【なんちゃってナロースパーク】!!」
陽光よりも稲光よりもずっと輝かしい青白色のカクテルライトが暗雲の渦をつんざいて天を衝き、少女の眼前に雲の中への突破口を示す。
鏑矢のような音とともに尻上がりでぐんぐん上昇していく魔法の軌跡が人里の上空で虹色に弾けたのを満足気に見送ってから、霧雨魔理沙は箒の柄を翻して雲の中へと飛び込んでいった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「外来のお人」
僕は必死に息を整えながら低頭している。
「里の往来に速度に関する法度はないが……」
「悪かった……」
「いや、
「誰も轢いちゃいない。誓って事実だ」
「私が正面から止めなければ、この……乱痴気騒ぎの……見物客が二人は犠牲になっていたでしょう」
「……」
「稗田屋敷に仮住まう身でヒトに怪我でもさせようものなら、阿求殿にも火の粉が振りかかることになるのですよ」
そう。全くもってそう。
自分でも止められないほどの速さでこの椅子を走らせるなんて、一体数分前の僕は何を考えていたんだろうか?
何かにぶつかろうものなら僕も相手もただじゃ済まないし、第一こいつも木っ端微塵になるだろう。摩擦で指が擦り剥け、焼けるのも構わずにそんな速さでここまで来てしまった。
クソ、腕も指も腹筋も全てが痛い。汗だくで、今はこのカミシラサワという白髪の女性に叱られていて、つまり最悪だ。
でも、どうやらそれに見合うものを見物することができるかもしれない。だから後悔はしていないんだ。
目の前でなおも苦言を編んでくれている(僕のためを思ってくれているのは伝わるが、すまない)女性の肩越しに見える、あまりにも至近距離でそびえ立つ黒い雲。明らかに雷が内側で閃いている──それ以外にもときおり不思議な光が白、緑、オレンジ色とさまざまに弾けているように見えた。何かがあの中で魔法や「術」を使っている。そうとしか思えない。
「──おい、聞いているのか──」
その瞬間、カミシラサワの背後で人垣を成していた群衆からワッと歓声が上がった。僕も思わず息を呑んでいた。
暗雲の一角を掠め、削り取るように青白くまばゆい光の束が空へと伸びていた。束は──光線は、そのまま僕たちのはるか頭上を飛び越え、数瞬の後にパパパパ、と軽い破裂音と共に霧散した。
そして……とんでもないことに、光線が通り過ぎた軌道上には虹がかかっていた。
《派手な信号弾みたいなの撃つから──》
自然と笑みがこぼれていた。そうだ、彼女に違いない。あの子が戦っているんだ。
幸い、眼前のカミシラサワ女史も気が削がれたようで、一つ溜め息をついてからは僕をそれ以上追求することはなかった。
「……まあいい、もう今日はどうせ休講だ。ジョースター君でしたっけ。今、空で行われているあれは常人の手の届く領域ではない。この土地で生きていくからには、あのような危険を徹底的に畏れ、避けるべきです。霧雨の娘のように魅入られては、命がいくつあっても足りないからね」
この女性に口答えは避けるべきだと直感がささやいていた。
何にせよ、僕は黙って首肯し、大人しく目の前の戦場を見つめることしかできなかった。あの雲の中で、彼女たちはどのように魔法を、あるいは刃を交わしているのだろうか?
肘掛けに置いた自分の手を見下ろす。氷屋から逃げ去った謎の『敵』へ向けて反射的に撃ち込んだ爪は、既に元通りになっていた。僕の弾丸はそいつの動きを止めることすらできず。まるで最初から何事もなかったかのように。
無力感と憧憬のあいだを、さっき
彼女たちのように空へ届きたいなどとは言わない、せめて自分の手と足で、自分の心で。
もう一度僕は自分の手を見下ろした。完全なヒトのあるべき形とは似ても似つかない、いびつで矮小な力がそこには宿っている。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
雲の中での弾幕あそびはしかし、見上げる観客たちが思うほどには高尚な戦いではなかった。
白色に輝くレーザーが描き出す、弓兵百騎の一斉射を思わせる曲線の妙も、
「うわああああん!! 下ろしてぇぇ!!」
相対する者を恐怖させるに十分な眼光を宿した大光球の行進も、
「痛い! 高い! 怖い! やっぱ下ろさないで!!」
封獣としてはその度にネコダマシじみた閃光を放って距離を取り、仕切り直すほかはない。
接近戦においての能力は相手の方が圧倒的に上だと認めざるを得なかった。こちらが叉槍を一振りして弾を全方位に撒く間に敵は戦場を一周し、
「むう、ここまで接近してもほとんど何も写らない。やはり雲を全部剥がす勢いで行きますかね……」
それでやることが写真撮影なのだから、とことんナメている。
相手が鈎縄か槍でも持っていればとっくに胴に大穴が空いて首級が取られているな、と──どこか冷めた心持ちで鵺は甲高く風を切る敵の羽音を聴いている。魔界や地獄のヒリついた殴り合い斬り合いが恋しくて仕方がない。このようなママゴトなぞ──
馴染めない児戯だからこそ、敗けるわけにもいかない。
「あ、あのぉ」
「……」
「さっきから目まぐるしく景色が変わるもんで、すこぶる気分が悪くなってきました。吐いてもいいですか?」
ぬえは返事代わりに右手で多々良小傘をフルスイングした。ぎょぼええええ、的な名状し難い嗚咽と共に場違いなほど素敵な虹が掛かる。
応えるように、ぬえを取り巻く暗雲の外から忌々しい烏天狗の声が聞こえてきた。
「あや、妙にカラフルでファンシーな弾。趣向を変えてきましたね。それともこれが
「い、一本足ピッチャー返し〜……」
掌中の道具がなんかほざいている。
「手を離してもいいんだが、私の力が剥がれた瞬間あの天狗に不審物扱いで滅多撃ちにされるだろうからね。頼むから大人しくしていてくれ。できれば口も閉じてて」
「しくしく。どうせなら何かお役に立てませんか」
「……考えとくよ」
つい先程までは、にっちもさっちもいかなくなればこの傘を身代わりにでもして逃げてやろうと思っていた鵺であった。
しかし、久方ぶりに弾などばら撒いているうちに気がかわりつつある。逃散するにせよ、何としてもこの他人を舐め腐った天狗に一泡吹かせてからでないと気がすまない。
(──気が進まんが、先に札を切るか──)
叉槍を暗雲へと還し、懐をまさぐって紙切れを取り出す。白紙であった。
折しも、鵺を覆っていた数多の雲のうち一片が、射命丸の振るう羽扇の巻き起こす突風一条によって霧散した時。垣間見えた韋駄天の残像に向けて鵺はその紙切れを突き出した。
「猿田彦の僭称者よ。その名を騙るに相応しい
残像は残像のまま、鵺の声に応えるべく飛来した実体と重なって射命丸文となった。
「いいえちっとも。アングルのローもハイも判らないくらいですから。面白くないですね」
「お前が
白紙のカードが、鵺の掌の上で黒い炎を上げて燃え落ちていく。
「大ヒントだ。望まずとも、お前は答えに辿り着く」
彼女の周囲を覆っていた
対流する雲の渦の中、射命丸文の眼前に現れるのは──
「思い出せ。連想しろ」
「……へえ。では私も語るとしましょうかね」
其は網であり、弾であり、怪であり、光であった。
聳える九条は【平安京の悪夢】。
均衡は今破られる。
次回タイトルは 詠唱 です。サイモンとガーファンクルのデュエット的な意味でその次の話もタイトルは決まってます