この話は基本桐ヶ谷和人がメインなのかと思います。
さらに色々と混じってるので可笑しな点とか出てくるかと思いますが気にしないでおくか何とかなりそうなら指摘して下さると助かります。
では二話目です。
図書防衛員を目指したのはいつからだったか、あまり覚えていない。
物心がついていた時にはなりたかったのかもしれなかった。
10歳の時に偶然、自分の親が本当は違うということを知った。
その事を今の両親に突然吹っかけたら、まんまと引っかかり事の真相を聞いた。
火事に遭い、親は俺だけを何とか逃し亡くなった。
それについて調べる事は当時の和人にとって、そう難しいことじゃなかった。調べて出てきた中で図書隊と良化委員との抗争があったのではという噂程度のものがあった。その時にはそれほど気に留めなかった。
その1年後祖父が亡くなる直前に昔語りをしてくれた。自分が警察として図書館を裏切ってしまったという話だった。今ではその話の内容をよく覚えていないが凄い衝撃を受けた事だけは今でも覚えている。それがきっかけだったかもしれない。
祖父が亡くなってからしばらくはネットの世界に没頭していた。その為だけでは無いがやはり友達といった友達は出来ないでいた。そのせいかネットにはどんどん嵌まっていった。
大学では司書資格のある学部に入れば良かったのだが、義親である母の影響か電子工学系の学部へと進学した。傍ら司書資格の為に勉強し、それが恋人である明日奈にばれて一緒に目指す事となったのである。
新隊員の教育期間が終盤になると、部署に応じた実地訓練が織り込まれるようになった。
和人や裕司ら防衛員は引き続いての練成訓練と並行して、武蔵野第一図書館と図書基地とで実際に警備業務をローテーションで体験する。
明日奈は業務部なので和人達と訓練内容が変わり、武蔵野第一図書館で研修に励んでいる。
「あーあ、和人君と会えないなら私も防衛部志望にしとけばよかったなー」
和人にしたら冗談にも聞こえないので顔を強張らせたが、同じ基地で生活するので会う機会は頻繁である。
流石に男女で寮の棟は分かれているが共有区画は多いし玄関も共同である。
「桐ヶ谷君って結城さんとお付き合いしてるんだって?」
そんな何気ない事もないことを訊いてきた相手は、その日の警備指導役である小牧である。
和人は照れながら質問に答えた。
「ええ、まあ」
小牧にしてはいきなり私情な話をするのは珍しい事であった。
しかし、結城明日奈とはそれだけ有名であり、何気ない会話をするにはうってつけなのかもしれない。
「彼女がここに来ていると知った時は驚いたもんだよ」
「それは、すいません。そういえば小牧教官、面接の時いましたね」
覚えている事に驚く様子も見せずに小牧はいたよ。と答えた。
「気になってたんですけど聞いてもいいですか?」
「答えられることなら」
「俺が入った時、面接官の殆どが腹を抱えていたんですけどあれって何があったんです?」
毅然としてた小牧の顔に綻びが見えた。
必死に隠そうとしているのか顔が可笑しな表情を作っている。
「多分、桐ヶ谷君の前の面接してた子って笠原さんだよね?」
「そうだったと思います。それが何か関係あるんですか?」
「そうだね。多分そのうち知る事になると思うから、今は言わないでおくよ」
これ以上聞いても答えが得られそうにないので和人は素直に聞くのをやめた。
小牧教官から視線を離し、チラッと横を見てそれが目に入った。
小学生くらいであろう男の子が漫画を抱えてキョロキョロしながら人気の少ない方へと向かっていた。
「教官あれって・・・」
小牧は和人の指摘する人物を見るや鋭い表情に変わる。
「僕はここにいるから職質してみて」
指示を受け、男の子の後を追う。小牧は何かあれば対処出来るであろう距離から和人を監督する。
角を曲がった所で止まったので和人が職務質問の口上を砕いて声をかけようとする。
「きみ、ちょっとお話しをしてもいいかな?」
少年の肩がビクッと震えた思うとその場から逃げ出すように走り出した。
逃がすか!と声を張り上げ少年を追いかける。
少年も足の速さでは勝てないと思ったのか近くにあるゴミ箱やカートに置いてある本を撒き散らしていく。
面倒なと思いながらも和人はどれにも引っかかる事なく躱し、いなしていく。
多少時間がかかったものの追い付き、少年の片手を捕まえる。
「捕まえた!もう逃げるなよ」
捕まえた事で嘆息し、小牧教官に報告しようと辺りを見る。
「桐ヶ谷君!」
小牧が少し遅れて追いついてきた。
「後ろ見て!」
普段の小牧からは出ないであろう荒げた声を聞き咄嗟に振り向く。
そこには捕まえた少年が持っていた漫画を和人の頭めがけて投げようとしていた。
何とか頭だけでも逸らす。すぐ後に耳横でブォンと音がする。
子供相手な事を完全に忘れ、思い切り床につける。
「今度こそ捕まえたからな逃げるなよ!」
その一言で抵抗する気を無くしたのか僅かに入っていた力が抜けた。
「すいません小牧教官。子供だからって気抜いてました」
少年の両手を後ろで掴み、小牧教官に謝る。
「そうだね。でも怪我が無くて良かったよ」
少年を小牧に引き渡す。
「今後は無いようにね。それと報告書、書かないといけないから桐ヶ谷君も一緒に来てくれる」
「はい」
報告書を書くつもりだったがその前に少年の散らかしたゴミ箱や本を直す羽目になったがそこは近くにいた図書隊員も手伝ってくれたのでそう時間はかからなかった。
「窃盗しようとしてたの捕まえたんだって?」
その夜、何かあった事だけを知った裕司が事の顛末を訊いてきた。
「まだ小学五年生だったよ。漫画の値段が高くて買えないからだってさ」
コタツでみかんを剥いている日向が口を挟む。
「今じゃあ、漫画もゲームもネットも検閲が厳しいからな」
「僕もゲームが検閲に引っかかて出来なかったとかよくあったよ」
「ゲームか・・・」
和人は何かを思い出すかのように天井を見上げた。
裕司が日向からみかんを一粒取る。
「ネットやゲームが厳しくなったのは九年くらい前の事件の所為らしいけどね」
「ああ、あれか。確かにあんなのあったら厳しくもなるわな」
和人の顔が僅かに落ちていき、コタツから出た。
「ジュースでも買いに行くけど何かいるか?」
裕司は水を、日向と大山がKey珈琲を頼んだ。
今から珈琲なんで飲んだら寝れないぞと思いながらも言えず、部屋を出た。
昔の事を思い出していると直ぐにロビーについた。
ソファにはあの頃から少し大人になっている和人の恋人、明日奈がいた。
「キリト君、今日はお手柄だったらしいね」
「明日奈、ここでその名前は・・・」
「ごめんなさい、気を抜いてたらつい」
片目を瞑って謝る素振りをみせる。
周りに人が居なかったので怒ることも無いと何も言わずに和人は隣に座った。
「さっき部屋であの時の事件の話になってさ、もう九年も、解放されてから七年も経ったんだな」
「もう随分昔のように思うけど、つい最近だったようにも感じるの。みんなどうしてるのかな」
「元気でやってるよ、きっと。明日奈、思い出したよ俺。茅場……ヒースクリフとの約束の為にも早く検閲を無くさないとな」
「頑張ろうね」
「ああ」
唇と唇を触れ合わせ、二人は別れた。
後日、教育期間が終わると防衛部に配属されると思っていた和人に辞令が下った。
図書特殊部隊への配属を命ずる。
「え・・・えええーーーー!?」
遠くからも同じような叫声が響き渡っていた。
読んで頂きありがとうございます。
和人がやっとライブラリタスクフォースに入りました。
これからが自分的にも楽しみです。
しばらく空くと思いますがまた次回。