図書館交差   作:蹴急

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楽しんで頂けたら嬉しいです。


図書特殊部隊入隊編
一冊目


図書館の自由に関する宣言

 

一、図書館は資料収集の自由を有する。

ニ、図書館は資料提供の自由を有する。

三、図書館は利用者の秘密を守る。

四、図書館はすべての不当な検閲に反対する。

 

 

図書館の自由が侵される時、我々は団結して、あくまで自由を守る。

 

 

 

 

 

 

公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まる法律として「メディア良化法」が成立・施行されたのは昭和最終年度である。

それに対し、メディア良化法に対抗する勢力として期待され成立したのが通称「図書館の自由法」。

そして両法の施行から三十年が経過した現代ーーー正化三十一年。

 

 

……ここに自由を守るべく戦士となる者達が集う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

乾ききった空気に照った太陽が全身に降り注ぐ。

小銃を持っている為、手で汗を拭えないからか頭を傾け肩で汗を拭く。

 

「はぁ、はぁ」

 

ハイポート(小銃を抱えた持久走)を何とか先行集団の尻に喰らい付く。

その横には男性だらけの集団の中にいる唯一の女性が同じように追い縋ってる。

 

「腕下げんな、笠原ッ!」

 

飛んできた罵声に、唯一の女性。笠原郁は小銃を保持した腕を懸命に引き上げる。

それに習い隣で並走している桐ヶ谷和人も気持ち腕を上げた。

女に負けてたまるか!とゴールまで僅かのとこでスパートをかけていく。

 

「なんのっ!」

 

それに吊られたのか郁もスピードを上げる。

結果は同時となるが、そこで全力を使い切ったのか郁は思いっきり地面に倒れ込んだ。

和人も息を切らしながらその場で立ちつくし、息が整うのを待つ。

 

「誰が倒れていいっつった、腕立て」

 

……うわぁ、鬼がいる、笠原も可哀想に。

 

心中で思うもその場では何も言わずに和人は先にゴールした人達の列へと向かい休む。

すると、遅れてゴールした女子が後ろに座り、和人に声をかける。

 

「笠原さんも可哀想よね。もう少し褒めてあげてもいいと思うんだけど」

「だよな。女子の中じゃぶっちぎりだし、それに男子と比べても遜色ないからな」

 

腕立て十回を終わらせた郁に気付いた二人は、尊敬と慈悲を込めて片手で拝んだ。

 

「それにしても朝田も結構体力あるよな」

「まぁね、流石に男子と同じくらい走れるとは思わないし無理だけど」

 

少しばかり雑談している内に、全員のハイポートが終わり、昼休憩のサイレンが鳴り響いた。

 

 

「和人くーん、こっちこっち」

 

食堂で手を振っている女子に和人は片手を上げて合図した。

席に向かうと他にも何人か座って食事している。

 

「お疲れ様。どうだったの訓練」

「まぁまぁかな。にしても明日奈の方がきついんじゃないか?戦闘職種希望じゃないのに戦闘訓練やらないといけないし」

「そうなのよね。でもこっちの教官は女子に甘いから何とかなってるよ」

と言いつつ一つ奥のテーブルで座っている一際目立つ女性隊員を見やる。

 

「確かにこっちの教官はきついけどあいつは特別扱かれてるからなー」

和人の言うキツイ教官とは堂上篤二等図書正のことである。

関東圏の新図書隊員は関東図書基地で練成教育を受けることなっており、今年は三百名を迎えている。

どこの配属をされると決まっていも全員が戦闘訓練を受ける為、五十名ずつ六班で編成されしごかれる。

 

「あっ、噂をすればやってきたわよ」

「それと小牧教官も一緒か、図書特殊部隊の二方が来るなんてな」

 

図書特殊部隊、ライブラリー・タスクフォースとは防衛部でも特にずば抜けた能力を持った者が集まる精鋭部隊である。

堂上二等図書正と小牧二等図書正は新隊員の教官も務めている為、新隊員の間では有名な人物である。

 

「……和人くんはやっぱり防衛部志望なの?」

 

そう聞く明日奈の顔には不安が見られ、答える和人も僅かに言葉が詰まる。

 

「ああ、出来れば明日奈の気持ちを優先させたいけど、この気持ちだけは曲げられない」

「……そうだよね、ごめんなさい」

「謝ることじゃないさ」

 

謝る明日菜にそっと手を伸ばし頭を撫でる。

 

「うん、そうだね。それに和人くんが特殊部隊に配属されたら一緒に仕事できるもんね!」

「い、いや、特殊部隊になるのは難しいんじゃないかな〜」

……特殊部隊は、新人がいきなり入れられるようなところじゃないから!

 

明日奈の無茶振りに、和人は渇いた声で笑い返した。

 

 

 

 

 

午後からの訓練は道場での格闘技訓練だ。

入隊一カ月目にして、和人たちは初めての模擬戦を行うことになった。

初めの種目は柔道、次に警棒を使ったチャンバラ。

和人は男にしてはやや身長が低く一六八cmで、それもあってかあまり柔道では対戦相手を畳につけることが出来ず、毎度畳を拝み、受身だけが上手くなっていった。

 

「甘いッ!」

堂上の鋭い声が響く。

堂上は和人より身長は低いが、やはり精鋭部隊にいるだけあり、新隊員相手では負けることがない。

そんな中、またも郁は暴れ散らし、堂上に喧嘩を吹っかける。

結果、郁は堂上に最強の関節技、腕ひしぎをかけられノックアウトした。

 

その後の訓練は警棒を使った対人戦であった。

この訓練は小柄な和人は得意としていた。

男子ではトーナメント形式で行い、一位となった者が堂上と試合をする事となる。

 

「勝ったのは桐ヶ谷か、よしこっちに来い。」

「はい!」

 

堂上の呼び掛けに威勢良く返事をして、位置につくと、手に持つ特殊警棒を軽く振る。

 

……特殊部隊の人とやれる滅多にない機会だ、どこまでやれるか。

 

「胸を借りさせてもらいますよ、堂上教官」

「いいだろう、けれど俺は手加減出来んぞ」

 

互いにいい合うと和人は集中し、目で堂上をしっかりと捉える。

審判役の男子の声で開始されると同時に和人が先手を取りに畳を蹴る。

しかし、先手は譲るつもりであったのか堂上は冷静に手に持つ警棒で和人の警棒を迎え撃つ。

 

「振りがでかい!それでは相手に先に銃で撃たれるぞ」

「・・・ッ!」

 

堂上は僅かに怯んだ和人の隙をつき空いている左手で和人の裾を掴みかかる。

けれど和人も右手を直ぐに引いて左手を弾く。

それを受け、堂上は「……ほう」と、驚いた表情をする。

完全に隙を突き、倒せると思ったのが、まさか弾かれて距離を取られるとまでは思っていなかったのだ。

それに対し、和人は「……今のは、危なかった」と安堵する。

仕切り直しとばかりに次は堂上から仕掛ける。

左上段から来た振りに、和人は咄嗟に受け止めようと腕を上げた。

 

「あまい!」

 

それを待っていたのか堂上は死角を突いて下から警棒を持つ和人の腕を握ると後ろへと回りこみ拘束する。

 

「あ"ーーーーー!」

 

あまりの痛みに叫びながら床に突っ伏し、手から警棒が離れる。

何だこれ!全く動かない!!、振り解こうと試みるも力が入らない。

 

「審判!カウント!」

 

堂上が和人から視線を外し審判にカウントを促す。

……カウント?んなの待てるか!!

 

「きょ、教官!!タップ、タップ!!無理!痛すぎ!助けてくれーーーー!」

 

最後には誤り倒し、教官に解放を懇願した。

 

 

 

 

 

 

 

「うーっ痛てて、まだ痛むぞ」

 

和人は寮に戻るなり腕を摩り続けていた。

 

「大丈夫かい?これ貼っとく?」

「助かるよ、裕司」

 

和人と同室の青葉裕司が湿布を取り出し、和人に手渡す。

和人が腕に湿布を貼っていると、部屋の扉が開いた。

 

「ただいまー、二人とも帰ってたんだね」

「あー、全く今日も大分揉まれたぜ」

 

同室で暮らす同僚の日向と大山だ。この部屋の隊員はこれで全員であり、全員が防衛員志望で図書館員として武蔵野第一図書館への配属が決まっている。

 

「どうしたんだ?桐ヶ谷は?」

 

問いかけたのは真っ先に自分のベットへとダイブした日向だ。

ポイポイっと服を脱いで着替えていく。

 

「訓練で教官にやられてな・・・」

 

和人は渋い表情を出して答える。

 

「はぁーそれは御愁傷だわな、ていってもこっちも大概だけどな」

「日向君の場合、教官じゃなくて同期の女の子の所為だけどね」

 

大山が日向の発言に補足をしながら、風呂場へ向かう支度をしていく。

 

「全くだぜ、今日なんて昼飯ん時箸で眼球抉られそうになったり、降下訓練では蹴落とされるわ、何なんだよあいつwhy?」

「そ、その子かなりアクティブなんだね」

 

日向の発言に引き気味に裕司が苦笑いで突っ込む。横にいる和人も顔を引きつらせている。

 

「ま、まぁそんなことより風呂に行ってこいよ。そろそろ行かないと消灯時間になるぞ?」

「うおっ、やべ!行くぞ、大山!」

「待ってよ、日向君!」

 

ドタドタと扉を開けて日向と大山が出て行くのを見送ると裕司がコップにコーヒーを注いでいく。

 

「今年の女の子ってかなり変わった子が多いみたいだね」

「だよな、うちの班も笠原を筆頭に朝田とかいるし」

「僕の班も柴崎さんとか変わってるけどかなり人気だよ」

 

どうぞ、とコーヒーの入ったコップを和人に渡し床に着くと、それにと付け足す。

 

「和人の彼女さんもかなり有名だよ、何でこんなところに財閥の娘さんがーって」

「明日奈は俺に着いていくってく聞かなかったからな、ほんとあいつの融通の利かないとこには参っているよ」

 

コーヒーを冷ますために息を吹きかけるが、裕司はそれが照れ隠しだとすぐに分かった。

けれど、わざわざ茶化す必要も無いと触れないでおく。

 

「悪い、俺もう寝るわ」

「え?あ、なら電気消しておく?」

「いいよ、日向たちも戻ってくるだろうし布団被っとく」

 

コーヒーを一気に飲み干し、自分のベットへと向かい、カーテンを閉めた。

友人の急な行動に戸惑いつつも、裕司は「腕がまだ痛いのかな?」と勝手な憶測をつけておいた。




読んで頂きありがとうございます。

かなり遅めの更新ペースになりますがこれからよろしくお願いします。
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